CGによるシミュレーションと可視化

メディア学大系 11

CGによるシミュレーションと可視化

CGアニメーションで表現されるダイナミックな動き,質感,形状の理論にせまる

  • 口絵
ジャンル
発行年月日
2023/04/28
判型
A5
ページ数
182ページ
ISBN
978-4-339-02797-6
CGによるシミュレーションと可視化
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定価

2,970(本体2,700円+税)

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  • 内容紹介
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  • 広告掲載情報

【読者対象】
コンピュータグラフィックス(CG)技術に関して勉強・研究を行っている大学生や大学院生。また,強い志をもった高校生や大学・研究機関でCGを研究・教育している教員。

【書籍の特徴】
世界で最初のグラフィックシステムであるSketchpadが開発されてから60年ほど経つが,その間に多くの大学や研究機関によって現実的なCGを生み出すための方法が研究されてきた。それにより,現在では見た目では写真にカメラで撮影した映像と見分けがつかないようなものを創り出すことが可能となった。物理シミュレーションを使えば,CGアニメーションの表現として使える様々な現象をコンピュータ内で再現することができる。一方でその理解のためには,物理に関する知識はもちろん,数学,力学,数値演算など様々なことを学ばなければならない。本書ではそれらを可能な限り基礎から解説し,最先端の技術まで網羅するように心がけた。

【各章について】
1 章では,CG における物理シミュレーションの位置づけや役割に関して概説する。
2 章では,物理シミュレーションを理解するうえで欠かすことができない数学と力学に関して解説する。
3 章では,「アルゴリズム」を利用して図形形状をデザインする例を紹介する。アルゴリズムとして手順をコード化することで,少ないデータで複雑な形状を再現することが可能となる。
4 章では,流体シミュレーションに関して解説する。流体力学で流体がどのように扱われているかを説明した後,流体の支配方程式であるナビエ・ストークス方程式を中心に,CG への応用方法について説明する。
5 章では,物体同士の衝突などに代表される剛体シミュレーションに関して説明する。また,布や糸,クッションなどの柔らかい「弾性体」を扱う方法も解説する。
6 章では,シミュレーションや実験計測などで得られたデータを視覚的に解析するコンピュータビジュアリゼーション(可視化)について説明する。作品としてのCG ではなく,解析のためにどのようにCG が利用されデータの解析が行われているかについて述べる。
7 章では,流れ場や磁場などのデータに含まれるベクトルデータの可視化方法を紹介する。
8 章では,温度や圧力といった各点がただ一つの数値をもつスカラデータの可視化方法をまとめる。

【著者からのメッセージ】
CGという分野はパソコンさえあれば数学や物理のシミュレーションを容易に実験することができる特殊な分野ですが,先端技術に関して勉強しよう思うと何から始めたらいいのかわからないという人も少なくないと思います。本書は,そのような人の役に立つ内容になっていると思います。
また本書では,さまざまなアルゴリズムの実装に関して,SideFX 社のHoudini というツールを利用しています。アルゴリズムをベースとして,造形/シミュレーションを実践したい人に向けて,CG とプログラミングの結びつきが強力なHoudini を用いることで,その手法を理解してもらうことを目指しました。

1963年にIvan Sutherlandが世界で最初のグラフィックスシステムであるSketchpadを開発してから60年ほどであるが,その間にコンピュータグラフィックス(CG)技術は目を見張るような進展を遂げてきた。CGを扱う多くの企業が誕生し,多くの大学や研究機関でより現実的なCGを生み出すためのアルゴリズムが研究されてきた。それによって現在では,見た目では写真やカメラで実際に撮影した映像と見分けがつかないようなものをつくり出すことができるようになった。さらには,コンピュータやグラフィックスハードウェア,およびディスプレイ装置の進歩とともにCG技術が一般にも広く普及したことにより,だれでもより高い品質のCGを素早くつくれるようにしたいとい
う欲求が出てくるのも当然のことである。

CGアニメーションにおいて,ダイナミックなシーンではキャラクタは自由に動きまわり,それによってさまざまな動きやエフェクトが生じる。従来これらの動きやエフェクトのクオリティは,制作者の技量による部分が大きかった。しかしながら,CGが使われるシーンが増えるにつれて,もっと簡単につくれないかという要求が生まれてきた。そして注目されたのが,物理シミュレーションである。物理シミュレーションを利用すれば,CGアニメーションの表現として使えるさまざまな現象をコンピュータ内で再現することが可能となる。その一方で,物理シミュレーションの理解のためには物理に関する知識はもちろん,数学,力学,数値演算などさまざまなことを学ぶ必要があるた
め,これからCGを学ぼうという学生や技術者にとってはハードルが高くなる。

