株式会社コロナ社

シリーズ 情報科学における確率モデル

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2024.6.14 更新

シリーズ刊行のことば

われわれを取り巻く環境は,多くの場合,確定的というよりもむしろ不確実性にさらされており,自然科学,人文・社会科学,工学のあらゆる領域において不確実な現象を定量的に取り扱う必然性が生じる。「確率モデル」とは不確実な現象を数理的に記述する手段であり,古くから多くの領域において独自のモデルが考案されてきた経緯がある。情報化社会の成熟期である現在,幅広い裾野をもつ情報科学における多様な分野においてさえも,不確実性下での現象を数理的に記述し,データに基づいた定量的分析を行う必要性が増している。

一言で「確率モデル」といっても,その本質的な意味や粒度は各個別領域ごとに異なっている。統計物理学や数理生物学で現れる確率モデルでは,物理的な現象や実験的観測結果を数理的に記述する過程において不確実性を考慮し,さまざまな現象を説明するための描写をより精緻化することを目指している。一方,統計学やデータサイエンスの文脈で出現する確率モデルは,データ分析技術における数理的な仮定や確率分布関数そのものを表すことが多い。社会科学や工学の領域では,あらかじめモデルの抽象度を規定したうえで,人工物としてのシステムやそれによって派生する複雑な現象をモデルによって表現し,モデルの制御や評価を通じて現実に役立つ知見を導くことが目的となる。

昨今注目を集めている,ビッグデータ解析や人工知能開発の核となる機械学習の分野においても,確率モデルの重要性は十分に認識されていることは周知の通りである。一見して,機械学習技術は,深層学習,強化学習,サポートベクターマシンといったアルゴリズムの違いに基づいた縦串の分類と,自然言語処理,音声・画像認識,ロボット制御などの応用領域の違いによる横串の分類によって特徴づけられる。しかしながら,現実の問題を「モデリング」するためには経験とセンスが必要であるため,既存の手法やアルゴリズムをそのまま適用するだけでは不十分であることが多い。

本シリーズでは,情報科学分野で必要とされる確率・統計技法に焦点を当て,個別分野ごとに発展してきた確率モデルに関する理論的成果をオムニバス形式で俯瞰することを目指す。各分野固有の理論的な背景を深く理解しながらも,理論展開の主役はあくまでモデリングとアルゴリズムであり,確率論,統計学,最適化理論,学習理論がコア技術に相当する。このように「確率モデル」にスポットライトを当てながら,情報科学の広範な領域を深く概観するシリーズは多く見当たらず,データサイエンス,情報工学,オペレーションズ・リサーチなどの各領域に点在していた成果をモデリングの観点からあらためて整理した内容となっている。

本シリーズを構成する各書目は,おのおのの分野の第一線で活躍する研究者に執筆をお願いしており,初学者を対象とした教科書というよりも,各分野の体系を網羅的に著した専門書の色彩が強い。よって,基本的な数理的技法をマスターしたうえで,各分野における研究の最先端に上り詰めようとする意欲のある研究者や大学院生を読者として想定している。本シリーズの中に,読者の皆さんのアイデアやイマジネーションを掻き立てるような座右の書が含まれていたならば,編者にとっては存外の喜びである。

2018年11月 編集委員長 土肥 正

シリーズラインナップ

以下続刊

  • マルコフ連鎖と計算アルゴリズム(岡村寛之 著)
  • 確率モデルによる性能評価(笠原正治 著)
  • ソフトウェア信頼性のための統計モデリング(土肥 正・岡村寛之 共著)
  • ファジィ確率モデル(片桐英樹 著)
  • 高次元データの科学(酒井智弥 著)
  • 空間点過程とセルラネットワークモデル(三好直人 著)
  • 部分空間法とその発展(福井和広 著)

情報科学における確率モデルseries1

統計的パターン認識と判別分析

  • 栗田多喜夫・日高章理 共著
  • A5サイズ/236頁
  • 定価3,740円 (本体3,400円+税)
  • ISBN 978-4-339-02831-7

機械学習の基本タスクである回帰と識別のための様々な手法について,その本質と特性を解説

シリーズ 情報科学における確率モデル1 統計的パターン認識と判別分析
  • 栗田多喜夫・日高章理 共著
  • A5サイズ/236頁
  • 定価3,740円 (本体3,400円+税)
  • ISBN 978-4-339-02831-7
読者対象
機械学習,パターン認識,ニューラルネットなどに興味を持っている学生,研究者
書籍の特徴
本書は,パターン認識において用いられる線形回帰や線形判別分析といった手法について,「各手法が本質的になにを実現しようとしているのか」という点を理解するうえで一つの答えを示しています。パターン認識をこれから新たに学びたいと考えている読者はもちろん,各手法をもう少し統一的に理解がしたいと思っている読者にとっても気づきが得られる内容です。
本質的な理解のアプローチとして,機械学習の最も基本的なタスクである回帰と識別について最適な非線形関数がなにかを知り,パターン認識で使われる各手法がその最適な非線形関数をどのように近似しているのかを理解できるような構成となっています。この点はほかの書籍にはみられないアプローチです。
パターン認識をこれから新たに学びたいと考えている読者はもちろん,各手法をもう少し統一的に理解がしたいと思っている読者にとっても気づきが得られるはずです。

【各章について】

各章での説明の流れを簡単に説明します。
はじめの1,2章でベイズ識別の仮定と同様に,訓練サンプルが無限にあり,データの背後の確率的な関係が完全にわかっている場合について,変分法を用いて予測や識別のための最適な非線形関数を導出します。これにより,訓練用のデータ(訓練データ)から学習したモデルが究極的になにを学習しているかを理解します。
(ベイズ識別の理論では,対象の観測値とクラスとの確率的な関係が完全にわかっているという仮定のもとで,識別誤りを最小とする最適な方式が事後確率が最大のクラスの識別方式となることが知られています。)
しかし,実際の応用データでは,データの背後の確率的構造がわかっていることはまれで,それらを訓練データから推定する必要があります。訓練データから確率分布を推定することができれば,推定結果を利用して予測のための最適な非線形関数を近似するモデルを求めることができます。この点について3章で解説しています。
つづく4章では,確率分布の推定を経由せずに,訓練データから直接,入力ベクトルから目的変数の値を推定する関数を構成する手法(線形回帰分析)を解説。さらに5章で,同様にして訓練データから直接,入力ベクトルからクラスを推定する線形識別関数を求める手法として
  • 2クラス識別のための線形モデル:単純パーセプトロン,ADALINE,ロジスティック回帰,サポートベクトルマシン
  • 多クラス識別のための線形モデル:最小二乗線形識別関数,多項ロジスティック回帰
  • 線形識別関数の学習のためのモデルを層状に結合した,多層パーセプトロン
を解説します。
6章では,主成分分析と線形判別分析について,それぞれ手法の特徴と訓練データとの関係に触れたうえで解説を行い,本質的な理解を目指します。
7章では, 特徴ベクトルを非線形に変換することで,その空間で線形モデルを用いて予測や識別を行う手法であるカーネル法について解説します。この方法を用いることでサポートベクトルマシンの認識性能が飛躍的に向上しましたが,本書籍で扱ったほかの多くの線形手法を非線形に拡張する場合にも利用できます。本章ではカーネル回帰,カーネルサポートベクトルマシン,カーネル主成分分析,カーネル判別分析を詳しく採り上げます。
最後の8章では,訓練サンプルが無限にあり,データの背後の確率的な関係がわかっていると仮定して,判別基準を最大とする最適な非線形判別関数を用いて導出する(大津展之先生による手法)。さらに,導出した最適な非線形判別写像と線形判別分析との関係について議論し,カーネル法を別の視点から眺めてみることで,導出した最適な非線形判別分析写像から最適なカーネル関数の導出を行います(判別カーネル)。
目次
1. パターン認識とベイズ決定理論
1.1 パターン認識
1.2 ベイズ決定理論
 1.2.1 特徴ベクトルとクラスとの確率的関係
 1.2.2 ベイズ決定理論の定式化
 1.2.3 0-1損失の場合
1.3 正規分布の場合のベイズ識別
 1.3.1 二次識別関数
 1.3.2 線形識別関数
 1.3.3 テンプレートマッチング
 1.3.4 Fisherのアヤメのデータのベイズ識別

2. 最適な回帰と識別
2.1 機械学習
2.2 予測のための最適非線形回帰
 2.2.1 平均二乗誤差を最小とする最適な非線形関数の導出
 2.2.2 非線形回帰関数fopt(x)の最適性
 2.2.3 最適な非線形回帰関数fopt(x)で達成される誤差
 2.2.4 最適な非線形回帰関数の統計量
2.3 識別のための最小二乗非線形関数
 2.3.1 識別のための非線形関数を構成する方法
 2.3.2 識別のための最適な非線形回帰関数で達成される平均二乗誤差
2.4 識別のための非線形識別関数
 2.4.1 2クラス識別の場合
 2.4.2 Kクラスの場合

3. 確率分布の推定
3.1 確率分布の推定法
3.2 パラメトリックモデルによる確率分布の推定
 3.2.1 最尤法
 3.2.2 最尤法による確率密度関数の推定の応用
3.3 ノンパラメトリックモデルを用いる方法
 3.3.1 ノンパラメトリックな確率密度関数の推定
 3.3.2 核関数に基づく方法
 3.3.3 K-最近傍法
 3.3.4 K-最近傍法による確率分布の推定の応用
3.4 セミパラメトリックな手法
 3.4.1 混合分布モデル
 3.4.2 混合分布モデルのパラメータの最尤推定
 3.4.3 EMアルゴリスム
 3.4.4 混合分布モデルによる確率密度関数の推定の応用

4. 予測のための線形モデル
4.1 線形回帰分析
 4.1.1 線形回帰分析のモデル
 4.1.2 最小二乗法
 4.1.3 最適な線形回帰関数flinreg(x)で達成される平均二乗誤差
 4.1.4 最適な線形回帰関数の統計量
 4.1.5 線形回帰分析の応用
4.2 最適な非線形回帰関数との関係
 4.2.1 予測のための最適な線形回帰関数
 4.2.2 最適非線形回帰関数の線形近似
 4.2.3 条件付き確率の線形近似
 4.2.4 条件付き確率の線形近似による最適な非線形回帰関数の近似
4.3 線形モデルを用いた非線形回帰
 4.3.1 多項式回帰
 4.3.2 基底関数の線形モデルによる回帰
 4.3.3 回帰式のカーネル関数による表現
4.4 回帰分析と汎化性能
 4.4.1 多項式回帰と汎化性能
 4.4.2 モデルの良さの評価
4.5 正則化回帰
 4.5.1 リッジ回帰
 4.5.2 L1正則化回帰(lasso)

