生体組織の超音波計測

音響サイエンスシリーズ 23

生体組織の超音波計測

超音波による生体組織の計測手法の基礎と臨床手法の現状と課題を多角的にまとめている。

ジャンル
発行年月日
2022/05/11
判型
A5
ページ数
244ページ
ISBN
978-4-339-01343-6
生体組織の超音波計測
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定価

3,850(本体3,500円+税)

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超音波を利用した診断・治療技術のベースとなる生体組織の音波物性の理解を目指し,生体組織の計測手法の基礎と臨床手法の現状と課題を様々な視点からまとめている。超音波計測の基礎から学べるよう配慮されている。

近年,医学分野において,超音波を利用した診断,治療技術は重要な手法として定着し,臨床的にも高く評価されている。診断技術分野では,さまざまな部位において,表面からは不可視な情報を,音響画像として可視化する超音波診断装置が広く用いられている。治療技術分野では,衝撃波により結石を破砕する治療機器が用いられ,超音波エネルギーを集中させ,病変部分を選択的に壊死凝固させる治療方法なども研究されている。

その一方で,超音波を利用した技術には,超音波で計測できる生体の物理・化学的変化に対する知見や,超音波が生体に与える作用についての定量的な根拠が十分とはいえない部分もある。このように,超音波と生体との関係について不明確な点があるのは,生体組織が,細胞,組織,臓器など,さまざまなスケールの要素によって構築されていることが一つの要因である。病変の発生と進展は,3次元的な構造をもち,種々の不均一構造をもっているので,音波と生体組織の相互作用は格段に複雑である。さらに,臨床的な病変診断と結び付けようとすると,医師などの医療関係者による「正常」あるいは「軽度」,「重度」などの臨床的な疾患の判定が,疾患全体を考慮した総合的な評価結果であることが通常で,組織の物理的・化学的変化の程度との関係は直接的でないことが多い。また,ヒトの組織試料では,測定に種々の制約が発生し,試料に対する自由度は少なく,系統的な検討は簡単ではない。このため,定量的な議論に耐えられる病変生体組織の計測データは多くないのが現状である。

このような状況を改善し,超音波による新たな診断手法や,治療手法を確立しようと,さなざまなスケールの生体組織と組織変化による音波物性の関係を定量的に計測しようとする研究は,多くの第一線の研究者により,広く行われており,着実にデータの蓄積も進められている。その一方で,医用計測は,境界領域であるため,これらの研究は,さまざまな学協会で進められており,計測手法やデータが共有され,共通の基盤の上に議論される機会は少ない。

本書は,生体組織の超音波計測について,生体組織の計測手法の基礎と臨床計測手法の現状と課題について,多くの研究者の協力によりまとめられており,医用超音波診断,治療分野の今後の発展に非常に有益な内容となっている。

1章では,生体内の音波伝搬の基礎と,摘出された生体組織の計測手法についてまとめられている。断層画像を描出する超音波診断装置の対象となる生体軟組織から,診断手法の発展が期待されている骨,毛髪までを対象に,生体組織の基本的音響特性である音速,周波数依存減衰,散乱特性,非線形特性などの計測が,さまざまな周波数で行われており,基礎的データが提供されている。

2章では,臨床的な応用を主目的とした計測手法について,現状と課題が述べられている。広帯域パルス波を用いた音響画像である臨床超音波画像についての基礎を示した後,微小気泡である超音波造影剤を用いて微小血流を可視化するコントラストエコー法,組織からの後方散乱波を計測し定量化する手法,高フレームレート画像を用いた血管の硬さ計測,組織の触感に対応する剛性率を計測する手法,超音波による骨質評価など最新の話題が提供されている。

3章では,超音波による治療技術が述べられている。超音波による治療に関係する生体組織の超音波物性と,高エネルギー超音波加熱による治療,さらに,微小気泡のキャビテーション現象と治療への応用が示される。このように,本書では,生体組織の超音波計測について,基礎から応用技術まで取り上げられている。本書を企画した皆様に感謝するとともに,本書により生体組織の超音波計測の現状と将来動向についての認識と理解が深まり,本分野がいっそう発展することを期待している。

2022年3月
蜂屋弘之

1. 生体組織の計測手法(in vitroの計測)
1.1 生体中の音波伝搬の基礎
 1.1.1 液体中の音波伝搬
 1.1.2 固体中の音波伝搬
 1.1.3 異種媒質への入射
 1.1.4 非線形伝搬
1.2 音響特性の計測手法と軟組織の計測
 1.2.1 音速計測
 1.2.2 減衰計測の意義と周波数依存
 1.2.3 心筋における後方散乱積分値の心拍内周期的変動
 1.2.4 血管内超音波法における音響特性の計測
 1.2.5 超音波顕微鏡
 1.2.6 今後の超音波イメージング
1.3 硬組織・毛髪の計測
 1.3.1 骨と軟骨
 1.3.2 毛髪
引用・参考文献

