騒音・振動

音響学講座 4

騒音・振動

大学院生・社会人向けの教科書として,大きく騒音,振動,低周波音の3分野に分けて解説

ジャンル
発行年月日
2020/04/13
判型
A5
予定ページ数
352ページ
ISBN
978-4-339-01364-1
騒音・振動
在庫あり

定価

5,280(本体4,800円+税)

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【書籍の特徴】
本書は音響学の中でも,日常の生活環境と密接に関係のある「騒音・振動」を扱っている。騒音や振動は,私たちの生活に身近な存在であるにも関わらず,その学問体系は極めて広く,多くの専門領域にまたがっている。そのため本書は,関係する専門領域から数学・物理学といった基礎サイエンスの専門家,応用テクノロジーとしての機械工学,建築工学,土木工学の技術者,聴覚・生理学,心理学,疫学などソーシャルサイエンスの研究者に執筆を依頼した。また,生活環境を保全し評価するうえでは,行政制度や法律の知識も必要であるため,騒音・振動行政と法律に詳しい専門家にも執筆に参加してもらった。

【各章について】
本書は,大きく分けて3つの部分で構成している。第1は騒音,第2は振動,第3は低周波音である。低周波音は騒音分野でも扱える項目であるが,人との関わりが騒音問題よりはむしろ振動問題として顕在化することが多いので別項目とした。
本書の第1章から第8章までは,騒音分野である。第1章は騒音の基礎として,騒音分野で用いる用語の定義と記号,音の伝搬理論,吸音・遮音,数値解析を扱っている。第2章では騒音の心理的,生理的,健康影響を扱っている。第3章以降第8章までは,それぞれ交通騒音,工場騒音,建設作業騒音,生活環境騒音,作業環境騒音,環境基準と法規制である。社会問題となることの多い騒音についてその特徴,対策,モデリング,予測計算と法的評価を詳しく説明している。
第9章から第12章までは振動分野である。第9章は振動の基礎として用語の定義と記号,振動伝搬理論,振動対策,家屋振動を扱っている。第10章では振動評価として全身振動ばく露と影響評価,振動ばく露の予防方法などを扱った。第11章は公害振動として,道路,鉄道,工場・事業場,建設作業の振動について,その特徴や予測・対策・評価などをまとめている。
最後の第13章は低周波音分野である。騒音・振動と同様に,用語の定義と記号から開始し,低周波音の発生源,伝搬特性,影響評価の知見をまとめた。

【著者からのメッセージ】
 本書は大学院以上の学生および社会人向けの教科書として作成した。社会人については,新しく騒音・振動の部門に配属された技術者の教科書として利用してもらいたい。また大規模な開発事業(空港・鉄道・道路・発電所,大型建物の建設など)が計画される際,環境影響評価の中で騒音・振動は重要な環境要素の一つとなる。環境影響評価の分野には物理系だけでなく,化学系,生物・生態系の専門技術者が多数いることから,これらの人にも騒音・振動の知識を学んでもらうことに念頭をおいている。さらに,本書は国や地方公共団体の環境部門のうち,騒音・振動を担当する事務系職員および技術系職員の教科書としても役立つ内容となっている。
 なお,本書は国際騒音制御工学会議(Inter-Noise)や国際音響学会議(ICA)における騒音・振動セッションを参考にして各章を構成した。したがって,国内外の研究発表会の企画・立案にも参考となるよう配慮している。

騒音・振動は,音響学の中でも広汎な学問分野を包含しており,さらなる広がりをみせている。全体像をとらえるためには,まず数学・物理学というサイエンスの基礎知識が必要である。その基礎のうえに,テクノロジーとしての機械工学,建築工学,土木工学,電気・電子工学,情報・通信工学などの分野の知識が必要となる。人と音との触れ合いに至ると,聴覚・生理学,心理学,疫学などソーシャルサイエンス分野までの知識が必要となる。さらに騒音・振動の計測・制御と人の生活環境保全・評価にかかわる面からいえば,国内外の規格や法律の知識が非常に重要となる。

本書は大学院生および社会人向けの教科書として作成した。大きく分けて3つに分類している。第1は騒音,第2は振動,第3は低周波音である。低周波音は騒音分野でも扱える項目であるが,音と人との関わりが騒音問題よりは,むしろ振動問題として顕在化することが多いので別項目とした。本書の構成は,国際騒音制御工学会議(Inter-Noise)や国際音響学会議(ICA)における騒音・振動セッション構成との関連を参考にして設定した。