5. 識別のための線形モデル
5.1 線形識別関数とその性質
 5.1.1 線形識別関数
 5.1.2 線形識別関数の性質
 5.1.3 線形分離可能
5.2 単純パーセプトロン
 5.2.1 単純パーセプトロンのモデル
 5.2.2 単純パーセプトロンの学習
 5.2.3 アヤメのデータの単純パーセプトロンでの識別
5.3 Adaptive Linear Neuron(ADALINE)
 5.3.1 ADALINEのモデル
 5.3.2 ADALINEの学習
 5.3.3 回帰分析との関係
 5.3.4 正則化ADALINE
 5.3.5 アヤメのデータのADALINEでの識別
5.4 ロジスティック回帰
 5.4.1 ロジスティック回帰のモデル
 5.4.2 ロジスティック回帰のパラメータの学習
 5.4.3 Fisher情報行列を用いる学習法
 5.4.4 正則化ロジスティック回帰
 5.4.5 アヤメのデータのロジスティック回帰での識別
5.5 サポートベクトルマシン
 5.5.1 サポートベクトルマシンのモデル
 5.5.2 線形分離可能な場合のパラメータの学習
 5.5.3 線形分離可能でない場合のパラメータの学習
 5.5.4 サポートベクトルマシンとロジスティック回帰
 5.5.5 アヤメのデータの線形サポートベクトルマシンでの識別
5.6 多クラス識別のための線形識別関数の学習
 5.6.1 多クラス識別のための線形モデル
 5.6.2 最小二乗線形識別関数
 5.6.3 多項ロジスティック回帰
 5.6.4 アヤメのデータの多クラス識別
5.7 識別のための最適な非線形関数との関係
 5.7.1 識別のための最適な線形関数
 5.7.2 事後確率の線形近似
5.8 多層パーセプトロン
 5.8.1 多層パーセプトロンのモデル
 5.8.2 多層パーセプトロンの能力
 5.8.3 誤差逆伝播学習法
 5.8.4 畳込みニューラルネットワーク(CNN)

6. 主成分分析と判別分析
6.1 主成分分析
 6.1.1 主成分分析の問題設定
 6.1.2 第一主成分の導出
 6.1.3 第二主成分の導出
 6.1.4 高次の主成分の導出
 6.1.5 寄与率と累積寄与率
 6.1.6 主成分分析の適用例
 6.1.7 元のデータの再構成
 6.1.8 主成分スコアベクトル間の距離
6.2 線形判別分析
 6.2.1 一次元の判別特徴の抽出
 6.2.2 多次元の判別特徴の構成
 6.2.3 2段階写像としての判別写像
 6.2.4 判別特徴ベクトル間の距離
 6.2.5 線形判別分析の適用例

7. カーネル法
7.1 カーネル法とは
7.2 カーネル回帰分析
 7.2.1 カーネル回帰分析とは
 7.2.2 カーネル法を用いた最小二乗識別関数の学習
7.3 カーネルサポートベクトルマシン
 7.3.1 カーネルサポートベクトルマシンとは
 7.3.2 最適なハイパーパラメータの探索
7.4 カーネル主成分分析
7.5 カーネル判別分析
 7.5.1 カーネル判別分析とは
 7.5.2 カーネル判別分析の適用例

8. 最適非線形判別分析と判別カーネル
8.1 最適非線形判別写像
 8.1.1 最適非線形判別写像の導出
 8.1.2 事後確率ベクトルの線形判別分析
 8.1.3 最適非線形判別写像の線形近似
8.2 事後確率の近似を通した非線形判別分析
 8.2.1 正規分布を仮定することによる非線形判別分析
 8.2.2 K-最近傍法を用いた非線形判別分析
 8.2.3 ロジスティック回帰に基づく非線形判別分析
 8.2.4 非線形判別空間の比較
8.3 判別カーネル
 8.3.1 最適非線形判別分析の双対問題
 8.3.2 有効なカーネルの条件
 8.3.3 判別カーネルと周辺化カーネルの関係
 8.3.4 判別カーネルの族

付録
A.1 線形代数のまとめ
A.2 ベクトル・行列の微分と最適化の基礎
A.3 確率統計の基礎

引用・参考文献
あとがき
索引
more
著者からのメッセージ
パターン認識・機械学習分野の中で「回帰」と「識別」を中心に取り扱う本ですが,従来の類書では詳しく書かれていないであろう式展開なども多く盛り込んでいます。
特に「変分法」や「ベイズ事後確率の線形近似」という道具立てで回帰分析と判別分析の知られざる素性や性質を詳らかにしている部分などをお楽しみ頂ければと思います。
キーワード
パターン認識,機械学習,線形判別分析,カーネル判別分析,最適非線形判別分析,判別カーネル,線形回帰,ロジスティック回帰,カーネル回帰,最適非線形回帰,ベイズ決定理論,事後確率,変分法,サポートベクトルマシン,主成分分析,カーネル法,周辺化カーネル

情報科学における確率モデルseries2

ボルツマンマシン

  • 恐神 貴行 著
  • A5サイズ/220頁
  • 定価3,520円 (本体3,200円+税)
  • ISBN 978-4-339-02832-4

ボルツマンマシンの基本的な理論から学習方法、そして機械学習や強化学習への用い方について直観的に理解できるよう解説。

シリーズ 情報科学における確率モデル2 ボルツマンマシン
  • 恐神 貴行 著
  • A5サイズ/220頁
  • 定価3,520円 (本体3,200円+税)
  • ISBN 978-4-339-02832-4
読者対象
学部生が読めるレベルを心がけています。ボルツマンマシンを通じて機械学習・強化学習に必要な基礎的な知識が身に着けられます。一方で,網羅的ではありませんが,ボルツマンマシンに関する幅広い話題を取り上げているので,ボルツマンマシンや関連分野の研究者が読んでも新たな気付きが得られることを期待しています。
書籍の特徴
ボルツマンマシンという一つの確率モデルに限定して、機械学習・強化学習への幅広い適用方法について説明しています。ボルツマンマシン以外のモデルを機械学習・強化学習に用いる際にも有用な、確率的勾配法や強化学習の基礎について特に丁寧に説明しています。

【各章について】

各章での説明の流れを簡単に説明します。
1章では,「ボルツマンマシンとはなにか」,「学習するとはどういうことか」,「学習によってなにができるようになるのか」をテーマとして解説を行います。また,ボルツマンマシンは,「勾配法」や「確率的勾配法」を適用して学習することが多いので,これらの基礎についての確認も行います。
2章では,ボルツマンマシンを勾配法で学習する際に必要となる勾配や,勾配法に有用な情報を与えるヘッセ行列を具体的に導出します。なお,ボルツマンマシンの学習は一般には計算量的に困難であるため,何かしらの近似をするか,ボルツマンマシンの構造を限定する必要があります。この計算困難さを克服する「制限ボルツマンマシン」について,本章で解説します。
3章では,ボルツマンマシンが定める確率分布の期待値を近似的に評価します。ボルツマンマシンは確率分布を定めますが,この確率分布に関する期待値の評価が学習に必要となります。ただし,一般にはこの期待値を閉形式で書くことはできず,期待値を厳密に評価するのは計算量的に困難であるため,ここでは近似的に評価を行います。また,制限ボルツマンマシンが持つ構造を利用すると,近似に必要な計算を効率的に行えるようになることについても確認します。
ボルツマンマシンと関連する代表的な深層ニューラルネットワークに「深層信念ネットワーク」と「深層ボルツマンマシン」があり,これらのニューラルネットワークは多数の層からなります。4章では,これらについて,制限ボルツマンマシンを用いて層ごとに学習していく手法を解説します。これは深層学習が注目されるきっかけとなった手法です。
5章ではボルツマンマシンを用いた時系列モデルの解説を行います。ボルツマンマシンの構造を工夫すると,複数のパターンが時間の順番に並んだ時系列データを学習して,将来の値の予測などに使えるようになります。
時系列データは順番に観測されていきますが,データが生成される環境が時間とともに変化する場合には,その変化に合わせて時系列モデルを更新していく必要があります。6章では,各時点で観測されるパターンに基づいて,モデルのパラメータを逐次的に更新するオンライン学習について解説します。このオンライン学習を効率的に行うのが「動的ボルツマンマシン」です。
7章ではボルツマンマシンがどのように強化学習に使えるのかを解説します。強化学習では候補となる行動の数が多いと効率的な使用が難しくなりますが,ボルツマンマシンを用いることでこの難しさが解消されます。強化学習の基礎となるマルコフ決定過程から説明を始め,ボルツマシンを強化学習に適用していきます。強化学習の基礎的な内容も学べます。
目次
1. はじめに
1.1 ボルツマンマシンと深層学習
1.2 ボルツマンマシンの定義
1.3 ボルツマンマシンの可能性
1.4 学習の目的関数
1.5 勾配法
1.6 確率的勾配法
章末問題

2. ボルツマンマシンの学習
2.1 可視ユニットのみの場合
 2.1.1 勾配
 2.1.2 確率的勾配
 2.1.3 ヘブ則との関係
 2.1.4 ヘッセ行列
 2.1.5 まとめ
2.2 隠れユニットを持つ場合
 2.2.1 隠れユニットの必要性
 2.2.2 自由エネルギー
 2.2.3 勾配
 2.2.4 確率的勾配
 2.2.5 ヘッセ行列
 2.2.6 まとめ
2.3 判別モデルの学習
 2.3.1 目的関数
 2.3.2 勾配とヘッセ行列
 2.3.3 まとめ
2.4 回帰モデルの学習
 2.4.1 自由エネルギーを用いた回帰
 2.4.2 制限ボルツマンマシンの自由エネルギー
 2.4.3 期待エネルギー
 2.4.4 期待エネルギーを用いた回帰
章末問題

3. サンプリングと期待値の評価
3.1 ギブスサンプリング
3.2 コントラスティブダイバージェンス
3.3 制限ボルツマンマシンからのサンプリング
 3.3.1 ブロック化ギブスサンプラー
 3.3.2 生成モデルの学習
3.4 平均場近似
3.5 その他の手法
 3.5.1 重点サンプリング
 3.5.2 独立した生成器の利用
 3.5.3 フィッシャーダイバージェンス
章末問題

4. 深層モデルとその他の関連するモデル
4.1 深層信念ネットワーク
 4.1.1 確率分布とサンプリング
 4.1.2 層ごとの貪欲学習法
 4.1.3 自己符号化器
4.2 深層ボルツマンマシン
4.3 ガウスボルツマンマシン
 4.3.1 期待値で実数値を表現する場合の問題点
 4.3.2 ガウスベルヌーイ制限ボルツマンマシン
 4.3.3 スパイクスラブ制限ボルツマンマシン
4.4 マルコフ確率場
 4.4.1 ボルツマンマシンとイジングモデル
 4.4.2 高階ボルツマンマシン
章末問題

