工学を理解するための応用数学 微分方程式と物理現象

工学を理解するための応用数学 - 微分方程式と物理現象 -

  • 佐藤 求 群馬パース大助教 博士(理学)

理工系専門学校の教科書,理工系大学初年度の副読本程度の内容を目安に,物理や電気を学習する上で利用される数学の理解を目的とした。

ジャンル
発行年月日
2019/04/05
判型
B5
ページ数
192ページ
ISBN
978-4-339-06117-8
工学を理解するための応用数学 微分方程式と物理現象
在庫あり

定価

3,300(本体3,000円+税)

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理工系専門学校の教科書,理工系大学初年度の副読本程度の内容を目安に,物理や電気を学習する上で利用される数学の理解を目的とした。数学的な観点よりも,実際の問題に応用される範囲で物理学的な観点で問題に挑むように解説した。

数学者の厳密さ(と,天文学者の大胆さ)を表す有名な冗談がある。

天文学者と物理学者と数学者(とされている)がスコットランドで休暇を過ごしていたときのこと,列車の窓からふと原っぱを眺めると,一頭の黒い羊が目にとまった。天文学者がこう言った。「これはおもしろい。スコットランドの羊は黒いのだ」物理学者がこう応じた。「何を言うか。スコットランドの羊の中には黒いものがいるということじゃないか」数学者は天を仰ぐと,歌うようにこう言った。「スコットランドには少なくとも一つの原っぱが存在し,その原っぱには少なくとも一頭の羊が含まれ,その羊の少なくとも一方の面は黒いということさ」
イアン・スチュアート:現代数学の考え方,講談社(1981)

本書は理工系専門学校の教科書または理工系大学初年度の副読本程度のレベルを目安に,物理や電気の勉強をする上で利用されている数学を理解することを目的に執筆されたものである。絶対に間違いのない数学者のやり方ではなく,実際の問題に応用される範囲で正当な物理学者のやり方で問題に挑み,一定レベルの理解を得た上で,興味が沸くなら「羊の反対側の毛色」を気にするようにしよう。

本書ではたびたび「マトモ」という表現が出てくる。数学書ならば「たかだか有限個の不連続点を除いては連続な関数」とか「n階微分可能な関数」などと書くだろうが,そこで「たかだか有限個?」,「微分不可能な関数というのは,自分が本当に知りたい現実的な問題に頻出するのだろうか?」といった心配をさせるよりも「厳密には例外もあるけれど,物理的現象を考える上では,あまり問題にならない」というメッセージを乗せたつもりである。その他,例外的な条件の無視や,大胆な口語調等,不真面目に見える部分も多々あろうがお目こぼし願い,つねに応用面を意識した展開や,実際に利用している人々の心理に近い表現等,メリットのほうを評価してしていただければ幸いである。

1章から7章では,微分の定義から始めて微分方程式までをまとめた。特に,「微積分を使ってこそ本当の定義が与えられる物理量」について,「高校物理では意味が不明瞭なまま憶えさせられ,専門分野に進んだ後には既知の事実として振り返られない」といったことを憂慮し,微積分を使った物理量の再定義にもかなりの紙面を費やした。
積分や微分方程式に関しては,重要な例について,解答を「見知って」いればよいという程度の扱いとし,解法のテクニックはあまり扱わなかった(正答を代入して確認ができればよいとした)。

7章では,おまけ的な意味で粘性抵抗下での強制振動までを紹介したが,「運動方程式を解くことで,減衰運動と単振動の式が出てくる」ことが示される6章を本書の最大の目的とした。

8章から10章では,応用上重要な話題をいくつか取り上げた。ラプラス変換については少し難易度が高いかという心配もあったが,工学者の多くが,微分方程式を解く際に魔法のようにラプラス変換表を引く習慣があるようなので,その面白みを紹介したく紙面を割いた。電気工学分野は微積分の話題の宝庫なので例題などで多く取り上げたが,1か所にまとめしなかった。特に交流電気と複素数の関連はページ数の関連で取り上げられなかったことを残念に思う。

演習問題に関しては,多少の計算練習はともかくとして,ほぼ全域にわたり「現実を表す問題」を例題,練習問題とするようにした。そのため,問題数は若干少なめとなったが,手を動かして解く価値のある問題をそろえたつもりだ。なお,練習問題の解はノートにまとめておくのが正攻法だろうが,その結果を後ろのページで改めて利用することも多いので,計算結果だけはこの本の余白に書き込んでおくことを薦める。

