電気音響

音響学講座 2

電気音響

トランスデューサの基本技術や性能の計測技術,収音再生技術,主な音響信号処理技術を概説

ジャンル
発行年月日
2020/03/23
判型
A5
ページ数
286ページ
ISBN
978-4-339-01362-7
電気音響
在庫あり

定価

4,180(本体3,800円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
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  • 広告掲載情報

本書では,音響学における幅広い領域での根幹をなす技術について取り扱う。マイクロホンなどに用いられるトランスデューサの基本技術やその性能の計測技術,収音・再生技術,代表的な音響信号処理技術について概説している。

電気音響分野は,ベルによる電話の発明,エジソンによる電気蓄音機など19世紀の音響と電気の結び付き,すなわち古典的なマイクロホンやスピーカというアクチュエータ自体の研究から始まった。技術が高度化した現在では,アクチュエータ自体のみならず,雑音抑圧,エコーキャンセラ,マルチチャネルでの信号分離・合成などのディジタル信号処理を中心とした研究領域を取り扱っている。この研究分野は現在の音響情報処理の基幹となる重要な分野である。

電気音響は,空気を媒質とし,その圧力の粗密を機械的な仕組みでセンシングし,電気信号に変換する概念が原点である。最近では,材料や製造技術の発達に伴い,安価にマイクロホンやスピーカが手に入るようになった。このため,複数のマイクロホンやスピーカを利用した技術や,半導体技術の進歩によるディジタル信号処理技術の高度化により,より豊かな音を取り扱えるようになった。さらには,数理的な学問の進展による統計的信号処理,ヒトの聴覚特性を利用した圧縮技術,音響情報ハイディングなど幅広い研究が行われている。

昨今,マイクロホン,スピーカ,そして信号処理技術が様々な身近な場面や製品で利用されている。簡便に利用できる状況になったがゆえに,それらの特性や原理を十分に知らずに利用することもあり,正確に計測や処理ができていないことも見受けられる。用いるアクチュエータの取り扱い方や信号処理技術を正しく理解することにより,既存の製品もより一層の進歩が期待できるため,是非とも本書を用いて基礎的な特性や原理を学んでいただきたい。

本書では,上述のように音響学における幅広い領域での根幹をなす技術について取り扱う。第1章では,トランスデューサ(電気音響変換器)の基本といえる磁界,電界を用いるオーディオトランスデューサなどの種々のトランスデューサの仕組みなどについて述べ,次にオーディオトランスデューサの感度と周波数特性などについて記している。第2章では,音響機器およびその基本要素であるトランスデューサの性能を正確に計測する基本技術について述べている。第3章では,複数チャネルでの収音・再生について述べている。第4章では,符号化,適応信号処理,アレイ信号処理,統計的信号処理,そして音響情報ハイディングについて述べている。

執筆分担は以下のとおりである。各領域で優れた実績を持つ方々に執筆を担当していただけたことに感謝している。
大賀寿郎1章
佐藤宗純2章
堀内竜三2章
杉本岳大3.1節
安藤彰男3.2節
守谷健弘4.1節
及川靖広4.2節
島内末廣4.3.1項
梶川嘉延4.3.2項
日岡裕輔4.4節
荒木章子4.5節
薗田光太郎4.6節

