人間行動と組織行動 パフォーマンス向上の視点から

人間行動と組織行動 - パフォーマンス向上の視点から -

人間の機能と能力の客観的な評価の方法や手順,能力に影響を与える要因を多面的に解説。

ジャンル
発行年月日
2020/03/23
判型
A5
ページ数
190ページ
ISBN
978-4-339-02902-4
  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介
  • 広告掲載情報

【書籍の特徴】
 われわれ人間は,家庭や地域,職場といった組織の中でさまざまに行動している。家庭においては日常生活を送り,地域においては友人や知人と交流し,職場においては上司や同僚・部下と協働しながら職務を遂行している。これらの人間行動の結果はパフォーマンスとして捉えられ,その内容は人間の生活の質(QOL)の向上や組織の機能の効率化に繋がると考えられる。ここで人間が行動する理由について考えてみよう。それは何らかの目的を達成するためである。思いどおりに目的が達成できたかどうかがパフォーマンスであり,それは持ち得る機能や能力,行動時の心理状態や周りの環境などに影響を受ける。
 本書は,おもに人間の機能と能力に焦点を当て,それらを客観的に評価するための方法や手順,さらには人間の能力に影響を与える要因について多面的に解説している。また,持ちうる能力を最大限に発揮し,最良のパフォーマンスを発揮できる環境を提供するための方策についても解説を試みている。
【各章について】
 本書は7章により構成されている。1章では「人間の行動と生活の質の評価」について,2章においては「人間行動と機能・能力」について解説している。3章では「最適な人材確保と知識・技能の共有」について,4章では「より良い職務遂行環境の提供」について,5章では「個人と組織の行動とパフォーマンス」について人的資源管理の視点から解説している。さらに,6章では「人間機能の多様性と能力の支援」について人間の自立支援策の視点から解説をしている。最後に,7章では「高度情報処理技術の活用と人間行動」について将来の人間の行動の変化について展望している。
【著者からのメッセージ】
 本書は,経営に関する分野について学ぶ方々,また看護・福祉,リハビリテーション分野において人間の自立支援策について学ぶ方々だけでなく,企業において人的資源管理(human resource management)に携わる実務者にも,有用な知識を身に付けてもらえることを念頭に置き執筆されている。本書を精読し,「人間の機能と能力」に対する認識をより一層深めていいただきたい。

人間は,家庭,地域,職場といった人間の集合体である「組織」の中でさまざまな「行動」をとっている。家庭においては日常生活を営み,地域においては他者との交流を行い,職場においては他者との連携をとりながら自らの職務を遂行している。これらの「行動」の結果は「パフォーマンス(成果)」として捉えられ,それらを高めることは「人間の生活の質(QOL)の向上」や「組織の機能の効率化」に繋がる。

それでは,なぜ人間は行動するのであろうか?それは,なんらかの目的を達成するためである。「思いどおりに目的が達成できたか否か」,つまりパフォーマンスは,図1(立ち読み参照)に示すとおり,行動時に用いる自らの人間の機能や能力,さらには行動時の状況(そのときの心理状態や周りの環境など)にも影響を受ける。したがって,自らの持ちうる人間機能をその場の状況に応じて活用し,目的を達成させる力が「能力」ということになる。

本書は,おもに人間の機能と能力に焦点を当て,それらを客観的に評価するための方法や手順,さらには人間の能力に影響を与える要因について多面的に解説することを目的としている。また,持ちうる能力を最大限に発揮し,最良のパフォーマンスを発揮できる環境を提供するための方策についても,解説を試みている。すなわち,本書は,経営に関する分野について学ぶ方々,また看護・福祉,リハビリテーション分野において人間の自立支援策について学ぶ方々だけでなく,企業において人的資源管理(human resource management)に携わる実務者にも,有用な知識を身に付けてもらえることを念頭に置き執筆されている。

本書は7章で構成されている。本書を構成する各章を読み進めることにより得られる知識は,表1に示すとおりである。

本書は,筆者が大学において担当しているインダストリアルエンジニアリング,人的資源管理,そして福祉工学の講義ノートをもとに書き起こしたものである。この三つの授業科目はじつは密接に関係しているため,授業間で内容が重複する場合が多い。表2(立ち読み参照)に,学びたい領域と各章との関連を示す。読者の皆さんが学びたい分野において,◎が付いた章に関しては,まず目を通して精読していただきたい。○が付いた章は,◎が付いた章を理解した上で読み進めていただくと,人間の機能と能力について,より深い理解が可能となるであろう。

本書の対象読者別には,経営に関する分野について学びたい読者はインダストリアルエンジニアリングと人的資源管理の領域を,看護・福祉・リハビリテーション分野において人間の自立支援策について学びたい読者は福祉工学の領域を,そして人的資源管理に携わる実務者の方々はすべての領域について精読していただくとよい。

本書においては,われわれ人間を表す言葉として,「人」「ヒト」「人間」「作業者」「従業員」「労働者」「メンバー」など,生活の場や職務における役割分担の違いを考慮して,ふさわしいと考えられる表記を用いた。これは,同じ人間でも生活の場や社会的役割の違いにより呼び方が異なる,つまり,自分の置かれている立場により行動(振る舞い)が異なるためである。

詳細に説明しきれなかった内容や具体例に関しては,各章の章末問題を解くことで補足できるようにしてある。各章を精読した後に,ぜひ読者自身で解答を作成し,巻末の解答例と見比べていただきたい。また,http://nishiguchi.world.coocan.jp/corona/にも関連情報を記載してあるので,ぜひ参照していただきたい。

