基礎音響学

音響学講座 1

基礎音響学

物理学の一分野としての音響学の成立から現在に至る歴史について述べ,音の物理,聴覚に関する心理・生理について概説。さらに,計算機技術とともに発展した信号処理技術を解説した。最後に,音響学に関する数学を簡潔に紹介した。

ジャンル
発行年月日
2019/03/28
判型
A5
ページ数
256ページ
ISBN
978-4-339-01361-0
基礎音響学
在庫あり

定価

3,850(本体3,500円+税)

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物理学の一分野としての音響学の成立から現在に至る歴史について述べ,音の物理,聴覚に関する心理・生理について概説。さらに,計算機技術とともに発展した信号処理技術を解説した。最後に,音響学に関する数学を簡潔に紹介した。

1. 音響学略史
1.1 音響学前史
1.2 物理学としての音響学の発展(16世紀~19世紀)
1.3 音響工学の誕生(19世紀末~20世紀前期)
1.4 日本における音響学の定着と展開(創始から第2次世界大戦のころまで)
1.5 音響学の多面的発展(20世紀中期~後期)
引用・参考文献

2. 音の物理
2.1 振動の基礎
 2.1.1 周期振動
 2.1.2 単振動
 2.1.3 減衰振動
 2.1.4 強制振動
 2.1.5 共振
2.2 連続体の振動
 2.2.1 弦の振動
 2.2.2 棒の縦振動
 2.2.3 棒の横振動
 2.2.4 膜の振動
2.3 波動方程式
 2.3.1 連続方程式
 2.3.2 オイラーの運動方程式
 2.3.3 熱力学と状態方程式
 2.3.4 音波の方程式
2.4 音波
 2.4.1 膨張度
 2.4.2 速度ポテンシャル
 2.4.3 音圧レベル
 2.4.4 平面波
 2.4.5 球面波
 2.4.6 点音源
2.5 回折理論
 2.5.1 音波のフーリエ変換
 2.5.2 ヘルムホルツ方程式
 2.5.3 ガウスの定理とグリーンの定理
 2.5.4 キルヒホッフ-ヘルムホルツの積分定理
 2.5.5 レイリー積分
引用・参考文献

3. 聴覚の基礎
3.1 聴覚理解のための前提知識
 3.1.1 時間波形とスペクトル
 3.1.2 線形性とひずみ
 3.1.3 振幅変調
3.2 聴覚の生理学
 3.2.1 末梢系の概略と構造
 3.2.2 基底膜の振動
 3.2.3 有毛細胞~聴神経の信号伝達
 3.2.4 聴神経
 3.2.5 外有毛細胞の能動機構
 3.2.6 聴覚中枢系
3.3 聴覚の心理学
 3.3.1 最小可聴値
 3.3.2 周波数分解能とマスキング
 3.3.3 ラウドネス
 3.3.4 音の強さの弁別,ダイナミックレンジ
 3.3.5 音の高さ(ピッチ)
 3.3.6 空間知覚・両耳聴
 3.3.7 聴覚情景分析
 3.3.8 音色
 3.3.9 音声の知覚
引用・参考文献

4. 音の信号処理
4.1 音のディジタル化
 4.1.1 標本化と量子化
 4.1.2 離散時間信号のフーリエ変換
 4.1.3 標本化の数理
4.2 離散時間システムとz変換
 4.2.1 離散時間信号と線形シフト不変システム
 4.2.2 システム応答
 4.2.3 z変換
 4.2.4 伝達関数
 4.2.5 アップサンプリングとダウンサンプリング
 4.2.6 離散フーリエ変換と離散コサイン変換
 4.2.7 窓関数
 4.2.8 重畳加算法
4.3 音声の分析法
 4.3.1 全極モデルと自己回帰過程
 4.3.2 線形予測分析
 4.3.3 Levinson-Durbinアルゴリズム
4.4 楽音の分析法
 4.4.1 2帯域完全再構成フィルタ
 4.4.2 直交ミラーフィルタ
 4.4.3 共役直交フィルタ
 4.4.4 疑似直交ミラーフィルタ
 4.4.5 MDCTを用いた完全再構成分析合成系
引用・参考文献