5. 時系列モデルの学習
5.1 目的関数と勾配法
5.2 条件付き制限ボルツマンマシン
 5.2.1 条件付き制限ボルツマンマシンの導出
 5.2.2 条件付き制限ボルツマンマシンの拡張
5.3 再帰的時間的制限ボルツマンマシン
 5.3.1 時間的制限ボルツマンマシン
 5.3.2 再帰的時間的制限ボルツマンマシンの導出
 5.3.3 再帰的時間的制限ボルツマンマシンにおける確率の評価
 5.3.4 再帰的時間的制限ボルツマンマシンの学習
章末問題

6. 時系列モデルのオンライン学習
6.1 はじめに
6.2 動的ボルツマンマシン
 6.2.1 有限動的ボルツマンマシン
 6.2.2 動的ボルツマンマシンの導出
 6.2.3 スパイク時間依存可塑性との関係
6.3 制約の緩和
6.4 連続値をとる時系列に対する動的ボルツマンマシン
 6.4.1 ガウス動的ボルツマンマシン
 6.4.2 自然勾配
 6.4.3 非線形特徴量
6.5 動的ボルツマンマシンの連続拡張
章末問題

7. 強化学習
7.1 マルコフ決定過程
7.2 最適性方程式と価値反復法
 7.2.1 有限期間の場合
 7.2.2 無限期間の場合
7.3 Q学習
7.4 活用と探索
7.5 SARSA法
7.6 方策反復法
7.7 価値関数の近似
 7.7.1 Q学習での関数近似
 7.7.2 SARSA法での関数近似
7.8 自由エネルギーを用いた強化学習
 7.8.1 自由エネルギーの勾配
 7.8.2 ボルツマン探索
7.9 部分観測環境における強化学習
 7.9.1 部分観測マルコフ決定過程
 7.9.2 動的ボルツマンマシンによる強化学習
章末問題

付録:隠れユニットを持つ動的ボルツマンマシン
A.1 確率分布
A.2 学習則

引用・参考文献
章末問題解答
索引
more
著者からのメッセージ
できるだけ直感的な理解が得られるように説明を工夫しました。これまで分からなかったことが「分かった」「なるほど」と思っていただける箇所があれば幸いです。
キーワード
ボルツマンマシン,制限ボルツマンマシン,動的ボルツマンマシン,ニューラルネットワーク,深層ネットワーク,深層学習,機械学習,強化学習,表現学習,深層強化学習,コントラスティブダイバージェンス,確率的勾配法,自由エネルギー,生成モデル,時系列,Q学習,SARSA

情報科学における確率モデルseries3

捜索理論における確率モデル

  • 宝崎 隆祐・飯田 耕司 共著
  • A5サイズ/296頁
  • 定価4,620円 (本体4,200円+税)
  • ISBN 978-4-339-02833-1

捜索理論について,初学者でも学べるように確率論や最適化理論,ゲーム理論などの捜索理論を理解するために必要な基礎理論から解説。

シリーズ 情報科学における確率モデル3 捜索理論における確率モデル
  • 宝崎 隆祐・飯田 耕司 共著
  • A5サイズ/296頁
  • 定価4,620円 (本体4,200円+税)
  • ISBN 978-4-339-02833-1
読者対象
本格的に捜索理論(または探索理論)を学びたいと思っている学生や研究者はもとより,「私達の身の回りに見出だせる問題を数理的に分析したい」と考えている読者も対象としています。これは,捜索理論がそのような分析手法の体系をもつオペレーションズ・リサーチ(OR)の一分野として発展したものであるため,実世界における意思決定問題への理論の具体的な適用手順を習得できるからです。
書籍の特徴
7章と10章では,数理的分析には欠かせない一般理論である「最適化理論」(線形計画法,非線形計画法,動的計画法及び変分法)と「ゲーム理論」の重要な定理や理論について,役立つことや応用を第一義として書いています。そのため,これらの理論に興味のある学生が,捜索理論に関連するその他の章をスルーして,7章と10章だけを読んでいただいても,理論の核となる部分を端的に学ぶことができます。
私達を取り巻く実世界には様々な意思決定場面があり,その問題を解くためには,まずはそれを記述・定義して,自分の目前に明示するところから始めなければいけません。それができれば,後は上記のような一般理論の大海の中でこれまで開発され蓄積されてきた解法が利用できるかもしれません。このような問題の記述・定義の作法についても,本書により学ぶことができます。
以上は,これまで出版された捜索理論(探索理論)関係の本とは異なる本書の特徴でもあります。
目次
1. はじめに

2. 確率論
2.1 集合と事象
 2.1.1 集合
 2.1.2 写像
 2.1.3 事象と確率
2.2 条件付き確率
 2.2.1 条件付き確率とは
 2.2.2 ベイズの定理
2.3 確率変数
 2.3.1 離散確率変数と連続確率変数
 2.3.2 離散確率変数と連続確率変数の例
 2.3.3 確率変数に関する特性値・期待値・分散
2.4 二次元平面上の確率計算
章末問題

3. 目標存在分布の推定
3.1 方位線情報による目標分布推定
 3.1.1 多角形による推定
 3.1.2 最尤推定による推定
3.2 定針・定速の拡散目標の分布推定
 3.2.1 デイタム位置が確実な場合の目標分布
 3.2.2 デイタム位置が不確実な場合の目標分布
3.3 ランダムウォーク移動目標の分布推定
3.4 スコーピオン号事件と捜索救難の発展
3.5 捜索実施結果を加味した目標存在の事後推定
 3.5.1 目標存在分布の更新
 3.5.2 重み付けシナリオ法による目標分布の推定
章末問題

4. 捜索センサーの探知論
4.1 捜索センサーの瞬間的な探知能力
4.2 目標移動におけるセンサーの探知能力
 4.2.1 探知ポテンシャル
 4.2.2 横距離探知確率と有効捜索幅
4.3 ビークルの捜索能力
章末問題

5. 静止目標に対する捜索モデルとその評価
5.1 区域捜索のモデル
 5.1.1 平行捜索
 5.1.2 ランダム捜索
 5.1.3 区域捜索法の比較
5.2 デイタム捜索のモデル
 5.2.1 規則的なデイタム捜索
 5.2.2 ランダム・デイタム捜索
 5.2.3 デイタム捜索法の比較
章末問題

6. 移動目標に対する捜索モデルとその評価
6.1 区域捜索と動的増分係数
6.2 移動目標と捜索者の会的
 6.2.1 近接可能領域
 6.2.2 探知方位の分布
6.3 デイタム捜索
 6.3.1 定針・定速目標に対するデイタム捜索
 6.3.2 ランダムウォーク目標に対するデイタム捜索
6.4 バリヤー哨戒
 6.4.1 8の字哨戒
 6.4.2 往復哨戒
 6.4.3 8の字哨戒と往復哨戒の比較
章末問題

7. 最適化理論
7.1 線形計画法
 7.1.1 線形計画問題による定式化
 7.1.2 双対理論
7.2 非線形計画法
 7.2.1 制約条件のない最適化問題
 7.2.2 等式制約をもつ最適化問題とラグランジュの未定乗数法
 7.2.3 不等式制約をもつ最適化問題とKarush-Kuhn-Tucker条件
7.3 動的計画法
 7.3.1 最適性の原理
 7.3.2 動的計画法による定式化とさまざまな最適政策
7.4 変分法
 7.4.1 オイラー方程式
 7.4.2 オイラー・ラグランジュ方程式の拡張
章末問題

8. 静止目標に対する最適資源配分
8.1 クープマン問題
8.2 その他の評価尺度の最適捜索
 8.2.1 生存探知確率
 8.2.2 期待利得
章末問題

9. 移動目標に対する最適資源配分
9.1 探知確率最大化問題
 9.1.1 マルコフ移動目標に対する最適資源配分
 9.1.2 パス型移動目標に対する最適資源配分
9.2 期待利得最大化問題
9.3 捜索経路の制約付き捜索問題

10. ゲーム理論
10.1 問題のゲームによる表現
10.2 2人ゼロ和ゲームと均衡解
 10.2.1 鞍点
 10.2.2 支配戦略
 10.2.3 連続ゲーム
 10.2.4 混合戦略と均衡解
 10.2.5 ミニマックス定理と最適混合戦略の求め方
10.3 非ゼロ和ゲームとナッシュ均衡解
10.4 展開形ゲーム表現と多段ゲーム
 10.4.1 展開形ゲームの定義
 10.4.2 展開形ゲームにおける戦略と行動戦略
 10.4.3 確率ゲーム
10.5 情報不完備ゲームとベイジアンゲーム
章末問題

11. 捜索ゲーム
11.1 静止目標に関する捜索ゲーム
11.2 移動目標に関する捜索ゲーム
 11.2.1 目標のパス型移動を用いた均衡解
 11.2.2 目標のマルコフ移動を用いた均衡解
11.3 捜索ゲームに関するその他のモデル
 11.3.1 虚探知の発生する捜索
 11.3.2 多段階の捜索ゲーム
 11.3.3 目標の初期位置が個人情報である情報不完備捜索ゲーム
章末問題

参考文献
索引
more
著者からのメッセージ
最後に,捜索理論を学ぼうとする方に,捜索理論は何の役に立つのかを伝えるべきでしょうが,捜索理論を学ぼうと考えた時点で,これを何に使おうかという腹案はお持ちかと思います。なぜなら,捜索理論そのものはORの分野でもマイナーであり,あえてこの分野を探し当てた方は,何かしらの特別な意図をお持ちかと思うからです。したがって,本書の「まえがき」や「はじめに」の章や目次に目を通していただき,捜索理論が役立つ具体的な問題の草案を練っていただきたく思います。
2019年初頭にあたって,捜索理論の主要テーマの領域外にも,日本が直面している災害対策や防衛問題,小さなテーマで言えば,無人航空機やドローンの効果的な活用などには,捜索理論に対する時代のニーズがあるようにも思えます。
キーワード
オペレーションズ・リサーチ,センサー,探知,哨戒,監視,捜索救難,レーダー,音響センサー,ソノブイ,数理計画法,最適化理論,線形計画法,非線形計画法,動的計画法,変分法,確率論,ゲーム理論,探知確率,存在分布,ランダムウォーク,ソリューション,デイタム捜索,区域捜索,バリヤー哨戒

