新版 アクティブノイズコントロール

音響テクノロジーシリーズ 9

新版 アクティブノイズコントロール

初版発行から10年が経過し,これを機に信号処理アルゴリズム,ハードウェア,実用例について最新の情報に更新した。

ジャンル
発行年月日
2017/10/06
判型
A5 上製
ページ数
238ページ
ISBN
978-4-339-01134-0
新版 アクティブノイズコントロール
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定価

3,960(本体3,600円+税)

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  • 目次
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  • 広告掲載情報

初版発行から10年が経過し,これを機に信号処理アルゴリズム,ハードウェア,実用例について最新の情報に更新した。また,アクティブノイズコントロールの実用化の一展開として音場再現技術をとらえ,新たに1章を加えた。

人の生活において,より快適な音環境を実現することが,ますます望まれるようになってきており,機械や住宅の静粛化が重要な課題となっている。そのような静粛化には,従来,物体形状や構造を最適化したり,吸音材,遮音材,防振材などを用いる受動騒音制御(passive noise control,PNC)技術が広く用いられている。しかし,PNCでは低周波音の対策が原理的に,大きく,重く,コスト高になる欠点があり,スピーカなどのアクチュエータを作動させて消音を実現する能動騒音制御(アクティブノイズコントロール:active noise control,ANC)技術が注目されている。アクティブノイズコントロールは波長の長い低周波音に対しては,アクチュエータやセンサの個数が少なく制御も容易であり,原理的に効果的である。

アクティブノイズコントロールはよく“逆位相の音を出してもとの音をキャンセル消音する技術”といわれるが,必ずしもそれだけではなく,本書に示すようにいろいろな物理メカニズムの消音を実現するものである。アクティブノイズコントロールの基本コンセプトは1936年に特許が取得されており,古いものである。その後なかなか実用化に至らなかったが,1970年代以降の急速な電子技術とディジタル技術の進歩により,研究開発が進み,実用化されるようになってきた。しかし,まだ一般に普及し日常的に使えるところまでは至っていないと考えられる。

本書は,アクティブノイズコントロールの消音原理から,制御アルゴリズム,実用例を体系的にまとめた専門書である。本書により,アクティブノイズコントロールはどのようなメカニズムに基づいたものかを理解していただくとともに,その制御ロジック,アクティブノイズコントロールの利点,限界などを正しく理解していただければ幸いである。また多くの応用例を参考にして,種々の製品の騒音対策に活用していただくことを期待する。

1章ではアクティブノイズコントロールの概要として,その歴史や基本原理,基本構成と制御の概要,アクティブノイズコントロールの用途による分類などを述べた。2章ではアクティブノイズコントロールの物理と題して,音場の基礎方程式から,アクティブノイズコントロールの物理メカニズムについて解説した。3章ではフィードフォワード制御,フィードバック制御などアクティブノイズコントロールの制御アルゴリズムについてまとめた。4章では,ハードウェアとシステム構成と題して,制御システムを構築するうえでの留意点について述べた。センサやアクチュエータ,DSP(digital signal processor)などについては,それぞれの各専門書を参照されたい。5章ではアクティブノイズコントロールの適用例として,できるだけ多くの例を掲載した。

本書を執筆するにあたり,アクティブノイズコントロール適用例の紹介に快く同意していただいた多くの方々に感謝します。また,本書の出版の機会を与えていただいた日本音響学会およびコロナ社に対して心より感謝申し上げます。

2006年5月 著者


新版にあたって
本書の初版が発行されてから10年以上が経過した。その間に信号処理アルゴリズム,ハードウェアの進歩は著しく,また実用例も多方面に及ぶようになってきた。そこで,執筆陣を拡充し,3章:制御アルゴリズム,4章:ハードウェアとシステム構成,5章:アクティブノイズコントロールの適用例に最新の情報を取り入れた。また,近年注目を集めている音場再現技術は,アクティブノイズコントロールと類似の信号処理を行い,実用化の一展開ととらえることができる。そこで,6章:音場再現への展開を追加した。

2017年8月 著者

1. アクティブノイズコントロールの概
1.1 騒音対策とアクティブノイズコントロール
1.2 アクティブノイズコントロールの歴史
1.3 アクティブノイズコントロールの基本原理
 1.3.1 ホイヘンスの原理
 1.3.2 消音のメカニズム
1.4 アクティブノイズコントロールの基本構成と制御手法
 1.4.1 フィードフォワード制御
 1.4.2 フィードバック制御
 1.4.3 周期音の制御
 1.4.4 多チャネルシステム
1.5 アクティブノイズコントロールの用途による分類
1.6 アクティブノイズコントロールの特徴と課題
引用・参考文献

2. アクティブノイズコントロールの物理
2.1 音の干渉
 2.1.1 重ね合せの原理
 2.1.2 逆システム
2.2 音響エネルギーを反射するアクティブノイズコントロール
 2.2.1 一次元音場
 2.2.2 モノポール音源
 2.2.3 ダイポール音源
 2.2.4 トリポール音源
2.3 音響エネルギーを低減するアクティブノイズコントロール
 2.3.1 共鳴の制御
 2.3.2 音響放射の制御
2.4 流体の基礎方程式
 2.4.1 連続の方程式
 2.4.2 オイラーの方程式(流体の運動方程式)
 2.4.3 エネルギー保存則
2.5 音の基礎方程式
 2.5.1 波動方程式
 2.5.2 グリーン関数と点音源
 2.5.3 音響エネルギー
 2.5.4 瞬時音響インテンシティと複素音響インテンシティ
 2.5.5 キルヒホッフ-ヘルムホルツ積分方程式
2.6 三次元音場におけるアクティブノイズコントロールの物理
 2.6.1 ホイヘンスの原理に基づいたアクティブノイズコントロール
 2.6.2 境界音場制御の原理に基づいたアクティブノイズコントロール
2.7 まとめ
引用・参考文献