5. 音響学のための数学
5.1 線形代数とベクトル解析
 5.1.1 数ベクトル空間
 5.1.2 計量ベクトル空間
 5.1.3 線形写像
 5.1.4 固有値と固有ベクトル
 5.1.5 ベクトルの微分
 5.1.6 ベクトルの積分
5.2 微分方程式
 5.2.1 フーリエ級数
 5.2.2 常微分方程式
 5.2.3 2階偏微分方程式
5.3 球関数
 5.3.1 極座標系
 5.3.2 波動方程式の極座標表現による解
5.4 球関数に基づく音場理論
 5.4.1 グリーンの公式
 5.4.2 ヘルムホルツ方程式の解
 5.4.3 球面波の球関数展開
5.5 補足
引用・参考文献

索引

「音響学講座」ラインナップ
  1. 基礎音響学
  2. 電気音響
  3. 建築音響
  4. 騒音・振動
  5. 聴覚
  6. 音声(上)
  7. 音声(下)
  8. 超音波
  9. 音楽音響
  10. 音響学の展開
「音響学講座」発刊にあたって

 音響学は,本来物理学の一分野であり,17世紀にはその最先端の学問分野であった。その後,物理学の主流は量子論や宇宙論などに移り,音響学は,広い裾野を持つ分野に変貌していった。音は人間にとって身近な現象であるため,心理的な側面からも音の研究が行われて,現代の音響学に至っている。さらに,近年の計算機関連技術の進展は,音響学にも多くの影響を及ぼした。日本音響学会は,1977年以来,音響工学講座全8巻を刊行し,わが国の音響学の発展に貢献してきたが,近年の急速な技術革新や分野の拡大に対しては,必ずしも追従できていない。このような状況を鑑み,音響学講座全10巻を新たに刊行するものである。

 さて,音響学に関する国際的な学会活動を概観すれば,音響学の物理/心理的な側面で活発な活動を行っているのは,米国音響学会(Acoustical Society of America)であろう。しかしながら,同学会では,信号処理関係の技術ではどちらかというと手薄であり,この分野はIEEEが担っている。また,録音再生の分野では,Audio Engineering Society が活発に活動している。このように,国際的には,複数の学会が分担して音響学を支えている状況である。これに対し,日本音響学会は,単独で音響学全般を扱う特別な学会である。言い換えれば,音響学全体を俯瞰し,これらを体系的に記述する書籍の発行は,日本音響学会ならではの活動ということができよう。

 本講座を編集するにあたり,いくつか留意した点がある。前述のとおり本講座は10巻で構成したが,このうち最初の9巻は,教科書として利用できるよう,ある程度学説的に固まった内容を記述することとした。また,時代の流れに追従できるよう,分野ごとの巻の割り当てを見直した。旧音響工学講座では,共通する基礎の部分を除くと,6つの分野,すなわち電気音響,建築音響,騒音・振動,聴覚と音響心理,音声,超音波から成り立っていたが,そのうち,当時社会問題にもなっていた騒音・振動に2つの巻を割いていた。本講座では,昨今の日本音響学会における研究発表件数などを考慮し,騒音・振動に関する記述を1つの巻にまとめる代わりに,音声に2つの巻を割り当てた。さらに,音響工学講座では扱っていなかった音楽音響を新たに追加すると共に,これからの展開が期待される分野をまとめた第10巻「音響学の展開」を刊行することとし,新しい技術の紹介にも心がけた。

 本講座のような音響学を網羅・俯瞰する書籍は,国際的に見ても希有のものと思われる。本講座が,音響学を学ぶ諸氏の一助となり,また音響学の発展にいささかなりとも貢献できることを,心から願う次第である。

2019年1月

安藤 彰男