医用超音波工学の基礎 - 資格試験の受験から新技術の入り口まで -
医用超音波工学を国家試験や認定試験への対策を意識し,新技術にも触れつつ解説。
- 発行年月日
- 2021/03/25
- 判型
- B5
- ページ数
- 226ページ
- ISBN
- 978-4-339-07248-8
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- 広告掲載情報
本書は,近年の医療分野における超音波技術の大きな発展をふまえて,超音波診断に関する内容から超音波治療に関する内容を,「基礎から新技術の入り口まで」をコンセプトとして1冊の書籍にまとめたものである。医用超音波工学の知識が試される各種国家試験,認定試験を受験される方々や,現場で医用超音波技術を活用される医療従事者の方々にとっての教科書,参考書となるよう,丁寧で具体的な解説とともに重要な項目を演習問題として挙げ,その解答についても丁寧な解説を行った。
近年,医療分野における超音波技術は非常に大きな発展を遂げている。超音波診断では,ディジタル化に伴う小型化,低価格化,非線形音響現象を利用したハーモニックイメージング,体を切り開くことなく体内の異物や臓器の硬さを推定できる超音波エラストグラフィなど多方面にわたって新技術が発展している。超音波治療の分野でも,従来は超音波メス(凝固切開装置や吸引破砕装置)やESWL(体外式衝撃波結石破砕装置)などに留まっていたが,最近の10年ほどで,HIFU(高密度集束超音波)治療装置,LIPUS(低強度超音波パルス)治療装置といった新しい超音波治療法が実用化された。さらにソノポレーション(超音波と微小気泡を併用して目的とする細胞や生体組織に遺伝子や薬物を送達する技術)のような新しい治療法も研究開発されている。
このような状況において,超音波工学に携わる医師やコメディカルはますます重要な役目を担うことが期待されている。例えば,超音波診断においては医師であれば超音波専門医,コメディカルであれば超音波検査士(ソノグラファ)がその立場にあり,臨床検査技師,看護師,准看護師,診療放射線技師の方々がその認定試験の受験資格を有している。一方,ME機器を取り扱う臨床工学技士も,透析業務におけるバスキュラーアクセスの監視やエコー下穿刺,心臓カテーテル検査業務における血管内超音波検査などにおいて,超音波診断画像を活用している。また,理学療法士や作業療法士もリハビリテーションにおいて超音波診断画像を取り扱うようになってきている。特に,臨床工学技士は,ME機器の管理業務として,超音波診断装置だけでなく超音波メスや超音波ネブライザ,ESWLなどの超音波関連の治療機器も取り扱うので,国家試験にもこれらの内容が超音波診断装置に関する問題と同様に出題されている。今後の新技術の発展,普及を考えると,ハーモニックイメージングや超音波エラストグラフィなどの超音波診断の新技術とともにHIFU,LIPUSやソノポレーションなどの超音波治療の新技術についても勉強する必要があると思う。
しかし,超音波診断に関する内容から超音波治療に関する内容まで,基礎から新技術の入り口までを1冊にまとめた書籍をあまり見かけていない。著者も大学で医用超音波工学の講義を担当しているが,このような教科書,参考書があれば講義しやすいし,学生諸君も助かるだろうなと感じていた。このような経緯から本書を出版させていただくことになった。もちろん,超音波診断に関しても,なるべく丁寧かつ具体的に解説させていただいたつもりである。各章の章末には,重要な項目を演習問題として挙げており,その解答にもなるべく丁寧な解説を付けるように心掛けたつもりである。
本書の執筆にあたっては,桐蔭横浜大学医用工学部臨床工学科の著者の研究室を卒業して,現在も研究・教育活動を通して超音波工学の分野で活躍している内田武吉氏,椎葉倫久氏,大関誠也氏にも共著者としてご助力をいただいた。
