音響学の展開

音響学講座 10

音響学の展開

音響学における新分野を通して,音響学の広がりや多様性を感じることのできる一冊

ジャンル
発行予定日
2021/08/上旬
判型
A5
予定ページ数
304ページ
ISBN
978-4-339-01370-2
音響学の展開
近刊

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介

本書では,音響学における新分野(熱音響,アコースティック・イメージング,音バリアフリー,音のデザイン,音響教育,生物音響)を紹介することで,音響学の諸分野を俯瞰する。音響学の広がりや多様性を感じることのできる一冊。

★発行前情報のため若干変更されることがございます。ご了承ください。★

日本音響学会編の「音響学講座」は,音響学の諸分野を体系的に網羅し,今後の音響学の発展に寄与するべく立案された。また,教科書としての用途も考慮して,ある程度学説的に固まった内容を記述することとした。本書は,この2つの方針のバランスをとるため企画されたものであり,後者の方針からはやや逸脱するかもしれないが,新しい分野を紹介することにより,音響学の諸分野を俯瞰することを目的としている。本書で紹介する分野は,熱音響,アコースティック・イメージング,音バリアフリー,音のデザイン,音響教育,そして生物音響である。もちろん,これで,最近の多様化する分野のすべてを網羅しているわけではない。個別の新しいトピックについては,同じく日本音響学会が刊行する「音響テクノロジーシリーズ」や「音響サイエンスシリーズ」に委ねたい。

さて,第1章は,音響学と熱力学の関わりについて記述する。音は,媒質の微小振動として伝搬していくが,その伝搬は,熱力学的には断熱過程として近似されるのが一般的である。これに対して,熱音響の分野では,音波の媒質と隣接する物体との熱交換を扱う。特にこの章では,熱音響の物理学的な基礎と,熱音響現象を応用したシステムについて記述する。

アコースティック・イメージングとは,目で見ることができない音響伝搬の現象の可視化や,音波を用いたセンシング技術を扱う分野である。第2章では,反射物などがある空間での音の伝搬を可視化するため,その伝搬の様子を計算するシミュレーション技術と,音波の反射や散乱を用いたセンシング技術について解説する。特に,前者としてFDTD(finite difference timedomain)法について述べ,後者としては医用超音波断層像の技術を扱う。

近年,バリアフリーという言葉をよく聞くようになった。これは,身体的などの理由によって健常者との間で生じる障壁(バリア)をなくそうという概念であろう。第3章では,音に関するバリアをなくすための技術について述べる。特に,音声,電気音響,聴覚,騒音・振動,建築音響という5つの音響学の分野を取り上げ,各分野におけるバリアフリーへの取組みを紹介する。

環境音や工業製品が発する音など,われわれの生活は音に満ちている。そしてわれわれは,音を聴くことによって,ときに快や不快の感情を抱く。第4章では,人間の感性に基づいて音をデザインする技術について述べる。特に,環境音,製品音,サイン音,電子音楽における音のデザイン技術を紹介する。

音響教育は,音響学に関する教育のみならず,音を用いた教育や音を聴く能力の教育をも含んだ分野である。第5章では,音の聴き取り能力を向上させるための教育法や,音に関する学習を支援するe-Learningについて解説する。また,音響教育における教育工学的手法の導入についても記述する。

音響学における聴覚の分野は,ヒトの聴覚に関する研究を扱う分野である。一方,当然ながらヒト以外の生物も聴覚能力を持つ。生物音響は,ヒト以外の生物について,聴覚系や発声・発音系を中心とした研究を行う分野である。特に,第6章では,コウモリやイルカなど,自らが発した音の反射を利用して,周囲の物体を認識するメカニズムや,鳥類や昆虫類の音によるコミュニケーションなども解説する。

本書は,以上述べたとおり,多岐にわたる内容を含んでいる。読者の方々には,本書により,音響学の広がりや多様性を味わっていただければ幸いである。

なお,本書の担当編集委員は,以下のとおりである。
  坂本 眞一  熱音響(第1 章)
  秋山いわき  アコースティック・イメージング(第2 章)
  及川 靖広  音響バリアフリー(第3 章)
  寺澤 洋子  音のデザイン(第4 章)
  佐藤 史明  音響教育(第5章)
  松尾 行雄  生物音響(第6 章)