まえがきの最後として,本書の企画をご提案いただき,筆の遅い筆者を叱咤激励いただいたコロナ社編集部に心より感謝の意を表する次第である。本書を通じて,読者の皆様の「人間の機能と能力」に対する認識がより一層深まれば,筆者にとって喜びの極みである。

2020年1月 西口宏美

1.人間の行動と生活の質の評価
1.1 人間行動とは
1.2 人間の生活の場
 1.2.1 家庭での生活
 1.2.2 地域での生活
 1.2.3 職場での生活
1.3 生活の場とその質の評価
 1.3.1 生活の質(QOL)
 1.3.2 職業生活の質(QWL)
1.4 人間行動に関する研究領域
 1.4.1 産業心理学
 1.4.2 人間工学
章末問題

2.人間行動と機能・能力
2.1 三つの人間機能
 2.1.1 S-O-Rモデルと人間の行動過程
 2.1.2 感覚機能
 2.1.3 刺激量と感覚量との関係
 2.1.4 知覚・認知機能
 2.1.5 運動機能
2.2 人間の能力
 2.2.1 知的能力
 2.2.2 上肢作業の構成と能力
2.3 人間行動とエラー
 2.3.1 エラーの定義
 2.3.2 エラーの分類
2.4 人間の機能・能力の変化
章末問題

3.最適な人材確保と知識・技能の共有
3.1 最適な人材の確保
 3.1.1 職業興味
 3.1.2 職業適性
 3.1.3 性格特性
3.2 能力開発
 3.2.1 訓練の手順
 3.2.2 職場内訓練と職場外訓練
 3.2.3 その他の能力開発
3.3 組織における学習と知
 3.3.1 組織学習の概念
 3.3.2 組織における知の共有化
3.4 組織におけるコミュニケーション
 3.4.1 コミュニケーションの定義
 3.4.2 コミュニケーションの成立と効率化
 3.4.3 コミュニケーションの形式
 3.4.4 コミュニケーションスキル
章末問題

4.より良い職務遂行環境の提供
4.1 生産現場の管理
4.2 業務の分業化と工程設計
 4.2.1 分業化の際の制約条件
 4.2.2 工程バランスと効率性
4.3 生産現場の管理指標
 4.3.1 品質
 4.3.2 原価
 4.3.3 納期
 4.3.4 安全
 4.3.5 士気・意欲
4.4 生産性の評価
 4.4.1 労働生産性
 4.4.2 設備生産性
 4.4.3 原材料生産性
4.5 ムリ・ムダ・ムラの概念
 4.5.1 ムリ
 4.5.2 ムダ
 4.5.3 ムラ
4.6 生産現場の効率化と管理のためのIE手法
 4.6.1 生産工程の細分化とIE手法
 4.6.2 職務の評価尺度と改善の指針
 4.6.3 IE手法と分析対象
 4.6.4 工程分析
 4.6.5 稼働分析
 4.6.6 動作分析(サーブリッグ分析)
 4.6.7 標準時間
 4.6.8 ストップウォッチ法を用いた標準時間の作成
 4.6.9 PTS(既定時間標準)
4.7 作業環境の整備の考え方としての5S
章末問題

5.個人と組織の行動とパフォーマンス
5.1 組織の形成と人間の行動
5.2 組織デザインとその形態
 5.2.1 職能別組織(機能別組織)
 5.2.2 事業部制組織
 5.2.3 マトリックス組織
5.3 生産効率の向上の試み
 5.3.1 科学的管理法に基づく経営管理
 5.3.2 ホーソン工場実験の概要
 5.3.3 四つの実験
5.4 人間の行動と動機付け
 5.4.1 内発的動機付けと外発的動機付け
 5.4.2 欲求の5段階説
5.5 モチベーション理論
 5.5.1 X理論-Y理論
 5.5.2 成熟理論
 5.5.3 二要因理論
 5.5.4 職務拡大と職務充実
5.6 組織行動におけるリーダーシップの重要性
 5.6.1 リーダーシップ研究のアプローチ
 5.6.2 代表的なリーダーシップ理論
章末問題

6.人間機能の多様性と能力の支援
6.1 人間の機能の多様性
6.2 加齢による機能の変化
 6.2.1 流動性変化と結晶性変化
 6.2.2 加齢による変化の把握方法
6.3 疾病による機能の低下と障害
 6.3.1 国際障害分類に基づく障害の概念
 6.3.2 国際障害分類から国際生活機能分類へ
 6.3.3 日本における身体障害の分類
6.4 バリアの発生とその除去の方法
 6.4.1 バリアの除去の方法
 6.4.2 バリアフリーデザインの事例
6.5 日常生活行為(ADL)とその支援のための手段
 6.5.1 日常生活行為の評価法
 6.5.2 ADLの自立を支援する福祉用具
 6.5.3 福祉用具の活用意義
6.6 ユニバーサルデザインとその活用
 6.6.1 ユニバーサルデザインの誕生
 6.6.2 ユニバーサルデザインの7原則
6.7 バリアフリー新法
 6.7.1 高齢者,身体障害者などの利用を考慮した建築基準
 6.7.2 ユニバーサルデザインと建築計画の要点
章末問題

7.高度情報処理技術の活用と人間行動
7.1 生産システムの進化
 7.1.1 直接作業から間接作業へ
 7.1.2 生産システムの変遷とIoT化
7.2 ネットワークにモノを接続するIoT技術
7.3 AIとは
 7.3.1 3回のAIブーム
 7.3.2 AIのアルゴリズムに用いられる手順
7.4 労働力の補完
章末問題

引用・参考文献
章末問題の解答例
索引

掲載日:2020/04/07

読売新聞広告掲載(2020年4月7日)