また,CGは作品制作だけでなく,工業,医療,自然科学の分野でも利用されている。これらの分野では製品の構造を決めるためのシミュレーションや,病巣の発見,自然現象の解明など実験や計測で得られたデータを視覚的に解析するためにCGを利用している。

本書では,読者として,CGシミュレーション技術を学ぼうとする大学生,および大学院生を想定している。

1章では,CGにおける物理シミュレーションの位置づけや役割に関して概説する。物理シミュレーションとキーフレーム法の対比,および本書で取り上げる物理シミュレーションの種類に関しても述べる。

2章では,物理シミュレーションを理解するうえで欠かすことができない数学と力学に関して解説する。

3章では,「アルゴリズム」を利用して図形形状をデザインする例を紹介する。アルゴリズムとして手順をコード化することで,少ないデータで複雑な形状を再現することが可能となる。本章では,フラクタルとボロノイ図を応用する。

4章では,流体シミュレーションに関して解説する。流体力学で流体がどのように扱われているかを説明した後,流体の支配方程式であるナビエ・ストークス方程式を中心に,CGへの応用方法について説明する。

5章では,物体同士の衝突などに代表される剛体シミュレーションに関して説明する。また,布や糸,クッションなどの柔らかいものを扱う方法も解説する。

6章では,シミュレーションや実験計測などで得られたデータを視覚的に解析するコンピュータビジュアリゼーション(可視化)について説明する。作品としてのCGではなく,解析のためにどのようにCGが利用されデータの解析が行われているかについて述べる。

7章では,流れ場や磁場などのデータに含まれるベクトルデータの可視化方法を紹介する。

8章では,温度や圧力といった各点がただ一つの数値をもつスカラーデータの可視化方法をまとめる。

なお本書では,さまざまなアルゴリズムの実装に関して,SideFX社のHoudiniというツールを利用している。アルゴリズムをベースとして,造形/シミュレーションを実践したい人に向けて,CGとプログラミングの結びつきが強力なHoudiniを用いることで,その手法を理解してもらうことを目指している。

本書で学んだ読者が将来,新しい表現や技術の研究開発,またはCG作品の制作に貢献するとしたら,それは筆者らの無上の喜びとするところである。

最後に,多くの有益なコメントをいただいたシリーズ監修の相川清明先生と近藤邦雄先生,柿本正憲先生に感謝するとともに,長期にわたり辛抱強く筆者を激励し続けてくださったコロナ社の皆様に厚く御礼を申し上げます。

2023年2月
菊池 司
竹島由里子

1.CGシミュレーションとは
1.1 CGにおけるシミュレーションの役割 
1.2 キーフレームアニメーションとシミュレーション 
1.3 物理シミュレーションの基本的な流れ 
1.4 物理シミュレーションの種類 
演習問題 

2.ベクトルと力
2.1 ベクトルと行列 
 2.1.1 ベクトルの基礎 
 2.1.2 内積と外積 
 2.1.3 行列 
 2.1.4 固有値,固有ベクトル 
2.2 応力とテンソル 
演習問題 

3.手続き型形状表現法
3.1 フラクタル 
 3.1.1 フラクタルの概要 
 3.1.2 フラクタルの応用 
 3.1.3 マンデルブロ集合のアルゴリズム 
 3.1.4 マンデルバルブのアルゴリズム 
 3.1.5 マンデルバルブの実装手法 
3.2 ボロノイ図 
 3.2.1 点ベースのボロノイ図 
 3.2.2 曲線ベースのボロノイ図 
 3.2.3 曲線ベースのボロノイ図の実装手法 
演習問題 

4.流体シミュレーション
4.1 流体の基礎 
 4.1.1 密度と圧力 
 4.1.2 粘性 
 4.1.3 圧縮性と非圧縮性 
4.2 流体の支配方程式 
 4.2.1 移流項 
 4.2.2 圧力項 
 4.2.3 粘性項 
 4.2.4 外力項 
 4.2.5 流体支配方程式の解法 
4.3 格子法 
 4.3.1 グリッド分割 
 4.3.2 スタガード格子 
 4.3.3 支配方程式の差分化 
 4.3.4 液体表面追跡 
4.4 粒子法 
 4.4.1 SPH法 
 4.4.2 SPH法による支配方程式の解法 
 4.4.3 近傍粒子探索 
 4.4.4 粒子からの界面サーフェス抽出 
4.5 FLIP法 
 4.5.1 初期構成 
 4.5.2 格子を用いた圧力項の計算 
 4.5.3 流速のマッピング 
 4.5.4 移流項の計算 
 4.5.5 数値拡散を伴わない流速のマッピング 
 4.5.6 界面サーフェスの抽出 
4.6 雪崩による雪煙のビジュアルシミュレーション 
演習問題 

