精度保証付き数値計算の基礎

精度保証付き数値計算の基礎

数値計算の誤差を完全に把握する精度保証付き数値計算について,基礎となる事項を体系的にまとめた。

ジャンル
発行年月日
2018/07/26
判型
A5
ページ数
328ページ
ISBN
978-4-339-02887-4
精度保証付き数値計算の基礎
在庫あり

定価

4,950(本体4,500円+税)

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数値計算の誤差を完全に把握する数値計算(「精度保証付き数値計算」)が重要となる局面は非常に多くなりつつある。本書は今までの成果をもとに,現在における精度保証付き数値計算の基礎となる事項を体系的にまとめたものである。

数値計算は,コンピュータがなかった時代の数値による計算の工夫から始まって,フォン・ノイマンの流体計算を目指したプログラム方式の計算機の発想を一つの始まりとする,現代のコンピュータを前提とする数値計算に至る長い歴史がある。この中で,ノイマンやチューリングのような大家の指摘などによって数値計算で得られた解の近くに真の解が存在することを示すのは多くの場合難しいとの認識が形成され,このような事後誤差評価を実際に実行することなしにコンピュータによる数値計算が行われることが,現代では日常化している。

しかし,非線形問題の解の存在など数学の問題を数値計算で証明する場合には,数値計算の誤差をさらに計算し,すべての数値計算誤差を明らかにして数値解の近くに真の解が存在することを証明しなければならないことは明白である。それ以外の場面であっても,計算が大規模化したり,安全性への要求が高くなったりすることによって,数値解析の誤差を厳密に把握することが重要となる局面は,非常に多くなりつつある。編著者は数値計算の誤差を完全に把握する数値計算(「精度保証付き数値計算」と呼ぶ)が非常に重要であると考え,この分野で30年近く研究を行ってきた。本書はその成果をもとに,現在における精度保証付き数値計算の基礎となる事項を体系的にまとめたものである。

精度保証付き数値計算の最も重要な点の一つは,数値解析の誤差を厳密に把握する計算に要するコストと近似計算のコストをほぼ同程度になるようにバランスさせることであり,ここに数値解析の理論と現代コンピュータのアーキテクチャに関わる技術的な知見を総動員して研究する必要性が生じる。また,解くべきは数学の問題であるので,数学の理論も必要となる。

本書は,コンピュータによる基本演算を議論することから始める(1章,2章)。これを抽象的に始めることもできるが,現代の数値計算における基本演算の標準が浮動小数点演算であること,および技術的にはIEEE754規格が用いられることが多いことから,それを前提として議論を開始する。ここで展開されている議論は基礎であるが,他書にはない,最新の成果に基づく記述がなされている。区間演算(1.2節)も含め,基本演算の誤差を厳密に把握しようとすることによって,基本演算に潜む数値計算の難しさや勘所が数理的に体系化されて浮き彫りになる。続いて,3章では数値計算全般で基礎となる数値線形代数の問題の精度保証理論が展開される。ここでも,連立1次方程式と固有値問題の精度保証付き数値計算法の基礎が最新の成果を踏まえて記述されている。4章で取り扱う初等関数に対する精度保証法は多様な発展があるが,基礎的な記述に留めている。5章では,数値積分について,二重指数関数公式の厳密な誤差公式を含む各種の誤差公式と精度保証の実例が示されている。6章では,非線形方程式に対する標準的な精度保証法が示されている。7章では,常微分方程式について,独自の有効な積分法が示され,標準的な手法との比較がなされる。8章では,偏微分方程式について,有界領域における楕円型作用素の固有値の厳密な下限の精度保証付き数値計算法を含む,本分野の最新成果に基づく有限要素法を用いた基礎理論が展開されている。9章では,まず,線形計画問題の精度保証法,計算幾何学問題の精度保証法が論じられる。そして,数学問題に対する計算機援用証明の例として,3次元多様体の双曲性判定の問題への応用が述べられる。続いて,GPGPUやスーパーコンピュータなどのHPC環境における精度保証法の展開の仕方,およびMATLABやOctave上での精度保証法ツールであるINTLABの紹介がされる。INTLABには,本書の6章までに示す多くのアルゴリズムが実装されている。

