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音響サイエンスシリーズ 23
超音波を利用した診断・治療技術のベースとなる生体組織の音波物性の理解を目指し,生体組織の計測手法の基礎と臨床手法の現状と課題を様々な視点からまとめている。超音波計測の基礎から学べるよう配慮されている。
- 発行年月日
- 2022/05/11
- 定価
- 3,850円(本体3,500円+税)
- ISBN
- 978-4-339-01343-6
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読者モニターレビュー【 N/M 様(ご専門:総合情報学(情報科学))】
掲載日:2022/05/02
本書は,タイトルにもある通り,音響サイエンスシリーズの23冊目の書籍で,「音響」の中でも特に「生体組織の超音波計測」の分野についての記述がなされている.
私自身,以前『音声コミュニケーションと障がい者(音響サイエンスシリーズ
22)』(https://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339013429/)をレビュさせていただいたが,その時も,障がい者という福祉の分野だったが,今回も医療の分野ということで,更に専門からかけ離れているのと,医学的な専門用語も多数使われているため,詳細なレビュは困難なことを先にお断りしておく.その上で,医療の分野における音響という分野について,気になった点や内容の概略を中心に紹介していく形を取りたいと思う.
本書の大きな特徴として,まず目についたのは,前回のシリーズ同様,引用・参考文献の多さにある.第1章は83個,第2章は144個,第3章は50個という具合に,洋書・和書の論文や書籍が紹介されている.これだけの多くの引用・参考文献の多いということは,言及されている内容にも,しっかりと裏付けのなされた,著者陣の本書に対する本気度が,今回も垣間見られた.別の文献にあたり,より深く調べたい方のためにも,Web検索する際に各種論文の名称が長くてタイピングする煩わしさもあるだろうと思われるので,引用・参考文献の出典URIの文字データを,テキスト or PDF形式データで,本書Webページから提供した方が便利なのではないかと感じた(※これは本書に限った話ではないが・・・;いざ別の文献を調べようとWeb検索する際に,タイトルが長くて入力自体が面倒くさくなって,その結果,調べるのを止めることも・・・).
本書の構成としては,「生体組織の計測手法(in vitro の計測)」,「臨床計測手法の現状と課題」,「超音波治療」の3章立てである.
「1.2 音響特性の計測手法と軟組織の計測」では,音に関する歴史的背景から,音(音響)というものが,どのようにして医学へ応用されて来たかということまで,社会的・政治的背景も含めて,変遷が分かりやすく解説されている.それ加えて,音速計測というものを「速さ=距離/時間」という小学校の教科書で習う事項から始まり,生体内の組織を音響の特性を用いて計測したりなど,音というものが医療にどのように活用されているか,という応用例が詳細に解説されている.
2章,3章では,「超音波診断の基礎」,「超音波治療」など,音の中でも「超音波」の応用例や課題などが解説されている.
本書を読むにあたり,所々に,数式による導出もあるので,数学や物理学の知識も必要であるので,数式に苦手意識のある,レビュしている私のような方は少し注意が必要であるが,最初のうちは読み飛ばすなどに工夫が必要かもしれない(後に,別の書籍で学習して理解する努力は必要だが・・・).
最後に,本書では,「生体組織の超音波計測」についての研究成果などが,ある程度詳細に記述されてはいるが,若干,理解が困難な部分も含まれているのも事実なので,膨大な引用・参考文献をベースにして,興味のある分野については,さらに調べてみると面白いだろう.特に,音響サイエンスシリーズの別の書籍や,関連する他書を読んだりして学ぶことにより,本書に挙げられたテーマを深く学ぶことができるだろうと思う.