マルチメディアシステム概論 - 基礎技術から実用システム,VR・XR まで -

マルチメディアシステム概論 - 基礎技術から実用システム,VR・XR まで -

マルチメディア(文字,音声,音楽,画像,映像などの情報)の伝達・記録を解説

ジャンル
発行年月日
2024/10/11
判型
A5
ページ数
216ページ
ISBN
978-4-339-02947-5
マルチメディアシステム概論 - 基礎技術から実用システム,VR・XR まで -
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定価

3,080(本体2,800円+税)

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【書籍の内容】
今後のマルチメディア学,マルチメディアシステム技術を担う人材を育成するには,その重要な要素技術群の基礎を広くしっかりと習得することが望まれる。また,この20年の間,マルチメディアシステムではパーソナル化が大きく進展した。これらを意識し,本書は次のような構成を取っている。
(1) 聴覚,音声,視覚などの人間要因とその定量化手法
(2) 現在のディジタル技術の理解に有用なアナログ技術
(3) 信号のディジタル化の基礎,CDにおける音信号ディジタル表現技術
(4) 音響信号処理,画像信号処理の両者で比較的似通った技術要素が用いられる情報圧縮信号処理技術
(5) 人間と機械のインタラクションを支えるインタフェースとVR技術

【書籍の特徴】
アナログ技術については,現在のディジタル技術との関連を重視し,実用システムに用いられる基本技術には革命的な変転は起こりにくいことも意識し,必要な基礎的技術についてはしっかり記述する。
さらにディジタル技術をなるべく系統的に述べ,抽象論に陥らないために要素技術の項目ごとに,標準化された技術による実際のシステムの例を示す。また視野の広い理解を狙い,個々の技術について,まず音響信号,続いて画像信号への応用を述べて比較する。
また,教科書に必須の演習問題はレポート課題の形式とし,本書の範囲をやや超える課題を設定することにより,さらに進んだ技術探求の指針とすることとした。そのため,参考文献としては,論文の類よりは比較的参照しやすい書籍を優先して取り上げるようにした。

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

文字,音声,音楽,画像,映像などのメディア情報を伝達,記録するシステムは個別に発達してきた。例えばアナログテレビジョン放送技術は,音響信号部が類似システムのFM放送技術に似ているが多少異なる。ディジタル技術標準化の古典といえるCDは音響信号のみのディジタル化であったが,MPEGシステムに至って音響と動画像が同じ組織で技術の標準化が進められ,合理的に共存するようになった。

このようなマルチメディアシステムへの流れはその後も進み,現在,われわれは,モバイルデバイスを典型とする高度なマルチメディアシステムが創り出す情報環境のなかで日々の生活を送っている。

マルチメディアシステムは今後も比連続的な進化も伴って進歩し続けることが期待される。しかし,この分野でも,多くの工学分野と同様に専門分化が進んでいる。例えば,本分野の大きな要素である画像技術と音響技術は,いまだにそれぞれ別の専門家,別の学会から構成されている。

そのため,今後のマルチメディア学,マルチメディアシステム技術を担う人材を育成するには,その重要な要素技術群の基礎を広くしっかりと習得することが望まれる。これを意識し,本書は次のような構成を取っている。
(1)聴覚,音声,視覚などの人間要因とその定量化手法
(2)現在のディジタル技術の理解に有用なアナログ技術
(3)信号のディジタル化の基礎,CDにおける音信号ディジタル表現技術
(4)音響信号処理,画像信号処理の両者で比較的似通った技術要素が用いられる情報圧縮信号処理技術
(5)人間と機械のインタラクションを支えるインタフェースとVR技術
  本書を一年間の講義の教科書として使われる場合には,これらを例えば(1)~(3)を前期に,(4)と(5)を後期に講ずることが考えられよう。