本書の執筆に際して,さまざまな画像をご提供いただいた,杏林大学医学部第3内科教授 森秀明先生,近畿大学医学部外科学教室乳腺・内分泌外科 位藤俊一先生,産業技術総合研究所生命工学領域主任研究員 新田尚隆氏,本多電子株式会社および同社研究部 岡田長也氏,一般社団法人日本画像医療システム工業会・医用画像電子博物館に感謝を申し上げさせていただく。最後に,本書の企画から発行まで当初の予定期間の3倍の3年間を忍耐強く,著者らを激励して発刊までご尽力くださった株式会社コロナ社の皆様に改めて御礼申し上げる次第である。
本書が,超音波専門医の認定試験を受験される方,超音波検査士の認定試験を受験される方,臨床工学技士,臨床検査技師の国家試験や第1種および第2種ME技術実力検定試験を受験される方,看護師,診療放射線技師,理学療法士,作業療法士など医用超音波の技術の活用をお考えのコメディカルの皆様や学生の皆様のお役に立つことを願っている。なお,著者らの不注意や浅学による考え違いのために,思わぬミスがあることを恐れている。読者の皆様のご指摘をいただければ幸いである。
2021年2月
竹内 真一
1.医用超音波工学の概要
1.1 音波とは
1.2 可聴音と超音波
1.3 縦波と横波
1.4 音波と電磁波
1.5 超音波技術の幕開け
1.6 超音波応用技術の発達
演習問題
2.音響工学の基礎1 ─周波数,周期,波長とパルス波形─
2.1 音速
2.2 生体組織の音速
2.3 周波数・周期と波長
2.4 波形:連続波とパルス波
2.5 連続波,パルス波形とそれらの周波数スペクトル
2.6 パルス幅と比帯域,Q値
2.7 孤立パルスと繰り返しパルス
演習問題
3.音響工学の基礎2 ─音響特性インピーダンスと反射─
3.1 反射波と超音波エコー法
3.2 音速,距離,伝搬時間
3.3 超音波の反射と音響特性インピーダンス(固有音響インピーダンス)
演習問題
4.音響工学の基礎3 ─屈折,減衰,干渉─
4.1 屈折
4.2 減衰
4.2.1 吸収減衰
4.2.2 散乱減衰
4.2.3 拡散減衰
4.3 干渉
演習問題
5.超音波診断装置の撮像原理
5.1 超音波診断装置の構成
5.2 パルスエコー法の基本原理
5.3 Aモード表示
5.4 Bモード表示とBモード断層像
5.5 Mモード表示
5.6 Bモード画像の調整
5.6.1 ダイナミックレンジとその調整
5.6.2 対数圧縮
5.6.3 GAINとその調整
5.6.4 STC
5.6.5 ガンマ特性とガンマ補正
5.6.6 送信回路の音響出力の調整
5.6.7 フレームレート
5.7 デシベルの計算法
演習問題
6.超音波プローブ
6.1 超音波プローブの構造
6.1.1 圧電振動子
6.1.2 背板(バッキング材)
6.1.3 整合層
6.1.4 音響レンズ
6.2 超音波ビームの走査形状
6.3 超音波プローブの走査機構
6.3.1 マニュアル走査方式(手動走査方式)
6.3.2 機械走査方式
6.3.3 電子走査方式
6.3.4 電子フォーカス
6.3.5 サイドローブとグレーティングローブ
6.3.6 その他のアレイ形超音波プローブ
演習問題
7.超音波診断装置の分解能
7.1 測定精度と分解能
7.2 空間分解能
7.2.1 距離分解能
7.2.2 方位分解能
7.2.3 分解能評価用超音波ファントムで観察した空間分解能
7.3 時間分解能
7.4 コントラスト分解能
演習問題
8.ドプラ効果と血流計測の基礎
8.1 ドプラ効果の基礎
8.1.1 ドプラ効果:観測者は静止して,音源が移動するとき
8.1.2 ドプラ効果:音源は静止して,観測者が移動するとき
8.1.3 ドプラ効果:音源,観測者の両方が移動するとき
8.2 超音波ドプラ血流計測法の基礎
8.2.1 送信時:超音波プローブが音源,体内の赤血球などが観測者