情報科学における確率モデルseries4

マルコフ決定過程- 理論とアルゴリズム -

  • 中出 康一 著
  • A5サイズ/202頁
  • 定価3,190円 (本体2,900円+税)
  • ISBN 978-4-339-02834-8

本書では,現在の状況を表す状態を観測しながら,ある利益(費用)規範の下で最適な決定を行う確率過程であるマルコフ決定過程の基本理論や実際に問題を定式化して解き,最適決定政策を求める際必要となる計算手法に焦点をあて解説した。

シリーズ 情報科学における確率モデル4 マルコフ決定過程
  • 中出 康一 著
  • A5サイズ/202頁
  • 定価3,190円 (本体2,900円+税)
  • ISBN 978-4-339-02834-8
読者対象
マルコフ決定過程について基礎から学びたい学生・研究者を読者として想定しています。オペレーションズ・リサーチの研究に従事し,確率的な要素を含む動的最適化問題における最適決定政策を導出する方法に興味がある方,ならびに情報分野で強化学習について学ぶ際その基礎となるマルコフ決定過程について理解したい方などが対象となります。
書籍の特徴
この本のみでマルコフ決定過程の理論を学べるように,基礎となる動的計画法,確率変数,確率過程について詳しく述べています。その上で,マルコフ決定過程の各種最適化規範について,基本的かつ重要な理論と,最適決定を求めるアルゴリズムについて詳細に示しました。近似アルゴリズムと強化学習に関連する事項については基本的な内容にとどめて記述しました。強化学習等を主題としてその中でマルコフ決定過程について触れている本はいくつか見られます。しかし,マルコフ決定過程の基礎理論を中心に日本語で書かれた本としては近年では他に類するものがないと考えています。

【各章について】

1章ではマルコフ決定過程の概要を,2章では基礎理論としてマルコフ連鎖を中心として確率過程について述べています。3章から5章では,有限期間期待利得問題,無限期間総割引期待利得問題,平均利得問題のそれぞれについて,最適政策導出に関する理論と,最適政策を求めるアルゴリズムについて詳細に述べています。6章では連続時間上のセミマルコフ決定過程について述べ,7章では部分観測可能マルコフ決定過程に関する基礎的な事項を示しています。8章では,より発展的な内容として,大規模問題における近似アルゴリズムの観点からの強化学習へのアプローチ,また最適性方程式から導かれる最適政策のもつ性質の理論的導出について触れています。
目次
1. マルコフ決定過程の概要
1.1 ORと確率モデル
1.2 動的計画法
1.3 マルコフ決定過程
1.4 定式化の例
1.5 マルコフ決定過程の拡張と発展

2. マルコフ連鎖と再生過程
2.1 離散型確率変数
 2.1.1 確率,期待値,分散
 2.1.2 条件付き確率
 2.1.3 独立
 2.1.4 離散型確率変数の例
2.2 連続型確率変数
 2.2.1 分布関数
 2.2.2 期待値,分散,独立,条件付き確率
 2.2.3 指数分布の性質
2.3 離散時間マルコフ連鎖
 2.3.1 推移確率
 2.3.2 状態の分類
2.4 周期
2.5 マルコフ連鎖の定常確率と極限確率
2.6 有限マルコフ連鎖
2.7 再生過程
2.8 再生報酬過程
2.9 マルコフ報酬過程
2.10 セミマルコフ過程
2.11 連続時間マルコフ連鎖
 2.11.1 極限確率と定常確率
 2.11.2 一様化

3. 有限期間総期待利得マルコフ決定過程
3.1 有限期間総期待利得問題
3.2 最適性方程式
3.3 値反復法
3.4 数値例

4. 総割引期待利得マルコフ決定過程
4.1 無限期間総割引期待利得
4.2 最適性方程式と理論的性質
4.3 計算アルゴリズム
 4.3.1 値反復法
 4.3.2 政策反復法
 4.3.3 修正政策反復法
 4.3.4 線形計画法

5. 平均利得マルコフ決定過程
5.1 平均利得
 5.1.1 平均利得の上極限,下極限
 5.1.2 可算無限状態のとき
 5.1.3 定常マルコフ政策
 5.1.4 平均利得と定常マルコフ政策
5.2 平均利得に関する関係式
5.3 相対値と平均利得
5.4 総割引期待利得と平均利得の関係
5.5 マルコフ決定過程の分類
5.6 計算アルゴリズム(単一連鎖の場合)
 5.6.1 値反復法
 5.6.2 政策反復法
 5.6.3 修正政策反復法
 5.6.4 線形計画法
5.7 計算アルゴリズム(多重連鎖の場合)
 5.7.1 値反復法
 5.7.2 政策反復法
 5.7.3 線形計画法

6. セミマルコフ決定過程
6.1 セミマルコフ決定過程とは
6.2 総割引期待利得
6.3 平均利得
6.4 連続時間マルコフ決定過程(推移間隔が指数分布に従う場合)
 6.4.1 一様化:割引期待利得規範の場合
 6.4.2 一様化:平均費用規範の場合
 6.4.3 例

7. 部分観測可能マルコフ決定過程
7.1 部分観測可能マルコフ決定過程とは
7.2 信念
7.3 定式化
7.4 値関数の線形性
7.5 ベクトル集合の生成

8. マルコフ決定過程の展開
8.1 近似最適化アルゴリズム
8.2 強化学習とマルコフ決定過程
 8.2.1 状態価値と行動価値
 8.2.2 TDアルゴリズム
 8.2.3 Sarsa,Q学習
 8.2.4 TD(λ),Sarsa(λ)アルゴリズム
8.3 決定直後の状態を用いた近似アルゴリズム
8.4 最適政策の性質
 8.4.1 客の到着許可問題
 8.4.2 最適政策の持つ性質の証明

引用・参考文献
索引
more
著者からのメッセージ
マルコフ決定過程の理論の中でも特に重要な点に絞って詳細に記述しました。古典的な内容ではありますが,お役に立つことが出来れば著者として望外の喜びです。
キーワード
確率,確率過程,オペレーションズ・リサーチ,動的計画法,状態,決定,マルコフ連鎖,再生過程,マルコフ決定過程,クラス,最適化,部分観測可能,最適政策,平均利得,無限期間総割引期待利得,有限期間期待利得,セミマルコフ決定過程,近似最適化,強化学習,Q学習,SARSA

情報科学における確率モデルseries5

エントロピーの幾何学

  • 田中 勝 著
  • A5サイズ/206頁
  • 定価3,300円 (本体3,000円+税)
  • ISBN 978-4-339-02835-5

これまでの形式とは異なる情報幾何学(τ-情報幾何学)が作れるということを平易に解説。

シリーズ 情報科学における確率モデル5 エントロピーの幾何学
  • 田中 勝 著
  • A5サイズ/206頁
  • 定価3,300円 (本体3,000円+税)
  • ISBN 978-4-339-02835-5
読者対象
測度論的確率論に興味はあるが専門家になる必要はない学部生・大学院生および研究者を対象としています。
また,情報幾何学のこれまでとは異なる取扱いに興味のある大学院生・研究者も対象としています。
書籍の特徴
測度論的確率論では,Radon-Nikodymの定理をvon Neumannによる証明に沿って他書を参照すること無く理解できるように,敢えて冗長な記述を試みました。一般的な数学書とは違って,できるだけ行間を読まないで済むように書いたつもりです。
また,通常の情報幾何学で登場するスコア関数に対する一次独立性の仮定を明確に式で書いておきました(67ページ)。さらに,確率変数による積分とパラメータ(自然座標)による微分が交換できる条件を定理の形で与えておきました(75-77ページ)。通常は,これらのことは正則条件という名の下に明示されないことが多いです。
ところで,いわゆるTsallisエントロピーは,本来ならばHavrda-Charvatエントロピーと言うべきです(123ページ)。この点を指摘した本も少ないと思います。また,この非加法的エントロピーが優加法性と劣加法性のどちらでも満たすように調整できることもあまり知られていないようです。この本では,劣加法性の場合に注目して取り扱っていきますが,スケール変換に対応する座標をうまく追加することで加法性をもつエントロピーに変換できることが具体的に示されます。
目次
1. 本書の構成

2. 測度と確率
2.1 可測空間と測度空間
2.2 用語の一般的な定義
2.3 Rieszの表現定理
2.4 Radon-Nikodymの定理
 2.4.1 Lebesgueの分解定理の証明
 2.4.2 Radon-Nikodymの定理の証明
2.5 確率測度
2.6 Dirac測度と離散確率

3. τ-アファイン空間
3.1 τ-関数
3.2 τ-アファイン構造
 3.2.1 アファイン空間
 3.2.2 平行移動
 3.2.3 測度空間
 3.2.4 十分統計量
3.3 アファイン座標系とτ-アファイン共役
 3.3.1 τ-対数尤度
 3.3.2 スコア関数
 3.3.3 τ-アファイン共役

4. 経路順序確率

5. 縮約と計量
5.1 縮約
5.2 計量
5.3 Koszul接続と双対接続
5.4 接空間T_{¥check{p}}R_Ωの直交分解
5.5 Cramer-Raoの不等式

6. くり込みとエントロピー
6.1 素朴なエントロピー(発散)
6.2 くり込み
6.3 エントロピー(有限)
6.4 縮約と期待値
6.5 Havrda-CharvatエントロピーとRenyiエントロピー
6.6 ダイバージェンス

7. τ-情報幾何学におけるq-正規分布
7.1 q-正規分布
7.2 q-正規分布のBayes表現

8. τ-アファイン構造の多重性
8.1 τ-変換
8.2 q-正規分布のτ-変換

9. 非加法的エントロピー
9.1 恒等式と非加法性
9.2 べき型分布と相互情報量

10. 加法的エントロピーへの変換
10.1 加法性の回復
10.2 スケール座標の役割

11. ホログラフィー原理
11.1 計量とホログラフィー原理
11.2 加法・非加法変換

12. τ-平均

引用・参考文献
索引
more
著者からのメッセージ
最初の1章と2章を焦らずにじっくり納得しながら読んでもらえると,他の測度論的確率論に関する本を読むときにも,かなり敷居が下がると思います。
この本の3章以降は,測度空間に特別な平行移動を導入することで,これまでの形式とは異なる情報幾何学(τ-情報幾何学)が作れるというところがポイントになります。そこでは,マトリョーシカのような確率分布の入れ子構造も登場します。さらには,Fisher計量を部分行列として含むような不定計量が得られるのも面白いところです。もし,Mostowの剛性定理がうまく拡張できてτ-情報幾何学に適用できるようになれば,ここで構成される双曲空間の剛性とFisher計量の一意性についても何か言えるようになるはずですが,どなたか興味のある方はチャレンジしてみませんか?
キーワード
測度論,確率論,アファイン空間,双対構造,エントロピー,レニー・エントロピー,ツァリス・エントロピー,加法性,非加法性,べき型分布,指数型分布族,非指数型分布族,一般化ピタゴラスの定理,情報幾何学,ダイバージェンス,ルジャンドル変換,ヘルダー共役,AdS/CFT対応,余次元,不定計量,q-正規分布,くり込み,階層構造