2019年1月 佐藤求

1. 微分
1.1 平均の傾きと微分係数
1.2 導関数
1.3 xnの微分
1.4 既知の微分の組合せ
 1.4.1 Af(x)の微分
 1.4.2 和の公式
 1.4.3 積の公式
 1.4.4 合成関数の微分とその応用
 1.4.5 逆関数の微分
1.5 高次導関数
1.6 速度と加速度
 1.6.1 瞬間の速度
 1.6.2 加速度
1.7 極大値・極小値
1.8 三角関数の微分
 1.8.1 基本の三角関数の微分
 1.8.2 三角関数の二階微分
 1.8.3 実用的な形式
 1.8.4 交流電気とリアクタンス
章末問題

2. テイラー展開
2.1 一般の関数を整式で近似する
2.2 テイラー展開の係数決定法
2.3 三角関数のテイラー展開
章末問題

3. exp関数
3.1 指数関数2xの傾き
3.2 df/dx=f(x)の解
3.3 f(x)=exのテイラー展開
3.4 指数関数の微分
3.5 双曲線関数
章末問題

4. 積分の基礎と意義
4.1 積分の定義
 4.1.1 不定積分と積分定数
 4.1.2 定積分
 4.1.3 積分と面積(区分求積法)
4.2 物理現象への応用
 4.2.1 変動量に対する平均
 4.2.2 等速直線運動・等加速度直線運動
 4.2.3 コンデンサの帯電量
 4.2.4 仕事とエネルギー
 4.2.5 回転運動と慣性モーメント
4.3 回転対称系での積分
章末問題

5. 積分の技法
5.1 部分積分
5.2 変数変換
5.3 sin2x,cos2xの積分
5.4 直交定理
章末問題

6. 微分方程式1
6.1 微分方程式とは
6.2 簡単な微分方程式と初期条件
6.3 線形微分方程式と重ね合わせの原理
6.4 微分方程式で表現される物理現象
6.5 積分方程式
章末問題

7. 微分方程式2
7.1 微分方程式を解かずに利用する
7.2 減衰振動と強制振動
 7.2.1 減衰振動
 7.2.2 (粘性抵抗下での)強制振動
 7.2.3 LCR直列回路
最も重要な微分

8. 次元解析
8.1 物理式と単位
8.2 次元解析による解の予想
8.3 単位と次元
8.4 MKSA単位系
章末問題

9. フーリエ解析
9.1 フーリエ展開
9.2 正規直交基底
9.3 複素フーリエ展開
9.4 フーリエ変換

10. ラプラス変換
10.1 ラプラス変換の定義と目的
10.2 ラプラス変換の基本法則
 10.2.1 線形性
 10.2.2 微分とラプラス変換
 10.2.3 積分のラプラス変換
10.3 逆ラプラス変換
 10.3.1 一般解
 10.3.2 部分分数分解
10.4 微分方程式への応用

付録
A.1 xの累乗の微分
 A.1.1 nが整数の場合
 A.1.2 nが有理数の場合
 A.1.3 nが実数の場合
 A.1.4 nが複素数の場合
A.2 三角関数のまとめ
 A.2.1 一般角に対する三角関数の定義
 A.2.2 加法定理
 A.2.3 半角の公式
 A.2.4 同じ周期の三角関数の合成
 A.2.5 和と積の変換公式
 A.2.6 微小角に対する近似
A.3 部分分数分解
 A.3.1 王道的な方法
 A.3.2 目隠し法
A.4 ラプラス変換に関する付記
 A.4.1 代表的な関数のラプラス変換
 A.4.2 スケール変換
 A.4.3 第一移動定理
 A.4.4 第二移動定理とステップ関数
A.5 各種表
 A.5.1 アルファベットの代表的な使用例
 A.5.2 ギリシャ文字とその使用例
 A.5.3 三角関数表
A.6 正統ではない表現
 A.6.1 物理量変数と単位の表記について
 A.6.2 関数について
 A.6.3 二変数型関数の微分
 A.6.4 「距離は速度ではない」

章末問題解答
索引