まず,第1章から第8章までは騒音分野である。第1章は騒音の基礎として,騒音分野で用いる用語の定義と記号,音の伝搬理論,吸音・遮音,数値解析を扱う。第2章では騒音の心理的影響,生理的影響,健康影響を扱う。第3章から第8章までは,それぞれ交通騒音,工場騒音,建設作業騒音,生活環境の騒音,作業環境騒音,環境基準と法規制について扱い,社会問題となることの多い騒音についてその特徴,対策,モデリング,予測計算と法的評価を行う。

第9章から第12章までは振動分野である。第9章は振動の基礎として用語の定義と記号,振動伝搬理論,振動対策,各種建物の振動を扱う。第10章では振動の評価として全身振動暴露と影響評価,振動暴露の予防方法などを扱っている。第11章は公害振動として,道路,鉄道,工場・事業場,建設作業の振動について,その特徴や予測・対策・評価などをまとめている。第12章では振動の法規制を扱う。最後の第13章は低周波音分野である。騒音・振動と同様に,用語の定義と記号から開始し,低周波音の発生源,伝搬特性,影響評価の知見をまとめた。

本書は以上のような構成であるが,国際会議ではこの第4巻で扱わなかったような内容も,騒音分野のセッションとして取り入れられている。例えば,マイクロホンアレイによる計測(音響学講座第2巻),サウンドスケープ(同第10巻),音響教育(同第10巻),水中騒音と海棲生物(水中生物音響学の分野)などである。いずれも,騒音・振動の計測・予測・評価という面で重要視されている。

この第4巻の構成にあたっては,本書の著者でもある矢野隆氏と坂本慎一氏に有用なアドバイスをいただいた。各章・節の著者は,総勢約20名にのぼるが,それぞれの分野の専門家に執筆をお願いした。執筆分担は以下のとおりである。本書によって,騒音・振動についての理解を深めていただければ幸いである。
第1章橘秀樹*(1.1節),坂本慎一(1.2,1.5節),福島昭則(1.3節),尾本章(1.4節)第2章矢野隆*,桑野園子(2.1節),笹澤吉明(2.2,2.3節)
第3章坂本慎一*,篠原直明(3.1節),松本敏雄(3.2節),長倉清(3.3節)
第4章西村正治*
第5章福島昭則*
第6章横島潤紀(6.1節),平松友孝*(6.2節)
第7章笹澤吉明*
第8章横島潤紀*
第9章塩田正純*(9.1~9.3節),内田季延(9.4節)
第10章前田節雄*
第11章内田季延(11.1節),横山秀史(11.2節),塩田正純*(11.3,11.4節)
第12章横島潤紀*
第13章町田信夫*(13.1節),落合博明(13.2,13.3節)
*印:各章の代表者
2020年2月山本貢平

1.騒音の基礎
1.1 音の単位と表示
 1.1.1 物理量
 1.1.2 レベル表示
 1.1.3 感覚量
 1.1.4 環境騒音の評価指標
1.2 騒音の発生と幾何拡散
 1.2.1 点音源
 1.2.2 線音源
 1.2.3 面音源
1.3 屋外伝搬
 1.3.1 回折
 1.3.2 地表面効果
 1.3.3 空気の音響吸収
 1.3.4 気象の影響
1.4 騒音対策
 1.4.1 吸音
 1.4.2 遮音
 1.4.3 消音器
 1.4.4 能動的騒音制御手法
1.5 数値解析
 1.5.1 エネルギー音響学と波動音響学
 1.5.2 音波の波動方程式に基づく音響数値解析手法の定式化
 1.5.3 オイラーの式,連続の式と時間領域有限差分法
 1.5.4 ヘルムホルツ方程式と有限要素法,境界要素法
 1.5.5 屋外長距離伝搬の解析のためのPE法
引用・参考文献

2.騒音の影響と評価
2.1 騒音の心理的影響
 2.1.1 騒音の評価法
 2.1.2 ラウドネス,ノイジネス,アノイアンス
 2.1.3 社会調査
 2.1.4 騒音苦情
2.2 騒音の生理的影響
 2.2.1 騒音の生理的影響の概要
 2.2.2 騒音と難聴
 2.2.3 騒音と内分泌異常
 2.2.4 騒音と発達障害
2.3 騒音の健康影響
 2.3.1 騒音の健康影響の研究概要
 2.3.2 騒音と心疾患
 2.3.3 騒音と高血圧
 2.3.4 航空機騒音と動脈性高血圧
 2.3.5 職域の騒音の健康影響
 2.3.6 騒音と不眠症
引用・参考文献

