音と人間 - CD-ROM付 -

音響入門シリーズ A-3

音と人間 - CD-ROM付 -

音と人間のかかわりについて重きを置き,音の基本を体系的にまとめた音響学の入門書である。

  • CD付
ジャンル
発行年月日
2013/03/28
判型
A5
ページ数
270ページ
ISBN
978-4-339-01303-0
音と人間 - CD-ROM付 -
品切・重版未定
当面重版の予定がございません。

定価

3,850(本体3,500円+税)

購入案内

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音と人間のかかわりについて重きを置いた音響学の入門書である。音がどのようにして生まれ,伝わり,耳や脳で処理され,聴こえが生じるのか,そして,身のまわりで使われている様々な音響機器の仕組みについての基本を体系的にまとめた。

1. はじめての音響学
1.1 音って何だろう
 1.1.1 弾性波
 1.1.2 聴こえる音と聴こえない音
1.2 音を表現する方法
 1.2.1 波形による表現
 1.2.2 スペクトルによる表現
 1.2.3 サウンドスペクトログラムによる表現
1.3 音を分類してみよう
 1.3.1 純音と複合音
 1.3.2 調波複合音
 1.3.3 白色雑音とパルス
 1.3.4 ピンクノイズ
 1.3.5 振幅変調音と周波数変調音
1.4 音を理解するために知っておこう
 1.4.1 周期・波長・周波数
 1.4.2 振幅
 1.4.3 瞬時音圧と実効音圧
 1.4.4 粒子速度
 1.4.5 音響エネルギー
 1.4.6 音の強さと音圧レベル
 1.4.7 音響インピーダンス
 1.4.8 音波の複素表現
 1.4.9 波の重ね合わせと干渉
1.5 まとめ

2. 音が生まれて耳にとどくまで
2.1 音が生まれる仕組み
 2.1.1 物体の振動による音の発生
 2.1.2 急激な流れによる音の発生
 2.1.3 媒質の膨張や収縮による音の発生
 2.1.4 気流の断続による音の発生
2.2 身のまわりの音
 2.2.1 自然界の音
 2.2.2 人工の音
 2.2.3 体から出る音
2.3 音が伝わる仕組み
 2.3.1 音の速度
 2.3.2 音の減衰
 2.3.3 ホイヘンス-フレネルの原理
 2.3.4 反射,透過,吸収
 2.3.5 屈折,回折
 2.3.6 ドップラ効果
 2.3.7 周波数による音の伝わり方の違い
2.4 音のない空間
2.5 まとめ

3. 音を聴く耳と脳の仕組み
3.1 聴覚の役割
3.2 聴覚生理学事始
 3.2.1 解剖学の基礎知識
 3.2.2 神経生理学の基礎知識
3.3 聴覚末梢系
 3.3.1 外耳
 3.3.2 中耳
 3.3.3 内耳
 3.3.4 一次聴神経
 3.3.5 聴覚末梢系の全体像
3.4 聴覚中枢系
 3.4.1 蝸牛神経核
 3.4.2 上オリーヴ複合体
 3.4.3 外側毛帯核
 3.4.4 下丘
 3.4.5 内側膝状体
 3.4.6 聴覚皮質
 3.4.7 遠心性神経系
 3.4.8 聴性脳幹反応
 3.4.9 聴覚中枢系の全体像
3.5 聴覚高次系
 3.5.1 音を聴き分け音の到来方向を探る仕組み
 3.5.2 音声を処理する仕組み
 3.5.3 警報音や覚醒音を処理する仕組み
 3.5.4 音による感情喚起の仕組み
 3.5.5 視覚や運動系と聴覚との相互作用
3.6 まとめ