また,執筆分担は以下のとおりである。各領域で優れた実績を持つ方々に執筆を担当していただけたことに,編著者として感謝している。
  坂本 眞一 第1章   折野裕一郎 第1章
  秋山いわき 第2章扉   佐藤 雅弘 2.1節
  長谷川英之 2.2節   及川 靖広 第3章扉,3.3節
  中村健太郎 3.1節   荒井 隆行 3.2節
  白石 君男 3.4節   上田 麻 3.5節
  寺澤 洋子 第4章扉   岩宮眞一郎 4.1節,4.4.1,4.4.2項,4.5節
  船場ひさお 4.2節,4.4.3,4.4.4項   川上 央 4.3節,4.4.5,4.4.6項
  佐藤 史明 第5章扉   河原 一彦 5.1節
  須田 宇宙 5.2節   西村 明 5.3節
  松尾 行雄 第6章扉,6.1節   加我 君孝 6.2節
  香田 啓貴 6.3.1,6.6.1項   関 義正 6.3.2,6.6.2項
  高梨 琢磨 6.3.3,6.6.3項   芦田 剛 6.4節
  赤松 友成 6.5.1,6.5.3項   力丸 裕 6.5.2,6.7.2項
  相馬 雅代 6.6.2項   向井 裕美 6.6.3項
  眞辺 一近 6.7.1項

2021年7月
安藤彰男

★発行前情報のため若干変更されることがございます。ご了承ください。★

1.熱音響
1.1 熱音響現象とは
1.2 熱音響現象の物理
 1.2.1 音波とエネルギーの流れ
 1.2.2 熱音響現象の線形理論
 1.2.3 エネルギー流と空間変化
1.3 熱音響システムの基本要素
 1.3.1 作業流体
 1.3.2 スタック
 1.3.3 熱交換器
 1.3.4 導波管
1.4 熱音響システムの基本構造と具体例
 1.4.1 熱音響システムの基本構造
 1.4.2 エネルギー変換の効率化
 1.4.3 低温度発振
 1.4.4 小型化
 1.4.5 サイレンサ
引用・参考文献

2.アコースティック・イメージング
2.1 音のシミュレーション
 2.1.1 音波の基本式
 2.1.2 FDTD法による定式化
 2.1.3 初期条件と境界条件
 2.1.4 安定条件
 2.1.5 速度分散とグリッド分散
 2.1.6 プログラムコードの説明
2.2 音のイメージング
 2.2.1 医用超音波断層像の時間分解能
 2.2.2 超高速超音波イメージング法の原理
 2.2.3 超高速超音波イメージングの応用
引用・参考文献

3.音バリアフリー
3.1 音バリアフリーの考え方
 3.1.1 音バリアフリーの背景
 3.1.2 音バリアフリーとは
3.2 音声分野の音バリアフリー
 3.2.1 聞こえのバリアフリー
 3.2.2 発話時のバリアフリー
 3.2.3 音声を利用したバリアフリー
 3.2.4 学際的な連携
3.3 電気音響分野の音バリアフリー
 3.3.1 電気音響分野に関係する技術発展
 3.3.2 無線伝送を用いた補聴システム
 3.3.3 補聴器の低遅延技術
 3.3.4 MEMSマイクロホンアレイを用いた補聴システム
 3.3.5 スマートフォンを用いた音声生成システム
 3.3.6 拡張現実(AR)/複合現実(MR)を用いた音情報の視覚呈示システム
 3.3.7 防災行政無線と全国瞬時警報システム(J-ALERT)
3.4 聴覚分野の音バリアフリー
 3.4.1 高齢者と聴覚障害者の聞こえ
 3.4.2 補聴器
 3.4.3 人工内耳
 3.4.4 補聴支援システム
 3.4.5 報知音
3.5 騒音・振動,建築音響分野の音バリアフリー
 3.5.1 駅の音環境
 3.5.2 街中の音環境・騒音低減
 3.5.3 雨天時の音環境とバリアフリー
 3.5.4 空港内の音案内:ガイドラインとマネジメント
 3.5.5 パーソナルな支援システムと選択性
引用・参考文献

