
3DCGの数理と応用
3DCGの基礎を支える技術を第一線で活躍する研究者が解説。
- 発行年月日
- 2023/07/07
- 判型
- A5
- ページ数
- 256ページ
- ISBN
- 978-4-339-01371-9
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- レビュー
- 書籍紹介・書評掲載情報
- 広告掲載情報
【読者対象】
本書は,理工系の大学生や大学院生を主な読者対象としていますが,3DCG技術に興味のある高校生や社会人,ゲーム制作会社のエンジニア,研究者など,幅広い読者にも役立つ内容となっています。
【書籍の特徴】
本書で取り扱う内容は3DCGの基礎となる内容です。しかしながら,基礎だから簡単というわけではなく,類書に比べると数学的に高度な内容を含むものとなっています。本書では,3DCGを支える技術を「モデリング」「レンダリング」「キャラクタアニメーション」「物理シミュレーション」といった四つに分け,それぞれ独立した章で解説します。この四つの技術を,もう少し平易な言葉で表現すれば,形を作る・映像を作る・動作を作る・自然界の挙動を再現する,と言い換えることができます。それぞれを各分野の第一線で活躍する研究者が担当しました。
【各章について】
「モデリング」の章では,物体の形状をサーフェスメッシュによって記述し,それを編集・加工するための諸理論を解説します。
「レンダリング」の章では,物体表面の輝度計算に焦点を当て,実写並みの映像を生成する大域照明計算手法,事前計算を用いた高速画像生成法などを解説します。また,リアリズムを向上させるために必要な光の散乱といった物理現象についても説明します。
「キャラクタアニメーション」の章では,アニメーション制作における標準技法であるスケルトン法について紹介し,人型を模したキャラクタモデルのためのさまざまなアニメーション編集技術を解説します。
最後に「物理シミュレーション」の章では,硬い物体だけではなく,水や空気のような流れる物体を含む,複雑な自然現象の挙動を計算で求めるための手法を解説します。
【著者からのメッセージ】
コンピュータは長い間,科学技術計算やバックオフィスなどの用途を主として使われてきましたが,パーソナルコンピューターやゲーム機が我々の日常生活の中でも使用されるようになったことで,エンターテイメントを目的とした幅広いアプリケーションが開発されるようになりました。コンピュータの性能の向上に伴い,あたかも現実世界が画面の中に広がっているかのような映像を作り出すことに対するニーズが高まると,3DCGはなくてはならない技術となりました。今日では,ゲームや映画,または広告やVR体験などにおいて,3DCGをベースとしたサービスがさまざまに誕生しています。
このような3DCG技術も,一朝一夕で登場したわけではありません。コンピュータグラフィックス誕生からの長い期間における,地道な技術開発の積み重ねがありました。その果実を今,私たちは手にしているわけです。このような3DCG技術を高度に使いこなし,さらにその発展に貢献しようと考えるのであれば,その基礎を支える技術に対する理解が必要になります。そのような必要性に応えるために,本書が執筆されました。3DCG技術を支える理論に興味のある方々に,本書を手に取っていただけたらと思っています。
【キーワード】
コンピュータグラフィックス,モデリング,レンダリング,キャラクタアニメーション,物理シミュレーション
コンピュータグラフィックス(CG)は,1960年代初期にアメリカの計算機科学者であるアイバン・サザランドがグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)の先駆けとなるSketchpadを発明したことが起源だといわれています。コンピュータはその後も長い間,主に科学技術計算やバックオフィスなどの用途に使われてきましたが,パーソナルコンピュータやゲーム機がわれわれの日常生活の中でも使用されるようになったことで,エンターテインメントを目的とした幅広いアプリケーションが開発されるようになりました。コンピュータの性能の向上に伴い,あたかも現実世界が画面の中に広がっているかのような映像を作り出すことに対するニーズが高まると,3DCGはなくてはならない技術となりました。今日では,ゲームや映画,または広告やVR体験などにおいて,3DCGをベースとしたサービスがさまざまに誕生しています。さらにヘッドマウントディスプレイの性能も高まり,没入感の高い体験が可能となったことから,その応用範囲は広がる一方です。CGの誕生から60余年の年月を経た現在,当時には想像すらできなかったであろう劇的な性能向上を遂げたコンピュータと,それに伴う3DCG技術の発展によって,もはや実写と区別のつかないほどのリアリティを伴う映像が,ほぼリアルタイムに生成できるようになりました。