4. 音の聴こえ方
4.1 聴覚心理学事始
 4.1.1 心理学と心理物理学
 4.1.2 感覚と知覚と認知
 4.1.3 閾値と弁別閾
 4.1.4 心理物理量の測り方
 4.1.5 心理尺度の測り方
4.2 音の聴こえの限界
 4.2.1 最小可聴閾値と音の不快閾値
 4.2.2 可聴周波数範囲
 4.2.3 音の強さの弁別閾
 4.2.4 音の周波数の弁別閾
 4.2.5 音のパワースペクトルの弁別閾
4.3 音の大きさ(ラウドネス)
 4.3.1 ラウドネスの尺度
 4.3.2 音の周波数とラウドネス
 4.3.3 音の長さとラウドネス
 4.3.4 音の帯域幅とラウドネス
 4.3.5 他の音があるときのラウドネス
 4.3.6 マスキング
 4.3.7 臨 界 帯 域
 4.3.8 聴覚フィルタの形状
 4.3.9 興奮パターン
 4.3.10 共変調マスキング解除
4.4 音の高さ(ピッチ)
 4.4.1 ピッチの尺度
 4.4.2 音の強さとピッチ
 4.4.3 音の長さとピッチ
 4.4.4 調波複合音のピッチ
 4.4.5 基本周波波成分がない調波複合音のピッチ
 4.4.6 非調波複合音のピッチ
 4.4.7 振幅変調音のピッチ
 4.4.8 雑音のピッチ
 4.4.9 ピッチ知覚モデル
4.5 音色
 4.5.1 音色の定義
 4.5.2 音源認知の側面
 4.5.3 印象の側面
 4.5.4 音色の次元と音の特徴との関連
 4.5.5 音色を決める音響的特徴 (1):パワースペクトル
 4.5.6 音色を決める音響的特徴 (2):成分音間の初期位相
 4.5.7 音色を決める音響的特徴 (3):波形の包絡線
4.6 音声の聴こえ
 4.6.1 音声を生成する仕組みと音声の特徴
 4.6.2 カテゴリー知覚
 4.6.3 帯域を制限した音声の聴こえ
 4.6.4 頑健な音声の聴こえ
 4.6.5 母語と外国語
 4.6.6 自分の声
 4.6.7 聴こえは発声を変える
4.7 立体的な音の聴こえ
 4.7.1 音像と音源
 4.7.2 左右の耳に届く音の違い
 4.7.3 頭部伝達関数
 4.7.4 音の再生方法と音信号の種類
 4.7.5 スピーカ再生音の音像定位
 4.7.6 イヤフォン再生音の音像定位
 4.7.7 音像定位における頭部運動の効果
 4.7.8 音像の距離知覚
 4.7.9 音像の高さ知覚
 4.7.10 先行音効果
 4.7.11 腹話術効果
 4.7.12 音の残効現象
4.8 不思議な音の聴こえ
 4.8.1 映像は聴こえ方を変える
 4.8.2 音は見え方を変える
 4.8.3 一部が欠けた音の聴こえ方
 4.8.4 無限音階
 4.8.5 二つの音の時間関係
 4.8.6 音と光の時間関係
 4.8.7 カクテルパーティー効果
4.9 臨場感
4.10 音質の評価は難しい
 4.10.1 音質の定義
 4.10.2 主観評価に影響を及ぼす認知的バイアス
 4.10.3 盲検法
4.11 まとめ

5. 音を操るさまざまな技術
5.1 音を記録する技術
 5.1.1 蓄音機
 5.1.2 円盤式レコード
 5.1.3 磁気録音
 5.1.4 アナログ録音からディジタル録音へ
 5.1.5 アナログレコードからCDへ
 5.1.6 半導体メモリ
5.2 音を伝送する技術
 5.2.1 有線電話
 5.2.2 IP電話
 5.2.3 無線通信と携帯電話
5.3 放送技術と音声
 5.3.1 ステレオ放送
 5.3.2 テレビジョンの音声
 5.3.3 高能率知覚符号化音声
5.4 音を聴きやすくする技術・加工する技術
 5.4.1 難聴
 5.4.2 補聴器
 5.4.3 人工内耳
 5.4.4 話速変換
 5.4.5 声質変換
 5.4.6 音の編集・加工技術
5.5 心地よい音・音環境を作る技術
 5.5.1 ホールの音響設計
 5.5.2 ホール音響の基本は残響
 5.5.3 サウンドデザイン
5.6 まとめ