各章には章末問題が用意されている。解答例などについては,以下の本書のサポートWebページに順次掲載する予定である。
http://www.oishi.info.waseda.ac.jp/vncbook
本書は編著者の研究グループと共同研究者によって執筆されている。それは以下のとおりである。
序論荻田武史(東京女子大学),柏木雅英(早稲田大学),劉雪峰(新潟大学)
1章浮動小数点演算と区間演算:尾崎克久(芝浦工業大学),荻田武史
2章丸め誤差解析と高精度計算:尾崎克久,荻田武史
3章数値線形代数における精度保証:荻田武史,尾崎克久
4章数学関数の精度保証:柏木雅英
5章数値積分の精度保証:山中脩也(明星大学)
6章非線形方程式の精度保証付き数値解法:高安亮紀(筑波大学)
7章常微分方程式の精度保証付き数値解法:柏木雅英
8章偏微分方程式の精度保証付き数値解法:劉雪峰,関根晃太(東洋大学)
9章精度保証付き数値計算の応用
9.1節線形計画法の精度保証:木村拓馬(佐賀大学)
9.2節計算幾何の精度保証:尾崎克久
9.3節3 次元多様体の双曲性判定:市原一裕(日本大学),正井秀俊(東
北大学)
9.4 節HPC 環境における精度保証:森倉悠介(帝京平成大学)
9.5 節INTLAB の紹介:Siegfried M. Rump(ハンブルク工科大学),
訳:荻田武史

本研究グループの形成にあたって,文科省科研費の特別推進研究や,三度にわたるJST CREST の研究費をはじめとして,国から大きな支援をいただいていることに感謝したい。本書の執筆も研究グループで行わなければ不可能であったように,この支援が,ここまで研究を進展できたことの絶対的基盤になっている。1章から3章までの執筆にあたっては,9.5節担当のハンブルク工科大学教授のSiegfried M. Rump氏から多くのコメントをいただいた。8章の執筆にあたっては,東京大学名誉教授の菊地文雄氏に草稿を細かく読んでいただき,たくさんのご指摘を頂戴するなど,たいへんお世話になった。カバーと挿絵には,早稲田大学栄誉フェロー・名誉教授の藪野健氏に素敵なイラストを頂戴した。この場を借りて謝意を表したい。また,とりまとめにあたり,荻田氏と尾崎氏の編集幹事としてのご尽力に深く感謝する。最後に,出版にあたり,コロナ社の温かいご配慮に感謝したい。

本書を恩師,堀内和夫先生に捧ぐ
2018年4月 編著者 大石進一

序論

1. 浮動小数点演算と区間演算
1.1 浮動小数点演算
 1.1.1 浮動小数点数
 1.1.2 浮動小数点演算
1.2 区間演算
 1.2.1 区間
 1.2.2 区間演算
 1.2.3 機械区間演算
 1.2.4 無限区間における例外処理
章末問題

2. 丸め誤差解析と高精度計算
2.1 丸め誤差解析
 2.1.1 総和に対する誤差解析
 2.1.2 内積に対する誤差解析
 2.1.3 後退誤差解析
2.2 エラーフリー変換
 2.2.1 和と差に関するエラーフリー変換
 2.2.2 浮動小数点数の積
2.3 ベクトルの総和や内積の高精度計算
 2.3.1 高精度演算を実現するアルゴリズム
 2.3.2 計算結果が高精度になるアルゴリズム
章末問題

3. 数値線形代数における精度保証
3.1 準備
 3.1.1 ベクトルノルムと行列ノルム
 3.1.2 特別な行列
3.2 区間行列積
 3.2.1 高速な区間行列積
 3.2.2 区間行列積のさらなる高速化
3.3 連立1次方程式
 3.3.1 ガウスの消去法とLU分解
 3.3.2 コレスキー分解
 3.3.3 反復改良法
 3.3.4 区間ガウスの消去法
 3.3.5 密行列に対する精度保証法
 3.3.6 疎行列に対する精度保証法
 3.3.7 区間連立1次方程式
3.4 行列固有値問題
 3.4.1 密行列に対する精度保証法
 3.4.2 非線形方程式を利用した精度保証法
 3.4.3 大規模疎行列の場合
章末問題

4. 数学関数の精度保証
4.1 指数関数
 4.1.1 指数関数
 4.1.2 expm1
4.2 対数関数
 4.2.1 対数関数
 4.2.2 log1p
4.3 三角関数
 4.3.1 sin,cos
 4.3.2 tan
4.4 逆三角関数
 4.4.1 arctan
 4.4.2 arcsin
 4.4.3 arccos
 4.4.4 atan2
4.5 双曲線関数
 4.5.1 sinh
 4.5.2 cosh
 4.5.3 tanh
4.6 逆双曲線関数
 4.6.1 sinh-1
 4.6.2 cosh-1
 4.6.3 tanh-1
章末問題

5. 数値積分の精度保証
5.1 準備
 5.1.1 積分とは
 5.1.2 ラグランジュ補間多項式
 5.1.3 コーシーの積分公式と高階微分
5.2 近似積分公式と誤差
 5.2.1 台形則と中点則
 5.2.2 ニュートン-コーツの公式
 5.2.3 Steffensen公式(開いたニュートン-コーツの公式)
 5.2.4 ガウス-ルジャンドル公式
 5.2.5 Lobatto積分とRadau積分
 5.2.6 複合則
 5.2.7 Romberg積分法
 5.2.8 二重指数関数型数値積分公式
5.3 精度保証付き数値積分法の例
 5.3.1 高階微分を用いた精度保証付き数値積分法
 5.3.2 複素領域上の値を用いた精度保証付き数値積分法
 5.3.3 被積分関数の関数値計算における丸め誤差の高速計算
章末問題