仮想現実,バーチャル空間,サイバースペース,メタバース,デジタルツイン・・・など,それぞれ些少の差異はあるものの,計算機が生み出す仮想的な空間での活動を表す用語が次々に登場し,3DCGによる新しい世界を創造するための挑戦はとどまる様子がありません。もしかしたら人類には,私たちの住む空間に相似した空間を,自分たちの手で新たに作り出したいという欲求が本質的に備わっているのかもしれません。だとしたら,3DCGというものは,それが達成されるまで常に進歩を重ね,今後も普遍的に必要とされ続けるものだといえるでしょう。
さて,このような3DCG技術も,一朝一夕で登場したわけではありません。コンピュータグラフィックス誕生からの長い期間における,地道な技術開発の積み重ねがありました。その果実を今,私たちは手にしているわけです。しかしながら,このような3DCG技術を高度に使いこなし,さらにその発展に貢献しようと考えるのであれば,その基礎を支える技術に対する理解が必要になります。そのような必要性に応えるために,本書が執筆されました。
本書では,3DCGを支える技術を,「モデリング」「レンダリング」「キャラクタアニメーション」「物理シミュレーション」の四つに分け,それぞれ独立した章で解説します。この四つの技術を,もう少し平易な言葉で表現すれば,形を作る・映像を作る・動作を作る・自然界の挙動を再現する,と言い換えることができます。「モデリング」の章では,物体の形状をサーフェスメッシュによって記述し,それを編集・加工するための諸理論を解説します。「レンダリング」の章では,物体表面の輝度計算に焦点を当て,実写並みの映像を生成する大域照明計算手法,事前計算を用いた高速画像生成法などを解説します。また,リアリズムを向上させるために必要な光の散乱といった物理現象についても説明します。「キャラクタアニメーション」の章では,アニメーション制作における標準技法であるスケルトン法について紹介し,人型を模したキャラクタモデルのためのさまざまなアニメーション編集技術を解説します。最後に「物理シミュレーション」の章では,硬い物体だけではなく,水や空気のような流れる物体を含む,複雑な自然現象の挙動を計算で求めるための手法を解説します。ここで挙げた四つのテーマは,まさに3DCGを支える基礎要素といえます。それぞれの章の執筆は,各分野の第一線で活躍する研究者が担当しました。それぞれに目覚ましい実績を持ち,豊富な経験と知識によってわが国の3DCG技術の発展を牽引してきたといえる執筆陣となっております。
本書で取り扱う内容は3DCGの基礎となる内容ですが,基礎だから簡単というわけではありません。類書に比べると,数学的に高度な内容を含むものとなっています。具体的には,理工系の大学で学ぶ解析学,線形代数学の基本的な知識が求められます。また,連続体力学および流体力学の基礎的な知識,最小二乗法などの数理最適化の知識もあると読み進めやすいでしょう。そのため,本書は理工系大学の高学年または,大学院の学生が主な読者の対象となります。もちろん,3DCGを支える理論に興味のある高校生や社会人,ゲーム制作会社に勤めているエンジニアの方,3DCGを研究の対象とすることを検討している方など,幅広い方々にも,ぜひ手に取っていただけたらと思っています。
3DCGを支える技術の理解に,本書を役立てていただければ幸いです。
2023年5月
編者 三谷純
1.サーフェスメッシュによる形状処理
1.1 序論
1.1.1 サーフェス形状の表現方法
1.1.2 ポリゴンメッシュによる形状表現
1.1.3 ポリゴンメッシュ処理のためのデータ構造
1.1.4 本章の構成
1.2 スムージング
1.2.1 一様ラプラシアンと前進オイラー法によるスムージング
1.2.2 後退オイラー法による数値的に安定なスムージング
1.2.3 表面積または体積の保存による縮退の防止
1.2.4 一様ラプラシアンの問題点
1.2.5 余接ラプラシアンの導出
1.2.6 平均曲率フロー
1.3 UV展開
1.3.1 境界を固定する方法
1.3.2 境界を固定しない方法
1.4 変形
1.4.1 調和関数に基づく変形
1.4.2 As-Rigid-As-Possible変形アルゴリズム
1.4.3 EARAPの修正
1.5 おわりに
2.レンダリング
2.1 序論
2.2 陰影計算
2.2.1 反射特性
2.2.2 光源の種類と輝度計算
2.3 大域照明
2.3.1 レンダリング方程式
2.3.2 ラジオシティ法
2.3.3 パストレーシング法
2.3.4 フォトンマップ法
2.4 事前計算付き高速レンダリング
2.4.1 イメージベースドライティング
2.4.2 事前計算付き高速輝度計算
2.5 光の散乱現象
2.5.1 光の散乱
2.5.2 最も簡単なモデル
2.5.3 一次散乱モデル
2.5.4 多重散乱モデル
2.5.5 さまざまな散乱現象の表現例
2.6 高度なレンダリング技術
2.6.1 深層学習とレンダリング
2.6.2 微分レンダリング
2.7 おわりに
3.キャラクタアニメーション
3.1 序論:
3.2 キャラクタアニメーションの基礎
3.2.1 スケルトン法
3.2.2 ジョイント階層構造
3.2.3 ワールド座標系とローカル座標系
3.2.4 座標変換とワールド姿勢
3.2.5 ローカル姿勢
3.2.6 フォワードキネマティクス