8.2.2 受信時:体内の赤血球などが音源,超音波プローブが観測者
8.2.3 送受信の全過程を考える
8.3 血流に対して超音波が斜め入射する場合のドプラ効果
演習問題
9.各種のドプラ血流計測法
9.1 連続波ドプラ法
9.2 パルスドプラ法
9.2.1 パルスドプラ法の概要
9.2.2 サンプルボリューム
9.2.3 最大検知限界深度
9.2.4 パルス波の周波数スペクトル,ドプラシフトそしてエイリアシング
9.2.5 血流速度と各種超音波ドプラ法の適用範囲
9.3 カラードプライメージング
9.3.1 カラードプライメージング:速度モード
9.3.2 カラードプライメージング:パワーモード
9.3.3 MTIフィルタ(ウォールフィルタ)
演習問題
10.超音波トランジットタイム式血流計
10.1 超音波を用いた血流速度および血流量計測法
10.2 超音波トランジットタイム式血流計の基本原理
10.3 実用的な超音波トランジットタイム式血流計の原理
10.4 超音波トランジットタイム式流量計の特徴
10.4.1 特徴と問題点
10.4.2 取扱い手順
10.4.3 測定誤差の要因
10.4.4 その他の注意点
演習問題
11.新しい超音波診断技術
11.1 生体組織の非線形特性
11.1.1 音速の音圧依存性
11.1.2 正弦波からN波への変形と高調波
11.2 ティッシュハーモニックイメージング
11.3 マイクロバブル超音波造影剤
11.4 マイクロバブル超音波造影剤の非線形応答特性:高調波と分調波
11.5 マイクロバブルの挙動を表現する非線形微分方程式
11.5.1 圧縮性を無視したRPNNPモデル:シェルの影響も無視
11.5.2 圧縮性を考慮してシェルの影響を無視したRPNNPモデル
11.5.3 圧縮性を無視したRPNNPモデル:シェルの影響を考慮
11.5.4 圧縮性とシェルの影響を考慮したRPNNPモデル
11.6 コントラストハーモニックイメージング
11.7 音響放射力
11.8 超音波エラストグラフィ
11.8.1 超音波エラストグラフィの基礎
11.8.2 ストレインエラストグラフィ
11.8.3 せん断弾性波エラストグラフィ
11.8.4 せん断弾性波イメージング
演習問題
12.超音波を利用した治療機器
12.1 超音波メス
12.1.1 超音波吸引装置
12.1.2 超音波凝固切開装置
12.1.3 電気メス
12.2 体外式衝撃波結石破砕装置:ESWL
12.2.1 圧電式の体外式衝撃波結石破砕装置
12.2.2 その他の体外式衝撃波結石破砕装置
12.3 内視鏡的破砕装置
12.3.1 経尿道的結石破砕術:TUL
12.3.2 経皮的結石破砕術:PNL
12.4 ネブライザ
12.4.1 超音波ネブライザ
12.4.2 ジェット式ネブライザ
演習問題
13.新しい超音波治療技術
13.1 ソノポレーション
13.1.1 ソノポレーションの原理
13.1.2 ソノポレーションの応用
13.2 高密度集束超音波:HIFU
13.2.1 HIFUの原理
13.2.2 HIFUの応用
13.3 低強度超音波パルス:LIPUS
13.3.1 LIPUSの原理
13.3.2 LIPUSの応用
演習問題
14.医用超音波機器の安全性
14.1 マクロショックとミクロショック
14.2 安全規格
14.3 漏れ電流と患者測定電流
14.4 単一故障状態
14.5 形別分類
14.6 漏れ電流の許容値
14.7 クラス別分類
14.8 音響強度
14.9 MI
14.10 TI
演習問題
引用・参考文献
演習問題解答
索引
-
掲載日:2022/06/20
-
掲載日:2022/04/25
-
掲載日:2022/01/26
-
掲載日:2021/08/26
-
掲載日:2021/08/23
-
掲載日:2021/04/01
-
掲載日:2021/03/01