ミュージックメディア

メディア学大系 9

ミュージックメディア

音楽文化とメディアの関わりに加え,音楽産業がどのようなしくみになっているのか,さまざまな音楽表現のあり方についてまとめた。

ジャンル
発行年月日
2016/09/26
判型
A5
ページ数
240ページ
ISBN
978-4-339-02789-1
ミュージックメディア
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【読者対象】
音楽に関心を持つ学生。特に音楽のコンテンツ制作や流通を学びたい学生。

【書籍の特徴】
「音楽が好き」「いつも聞いている」と思っている人に、自分の音楽生活がどのような歴史、技術、制度、そして表現方法を背景に成り立っているのかを分かりやすく伝えること、そこから改めて自分の音楽生活を振り返ることで、大学生として音楽とより楽しく、知的なつきあい方をしてもらえるようになって欲しいと思い本書を書きました。何気なく聴いて楽しんでいる音楽がどのような技術やアイデアで作られ、耳元まで届いているのか、その仕組みはどのようになっているのかをわかりやすく説明しています。

【各章について】
本巻は大きく分けて二つのパートから構成されています。 1章から4章までは音楽メディアの技術的変遷と音楽コミュニケーションの変化を説明しています。 1、2章では、楽譜から,音楽ファイルまで音楽メディアの変遷を説明しています。 3章では、音楽文化の中核である日本の音楽産業の現状を、その産業構造と制度とテクノロジーの変化を踏まえて概観しています。 4章では、音の物理的特性とそれが人の耳に届けられる基本的なプロセスを解説しています。
つづく5章から8章までは、音楽表現で不可欠な音楽理論を分かりやすく説明しています。 5章では、音を音楽にするための、音高の秩序のある規則性や 構成原理の歴史を解説しています。 6章以下では「音楽の三要素」をそれぞれ解説しています。 6章では、「リズム」の組織化の原理を人間の内面で心理的に生起する拍子感との関係から、7章では、「メロディ (メロディー)」をその形式や展 開に着目することから, 8章では、西洋音楽で高度に発展した「ハーモニー」 に注目し音楽の構成技法の根本的な思想と理論を解説しています。

【著者からのメッセージ】
私たちの日常生活では音楽があふれています。音楽を耳にしない日はないでしょう。耳にする音楽は誰かが作ったものですが、音楽を作った人、演奏している人はそこにはいません。音楽があふれる日常生活とは、時間と空間を共にしない誰かが作り出した音楽を、「メディア」の仲立によって経験したものである、と言っても過言ではないでしょう。これまで人は見えない誰かに向けて、どのようにメディアを使って音楽を作り伝えたのでしょうか。音楽のメディアの変容は、伝え方や音楽の価値をどのように変えたのでしょうか。そして私たちの音楽生活はどのように成立していったのでしょうか。この本を通じて、これまでの音楽経験では見えない部分を理解することで、ありふれた音楽生活をより有意義な経験にしてもらえることを願ってやみません。

1.音楽文化と楽譜
1.1 メディアと音楽文化 
1.2 記譜法の発達 
1.3 音楽の商業化と芸術化の進展 
 1.3.1 音楽の商業化とイデオロギーとしての芸術化 
 1.3.2 音楽作品の重要性とアーティストの神格化 
1.4 音楽メディアの作品化と音楽著作権 
 1.4.1 音楽著作権の誕生 
 1.4.2 コピーライトとオーサーズライト 
1.5 世界音楽経済システムの誕生 
演習問題 

2.音楽文化と音響技術
2.1 技術の社会的配分と世界音楽経済システムの強化 
 2.1.1 録音・再生・複製技術の社会的受容と再配分 
 2.1.2 音楽制作とテクノロジー 
2.2 レコード作品における同一性の解体 
 2.2.1 DJイングの意義 
 2.2.2 ラップの商業化と世界音楽経済システムとのコンフリクト 
 2.2.3 マルチモーダル化する音楽 
2.3 ディジタル化と世界音楽経済システムの動揺 
 2.3.1 ディジタル化による世界音楽経済システムの動揺 
 2.3.2 アーカイブとしてのインターネットと創作活動の活発化 
 2.3.3 世界音楽経済システムの危機? 
 2.3.4 ソーシャル化する音楽 
2.4 音楽メディアと音楽文化のこれから 
演習問題 