情報科学における確率モデルseries6

確率システムにおける制御理論

  • 向谷 博明 著
  • A5サイズ/270頁
  • 定価4,290円 (本体3,900円+税)
  • ISBN 978-4-339-02836-2

確率微分方程式に支配される確率システムを基盤とした電気・機械・プロセスシステムにおけるシステム理論、動的ゲームへの応用を解説

シリーズ 情報科学における確率モデル6 確率システムにおける制御理論
  • 向谷 博明 著
  • A5サイズ/270頁
  • 定価4,290円 (本体3,900円+税)
  • ISBN 978-4-339-02836-2
読者対象
確率システムを基盤とした動的ゲーム問題,および関連する数値計算について,基礎から応用まで幅広く学びたい大学院生・研究者を読者の対象としています。また,システム理論を軸として,実際の現場で活躍されている開発者も含まれます。特に,確率制御を含む動的ゲーム理論を将来的に応用してみたい技術者も対象にしています。
書籍の特徴
現在に至るまで,ダイナミクスを伴わない静的ゲームに関しては,多数の良書が存在します。一方,ダイナミクスを前提とした動的ゲームに関する書籍は,洋書では,多数の良書があるにもかかわらず,著者が知る限り,和書では中々見当たらないのが実情です。そこで,本書では,確率システムを基盤とした電気・機械・プロセスシステムにおけるシステム理論および動的ゲームへの応用について述べています。本書の前半部分では,確率システムにおける基礎となる内容から,システム理論の基盤に到るまで,広範囲に記述しています。一方,後半では,動的ゲーム理論についての結果や実装方法,関連する事例等を平易に記述しています。

【各章について】

1章では,今後,必要となる数学の基礎的内容について説明を行います。さらに,関連する表記法についても説明を行います。内容に関しては,最適化手法を重点に説明を行います。また,最適解を得るために必要な数値計算法について触れ,その後,システムの安定性から始まり,システム制御理論ではおなじみの最適レギュレータ問題に関して,考察を行います。特に,最大原理や動的計画法による解法について説明を行います。また,近年のシステム制御理論の成果として重要なH_∞制御理論や線形行列不等式(LMI)について触れます。
2章では,まず,連続時間における確率過程であるウィナー過程に対して,ブラウン運動を定義し,その性質について解説します。特に,確率微分方程式や関連する伊藤の公式,無限小生成作用素について,簡易な証明を含め解説します。さらに,実際の確率システムの応用についても述べます。その後,マルコフ過程においては,マルコフジャンプ確率システムについて述べます。
3章では,初めに連続時間確率システムに対して,基本的な結果である確率システムにおける可制御性,可観測性に関して議論を行い,その後,最適レギュレータ問題として良く知られる最適制御に関する結果を与えます.また離散時間システムに対しても,同様な結果を与えます。
4章では,確率リカッチ代数方程式に見られる確率非線形行列方程式を解くための数値計算アルゴリズムについて言及します。初めに,確定システムに見られるリカッチ方程式に対して,シュール法,クラインマンアルゴリズムとして知られるニュートン法を基盤とした手法を中心に,アルゴリズムや収束に関する性質について述べます.その他,再急降下法によるアルゴリズム,座標降下法によるアルゴリズムによるもの等,代表的なアルゴリズムについて考察を行います。
5章では,物理モデルのシステムパラメータが劇的に変化する,あるいは不規則なモード遷移を伴うシステムを扱う手法として良く利用される連続時間・離散時間マルコフジャンプシステムにおける安定化や最適制御問題について考察を行います。特に,線形行列不等式理論に基づく安定性から安定化,最適制御に到るまで,最新の結果について詳細を説明します。
6章では,伊藤の確率微分方程式に基づく非線形確率システムにおける様々な制御問題を対象に,制御則を得るために必要な確率ハミルトン・ヤコビ・ベルマン方程式の導出,および数値解法を中心に考えます。また,4ステップスキームとよばれる数値計算法や,確定ハミルトン・ヤコビ・ベルマン方程式の数値解法に由来するアルゴリズムに関して,解説を行います。
最後の7章では,確率システムにおけるパレート最適戦略,ナッシュ均衡戦略,スタッケルベルグ戦略を考察します。特に,システム理論との関連,および不確定要素や環境変動に対してロバスト性を達成するための現在までの取り組みや成果について,基礎的事項も含め紹介します。その他,解析手法としての動的ゲーム理論や,不確定要素や環境変動をどのように解釈・表現すれば戦略の存在条件が定式化できるかを中心に述べます。
目次
1. 数学的準備
1.1 ベクトル・行列の性質
1.2 二次形式と微分
1.3 行列の微分
1.4 最適化
 1.4.1 ラグランジュの未定乗数法
 1.4.2 カルーシュ・クーン・タッカー(KKT)条件
 1.4.3 ニュートン法
 1.4.4 勾配法
1.5 リアプノフ安定論
1.6 最適レギュレータ
 1.6.1 最大原理による導出
 1.6.2 動的計画法による導出
1.7 リアプノフ代数方程式
1.8 H_∞制御
 1.8.1 H_∞ノルム
 1.8.2 H_∞制御問題の一般解
1.9 線形行列不等式:LMI
1.10 まとめ

2. 確率過程論
2.1 確率過程
 2.1.1 ウィナー過程
 2.1.2 ブラウン運動の性質
 2.1.3 確率微分方程式
 2.1.4 確率微分方程式によるモデル表現
 2.1.5 伊藤の公式
 2.1.6 例題
2.2 確率システムの安定性
2.3 シミュレーション技法
 2.3.1 ブラウン運動のシミュレーション
 2.3.2 オイラー・丸山近似
2.4 まとめ

3. 連続・離散時間線形確率システム
3.1 連続時間線形確率システム
 3.1.1 連続時間線形確率リアプノフ代数方程式
 3.1.2 連続時間線形確率システムの最適レギュレータ問題
3.2 離散時間線形確率システム
 3.2.1 離散時間線形確率リアプノフ代数方程式
 3.2.2 安定化
 3.2.3 離散時間線形確率システムの最適レギュレータ問題
3.3 まとめ

4. 数値計算アルゴリズム
4.1 リカッチ代数方程式
4.2 確率リカッチ代数方程式
 4.2.1 ニュートン法による数値計算アルゴリズム
 4.2.2 LMIによる数値計算アルゴリズム
 4.2.3 数値例
4.3 連立型確率リカッチ代数方程式
 4.3.1 ニュートン法による数値計算アルゴリズム
 4.3.2 リアプノフ代数方程式による数値計算アルゴリズム
 4.3.3 座標降下法による数値計算アルゴリズム
4.4 離散型マルコフジャンプ確率システムに関する数値計算アルゴリズム
4.5 まとめ

5. マルコフジャンプ確率システム
5.1 連続時間マルコフジャンプ確率システムの安定化
 5.1.1 事前結果ならびに準備
 5.1.2 主要結果
 5.1.3 モード非依存型制御
5.2 連続時間マルコフジャンプ確率システムの最適レギュレータ問題
 5.2.1 事前結果ならびに準備
 5.2.2 主要結果
5.3 離散時間マルコフジャンプ確率システムの安定化
 5.3.1 事前結果ならびに準備
 5.3.2 主要結果
5.4 離散時間マルコフジャンプ確率システムの最適レギュレータ問題
 5.4.1 事前結果ならびに準備
 5.4.2 主要結果
5.5 まとめ

6. 非線形確率システム
6.1 安定性
6.2 最適レギュレータ問題
 6.2.1 有限時間の場合
 6.2.2 無限時間の場合
6.3 H_∞制御
 6.3.1 非線形確率有界実補題
 6.3.2 非線形確率システムにおけるH_∞制御
6.4 数値解法
 6.4.1 逐次近似法
 6.4.2 ガラーキン・スペクトル法
 6.4.3 チェビシェフ多項式の導入
6.5 まとめ

7. 動的ゲーム理論への応用
7.1 パレート最適戦略
 7.1.1 確率パレート最適戦略
 7.1.2 確率パレート最適戦略の解
7.2 ナッシュ均衡戦略
 7.2.1 混合H_2/H_∞制御問題
 7.2.2 確率ナッシュ均衡戦略
 7.2.3 マルコフジャンプ確率システムにおけるナッシュ均衡戦略
 7.2.4 ナッシュ均衡戦略対が存在するための必要十分条件
 7.2.5 ニュートン法
 7.2.6 非線形確率ナッシュ均衡戦略
7.3 スタッケルベルグ均衡戦略
 7.3.1 スタッケルベルグ均衡戦略問題
 7.3.2 主要結果
 7.3.3 数値計算アルゴリズム
 7.3.4 数値例
7.4 min-max戦略:サドルポイント均衡
 7.4.1 弱拘束確率ナッシュ均衡戦略問題
 7.4.2 主要結果
7.5 まとめ

引用・参考文献
索引
more
著者からのメッセージ
近年,原子力エネルギーから再生可能エネルギーへのシフトでは,ウィンドファームでの風車の配置問題,あるいは,それらの電力を利用したピークシフト・ピークカット問題等が知られています。さらには,複数ドローンに見られる協調制御等,動的ゲーム理論が大いに活躍できる諸問題が多く存在します。本書では,このようは現実問題を解くためのヒント,あるいは道具となる結果を網羅しています。この本によって,少しでもこの分野に興味を抱く研究者が増え,活性化することを願ってやみません。
キーワード
動的ゲーム,パレート最適戦略,ナッシュ均衡戦略,スタッケルベルグ均衡戦略,フィルタ付き確率空間,標準ブラウン運動,ウィナー過程,確率微分方程式,伊藤の公式,無限小生成作用素,オイラー・丸山近似,最大原理,動的計画法,リカッチ代数方程式,線形行列不等式