引用・参考文献
索引

宮坂 榮一(ミヤサカ エイイチ)

日刊工業新聞2013年6月20日 「話題の本」欄 掲載日:2013/07/08
日刊工業新聞 「話題の本」欄に当書籍の新刊紹介が掲載されました。

「日刊工業新聞」Webページはこちら

[まえがき]より
 音に関する専門的な勉強をしようかなぁ,とメディア系や音楽系や工学系の大学や専門学校で学びはじめた,ごく平均的な学生諸君が想定読者です。
 みなさんが音に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?高校時代に音楽を聴くのが好きだったり,放送部で活動したり,エレキギターをいじったり,アンプやスピーカを作ったりしたことでしょうか。ひょっとすると,経験を通じて,すでにいろいろなことを知っているかもしれません。しかし,それらの知識はたがいにバラバラな状態で記憶の海に浮き沈みしているために,クイズ問題には答えられるかもしれませんが,まだそれらの知識を組み合わせて自由自在に操れる状態になっていないのではないかと思います。
 大学や専門学校は,ある分野に関する広範な知識や実務を体系づけて学ぶところです。どの分野でも同じですが,ある分野のことを学ぶ第一歩は,その分野で使われている専門用語とさまざまな概念に触れ,それらを体系的に身につけることです。覚えなければならないことも多いのですが,それは試験のための暗記とは違います。本を読み,講義を聴き,自らの頭であーでもないこうでもないと考える。実習や実験を行い,自らの体を動かして体験する。わからなければ,本を読み直し,先生にたずねる。そして,あっ,そういうことか!と納得し,専門用語や概念を記憶の引き出し―脳内辞書―に整頓して収納していくことが大切です。そうやっているうちに,その分野の専門家と共通した脳内辞書の中身がだんだん増えていきます。そのうちに,専門書も読めるようになり,専門家が話していることがわかり,話しの輪に加わることができるようになるでしょう。
 本書は,音響学の分野で教育と研究に携わっている四人の専門家(オタク)が書きました。著者らも,みなさんと同じように音について学び始めたころは,たくさんの “?” が頭上を飛び交っていました。インターネットはなく,入門書は少なく,先生は偉すぎて近寄れなかった時代でした。そこで,私たちはできるだけ丁寧に本書を書きました。音について体系的に学びはじめたみなさんの頭上に飛び交う “?” をできるだけ減らしたいという想いをこめて。
 私たちは音に満ちた世界に住んでいるので,音にかかわる仕事は多岐にわたります。音に興味を持つみなさんであれば,音楽業界や放送業界のサウンドクリエイタサウンドエンジニア,建築業界や環境業界のサウンドデザイナサウンドコンサルタント,音響機器業界や情報通信業界や自動車業界や工作機械業界の設計開発エンジニアなどとして活躍することでしょう。本書が,これらを目指すみなさんの一助になれば幸いです。
[CD-ROM]の内容
 CD-ROM には音や動画が収録してありますので,自分の耳で聴いて確かめることができます(本文中にCDマークで示しています)。百読は一聴にしかず!お楽しみください。そして,ときどき,なぜ?と首をひねってください。
  横波と縦波   波の干渉   波の回折   都市環境音   ドップラ効果
  最小可聴閾値  同時マスキング  音の周波数とピッチ  音の長さとピッチ
  位相と音色   スペクトルをシフトした音声   LとRを聴き分ける
  マガーク効果  衝突と交差の錯覚   音の補完現象   無限音階

など約40のマルチメディアコンテンツ(音,画像,動画)が収録されています。CD-ROMを活用して,みなさんの理解を深めることに役立ててください。