3.音楽産業とメディア
3.1 レコード産業に関わる人々 
 3.1.1 音楽を作る人 
 3.1.2 音楽を売る人 
 3.1.3 音楽で儲かる人 
 3.1.4 メジャー以外の音楽活動 
3.2 日本における音楽著作権管理 
 3.2.1 著作権管理事業とは 
 3.2.2 著作権使用料の分配方法 
 3.2.3 著作隣接権の管理 
3.3 レコード産業とオーディオ産業 
 3.3.1 LPレコードの登場とオーディオ産業の始まり 
 3.3.2 CD発売とディジタル化が音楽産業に与えた影響 
 3.3.3 音楽ソフトの生産金額推移 
3.4 電子楽器の変遷と音楽産業への影響 
 3.4.1 モジュラー・シンセサイザーの登場と普及 
 3.4.2 シンセサイザーのディジタル化 
3.5 音楽制作環境の変化 
 3.5.1 マルチトラックレコーディング 
 3.5.2 MTRを活用したライブパフォーマンス 
 3.5.3 ディジタル録音の時代 
 3.5.4 コンピュータによる音楽制作 
3.6 音楽産業とメディア 
 3.6.1 メディアの変遷と音楽産業 
 3.6.2 インターネットの普及と音楽産業への影響 
演習問題 

4.音
4.1 音の伝播 
4.2 波形の表示 
4.3 音の分類 
4.4 音の属性と波形による表示 
4.5 倍音 
4.6 複合音と倍音構成 
演習問題 

5.楽音の組織化
5.1 音律 
5.2 ピュタゴラス音律 
5.3 純正律 
5.4 中全音律 
5.5 平均律 
 5.5.1 長所と短所 
 5.5.2 普及の背景 
5.6 音階 
 5.6.1 長音階の構成 
 5.6.2 短音階の構成 
5.7 旋法 
演習問題 

6.拍子・リズム
6.1 パルスと拍 
6.2 拍子と拍節 
 6.2.1 定義と特徴 
 6.2.2 エネルギーの周期変化としての拍子 
6.3 リズム 
 6.3.1 リズムの形成 
 6.3.2 「拍節的リズム」と「自由リズム」 
6.4 拍節から逸脱するリズム 
 6.4.1 シンコペーション 
 6.4.2 拍節との関係性によるシンコペーションの生成と消失 
 6.4.3 シンコペーションとテンポ 
 6.4.4 そのほかのシンコペーション 
 6.4.5 ヘミオラ 
6.5 複数のリズムの位相変化によって生じる現象 
演習問題 

7.メロディ
7.1 メロディが内包する要素 
7.2 音の進行 
 7.2.1 反復と変化 
 7.2.2 音高線におけるコントラスト 
7.3 動機(モティーフ) 
 7.3.1 動機と部分動機 
 7.3.2 動機の構成 
 7.3.3 動機の諸形態 
7.4 楽節 
 7.4.1 小楽節 
 7.4.2 小楽節の諸形態と作例 
 7.4.3 大楽節 
 7.4.4 大楽節の諸形態と作例 
 7.4.5 実作品に見る大楽節の諸形態 
 7.4.6 大楽節の実際的な形態 
 7.4.7 大楽節と楽曲形式 
7.5 メロディの展開 
 7.5.1 フレーズの変形 
 7.5.2 クライマックスの形成 
演習問題 

8.ハーモニー
8.1 和音と和声 
8.2 和音の構成と和音表記法 
 8.2.1 三和音の基本形とその構成 
 8.2.2 三和音の転回形 
 8.2.3 三和音の表記法 
 8.2.4 七の和音の構成と表記法 
8.3 和音の機能 
 8.3.1 和音と調の関係性 
 8.3.2 主要三和音における機能とカデンツ 
 8.3.3 各和音の機能と終止 
8.4 メロディとハーモニーの関係 
 8.4.1 和声音と非和声音 
 8.4.2 非和声音の種類 
演習問題 