5.剛体・弾性体シミュレーション
5.1 ボールの運動 
 5.1.1 運動方程式 
 5.1.2 時間積分の離散化 
 5.1.3 回転の運動方程式 
5.2 衝突処理 
 5.2.1 衝突検出 
 5.2.2 GJKアルゴリズムの原理 
5.3 弾性体シミュレーション 
 5.3.1 1次元シミュレーション 
 5.3.2 2次元シミュレーション 
 5.3.3 3次元シミュレーション 
5.4 位置ベースの変形シミュレーション 
 5.4.1 シェイプマッチング法 
 5.4.2 PBD 
 5.4.3 XPBD 
5.5 非周期的空間充填とXPBDを用いた弾性凝集体の
プロシージャルモデリング 
演習問題 

6.コンピュータビジュアリゼーション
6.1 コンピュータによる可視化 
 6.1.1 CGと可視化 
 6.1.2 可視化による理解の流れ 
 6.1.3 可視化の分類 
6.2 科学技術データのディジタル表現 
 6.2.1 標本点の取得 
 6.2.2 標本点以外の物理値の補間 
 6.2.3 データの特性による分類 
6.3 サイエンティフィックビジュアリゼーション 
 6.3.1 可視化の四つの特徴 
 6.3.2 可視化処理の流れ 
 6.3.3 物理値の可視化表現 
演習問題 

7.ベクトル場の可視化
7.1 2次元ベクトル場 
 7.1.1 矢印表示 
 7.1.2 流線表示 
 7.1.3 LIC法 
7.2 3次元ベクトル場 
 7.2.1 ヘッジホッグ法 
 7.2.2 流線表示 
7.3 時系列データ 
演習問題 

8.スカラー場の可視化
8.1 2次元スカラー場 
 8.1.1 グリフ表示 
 8.1.2 疑似カラーコーディング 
 8.1.3 等値線(等高線)表示 
8.2 3次元スカラー場 
 8.2.1 断面表示 
 8.2.2 ボリュームレンダリング 
 8.2.3 等値面 
演習問題 

引用・参考文献 
演習問題解答 
索引 

読者モニターレビュー【 小山 哲央 様 株式会社アーク情報システム(業務内容:受託解析・ソフトウェア開発 】

本書はCGとシミュレーションの原理について学ぶことのできる書籍です。全体で150ページほどであり読むのに苦にならない分量でした。シミュレーションの解説書は数式が多くなりがちですが、この本はCGというコンセプト通り結果が可視化されるため読者のモチベーションが維持されやすいと思います。
紹介されたCGはHoudiniというソフトで再現する方法が書かれています。CGの分野では有名なソフトなのかもしれませんが、私は専門がシミュレーションのため操作方法を学ぶのははじめてでした。Houdiniについて存じない方は他の本でHoudiniについて勉強してから読むとよりためになるかもしれません。

菊池 司

菊池 司(キクチ ツカサ)

1999 年岩手大学大学院工学研究科電子情報工学専攻博士後期課程修了.博士(工学).2000年拓殖大学工学部工業デザイン学科助手.2004年同大学専任講師.2007年から2008年まで韓国・高麗大学客員教授.2009年拓殖大学工学部工業デザイン学科(現デザイン学科)准教授,2014年東京工科大学メディア学部准教授,2018年同大学教授,現在に至る. コンピュータグラフィックス,Procedural Animation,Procedural Simulation,およびコンテンツデザイン,コミュニケーションデザイン分野の研究に従事.ACM,芸術科学会,情報処理学会,画像電子学会,日本デザイン学会会員.趣味はスノーボード.

竹島 由里子

竹島 由里子(タケシマ ユリコ)

学部ではデータベース、大学院以降はコンピュータグラフィックス、特に、コンピュータビジュアリゼーション(可視化)に関する研究を行ってきました。「百聞は一見に如かず」といわれるように、実際に自分の目で見て情報を解釈するということは、大変重要な意味をもちます。本書が可視化研究に興味をもつきっかけの一助になることを願っています。

掲載日:2023/09/29

日本図学会誌「図学研究」第57巻2号

掲載日:2023/09/25

可視化情報学会誌2023年10月号

掲載日:2023/08/01

電子情報通信学会誌2023年8月号

掲載日:2023/07/07

読売新聞広告掲載(2023年7月7日)

掲載日:2023/07/05

日本設計工学会誌「設計工学」2023年7月号

掲載日:2023/06/30

芸術科学会誌「DiVA」54号

掲載日:2023/05/17

情報処理学会誌「情報処理」2023年6月号広告

掲載日:2023/04/03

電子情報通信学会誌2023年4月号

☆シリーズ特設ページ☆