情報科学における確率モデルseries7

システム信頼性の数理

  • 大鑄 史男 著
  • A5サイズ/270頁
  • 定価4,400円 (本体4,000円+税)
  • ISBN 978-4-339-02837-9

信頼性工学の基盤をなす2状態単調システムから多状態システムに至るまでの議論を概観する。

シリーズ 情報科学における確率モデル7 システム信頼性の数理
  • 大鑄 史男 著
  • A5サイズ/270頁
  • 定価4,400円 (本体4,000円+税)
  • ISBN 978-4-339-02837-9
読者対象
安全・リスク解析や信頼性解析の基礎に興味をもつ研究者及び大学院の学生を対象とする。読む上で,確率論についての基礎的素養は前提とするが,順序集合論については一応本書中で解説される。
書籍の特徴
本書は,信頼性理論について近年の話題である多状態システムに関する議論を,その背景となる2状態システムの議論と共に理論的側面に焦点を当てながらまとめたものである。従来の信頼性理論は,故障と正常の2状態のみを前提とした複数の部品とそれらから構成されるシステムについて,部品の信頼性とシステムの信頼性の確率論的な関係を議論するものであった.実際には,これらの2状態に限定されず,多様な劣化状態を取ることから,近年では多状態システムとして,2状態の議論を多状態の議論に拡張することが試みられている.その際,部品やシステムの状態空間の構造として,順序集合が想定される.本書は,2状態から多状態に至るシステムの信頼性を順序集合論的・確率論的に議論し,実際のシステムの信頼性評価にとって有用な手法を解説する。
目次
1.順序集合論の準備と記号
1.1 順序集合,全順序集合
 1.1.1 順序集合
 1.1.2 擬順序集合
 1.1.3 直積順序集合
 1.1.4 ハッセ図
1.2 極大元,最大元,極小限,最小元
1.3 上側単調集合と下側単調集合
1.4 上限と下限
 1.4.1 上限と下限の定義
 1.4.2 束
1.5 単調増加関数
1.6 アソシエイトな確率
1.7 状態ベクトルに対する操作と記号

2.2状態システム
2.1 構造関数
 2.1.1 2状態システムの定義
 2.1.2 コヒーレントシステムの例
 2.1.3 構造関数と直列,並列システム
 2.1.4 双対システム
2.2 極小パスベクトル,極小カットベクトル
 2.2.1 極小パスベクトルと極小カットベクトルの定義
 2.2.2 単調構造関数の直・並列表現と並・直列表現
2.3 モジュール分解
 2.3.1 モジュール
 2.3.2 極小カットベクトル,極小パスベクトルとモジュール分解
2.4 システムの信頼性の計算
 2.4.1 システムの信頼性
 2.4.2 包除原理
 2.4.3 排反積和法
 2.4.4 信頼度関数とブール変数による期待値計算
 2.4.5 k-out-of-n:Gシステムの信頼度によるシステム信頼度の凸表現
 2.4.6 信頼度関数のS形
2.5 システム信頼度の上界と下界
 2.5.1 極小パスおよびカットベクトルによるシステム信頼度の上界と下界
 2.5.2 モジュール分解によるシステム信頼度の上界と下界

3.2状態システムの劣化過程
3.1 寿命分布関数
 3.1.1 寿命分布
 3.1.2 バスタブ曲線
 3.1.3 寿命分布のパラメーター族
 3.1.4 ポアソン過程
3.2 エージングによる寿命分布関数のクラス分類
 3.2.1 エージング
 3.2.2 IFR分布と指数分布
 3.2.3 IFRA分布と指数分布
3.3 コヒーレントシステムの寿命分布
 3.3.1 コヒーレントシステムの寿命分布の上界と下界
 3.3.2 コヒーレントシステムと閉包性
3.4 エージングとシステムの構造
 3.4.1 指数分布とコヒーレントシステムの構造
 3.4.2 IFR分布とコヒーレントシステムの構造
 3.4.3 IFRA分布とコヒーレントシステム
3.5 エージング性の和に関する保存性
3.6 再生過程
 3.6.1 定義と再生回数の分布
 3.6.2 再生関数M(t)=E[N(t)]
3.7 ショックモデル
 3.7.1 ポアソンショックモデルのエージング性
 3.7.2 累積損傷臨界モデル
 3.7.3 一変量ショックモデルの拡張
 3.7.4 二変量ショックモデル
3.8 多変量エージングと正の相関
 3.8.1 多変量エージング
 3.8.2 境界分布
 3.8.3 二変量アーラン分布のNBU性とIFRA性
 3.8.4 多変量エージングの定義について
 3.8.5 正の相関性

4.多状態システム
4.1 多状態システムの定義
4.2 直列システムと並列システム
4.3 k-out-of-n:Gシステム
 4.3.1 内包されるシステム
 4.3.2 k-out-of-n:Gシステムの定義と性質
4.4 モジュール分解

5.多状態システムの確率的評価と劣化過程
5.1 多状態システムの確率的評価
 5.1.1 多状態システムの信頼性評価方法
 5.1.2 モジュール分解によるシステムの信頼性評価
 5.1.3 モジュール分解による上界と下界の計算
 5.1.4 数値例
5.2 多状態システムの劣化過程
 5.2.1 IFRA閉包定理とNBU閉包定理
 5.2.2 多状態システムのハザード変換
 5.2.3 IFRA過程とNBU過程

6.2状態システムにおける重要度
6.1 Birnbaum重要度
 6.1.1 臨界状態ベクトル
 6.1.2 臨界状態ベクトルを求めるためのアルゴリズム
 6.1.3 Birnbaum重要度
6.2 臨界重要度
6.3 狭義臨界重要度
6.4 Fussell-Vesley重要度
6.5 いくつかの例
6.6 モジュール分解を介した重要度の計算
6.7 直・並列システムにおける重要度の計算
 6.7.1 直・並列システムにおけるBirnbaum重要度
 6.7.2 直・並列システムにおける臨界重要度
 6.7.3 直・並列システムにおけるFussell-Vesely重要度
 6.7.4 Birnbaum,臨界およびFussell-Vesely重要度における大小関係の間の整合性
 6.7.5 直・並列システムにおける狭義臨界重要度
6.8 Barlow-Proschan重要度
 6.8.1 Barlow-Proschan重要度―修理を考慮しない場合―
 6.8.2 平均をとる場合―修理を考慮しない場合―
 6.8.3 Barlow-Proschan重要度―部品ごとに修理人が存在する場合―
 6.8.4 故障頻度とBirnbaum重要度

7.多状態システムにおける重要度
7.1 多状態臨界状態ベクトル
7.2 多状態Birnbaum重要度
7.3 多状態Birnbaum重要度とモジュール分解
7.4 多状態臨界重要度
 7.4.1 多状態臨界重要度の定義
 7.4.2 モジュール分解と臨界重要度との関係
7.5 多状態Barlow-Proschan重要度
 7.5.1 確率過程{Xi(t),t>=0}と保全
 7.5.2 時点重要度
 7.5.3 多状態Barlow-Proschan重要度―保全を考慮しない場合―
 7.5.4 平均をとる場合―保全を考慮しない場合―
 7.5.5 多状態Barlow-Proschan重要度―保全を考慮する場合―
7.6 二つの部品と修理人―人の場合の重要度について―

8.多状態システムの拡張―あとがきにかえて―
8.1 状態空間の順序構造
8.2 ネットワークとしての状態空間

引用・参考文献
索引
more
著者からのメッセージ
実際に鉛筆(筆記用具)と紙(ノート)を手に,計算をフォローしながら読み進めて下さい。何事も書いてみることが大切かと思います。
キーワード
システムの信頼性,コヒーレントシステム,レリバント性,単調性,モジュール分解,信頼性の評価方法,Birnbaum重要度,Fussell-Vesely重要度,寿命分布関数,指数分布関数,ポワソン過程,PF2,TP2,IFR,IFRA,NBU,NBUE,DMRL,エージングとシステムの構造,ショックモデル,正の相関性,アソシエイション

情報科学における確率モデルseries8

確率的ゲーム理論

  • 菊田 健作 著
  • A5サイズ/254頁
  • 定価4,070円 (本体3,700円+税)
  • ISBN 978-4-339-02838-6

不確実な状況下での意思決定問題に生かせる多種多様な2人ゲームのモデルを解説

シリーズ 情報科学における確率モデル8 確率的ゲーム理論
  • 菊田 健作 著
  • A5サイズ/254頁
  • 定価4,070円 (本体3,700円+税)
  • ISBN 978-4-339-02838-6
読者対象
不確実性下の意思決定の局面でゲーム理論を応用することに関心を持つ方の役に立つことを期待しています。線形代数,微分積分,グラフ理論,確率統計等の基礎知識を持っている方には読みやすい内容であると思います。
書籍の特徴
不確実性下の意思決定あるいは最適化問題に対する2人ゲーム理論の応用を念頭において2人非協力ゲーム理論の基礎を述べ,例を与えたものです。具体的には,2人ゼロ和有限ゲーム,2人非ゼロ和有限ゲーム,2人無限ゲーム,2人不完備情報ゲームについて解説しています。2人ゼロ和ゲームモデルにおいては最適戦略を,2人非ゼロ和ゲームモデルにおいてはナッシュ均衡戦略を,不完備情報ゲームモデルにおいてはベイズ均衡戦略を考えています。戦略の計算に慣れ親しんでもらい,モデルの特徴を掴んでもらうために数値例や問を用意しています。例の中には,最近では話題となることが少ない,古典的な2人ゲームが含まれています。また,モデル化の参考になるようにと,いくつかの意思決定問題をいくつかの2人ゲームとして定式化してモデルのバリエーションを提案しています。

【各章について】

章をまたがってタイトルが同じである例の内容は関連しています。これを踏まえた上で,例は取捨選択して読み進めることができます。また,第4 章は第6 章より後に読むことができます。
目次
本書で使用する記号について

1.意思決定とゲーム理論
1.1 不確定性の下での意思決定
1.2 戦略型のゲーム

2.2人ゼロ和有限ゲーム
2.1 行列ゲーム
 2.1.1 ゲームの鞍点
 2.1.2 戦略の支配
 2.1.3 混合戦略
 2.1.4 ミニマックス定理
2.2 行列ゲームの解法
 2.2.1 図による解法
 2.2.2 線形計画法による解法
 2.2.3 2人定和有限ゲーム
2.3 行列ゲームの例
 2.3.1 線形計画問題(その1)
 2.3.2 立地ゲーム(その1)
 2.3.3 関門クリア問題(その1)
 2.3.4 段取りを考慮した関門クリア問題
 2.3.5 タイミングゲーム(その1)
 2.3.6 ポーカーゲーム(その1)
 2.3.7 数合わせゲーム
 2.3.8 在庫管理問題(その1)
 2.3.9 ブロットー大佐ゲーム(その1)
 2.3.10 数量割引問題(その1)
 2.3.11 侵入者捕捉問題(その1)
 2.3.12 探索と順序の問題(その1)
 2.3.13 合戦と順序付けのモデル(その1)
章末問題

