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3DCGの数理と応用

メディアテクノロジーシリーズ 1

3DCGの数理と応用

3DCG技術を高度に使いこなし,さらに発展させるため,その基礎を支える技術を理解できるように,モデリング・レンダリング・キャラクタアニメーション・物理シミュレーションの4つの基礎要素に分け,それぞれ章ごとに解説した。

発行年月日
2023/07/07
定価
4,290(本体3,900円+税)
ISBN
978-4-339-01371-9
在庫あり

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「日本バーチャルリアリティ学会誌」2023年 Vol,28 No,4

「日本バーチャルリアリティ学会誌」2023年 Vol,28 No,4

掲載日:2024/02/14

『Book Introduction by Author』欄にて掲載されました。

読者モニターレビュー【 堀 武司 様(ご専門:ソフトウェア工学、組込みシステム )】

掲載日:2023/07/10

本書は、三次元コンピュータグラフィックス(3DCG)の主要な研究分野として「モデリング」、「レンダリング」、「アニメーション」、及び「物理シミュレーション」の4つの分野を取り上げ、対象領域の問題を取り扱うための基本的な数理的枠組み、及び当該分野における主要な問題とその解法について、コンパクトだが丁寧な解説を提供している。

まえがきにもある通り本書は数学的にやや高度な内容を含んでおり、想定される読者は3DCG研究者を目指す学生や、3DCGツールやゲーム等のソフトウェア開発を自ら行う技術者などである。研究者や技術者ではないCGデザイナが読むには本書の内容は難解かもしれないが、第2章「レンダリング」は3DCGによる絵づくりの根本原理に関わる反射モデルや照明モデルの基礎を取り扱っており、この章だけは3DCG業務に従事する全ての人に読んで欲しい内容である。

4つの技術分野はそれぞれが非常に広範囲に渡るため網羅的な解説は難しい。そのため各章の内容は、例えば「モデリング」ならばサーフェースメッシュによる表現とその操作、「アニメーション」ならばスケルトン法に基づくキャラクターアニメーション、というように、ある程度絞り込まれたテーマに沿う形で構成されている。一方で、取り上げられたテーマに関しては基礎的な数理的表現から出発して実用的な問題解決手法に至るまで、丁寧な説明が積み上げられており、熟読すれば当該分野の最新論文を読解できる、もしくは自力でソフトウェア実装できる水準の深い理解が得られるだろう。

本書を構成する4章全てにおいて、発展的話題の一つとして深層ニューラルネットワークの活用が取り上げられている点が、最近の3DCG研究の動向を反映していると感じた。直近のSIGGRAPHの研究報告をみても何らかのAI、機械学習的手法を用いたものがかなりの割合を占めており、しばらくはこの傾向が続くと予想される。しかし、これらの研究でもまず3DCGの数理的枠組みの基礎があり、その上でAI的手法が適用されるのであるから、本書が取り扱う内容の重要性は今後も変わりないといえる。