引用・参考文献 
索引

大山 昌彦

大山 昌彦(オオヤマ マサヒコ)

子どもの頃から音楽に親しんできましたが、研究しようと思ったきっかけは、文化人類学を学んでいた大学時代、当時好きだったアメリカの黒人音楽であるブルースの誕生をテーマにしたことでした。ブルースが当時の黒人の経験から産まれた民謡のような草の根的な音楽文化であるとともに、レコードというメディアによっても広まったテクノロジーが基盤となる現代の音楽文化にも通じるところがありました。
 好きな音楽を研究対象にできることに喜びを感じたことから、大学院に進みました。大学院からは音楽それ自体よりも、人々の音楽経験に注目し、どのように音楽文化が形成され維持されていくのかについて研究を続けています。そのなかで、明らかにしてきたのは、音楽が個人的な経験でありながら、社会の複雑な網の目のなかで音楽文化が存在しているということです。現代の音楽文化は、多様なメディアを使った間接的なコミュニケーションと、音楽に惹かれて集まり同じ場で経験する直接的なコミュニケーションが複雑に絡み合うことがその存立基盤になっています。本書を通じて、みなさんの音楽の経験を入り口に、広く現在の社会の様相を知る機会につながれば幸いです。

伊藤 謙一郎

伊藤 謙一郎(イトウ ケンイチロウ)

私は高校時代、部活でバンド活動に明け暮れていました。その中で特にジャズやフュージョンといったジャンルの音楽に心惹かれ、まずはピアノを弾けるようになりたいと思い、ピアノ専攻で短大に入りました。配属クラスの担任が作曲家だったことから、いわゆる「現代音楽」と呼ばれるものを初めて耳にし、その後、大学と大学院では作曲を専門に学びました。

このように遅まきながら音楽理論に触れていったのですが、音楽経験に乏しい身には常に「なぜ」という疑問がついてまわり、理解にとても苦労しました。そこで、本書の執筆にあたっては自身の体験を踏まえ、単に用語の解説にとどまらず、その成り立ちや背景も盛り込むことで理解が深められるよう配慮しました。

ここ数十年での情報機器やインターネットの目覚ましい発達は、音楽の制作手法や聴取のプロセスを大きく変えただけでなく、さまざまな領域との融合の可能性をもたらしました。この流れはとどまることなく、今後さらに多様化していくことでしょう。本書で扱っている音楽理論は西洋音楽の一側面に過ぎませんが、私たちを取り巻く音楽を理解する手がかりの一助となれば著者としてこの上ない喜びです。

吉岡 英樹

吉岡 英樹(ヨシオカ ヒデキ)

アメリカの音楽大学でシンセサイザーやコンピュータ音楽を学び、その後日本の音楽業界で働きました。当時は音楽業界の売上がピークで、有名なアーティストであればCDアルバムが数百万枚も売れる時代でした。しかし同時に、デジタルオーディオやインターネットが普及し、音楽産業や制作現場の様子が変わっていく様子を目の当たりにしました。
実は、コンテンツ産業の中でも、音楽産業は技術革新の影響をより早く受ける傾向にあります。音声データのみを扱うため、情報量が少ないのが理由だと考えられます。つまり、情報を媒介するメディアの変遷と共に、音楽産業は大きな変化をより早く強いられたと言えます。ラジオやテレビからインターネットへ、レコードやCDから音楽配信へと、音楽の発信方法だけでなく聞き方も変化しました。また、テープレコーダーなど沢山の機材を使って音楽を制作していた時代から、コンピュータが1台あれば誰でも音楽を作ることが出来る時代になったのです。
私がシンセサイザーやコンピュータ音楽を学んだ時は、それらが最先端技術でしたが、その後次々と新しいテクノロジーが登場しました。次の時代に何が起こるのかを予見するには、歴史を知ることがとても重要になります。音楽産業や制作手法がどのように変化したかを知ることにより、これからのコンテンツ産業がどのように進化するのかを予見して、新しいコンテンツ・ビジネスを生み出す参考になれば嬉しいです。

掲載日:2022/03/28

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掲載日:2021/05/27

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掲載日:2021/05/06

日本音楽表現学会 第19回(天翔るペガサス)大会要項

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