2. 臨床計測手法の現状と課題
2.1 超音波診断の基礎
 2.1.1 画像形成の基本原理
 2.1.2 ドプラ法
 2.1.3 空間情報の伝搬
 2.1.4 遠距離場の波動分布
 2.1.5 近距離場の波動分布
 2.1.6 生体組織音速の特徴と変化の例
2.2 コントラストエコーと診断装置の実際
 2.2.1 超音波造影剤
 2.2.2 超音波造影剤の非線形現象
 2.2.3 コントラストエコーの原理
 2.2.4 波形変調法によるイメージング
 2.2.5 非線形映像法の課題
 2.2.6 bubble destruction法によるイメージング
 2.2.7 定量解析の実際
2.3 軟組織の臨床計測の実際
 2.3.1 後方散乱係数による評価
 2.3.2 振幅包絡特性による評価
 2.3.3 血管硬さ評価と高速計測
 2.3.4 エラストグラフィ
2.4 硬組織の計測
 2.4.1 踵骨用超音波骨密度計
 2.4.2 超音波2波法を利用した橈骨骨密度測定装置
 2.4.3 AT法による計測
 2.4.4 その他の手法による計測
 2.4.5 臨床計測支援のシミュレーション技術
引用・参考文献

3. 超音波治療
3.1 生体組織の超音波物性と超音波治療
 3.1.1 超音波のエネルギーを蓄積・凝集するメカニズム
 3.1.2 生体の超音波吸収と散乱
 3.1.3 超音波加熱治療における周波数の選択
 3.1.4 強力集束超音波治療
3.2 キャビテーションと超音波治療
 3.2.1 微小気泡の物理学
 3.2.2 衝撃波の物理学
 3.2.3 体外衝撃波結石破砕
 3.2.4 ヒストトリプシ
 3.2.5 手術機器
 3.2.6 血栓溶解療法
 3.2.7 ソノポレーション
 3.2.8 BBBオープニング
引用・参考文献

索引

読者モニターレビュー【 N/M 様(ご専門:総合情報学(情報科学))】

本書は,タイトルにもある通り,音響サイエンスシリーズの23冊目の書籍で,「音響」の中でも特に「生体組織の超音波計測」の分野についての記述がなされている.

私自身,以前『音声コミュニケーションと障がい者(音響サイエンスシリーズ
22)』(https://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339013429/)をレビュさせていただいたが,その時も,障がい者という福祉の分野だったが,今回も医療の分野ということで,更に専門からかけ離れているのと,医学的な専門用語も多数使われているため,詳細なレビュは困難なことを先にお断りしておく.その上で,医療の分野における音響という分野について,気になった点や内容の概略を中心に紹介していく形を取りたいと思う.

本書の大きな特徴として,まず目についたのは,前回のシリーズ同様,引用・参考文献の多さにある.第1章は83個,第2章は144個,第3章は50個という具合に,洋書・和書の論文や書籍が紹介されている.これだけの多くの引用・参考文献の多いということは,言及されている内容にも,しっかりと裏付けのなされた,著者陣の本書に対する本気度が,今回も垣間見られた.別の文献にあたり,より深く調べたい方のためにも,Web検索する際に各種論文の名称が長くてタイピングする煩わしさもあるだろうと思われるので,引用・参考文献の出典URIの文字データを,テキスト or PDF形式データで,本書Webページから提供した方が便利なのではないかと感じた(※これは本書に限った話ではないが・・・;いざ別の文献を調べようとWeb検索する際に,タイトルが長くて入力自体が面倒くさくなって,その結果,調べるのを止めることも・・・).

本書の構成としては,「生体組織の計測手法(in vitro の計測)」,「臨床計測手法の現状と課題」,「超音波治療」の3章立てである.

「1.2 音響特性の計測手法と軟組織の計測」では,音に関する歴史的背景から,音(音響)というものが,どのようにして医学へ応用されて来たかということまで,社会的・政治的背景も含めて,変遷が分かりやすく解説されている.それ加えて,音速計測というものを「速さ=距離/時間」という小学校の教科書で習う事項から始まり,生体内の組織を音響の特性を用いて計測したりなど,音というものが医療にどのように活用されているか,という応用例が詳細に解説されている.

2章,3章では,「超音波診断の基礎」,「超音波治療」など,音の中でも「超音波」の応用例や課題などが解説されている.

本書を読むにあたり,所々に,数式による導出もあるので,数学や物理学の知識も必要であるので,数式に苦手意識のある,レビュしている私のような方は少し注意が必要であるが,最初のうちは読み飛ばすなどに工夫が必要かもしれない(後に,別の書籍で学習して理解する努力は必要だが・・・).

最後に,本書では,「生体組織の超音波計測」についての研究成果などが,ある程度詳細に記述されてはいるが,若干,理解が困難な部分も含まれているのも事実なので,膨大な引用・参考文献をベースにして,興味のある分野については,さらに調べてみると面白いだろう.特に,音響サイエンスシリーズの別の書籍や,関連する他書を読んだりして学ぶことにより,本書に挙げられたテーマを深く学ぶことができるだろうと思う.

松川 真美(マツカワ マミ)

山口 匡(ヤマグチ タダシ)

長谷川 英之(ハセガワ ヒデユキ)

西條 芳文(サイジョウ ヨシブミ)

細川 篤(ホソカワ アツシ)

長谷 芳樹(ナガタニ ヨシキ)

蜂屋 弘之(ハチヤ ヒロユキ)

神山 直久(カミヤマ ナオヒサ)

吉田 憲司(ヨシダ ケンジ)

金井 浩(カナイ ヒロシ)

椎名 毅(シイナ ツヨシ)

山越 芳樹(ヤマコシ ヨシキ)

梅村 晋一郎(ウメムラ シンイチロウ)

工藤 信樹(クドウ ノブキ)

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