3.2人非ゼロ和有限ゲーム
3.1 双行列ゲーム
3.2 双行列ゲームのナッシュ均衡
3.3 双行列ゲームと意思決定
 3.3.1 完全均衡点
 3.3.2 ランク1のゲーム
3.4 関連した話題
 3.4.1 ねじり均衡点
 3.4.2 シュタッケルベルク均衡
 3.4.3 双行列ゲームの相関均衡
 3.4.4 進化的に安定な戦略
3.5 双行列ゲームの例
 3.5.1 立地ゲーム(その2)
 3.5.2 線形計画問題(その2)
 3.5.3 タイミングゲーム(その2)
 3.5.4 在庫管理問題(その2)
 3.5.5 ブロットー大佐ゲーム(その2)
 3.5.6 数量割引の問題(その2)
 3.5.7 探索と順序の問題(その2)
 3.5.8 合戦と順序付けのモデル(その2)
章末問題

4.無限ゲーム
4.12 人ゼロ和無限ゲーム
 4.1.1 ε最適戦略
 4.1.2 マクシミン戦略
 4.1.3 単位正方形上のゲーム
 4.1.4 凹凸ゲーム
4.2 2人無限ゲームの例
 4.2.1 タイミングゲーム(その3)
 4.2.2 ポーカーゲーム(その2)
 4.2.3 ポーカーゲーム(その3)
 4.2.4 関門クリア問題(その2)
 4.2.5 資源配分ゲーム
 4.2.6 円板上のゲーム
 4.2.7 侵入者捕捉問題(その2)
 4.2.8 探索と順序の問題(その3)
4.3 タイミングゲーム(その4)
章末問題

5.展開型のゲーム
5.1 ゲームの標準化
5.2 完全情報を持つゲーム
5.3 完全記憶を持つゲーム
5.4 混合戦略と行動戦略
章末問題

6.情報不完備ゲーム
6.1 情報不完備ゲームとベイズ均衡
6.2 ベイジアンゲームの例
 6.2.1 線形計画問題(その3)
 6.2.2 立地ゲーム(その3)
 6.2.3 在庫管理問題(その3)
 6.2.4 ブロットー大佐ゲーム(その3)
 6.2.5 探索と順序の問題(その4)
 6.2.6 探索と順序の問題(その5)
章末問題

7.種々の話題
7.1 純粋戦略ナッシュ均衡を持つゲーム
 7.1.1 ポテンシャルゲーム
 7.1.2 クールノーの複占市場
7.2 多段ゲームの例
 7.2.1 確率化ゲーム
 7.2.2 生存ゲーム
 7.2.3 累積ゲーム
7.3 ランデブー探索
 7.3.1 非対称基本モデル
 7.3.2 対称ランデブー探索問題
 7.3.3 直線上の3人ミニマックスランデブー探索
 7.3.4 グラフ上のランデブー探索
章末問題

引用・参考文献
問および章末問題の解答
索引
more
著者からのメッセージ
本書で挙がった例に限らず,意思決定の局面において2人非協力ゲーム理論の応用を検討するのに本書が参考になればありがたいです。
キーワード
不確実性下の意思決定,オペレーションズ・リサーチ,マクシミン戦略,2人ゼロ和ゲーム,最適戦略,線形計画法,動的計画法,2人非ゼロ和ゲーム,ナッシュ均衡,相関均衡,不完備情報ゲーム,ベイジアンゲーム,タイミングゲーム,ポーカーゲーム

情報科学における確率モデルseries9

ベイズ学習とマルコフ決定過程

  • 中井 達 著
  • A5サイズ/232頁
  • 定価3,740円 (本体3,400円+税)
  • ISBN 978-4-339-02839-3

ベイズの定理に基づく学習と,それをもとにした部分観測可能なマルコフ決定過程を詳述

シリーズ 情報科学における確率モデル9 ベイズ学習とマルコフ決定過程
  • 中井 達 著
  • A5サイズ/232頁
  • 定価3,740円 (本体3,400円+税)
  • ISBN 978-4-339-02839-3
読者対象
予備知識として,大学1年次での線形代数,微分・積分と初歩の確率論と数理統計学を身に着けた方
書籍の特徴
本書は,直接に知ることのできない状態に関する情報を解析するための基本的な方法として用いられるベイズの定理に基づく学習と,それをもとにした部分観測可能なマルコフ決定過程の基本的な結果と応用についてまとめた。

【各章について】

1章「確率と確率過程」:本書で必要となる確率と確率過程の基本的な用語と性質について簡単に解説する。
2章「確率的順序関係」:ベイズの定理にもとづく学習を解析する上で基本となる確率的順序関係について、とくに必要となる尤度比順序を中心に述べる。
3章「マルコフ決定過程」:多段決定過程を解析する手法である動的計画法と最適性の原理を説明し,マルコフ決定過程の基本的性質についてまとめる。
4章「ジョブサーチと確率的逐次割当問題」:マルコフ決定過程のひとつである期待値最大化問題であるジョブサーチと確率的逐次割当問題を中心に説明する。
5章「学習と情報」:部分観測可能なマルコフ連鎖を中心に,ベイズの定理にもとづく学習による事前分布と事後分布の関係などをまとめる。
6章「部分観測可能な2状態マルコフ決定過程」:部分観測可能な2状態マルコフ決定過程として,逐次解析や探索問題をはじめ最適停止問題などについて解説する。
7章「部分観測可能な逐次割当問題」:部分観測可能なマルコフ決定過程としてジョブサーチや確率的逐次割当問題,最適選択問題を取り上げ,その基本的な性質を解析する。
目次
1.確率と確率過程
1.1 確率と確率変数
 1.1.1 確率空間
 1.1.2 確率変数
 1.1.3 期待値(平均)と分散
 1.1.4 同時分布と周辺分布
 1.1.5 独立
 1.1.6 確率変数の和
 1.1.7 特性関数
 1.1.8 極限定理
1.2 条件付き確率と期待値
 1.2.1 条件付き確率
 1.2.2 条件付き期待値
1.3 確率分布
 1.3.1 二項分布
 1.3.2 ポアソン分布
 1.3.3 一様分布
 1.3.4 指数分布
 1.3.5 ガンマ分布
 1.3.6 正規分布
1.4 計数過程
 1.4.1 確率過程
 1.4.2 ポアソン過程
 1.4.3 到着時間間隔
 1.4.4 非斉次ポアソン過程
 1.4.5 ポアソン過程の合成
1.5 マルコフ連鎖とマルコフ過程
 1.5.1 マルコフ連鎖
 1.5.2 チャップマン–コルモゴロフ方程式
 1.5.3 離散時間マルコフ過程
1.6 連続時間の確率過程
 1.6.1 連続時間マルコフ連鎖
 1.6.2 チャップマン–コルモゴロフ方程式
 1.6.3 コルモゴロフの方程式
 1.6.4 出生死滅過程

2.確率的順序関係
2.1 確率順序
2.2 故障率関数と順序
 2.2.1 故障率関数
 2.2.2 故障率順序
2.3 尤度比順序
2.4 尤度比順序とTP_2
 2.4.1 TP_2
 2.4.2 MTP_2
 2.4.3 シフト尤度比順序
2.5 関数類による順序関係

3.マルコフ決定過程
3.1 動的計画法
 3.1.1 多段決定過程
 3.1.2 最適方程式
 3.1.3 最適性の原理
3.2 多段決定過程
 3.2.1 確率的多段決定過程
 3.2.2 定常政策とマルコフ決定過程
 3.3 割引のあるマルコフ決定過程
 3.3.1 最適方程式
 3.3.2 最適政策
 3.3.3 逐次近似法
 3.3.4 政策反復法
3.4 最適支出問題
 3.4.1 アウトカムと確率過程
 3.4.2 確定的最適支出問題
3.5 マルコフ過程の最適支出問題

4.ジョブサーチと確率的逐次割当問題
4.1 ジョブサーチ
 4.1.1 関数T_F(z)とS_F(z)
 4.1.2 最適方程式と最適政策
 4.1.3 リコールのあるジョブサーチ
4.2 確率的逐次割当問題
 4.2.1 ハーディの補題
 4.2.2 確率的逐次割当問題
 4.2.3 マルコフ連鎖の確率的逐次割当問題
 4.2.4 割引のある確率的逐次割当問題
4.3 ポアソン過程の確率的逐次割当問題
4.4 最適選択問題

5.学習と情報
5.1 ベイズの定理
 5.1.1 ベイズの定理
 5.1.2 事前分布と事後分布
5.2 共役分布族
 5.2.1 ポアソン分布
 5.2.2 指数分布
 5.2.3 期待値が未知の正規分布
5.3 部分観測可能な2状態マルコフ連鎖
 5.3.1 2状態マルコフ連鎖
 5.3.2 学習プロセス
 5.4 部分観測可能なマルコフ連鎖
 5.4.1 可算状態のマルコフ連鎖
 5.4.2 事前情報と事後情報
5.5 部分観測可能なマルコフ過程
 5.5.1 離散時間マルコフ過程
 5.5.2 事前情報と事後情報
 5.5.3 正規分布に基づくモデル
5.6 一度に複数の値を観測する学習プロセス
 5.6.1 独立な確率変数の場合
 5.6.2 MTP_2の場合

6.部分観測可能な2状態マルコフ決定過程
6.1 逐次解析
6.2 探索問題
 6.2.1 目的物が動かない場合
 6.2.2 マルコフ連鎖の探索問題
6.3 部分観測可能な2状態マルコフ決定過程
 6.3.1 部分観測可能な2状態マルコフ連鎖
 6.3.2 部分観測可能な最適停止問題
 6.3.3 部分観測可能な取替問題

7.部分観測可能な逐次割当問題
7.1 部分観測可能なジョブサーチ
7.2 部分観測可能な確率的逐次割当問題
7.3 部分観測可能な最適選択問題

おわりに
引用・参考文献
索引
more
著者からのメッセージ
マルコフ決定過程や部分観測可能なマルコフ決定過程については,すでに多くの著書や論文があるが,本書はベイズの定理に基づく学習と部分観測可能なマルコフ決定過程を中心に述べたものである。必要に応じて予備知識を復習し,本書を読み進めていただければと思う。
キーワード
マルコフ連鎖 マルコフ過程 マルコフ決定過程 動的計画法 ベイズの定理 尤度比順序 部分観測可能 ジョブサーチ 割当問題 最適停止問題

情報科学における確率モデルseries10

最良選択問題の諸相 -秘書問題とその周辺-

  • 玉置 光司 著
  • A5サイズ/270頁
  • 定価4,510円 (本体4,100円+税)
  • ISBN 978-4-339-02840-9

最適な採用決定のためのいわゆる秘書問題に関する確率モデルとその周辺についての解説書。

NEW
シリーズ 情報科学における確率モデル10 最良選択問題の諸相 -秘書問題とその周辺-
  • 玉置 光司 著
  • A5サイズ/270頁
  • 定価4,510円 (本体4,100円+税)
  • ISBN 978-4-339-02840-9
書籍の特徴
本書は秘書問題の中で重要な位置を占める最良選択問題を中心に分かりやすく解説する。厳密な理論展開というよりは直感的理解を重んじた記述になっているので、理系学部で学ぶ微分積分と応用確率論の知識があれば十分読みすすむことができる。