3.交通騒音
3.1 航空機騒音
 3.1.1 航空機騒音の特徴
 3.1.2 航空機騒音の評価
 3.1.3 航空機騒音の予測
3.2 道路交通騒音
 3.2.1 道路交通騒音の発生要因と音源特性
 3.2.2 道路交通騒音の予測方法
 3.2.3 道路交通騒音の対策方法
 3.2.4 道路交通騒音の常時監視と総合的取組み
3.3 鉄道騒音
 3.3.1 鉄道騒音の音源
 3.3.2 鉄道騒音の発生源対策
 3.3.3 鉄道騒音の伝搬対策
 3.3.4 鉄道騒音の予測方法
引用・参考文献

4.工場騒音
4.1 工場騒音対策の考え方
 4.1.1 工場の騒音防止計画
 4.1.2 屋内外の騒音予測
 4.1.3 機械の騒音防止計画
4.2 流体騒音を主要音源とする機器
 4.2.1 流体騒音の発生メカニズム
 4.2.2 送風機からの発生音
4.3 固体加振を主要音源とする機器
 4.3.1 不釣合い慣性力による振動
 4.3.2 衝撃力による振動
 4.3.3 摺動摩擦音
 4.3.4 電磁現象による加振力
 4.3.5 流体力による振動
引用・参考文献

5.建設作業騒音
5.1 建設作業騒音の概要
5.2 音源特性
 5.2.1 A特性音響パワーレベルおよびA特性実効音響パワーレベル
 5.2.2 周波数特性
5.3 建設作業騒音の予測
 5.3.1 騒音計算の流れ
 5.3.2 伝搬計算
引用・参考文献

6.生活環境の騒音
6.1 地域の騒音
 6.1.1 近隣騒音
 6.1.2 開放型事業場騒音
 6.1.3 風車騒音
6.2 建物内の騒音
 6.2.1 建築における騒音・振動
 6.2.2 設備騒音低減対策
引用・参考文献

7.作業環境騒音
7.1 作業環境
7.2 作業環境騒音測定
7.3 作業環境騒音測定結果の評価
7.4 健康管理
7.5 健康診断結果の記録と報告
7.6 労働衛生教育
引用・参考文献

8.環境基準と法規制
8.1 環境基準
 8.1.1 騒音に係る環境基準
 8.1.2 航空機騒音に係る環境基準
 8.1.3 新幹線鉄道騒音に係る環境基準
8.2 騒音規制法
 8.2.1 工場・事業場騒音の規制
 8.2.2 建設作業騒音の規制
 8.2.3 自動車騒音の規制
8.3 環境影響評価
 8.3.1 環境影響評価法
 8.3.2 予測手法
引用・参考文献

9.振動の基礎
9.1 振動の単位と表示
9.2 振動の伝搬理論
 9.2.1 波動と土質の物理要因
 9.2.2 波動伝搬
 9.2.3 地盤種別の固有振動数
9.3 振動の防止
 9.3.1 振動防止の基本的な考え方
 9.3.2 振動発生源の振動防止
 9.3.3 伝搬経路対策
 9.3.4 受振側対策
9.4 各種建物の振動
 9.4.1 各種建物の振動要因と性状
 9.4.2 各種建物の振動測定と評価
 9.4.3 低層建物・家屋の振動性状の実態
 9.4.4 各種建物振動の予測と対策
引用・参考文献

10.振動の評価
10.1 全身振動の性質と影響
 10.1.1 国際規格による場合
 10.1.2 わが国の腰痛予防対策指針による場合
10.2 全身振動暴露による全身振動障害予防対策方法
 10.2.1 振動障害予防のための作業管理手順
 10.2.2 全身振動乗り物作業時間の管理の具体的な実施方法例
10.3 日振動暴露量A(8)に基づいた具体的なリスクアセスメントの例
10.4 今後の労働安全衛生を考えた全身振動障害予防
引用・参考文献

11.公害振動
11.1 道路交通振動
 11.1.1 道路交通振動の要因と性状
 11.1.2 道路交通振動に対する苦情実態
 11.1.3 道路交通振動の測定
 11.1.4 道路交通振動の予測と対策
11.2 鉄道振動
 11.2.1 鉄道振動の予測方法の分類
 11.2.2 実測データに基づく予測方法
 11.2.3 解析的予測方法
11.3 工場・事業場振動
 11.3.1 工場・事業場における振動発生源
 11.3.2 予測方法
11.4 建設作業振動
 11.4.1 建設作業における振動発生源
 11.4.2 予測方法
 11.4.3 発破振動の予測方法
引用・参考文献