2020年1月苣木禎史

1.オーディオトランスデューサとオーディオ装置
1.1 種々のオーディオトランスデューサ
1.2 種々の電気音響変換原理
 1.2.1 トランスデューサの基本構成
 1.2.2 磁界を用いるトランスデューサの実用例
 1.2.3 電界を用いるトランスデューサの実用例
1.3 機械,音響振動系をモデル化する
 1.3.1 共振周波数と電気回路モデル表示
 1.3.2 振動の変位,速度,加速度と周波数との関係
 1.3.3 オーディオトランスデューサの周波数特性の設計
 1.3.4 等価回路表示を利用する例:スピーカシステム
1.4 オーディオトランスデューサの特性の定量化
 1.4.1 磁界を用いるトランスデューサの動作方程式
 1.4.2 電界を用いるトランスデューサの動作方程式
 1.4.3 電気特性の実例1:動電スピーカシステム
 1.4.4 電気特性の実例2:圧電イヤホン
1.5 音場を利用するトランスデューサ
 1.5.1 球面波,平面波,相反定理
 1.5.2 減算を用いる指向性マイクロホン
 1.5.3 減算を用いる近接マイクロホン
 1.5.4 加算を用いる指向性スピーカと指向性マイクロホン
1.6 トランスデューサへの音場の影響
 1.6.1 点音源を持つ直方体の箱
 1.6.2 端面に有限大の振動板を持つ円筒
 1.6.3 球体は最も滑らかな音場効果を持つ
1.7 感度と周波数特性の検討
 1.7.1 オーディオトランスデューサの感度の定義
 1.7.2 オーディオトランスデューサの感度周波数特性の選択
 1.7.3 実際のオーディオトランスデューサの感度
 1.7.4 振動部に要求される制御状態のまとめ
 1.7.5 オーディオトランスデューサの実用的な評価尺度
 1.7.6 実際のスピーカの特性の検討
 1.7.7 ヘッドホンの分類の検討
1.8 代表的なオーディオ装置の技術
 1.8.1 オーディオ再生システム
 1.8.2 スイッチングパワーアンプ
 1.8.3 マイクロホンへの電源供給
 1.8.4 ノイズキャンセルヘッドホン
引用・参考文献

2.音響機器の測定と測定器
2.1 音響機器の性能評価
2.2 測定用音場
 2.2.1 無響室(自由音場)
 2.2.2 残響室(拡散音場)
 2.2.3 音響カプラ
2.3 計測用マイクロホンの感度校正
 2.3.1 計測用マイクロホンの動作
 2.3.2 計測用マイクロホンの種類
 2.3.3 標準マイクロホン音圧感度の校正
 2.3.4 標準マイクロホン自由音場感度の校正
 2.3.5 計測用マイクロホン感度の校正
 2.3.6 音響校正器による感度校正
 2.3.7 静電アクチュエータによる周波数レスポンスの測定
2.4 オーディオトランスデューサの測定
 2.4.1 マイクロホン
 2.4.2 スピーカ
 2.4.3 イヤホン・ヘッドホン
2.5 音響パワーレベルの測定
 2.5.1 音圧法(自由音場)
 2.5.2 音圧法(拡散音場)
 2.5.3 音響インテンシティ法
 2.5.4 音響インテンシティの測定
2.6 音響測定器と測定用信号波形
 2.6.1 サウンドレベルメータ(騒音計)
 2.6.2 周波数分析器
 2.6.3 周波数特性分析器
 2.6.4 ひずみ率計
 2.6.5 測定用信号波形
2.7 測定のトレーサビリティ
 2.7.1 測定の不確かさ
 2.7.2 測定結果の保証
引用・参考文献

3.収音と再生
3.1 収音方法
 3.1.1 音響音声制作における制作意図
 3.1.2 音場の収音と音源の収音
 3.1.3 音場に着目した収音方法
 3.1.4 音源に着目した収音方法
 3.1.5 三次元音響用の収音方法
3.2 再生方法
 3.2.1 ステレオ再生
 3.2.2 マルチチャネル音響再生
 3.2.3 バイノーラル再生
 3.2.4 波面合成型再生
 3.2.5 音響レンダリング
引用・参考文献

4.音響信号処理
4.1 符号化
 4.1.1 圧縮の用途と基本原理
 4.1.2 基本要素技術
 4.1.3 統合符号化
 4.1.4 オブジェクト符号化と空間符号化
4.2 1bit信号処理
 4.2.1 量子化雑音
 4.2.2 ΔΣ変調とノイズシェーピング
 4.2.3 1bit量子化とディザ
 4.2.4 1bit信号処理の特徴と応用
4.3 適応信号処理
 4.3.1 音響エコーキャンセラ
 4.3.2 アクティブノイズコントロール(ANC)
4.4 アレイ信号処理
 4.4.1 マイクロホンアレイによる受音モデル
 4.4.2 ビームフォーミング
 4.4.3 音源定位
4.5 統計的信号処理
 4.5.1 準備
 4.5.2 信号対雑音比(SN比)最大化ビームフォーマ
 4.5.3 時間周波数マスク推定によるブラインド音源分離
 4.5.4 独立成分分析によるブラインド音源分離
4.6 音響情報ハイディング
 4.6.1 情報ハイディングの概要
 4.6.2 音響情報ハイディング技術の評価方法
 4.6.3 代表的な音響情報ハイディング
引用・参考文献