3. 制御アルゴリズム
3.1 適応アルゴリズムの基礎
 3.1.1 FIR型適応ディジタルフィルタ
 3.1.2 最急降下法
 3.1.3 LMSアルゴリズム
 3.1.4 その他のアルゴリズム
3.2 広帯域フィードフォワード制御
 3.2.1 広帯域フィードフォワード制御の基本構成
 3.2.2 filtered-XLMS(FXLMS)アルゴリズム
 3.2.3 一般的なフィードフォワード制御システムと制御効果
 3.2.4 二次経路推定手法
3.3 周期性をもつ雑音に特化した制御アルゴリズム
 3.3.1 外部同期型アルゴリズムI:WS
 3.3.2 外部同期型アルゴリズムII:SFX
 3.3.3 自己同期型アルゴリズム:DXHS
 3.3.4 適応ノッチフィルタを利用した制御:SAN
3.4 多入力多出力システム
 3.4.1 MEFX-LMSアルゴリズム
 3.4.2 ES-LMSアルゴリズム
 3.4.3 周期性騒音の多チャネル制御アルゴリズム
 3.4.4 多点逆フィルタ理論
 3.4.5 quietzone
3.5 フィードバック制御
 3.5.1 フィードフォワード制御との対比
 3.5.2 フィードバック制御システムの基礎
 3.5.3 状態変数表現による制御系設計
 3.5.4 IMC構成によるフィードバック制御
3.6 バーチャルセンシング
3.7 アルゴリズムの選択
引用・参考文献

4. ハードウェアとシステム構成
4.1 アナログシステム
 4.1.1 ラプラス平面
 4.1.2 回路理論
 4.1.3 システムの安定性
 4.1.4 ラプラス平面の幾何学的理解
 4.1.5 ナイキスト安定判別法
 4.1.6 フィードバック制御システムの安定性
4.2 ディジタルシステム
 4.2.1 DSPの一般的なアーキテクチャ
 4.2.2 設計手順
4.3 アクティブノイズコントロールシステムの設置手順
 4.3.1 アクチュエータとセンサの設置方法
 4.3.2 コヒーレンス
 4.3.3 因果律
 4.3.4 フィルタタップ長
4.4 アクティブノイズコントロールシステムのモジュール化
 4.4.1 複数の誤差信号をもつフィルタの性質
 4.4.2 モジュール化の利点
4.5 FPGAを用いた高速信号処理
 4.5.1 高速信号処理の必要性
 4.5.2 FPGAコントローラの試作試験例
4.6 まとめ
引用・参考文献

5. アクティブノイズコントロールの適用例
5.1 ダクト消音への適用例
 5.1.1 空調ダクト用アクティブノイズコントロール
 5.1.2 ガスタービン排気音用アクティブノイズコントロール
 5.1.3 ディーゼルエンジン排気音用アクティブノイズコントロール
 5.1.4 送風機用アクティブノイズコントロール
5.2 耳元のアクティブノイズコントロール
 5.2.1 アクティブノイズコントロール付きヘッドセット
 5.2.2 クワイエットチェア
 5.2.3 MRI騒音向けアクティブノイズコントロール
5.3 車内・機内音のアクティブノイズコントロール
 5.3.1 航空機機内音のアクティブノイズコントロール
 5.3.2 建設機械キャブ内音のアクティブノイズコントロール
 5.3.3 自動車車内音のアクティブノイズコントロール
5.4 音場境界の制御
 5.4.1 アクティブノイズコントロールによる壁吸音率の制御
 5.4.2 アクティブノイズコントロールによる防音壁回折音の制御
 5.4.3 アクティブノイズコントロールによる壁透過音の制御
 5.4.4 アクティブ音響シールディング
5.5 空力自励音の制御
5.6 その他の試み
 5.6.1 ボイスシャッター
 5.6.2 パラメトリックスピーカを用いたアクティブノイズコントロール
引用・参考文献

6. 音場再現への展開
6.1 理論
 6.1.1 音場制御理論の歴史的背景
 6.1.2 キルヒホッフ-ヘルムホルツ積分方程式の物理的解釈
 6.1.3 二つの音場の相等性
6.2 音場再現システム
 6.2.1 音圧による音場再現
 6.2.2 離散点制御による二つの音場の相等性
 6.2.3 音場再現システムの実現
 6.2.4 逆システムの設計法
6.3 システムの実装
 6.3.1 BoSCマイクロホン
 6.3.2 音響樽
 6.3.3 小型ディジタルアンプの開発
6.4 システムの性能評価
 6.4.1 物理評価
 6.4.2 音像定位実験
 6.4.3 三次元音場による実在感の心理・生理評価
6.5 音響樽の応用
 6.5.1 音場シミュレータ
 6.5.2 サウンドテーブルテニス
 6.5.3 音場共有システム
6.6 まとめ
引用・参考文献

索引

西村 正治(ニシムラ マサハル)

宇佐川 毅(ウサガワ ツヨシ)

掲載日:2022/07/04

「日本音響学会誌」2022年7月号広告

掲載日:2021/12/27

「日本音響学会誌」2022年1月号広告