【各章について】

1章「秘書問題の主要モデル」:最適化基準と利用可能な情報の組合せからなる四つの問題,すなわち無情報型最良選択問題,無情報型順位最小化問題,完全情報型最良選択問題,完全情報型順位最小化問題を紹介する。
2章「無情報型最良選択問題の展開」:無情報型最良選択問題の多方面への一般化を試みる。
3章「無情報型順位最小化問題の展開」:無情報型順位最小化問題に関係する変形モデルをいくつか紹介する。
4章「Sum–the–odds定理とその展開」:Sum–the–odds定理も無情報型最良選択問題の一般化と考えられるが,1–sla(1–stage look–ahead)ルールとの関係から興味深い応用につながる。
5章「Fergusonの秘書問題」:Fergusonの秘書問題は秘書問題のルーツといえる数当てゲームのグーゴル(Googol)と深く関係している。
6章「出現数が未知の場合の最良選択問題」:無情報型最良選択問題および完全情報型最良選択問題においては,応募者総数nは既知であった。本章では未知の場合への拡張を試みる。
7章「期間問題」:期間最大化という新しい最適化基準の下で秘書問題を考える。期間問題と最良選択問題の間の興味深い対応関係も示される。
8章「PPPとFIモデル」:秘書問題では,nを大きくしたときの特性値の挙動に大きな関心が寄せられるが,これを調べることは,完全情報型問題の場合は容易でない。この困難を克服する試みとして提案されたPPP(planar Poisson process)によるアプローチを紹介する。
目次
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

1.秘書問題の主要モデル
1.1 秘書問題
1.2 無情報型モデル
 1.2.1 無情報型最良選択問題
 1.2.2 無情報型順位最小化問題
1.3 完全情報型モデル
 1.3.1 完全情報型最良選択問題
 1.3.2 完全情報型順位最小化問題

2.無情報型最良選択問題の展開
2.1 拒否とリコール
 2.1.1 Petruccelliモデル
 2.1.2 もう一つの拒否モデル
2.2 候補者選択問題
 2.2.1 割引を考慮したNIBC
 2.2.2 坂口モデル
 2.2.3 1–slaルールの最適性
2.3 利得の一般化
 2.3.1 ベストあるいはセカンドベストの選択
 2.3.2 セカンドベストの選択
2.4 トレーニングサンプル付最良選択問題
 2.4.1 トレーニングサンプル
 2.4.2 漸近挙動

3.無情報型順位最小化問題の展開
3.1 メモリの制限
 3.1.1 メモリサイズ
 3.1.2 メモリサイズ1のNIRM
 3.1.3 無限問題
3.2 NIRMの簡易ルール
 3.2.1 短縮型ルール
 3.2.2 漸近挙動とNHPP

4.Sum–the–odds定理とその展開
4.1 Sum–the–odds定理
4.2 Sum–the–odds定理の一般化
 4.2.1 独立でないベルヌーイ試行
 4.2.2 FIBCの一般化
4.3 Sum–the–multiplicative–odds定理

5.Fergusonの秘書問題
5.1 グーゴル
5.2 Fergusonの生成ルール
5.3 Gnedinの生成ルール

6.出現数が未知の場合の最良選択問題
6.1 不確実性の導入
6.2 無情報型問題
 6.2.1 Presman and Soninモデル
 6.2.2 Samuel–Cahnモデル
 6.2.3 Brussの連続時間モデル
6.3 完全情報型問題
 6.3.1 Porosinskiモデル
 6.3.2 Samuel–Cahnモデル
6.4 Petruccelliの部分情報型最良選択問題
 6.4.1 PET
 6.4.2 PETとPORの奇妙な一致

7.期間問題
7.1 応募者数が既知の期間問題
 7.1.1 無情報型期間問題
 7.1.2 完全情報型期間問題
7.2 応募者数が未知の無情報型期間問題
7.3 最良選択問題と期間問題の交互対応

8.PPPとFIモデル
8.1 PPP
8.2 FIBC
 8.2.1 最適ルール
 8.2.2 成功確率
8.3 PETとFIBC.2
 8.3.1 最適ルール
 8.3.2 成功確率
8.4 PORとFIBC
 8.4.1 最適ルール
 8.4.2 成功確率

付録
A.1 マルチンゲール停止定理
A.2 単調ルールの下での期待利得
引用・参考文献
あとがき
索引
more
著者からのメッセージ
本書を読んで秘書問題に関心を抱いた読者にはGilbert and Mosteller(1966)を薦める。この論文は、その後の発展の萌芽となったモデルを多く含み、今なおこの分野を目指す人の必読論文であり続けている。
キーワード
秘書問題 最良選択問題 順位最小化問題 期間問題 動的計画法 最適停止問題 グーゴル Sum–the–odds定理 1–slaルール PPP

情報科学における確率モデルseries11

協力ゲームの理論と応用

  • 菊田 健作 著
  • A5サイズ/284頁
  • 定価4,840円 (本体4,400円+税)
  • ISBN 978-4-339-02841-6

複数の主体が関わる協力ゲーム理論の基礎から応用までを自学自習できる良書

Coming Soon
シリーズ 情報科学における確率モデル10 最良選択問題の諸相 -秘書問題とその周辺-
  • 菊田 健作 著
  • A5サイズ/284頁
  • 定価4,840円 (本体4,400円+税)
  • ISBN 978-4-339-02841-6
書籍の特徴
本書は,複数の主体が関わる状況に対して,主体の協力によって得られた価値を主体間で分配するための考え方の一つである協力ゲーム理論の入門的な内容である。自学自習ができるように,複数の問と章末問題、その解答も掲載した。
目次
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

1. 多人数協力ゲーム
1.1 特性関数型協力ゲーム
1.2 特性関数の性質
 1.2.1 優加法的ゲームと単調ゲーム
 1.2.2 凸ゲーム
 1.2.3 対称ゲーム
 1.2.4 定和ゲーム
 1.2.5 単純ゲーム
 1.2.6 本質的ゲーム
 1.2.7 平衡ゲーム
 1.2.8 (n,n-1)ゲーム1
 1.2.9 特性関数のメビウス変換
1.3 特性関数の話題
 1.3.1 部分ゲームと全平衡ゲーム
 1.3.2 双対ゲーム
 1.3.3 戦略的に同値なゲーム
 1.3.4 協力ゲームの被覆
 1.3.5 協力ゲームの多重線型拡大
 1.3.6 費用配分ゲーム
 1.3.7 協力ゲームと確率
1.4 協力ゲームの解
 1.4.1 協力ゲームの配分
 1.4.2 解の定義
 1.4.3 配分間の支配関係
 1.4.4 妥当配分集合
 1.4.5 公理による解の導出
 1.4.6 費用配分ゲームの配分
 1.4.7 解の双対性*
章末問題

2. コア
2.1 コアの定義
2.2 コアの存在条件
2.3 凸ゲームとコア
2.4 最小コア
章末問題

3. シャープレイ値
3.1 シャープレイによる定義と導出
 3.1.1 シャープレイ値の導出
 3.1.2 プレイヤーの順列による導出
 3.1.3 ダミープレイヤーとnullプレイヤー
3.2 限界貢献性による導出
3.3 ポテンシャル関数の離散勾配
3.4 投票力指数
3.5 有権者のパワーの計算
 3.5.1 シャープレイ値の表現
 3.5.2 有権者のパワー
3.6 凸ゲームのシャープレイ値
3.7 確率的値*
3.8 重み付きシャープレイ値*
章末問題

4. 仁
4.1 仁の定義
4.2 仁の性質
4.3 (n,n-1)ゲームの仁
4.4 仁と線形計画法
4.5 平衡集合族による仁の導出
4.6 整合性による(準)仁の導出
4.7 単純ゲームと仁
章末問題

5. カーネルと交渉集合
5.1 交渉集合
5.2 カーネル
5.3 凸ゲームのカーネルと交渉集合
5.4 妥当配分集合に対するカーネル*
章末問題

6. コアと安定集合
6.1 安定集合
 6.1.1 安定集合の定義
 6.1.2 3人ゲームのコアと安定集合
 6.1.3 安定集合が存在しない協力ゲーム
6.2 単純ゲームのコアと安定集合
6.3 コアと安定集合の一致
章末問題

7. 協力ゲームの応用例
7.1 最適化問題と協力ゲーム
 7.1.1 最小費用生成木ゲーム
 7.1.2 トラベリングセールスマンゲーム
 7.1.3 最大流ゲーム
 7.1.4 線形生産ゲーム
7.2 割り当てゲーム
 7.2.1 ●●●
 7.2.2 順列ゲーム
7.3 市場ゲーム
 7.3.1 市場ゲームは全平衡ゲーム
 7.3.2 限界貢献がおおむね大きいゲーム*
7.4 資産分配問題
 7.4.1 破産問題と解
 7.4.2 破産問題と仁
7.5 施設使用料決定問題
 7.5.1 空港ゲームのシャープレイ値
 7.5.2 空港ゲームの仁
7.6 在庫管理問題
 7.6.1 需要不確定,1期間モデル
 7.6.2 経済発注量モデル
7.7 確率的特性関数型の協力ゲーム
 7.7.1 達成可能集合
 7.7.2 確率的特性関数型の協力ゲームの仁
章末問題

8. 双行列ゲーム
8.1 双行列ゲームの共同戦略
8.2 ナッシュの交渉解
 8.2.1 ナッシュの交渉解の公理
 8.2.2 ナッシュの交渉解の存在
 8.2.3 ナッシュの交渉解の他の特徴付
8.3 双行列ゲームにおけるナッシュの交渉解
 8.3.1 固定基準点のナッシュの交渉解
 8.3.2 変動基準点のナッシュの交渉解
8.4 譲渡可能な効用の存在
章末問題

9. 種々の話題
9.1 NTUゲーム
 9.1.1 NTUゲームの定義
 9.1.2 NTUゲームのコア
 9.1.3 KKMS定理*
 9.1.4 シャープレイのNTU値
9.2 協力ゲームとその周辺
章末問題

引用・参考文献
問および章末問題の解答
索引
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著者からのメッセージ
本書を読んで秘書問題に関心を抱いた読者にはGilbert and Mosteller(1966)を薦める。この論文は、その後の発展の萌芽となったモデルを多く含み、今なおこの分野を目指す人の必読論文であり続けている。
キーワード
秘書問題 最良選択問題 順位最小化問題 期間問題 動的計画法 最適停止問題 グーゴル Sum–the–odds定理 1–slaルール PPP
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