執筆に当たって次を心がけた。アナログ技術については,現在のディジタル技術との関連を重視し,実用システムに用いられる基本技術には革命的な変転は起こりにくいことも意識し,必要な基礎的技術についてはしっかり記述する。さらにディジタル技術をなるべく系統的に述べ,抽象論に陥らないために要素技術の項目ごとに,標準化された技術による実際のシステムの例を示す。また視野の広い理解を狙い,個々の技術について,まず音響信号,続いて画像信号への応用を述べて比較する。このような対比は,短時間でわかりやすく述べるのになかなか有効であり,ささやかながら音響にも画像にも詳しいエンジニアを育てる一助となるかもしれない。

マルチメディアシステムの変化は早い。しかし観点を変えると,こうしたダイナミズムこそが隆盛を極めているこの産業分野の特徴ともいえる。そこで,教科書に必須の演習問題はレポート課題の形式とし,本書の範囲をやや超える課題を設定することにより,さらに進んだ技術探求の指針とすることとした。そのため,参考文献としては,論文の類よりは比較的参照しやすい書籍を優先して取り上げるようにした。

マルチメディアシステム技術はきわめて広範であり,包含できなかった重要技術も多い。読者諸兄姉は本書に詳述されていない技術分野については別の解説書を友として,併せて追求していただければと考える。本書は,大賀を著者とする『マルチメディアシステム工学』(コロナ社,2004)を基盤としている。それから20年,モバイル網のグローバルな展開を基盤とする電話システムの変化は劇的であった。本書はこのような20年間の急激かつ劇的な変化に対応して内容の大幅な取捨選択と加筆により全編を改稿した。

著者らは本書が教科書として受け入れられることを期待したい。誤りや不具合な記述のご叱正,さらには改善のご提案などを,本書関連分野の利につながるものとお考えのうえ,よろしくお願い申し上げる次第である。

2024年8月
大賀寿郎・鈴木陽一

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

1. 基本的な事項
1.1 マルチメディアシステムとは何か
 1.1.1 コンテンツとメディア
 1.1.2 マルチメディアの概念
1.2 物理量と波
 1.2.1 基本となる物理量
 1.2.2 電磁波と音波
1.3 マルチメディア信号の取扱い
 1.3.1 信号の次元
 1.3.2 時間領域と周波数領域
 1.3.3 時間周波数と空間周波数
1.4 人の心理現象の定量化法
 1.4.1 心理量の尺度化
 1.4.2 心理現象の性質とウェーバー・フェヒナーの法則
 1.4.3 評定尺度法(オピニオン評価)
 1.4.4 精神(心理)物理学的測定法
レポート課題

2. 音声と音楽,聴覚と視覚
2.1 人の音声と音楽信号
 2.1.1 音声生成部の構造と音声の大きさ
 2.1.2 音響信号としての母音と子音
 2.1.3 音声聴取能の評価
 2.1.4 音響信号としての音楽
2.2 人の聴覚機能
 2.2.1 耳の構造:マイクロフォンとの対比
 2.2.2 耳に聞こえる音の大きさと高さ
 2.2.3 聴覚マスキング
 2.2.4 両耳効果とステレオホニック
2.3 人の視覚機能
 2.3.1 目の構造:カメラとの対比
 2.3.2 目の分解能
 2.3.3 目の感度特性
 2.3.4 色感と三原色
 2.3.5 フリッカの感覚
2.4 人のマルチモーダル感覚情報処理機能
 2.4.1 視聴覚情報のマルチモーダル知覚の基本特性
 2.4.2 腹話術効果
 2.4.3 通過反発事象
 2.4.4 空間における視覚と聴覚情報の同時判断
 2.4.5 読唇効果
 2.4.6 マガーク効果
2.5 システム設計における人の感覚の性質への留意点
レポート課題

3. アナログシステム技術
3.1 音響信号のアナログ伝送とラジオおよび電話
 3.1.1 AMと中波放送
 3.1.2 DSB,SSB,VSBと周波数分割多重電話伝送システム
 3.1.3 FMと超短波ステレオラジオ放送
3.2 動画像のアナログ伝送とテレビジョン
 3.2.1 放送すべき信号の周波数成分と音響信号
 3.2.2 画像信号の走査と同期
 3.2.3 輝度信号と色度信号
 3.2.4 高精細度テレビジョン(HDTV)
3.3 音響信号のアナログ記録とカセットテープシステム
 3.3.1 音響信号の記録と磁気記録
 3.3.2 カセットテープシステム
3.4 動画像のアナログ記録とビデオカセットテープシステム
 3.4.1 回転ヘッド方式
 3.4.2 VHSビデオカセットテープ方式
レポート課題