3.2.7 ポーズとモーション
3.3 インバースキネマティクス
3.3.1 四肢向けの解析的手法
3.3.2 勾配降下法の応用
3.3.3 二次計画問題としての定式化
3.3.4 発見的手法
3.4 モーション変形
3.4.1 アニメーションカーブの編集
3.4.2 インバースキネマティクスの応用
3.4.3 時空間最適化手法
3.5 データ駆動型モーション編集
3.5.1 ノンパラメトリック回帰法のIK応用
3.5.2 潜在空間モデルのIK応用
3.5.3 ニューラルネットワークの応用
3.6 おわりに
4.物理シミュレーション
4.1 序論
4.2 剛体シミュレーション
4.2.1 剛体とは
4.2.2 衝突検出と衝突応答
4.2.3 衝突検出の高速化
4.3 弾性体シミュレーション
4.3.1 弾性体と塑性体
4.3.2 力学的なシミュレーション手法
4.3.3 位置ベース法
4.4 流体シミュレーション
4.4.1 流体の性質とナビエ・ストークス方程式
4.4.2 格子/メッシュベース手法
4.4.3 粒子ベース手法
4.4.4 その他の流体シミュレーション手法
4.5 その他の自然現象シミュレーション
4.6 おわりに
引用・参考文献
索引
読者モニターレビュー【 堀 武司 様(ご専門:ソフトウェア工学、組込みシステム )】
本書は、三次元コンピュータグラフィックス(3DCG)の主要な研究分野として「モデリング」、「レンダリング」、「アニメーション」、及び「物理シミュレーション」の4つの分野を取り上げ、対象領域の問題を取り扱うための基本的な数理的枠組み、及び当該分野における主要な問題とその解法について、コンパクトだが丁寧な解説を提供している。
まえがきにもある通り本書は数学的にやや高度な内容を含んでおり、想定される読者は3DCG研究者を目指す学生や、3DCGツールやゲーム等のソフトウェア開発を自ら行う技術者などである。研究者や技術者ではないCGデザイナが読むには本書の内容は難解かもしれないが、第2章「レンダリング」は3DCGによる絵づくりの根本原理に関わる反射モデルや照明モデルの基礎を取り扱っており、この章だけは3DCG業務に従事する全ての人に読んで欲しい内容である。
4つの技術分野はそれぞれが非常に広範囲に渡るため網羅的な解説は難しい。そのため各章の内容は、例えば「モデリング」ならばサーフェースメッシュによる表現とその操作、「アニメーション」ならばスケルトン法に基づくキャラクターアニメーション、というように、ある程度絞り込まれたテーマに沿う形で構成されている。一方で、取り上げられたテーマに関しては基礎的な数理的表現から出発して実用的な問題解決手法に至るまで、丁寧な説明が積み上げられており、熟読すれば当該分野の最新論文を読解できる、もしくは自力でソフトウェア実装できる水準の深い理解が得られるだろう。
本書を構成する4章全てにおいて、発展的話題の一つとして深層ニューラルネットワークの活用が取り上げられている点が、最近の3DCG研究の動向を反映していると感じた。直近のSIGGRAPHの研究報告をみても何らかのAI、機械学習的手法を用いたものがかなりの割合を占めており、しばらくはこの傾向が続くと予想される。しかし、これらの研究でもまず3DCGの数理的枠組みの基礎があり、その上でAI的手法が適用されるのであるから、本書が取り扱う内容の重要性は今後も変わりないといえる。
「電子情報通信学会誌」 107巻,6号,2024/6/1,575頁,copyright(c)2024 IEICE
Journal of Digital Games Research Vol.17 No.1,2024 掲載日:2024/05/28
書評掲載されました。
「日本バーチャルリアリティ学会誌」2023年 Vol,28 No,4 掲載日:2024/02/14
『Book Introduction by Author』欄にて掲載されました。
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掲載日:2025/01/06
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掲載日:2024/10/01
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掲載日:2024/09/10
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掲載日:2024/01/17
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掲載日:2023/12/04
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掲載日:2023/11/02
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掲載日:2023/10/16
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