4.音のデザイン
4.1 音のデザインとは
 4.1.1 デザインにも音があり,音にもデザインがある
 4.1.2 音のデザインが実体をつくり出す
 4.1.3 快音を所有する喜び,音に対する愛着
 4.1.4 芸術と工学の橋渡しをする「音のデザイン」
 4.1.5 「音楽」と「騒音」の2項対立の時代ではない
 4.1.6 音響学における「音のデザイン」分野
4.2 音デザインの流れ
 4.2.1 まずなにを考えるべきか―機能と役割,必要性を検討する―
 4.2.2 その音が聴かれる状況を予測する―ユーザの特性と周辺環境音との関係性―
 4.2.3 どんな手法で流すのか―音響システムの設計と構築―
 4.2.4 音に求められるデザイン的要素を考える
 4.2.5 音をつくる
 4.2.6 使われる現場で確認する
4.3 音デザインの技術
 4.3.1 音環境を把握する
 4.3.2 音を付与する
 4.3.3 音を評価する
4.4 音デザインの事例
 4.4.1 製品音
 4.4.2 サイン音
 4.4.3 音環境デザイン
 4.4.4 音のユニバーサル・デザイン
 4.4.5 メディア・アートにおける音
 4.4.6 音楽における音のデザイン
4.5 音デザインの未来
引用・参考文献

5.音響教育
5.1 聴いて学ぶ音響学の実践と評価
 5.1.1 聴能形成
 5.1.2 聴能形成のシラバスと訓練システム
 5.1.3 聴能形成の効果検証事例
5.2 音響e-Learning
 5.2.1 シミュレータとは
 5.2.2 音響教育
 5.2.3 プログラム内の計算技法
 5.2.4 音響シミュレータ教材の例
 5.2.5 シミュレータ教材の実装技術
 5.2.6 今後のシミュレータ教材
5.3 教育工学的手法の導入
 5.3.1 音響教育成果の公表に向けて
 5.3.2 量的研究手法
 5.3.3 質的研究手法
 5.3.4 研究事例
引用・参考文献

6.生物音響
6.1 生物音響とは
6.2 聴覚系
 6.2.1 聴器の系統発生
 6.2.2 脊椎動物の伝音器の構造と機能
6.3 発声発音系
 6.3.1 哺乳類
 6.3.2 鳥類
 6.3.3 昆虫類
6.4 音源定位
 6.4.1 動物の音源定位
 6.4.2 メンフクロウの音源定位
6.5 反響定位
 6.5.1 反響定位とは
 6.5.2 コウモリ
 6.5.3 イルカの反響定位
6.6 音声コミュニケーション
 6.6.1 霊長類
 6.6.2 鳥類
 6.6.3 昆虫類
6.7 実験手法
 6.7.1 聴覚行動実験
 6.7.2 聴覚生理実験
引用・参考文献

索引

坂本 眞一(サカモト シンイチ)

折野 裕一郎(オリノ ユウイチロウ)

秋山 いわき(アキヤマ イワキ)

佐藤 雅弘(サトウ マサヒロ)

長谷川 英之(ハセガワ ヒデユキ)

及川 靖広(オイカワ ヤスヒロ)

中村 健太郎(ナカムラ ケンタロウ)

荒井 隆行(アライ タカユキ)

白石 君男(シライシ キミオ)

上田 麻理(ウエダ マリ)

寺澤 洋子(テラサワ ヒロコ)

岩宮 眞一郎(イワミヤ シンイチロウ)

川上 央(カワカミ ヒロシ)

佐藤 史明(サトウ フミアキ)

河原 一彦(カワハラ カズヒコ)

須田 宇宙(スダ ヒロシ)

松尾 行雄(マツオ イクオ)

加我 君孝(カガ キミタカ)

香田 啓貴(コウダ ヒロキ)

関 義正(セキ ヨシマサ)

高梨 琢磨(タカナシ タクマ)

芦田 剛(アシダ ゴウ)

赤松 友成(アカマツ トモナリ)

力丸 裕(リキマル ヒロシ)

相馬 雅代(ソウマ マサヨ)

向井 裕美(ムカイ ヒロミ)

眞邉 一近(マナベ カズチカ)