4. 線形ディジタルシステム
4.1 なぜディジタルシステムを用いるか
4.2 音声,音響信号のディジタル化とコンパクトディスク(CD)
 4.2.1 標本化
 4.2.2 量子化
 4.2.3 CDのハードウェア
 4.2.4 CDの信号記録方式とインタリーブ
 4.2.5 符号付加による誤り訂正方式
 4.2.6 CDの記録内容と発展
4.3 音声信号のPCM伝送:24チャネルPCM方式
 4.3.1 音声信号の標本化と量子化:信号の圧伸
 4.3.2 時分割多重方式によるディジタル伝送
4.4 画像信号のディジタル化とコンピュータ内の画像信号
 4.4.1 二次元画像の空間周波数
 4.4.2 二次元静止画像の標本化と量子化
 4.4.3 二次元動画像の標本化
 4.4.4 コンピュータでの画像信号の取扱い
4.5 PCMを基礎とした種々のディジタル方式
 4.5.1 オーバサンプリング
 4.5.2 Δ_Σ変調
 4.5.3 正弦波のディジタル変調
 4.5.4 OFDM
レポート課題

5. 信号適応ディジタルシステム技術
5.1 時間領域の処理
 5.1.1 DPCM
 5.1.2 ADPCM
5.2 周波数領域の処理
 5.2.1 周波数領域における基本的な分析
 5.2.2 MPEGオーディオ方式の基本構成
 5.2.3 写像
 5.2.4 聴覚心理モデルによる情報圧縮
 5.2.5 ビットストリーム
 5.2.6 品質評価
5.3 音声に特化した信号処理ディジタル伝送とモバイル電話
 5.3.1 ボコーダ:CELPの基盤となった技術
 5.3.2 CELPの基本構成と種類
 5.3.3 品質評価
 5.3.4 音声符号化方式の発展
 5.3.5 モバイル電話システム
5.4 静止画像のディジタル記録とディジタルカメラ
 5.4.1 エントロピー符号化
 5.4.2 直交符号化
 5.4.3 ディジタルカメラシステム
5.5 凸レンズの定数
5.6 動画像のディジタル伝送と記録と地上ディジタル放送
 5.6.1 動画像のための予測符号化
 5.6.2 MPEGビデオ符号化方式
 5.6.3 伝送される情報の構成
 5.6.4 地上ディジタルテレビジョン
5.7 光ディジタルディスクシステム
 5.7.1 光ディスクシステムの進化
 5.7.2 ディジタル多目的ディスク(DVD)システム
 5.7.3 ブルーレイ(Blue-ray)ディスクシステム
 5.7.4 多層構成による大容量化
 5.7.5 オーディオ信号専用の大容量ディスクシステム
 5.7.6 書込みできる光学ディスクシステム
レポート課題

6. ヒューマンマシンインタラクションとVR
6.1 インタフェースとユーザインタフェース
6.2 ユーザインタフェースの変遷
6.3 GUIによるユーザインタフェースの刷新
 6.3.1 GUIの発明とコンピュータへの導入
 6.3.2 GUIを構成する部品
 6.3.3 GUIの特徴
6.4 インタフェースハードウェア技術
6.5 インタフェースからインタラクションへ
6.6 バーチャルとバーチャルリアリティ
 6.6.1 バーチャルリアリティ(VR)の意味するもの
 6.6.2 VRを構成する技術とシステム化
6.7 VRの発展形
 6.7.1 MRとAR
 6.7.2 SRとDR,XR
 6.7.3 今後への展望
レポート課題

引用・参考文献
あとがき
索引

大賀 寿郎(オオガ ジュロウ)

鈴木 陽一(スズキ ヨウイチ)

掲載日:2024/08/27

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