6. 非線形方程式の精度保証付き数値解法
6.1 ニュートン-カントロヴィッチの定理
 6.1.1 ニュートン法
 6.1.2 半局所的収束定理
 6.1.3 検証例
 6.1.4 ニュートン-カントロヴィッチの定理の応用について
6.2 Krawczykによる解の検証法
 6.2.1 平均値形式とKrawczyk写像
 6.2.2 Krawczyk写像による解の検証定理
 6.2.3 非線形方程式の全解探索アルゴリズム
6.3 Krawczykの方法による検証例
 6.3.1 自動微分を使ったヤコビ行列の計算
 6.3.2 検証例
6.4 区間ニュートン法
章末問題

7. 常微分方程式の精度保証付き数値解法
7.1 ベキ級数演算
 7.1.1 Type-IPSA
 7.1.2 Type-IPSAの例
 7.1.3 Type-IIPSA
 7.1.4 Type-IIPSAの例
7.2 ピカール型の不動点形式への変換
7.3 解のテイラー展開の生成
7.4 解の精度保証
7.5 Lohner法
7.6 初期値問題の精度保証の例
 7.6.1 PSA法
 7.6.2 Lohner法
7.7 長い区間における初期値問題の精度保証
 7.7.1 推進写像の微分
 7.7.2 推進写像の書き直し
 7.7.3 解の接続
7.8 縮小写像原理による解の一意性
7.9 射撃法による境界値問題の精度保証
7.10 ベキ級数演算の無駄の削減
章末問題

8. 偏微分方程式の精度保証付き数値解法
8.1 偏微分方程式のモデル問題
 8.1.1 ポアソン方程式の境界値問題
 8.1.2 ラプラス作用素の固有値問題
 8.1.3 非線形偏微分方程式の境界値問題
8.2 関数空間の設定と記号
8.3 補間関数の誤差定数
8.4 ポアソン方程式の境界値問題と有限要素法
 8.4.1 有限要素法
 8.4.2 正則な解の場合
 8.4.3 解に特異性のある場合
 8.4.4 計算例
8.5 微分作用素の固有値評価
 8.5.1 固有値の下界評価
 8.5.2 ラプラス作用素の固有値問題
 8.5.3 固有値評価の計算例
8.6 半線形楕円型偏微分方程式問題の解の存在検証
 8.6.1 対象とする問題と準備
 8.6.2 フレームワーク
 8.6.3 ソボレフの埋め込み定理と線形化作用素の局所連続性
 8.6.4 線形化作用素F′[^u]の正則性とその逆作用素のノルム評価
 8.6.5 残差ノルムの評価方法
 8.6.6 解の検証例
章末問題

9. 精度保証付き数値計算の応用
9.1 線形計画法の精度保証
 9.1.1 線形計画問題の基礎
 9.1.2 単体法における解の条件と精度保証付き数値計算法
 9.1.3 最適値(最適目的関数値)の精度保証付き数値計算法
 9.1.4 内点法を基礎とした解の精度保証付き数値計算法
9.2 計算幾何の精度保証
 9.2.1 位置関係の判定問題
 9.2.2 浮動小数点フィルタ
 9.2.3 ロバスト計算
 9.2.4 精度保証を用いた反復アルゴリズム
9.3 3次元多様体の双曲性判定
 9.3.1 背景
 9.3.2 Gluing equation~解が双曲性を証明する~
 9.3.3 HIKMOT~Gluing equationを精度保証付き計算で解く~
 9.3.4 応用
9.4 HPC環境における精度保証
 9.4.1 GPUにおける区間演算
 9.4.2 最近点丸めのみを用いた計算例
 9.4.3 高精度な行列積計算法
 9.4.4 GPUを用いた数値計算例
 9.4.5 分散メモリマシンを用いた数値計算例
9.5 INTLABの紹介
 9.5.1 区間の入力
 9.5.2 区間の出力
 9.5.3 区間演算
 9.5.4 区間ベクトル・区間行列
 9.5.5 残差の高精度計算
 9.5.6 固有値問題
 9.5.7 MATLABによる固有値の不正確な近似
 9.5.8 自動微分:勾配とヘッセ行列
 9.5.9 局所的最適化
 9.5.10 関数のすべての根
 9.5.11 大域的最適化
 9.5.12 その他のデモ
章末問題

索引

関根 晃太(セキネ コウタ)

木村 拓馬(キムラ タクマ)

森倉 悠介(モリクラ ユウスケ)

Siegfried M. Rump (ジークフリード ミヒャエル ルンプ )

掲載日:2020/01/14

「数学セミナー」2020年2月号広告

掲載日:2019/12/01

「現代思想」2019年12月号 広告

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