12.振動の法規制
12.1 振動規制法の概要
12.2 工場・事業場振動の規制
12.3 建設作業振動の規制
12.4 道路交通振動の規制
引用・参考文献

13.低周波音
13.1 低周波音の定義と表示
 13.1.1 低周波音の定義と周波数範囲
 13.1.2 超低周波音・低周波音の評価指標
13.2 低周波音の発生源と伝搬
 13.2.1 低周波音の発生源
 13.2.2 低周波音の伝搬
13.3 低周波音の測定と評価
 13.3.1 低周波音の測定
 13.3.2 低周波音の影響
 13.3.3 低周波音の評価
引用・参考文献

索引

山本 貢平(ヤマモト コウヘイ)

橘 秀樹(タチバナ ヒデキ)

福島 昭則(フクシマ アキノリ)

矢野 隆(ヤノ タカシ)

桑野 園子(クワノ ソノコ)

笹澤 吉明(ササザワ ヨシアキ)

篠原 直明(シノハラ ナオアキ)

松本 敏雄(マツモト トシオ)

長倉 清(ナガクラ キヨシ)

西村 正治(ニシムラ マサハル)

横島 潤紀(ヨコシマ シゲノリ)

平松 友孝(ヒラマツ トモタカ)

塩田 正純(シオダ マサズミ)

内田 季延(ウチダ ヒデノブ)

前田 節雄(マエダ セツオ)

横山 秀史(ヨコヤマ ヒデフミ)

町田 信夫(マチダ ノブオ)

落合 博明(オチアイ ヒロアキ)

掲載日:2020/04/01

「電子情報通信学会誌」2020年4月号広告

掲載日:2020/03/04

日本音響学会 2020年春季研究発表会 講演論文集広告

「音響学講座」ラインナップ
  1. 基礎音響学
  2. 電気音響
  3. 建築音響
  4. 騒音・振動
  5. 聴覚
  6. 音声(上)
  7. 音声(下)
  8. 超音波
  9. 音楽音響
  10. 音響学の展開
「音響学講座」発刊にあたって

 音響学は,本来物理学の一分野であり,17世紀にはその最先端の学問分野であった。その後,物理学の主流は量子論や宇宙論などに移り,音響学は,広い裾野を持つ分野に変貌していった。音は人間にとって身近な現象であるため,心理的な側面からも音の研究が行われて,現代の音響学に至っている。さらに,近年の計算機関連技術の進展は,音響学にも多くの影響を及ぼした。日本音響学会は,1977年以来,音響工学講座全8巻を刊行し,わが国の音響学の発展に貢献してきたが,近年の急速な技術革新や分野の拡大に対しては,必ずしも追従できていない。このような状況を鑑み,音響学講座全10巻を新たに刊行するものである。

 さて,音響学に関する国際的な学会活動を概観すれば,音響学の物理/心理的な側面で活発な活動を行っているのは,米国音響学会(Acoustical Society of America)であろう。しかしながら,同学会では,信号処理関係の技術ではどちらかというと手薄であり,この分野はIEEEが担っている。また,録音再生の分野では,Audio Engineering Society が活発に活動している。このように,国際的には,複数の学会が分担して音響学を支えている状況である。これに対し,日本音響学会は,単独で音響学全般を扱う特別な学会である。言い換えれば,音響学全体を俯瞰し,これらを体系的に記述する書籍の発行は,日本音響学会ならではの活動ということができよう。

 本講座を編集するにあたり,いくつか留意した点がある。前述のとおり本講座は10巻で構成したが,このうち最初の9巻は,教科書として利用できるよう,ある程度学説的に固まった内容を記述することとした。また,時代の流れに追従できるよう,分野ごとの巻の割り当てを見直した。旧音響工学講座では,共通する基礎の部分を除くと,6つの分野,すなわち電気音響,建築音響,騒音・振動,聴覚と音響心理,音声,超音波から成り立っていたが,そのうち,当時社会問題にもなっていた騒音・振動に2つの巻を割いていた。本講座では,昨今の日本音響学会における研究発表件数などを考慮し,騒音・振動に関する記述を1つの巻にまとめる代わりに,音声に2つの巻を割り当てた。さらに,音響工学講座では扱っていなかった音楽音響を新たに追加すると共に,これからの展開が期待される分野をまとめた第10巻「音響学の展開」を刊行することとし,新しい技術の紹介にも心がけた。

 本講座のような音響学を網羅・俯瞰する書籍は,国際的に見ても希有のものと思われる。本講座が,音響学を学ぶ諸氏の一助となり,また音響学の発展にいささかなりとも貢献できることを,心から願う次第である。

2019年1月

安藤 彰男