索引

苣木 禎史(チサキ ヨシフミ)

大賀 寿郎(オオガ ジュロウ)

佐藤 宗純(サトウ ソウジュン)

堀内 竜三(ホリウチ リュウゾウ)

杉本 岳大(スギモト タケヒロ)

守谷 健弘(モリヤ タケヒロ)

及川 靖広(オイカワ ヤスヒロ)

島内 末廣(シマウチ スエヒロ)

日岡 裕輔(ヒオカ ユウスケ)

荒木 章子(アラキ ショウコ)

掲載日:2020/06/12

芸術科学会誌「DiVA」48号広告

掲載日:2020/04/01

「電子情報通信学会誌」2020年4月号広告

掲載日:2020/03/04

日本音響学会 2020年春季研究発表会 講演論文集広告

「音響学講座」ラインナップ
  1. 基礎音響学
  2. 電気音響
  3. 建築音響
  4. 騒音・振動
  5. 聴覚
  6. 音声(上)
  7. 音声(下)
  8. 超音波
  9. 音楽音響
  10. 音響学の展開
「音響学講座」発刊にあたって

 音響学は,本来物理学の一分野であり,17世紀にはその最先端の学問分野であった。その後,物理学の主流は量子論や宇宙論などに移り,音響学は,広い裾野を持つ分野に変貌していった。音は人間にとって身近な現象であるため,心理的な側面からも音の研究が行われて,現代の音響学に至っている。さらに,近年の計算機関連技術の進展は,音響学にも多くの影響を及ぼした。日本音響学会は,1977年以来,音響工学講座全8巻を刊行し,わが国の音響学の発展に貢献してきたが,近年の急速な技術革新や分野の拡大に対しては,必ずしも追従できていない。このような状況を鑑み,音響学講座全10巻を新たに刊行するものである。

 さて,音響学に関する国際的な学会活動を概観すれば,音響学の物理/心理的な側面で活発な活動を行っているのは,米国音響学会(Acoustical Society of America)であろう。しかしながら,同学会では,信号処理関係の技術ではどちらかというと手薄であり,この分野はIEEEが担っている。また,録音再生の分野では,Audio Engineering Society が活発に活動している。このように,国際的には,複数の学会が分担して音響学を支えている状況である。これに対し,日本音響学会は,単独で音響学全般を扱う特別な学会である。言い換えれば,音響学全体を俯瞰し,これらを体系的に記述する書籍の発行は,日本音響学会ならではの活動ということができよう。

 本講座を編集するにあたり,いくつか留意した点がある。前述のとおり本講座は10巻で構成したが,このうち最初の9巻は,教科書として利用できるよう,ある程度学説的に固まった内容を記述することとした。また,時代の流れに追従できるよう,分野ごとの巻の割り当てを見直した。旧音響工学講座では,共通する基礎の部分を除くと,6つの分野,すなわち電気音響,建築音響,騒音・振動,聴覚と音響心理,音声,超音波から成り立っていたが,そのうち,当時社会問題にもなっていた騒音・振動に2つの巻を割いていた。本講座では,昨今の日本音響学会における研究発表件数などを考慮し,騒音・振動に関する記述を1つの巻にまとめる代わりに,音声に2つの巻を割り当てた。さらに,音響工学講座では扱っていなかった音楽音響を新たに追加すると共に,これからの展開が期待される分野をまとめた第10巻「音響学の展開」を刊行することとし,新しい技術の紹介にも心がけた。

 本講座のような音響学を網羅・俯瞰する書籍は,国際的に見ても希有のものと思われる。本講座が,音響学を学ぶ諸氏の一助となり,また音響学の発展にいささかなりとも貢献できることを,心から願う次第である。

2019年1月

安藤 彰男