理工系の技術文書作成ガイド

理工系の技術文書作成ガイド

理工系の学生が悩む技術文章や技術論文,実験レポートの論理的な書き方に,発表の仕方を含めて丁寧にまとめた。

ジャンル
発行年月日
2019/01/18
判型
A5
ページ数
136ページ
ISBN
978-4-339-07820-6
理工系の技術文書作成ガイド
在庫あり

定価

1,870(本体1,700円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介

【書籍の特徴】
 本書は、科学技術文書や技術論文、実験レポートの書きかたと発表のしかたについてまとめたものである。
科学技術文書は、数学の定理の証明のように、事実や論理の積み上げで作り上げ、誰が読んでも間違いなく同じ結論に達するように書かなければならない。そのためには、どのように技術文書をまとめればよいか。本書は、理工系の学生が悩む技術文書や技術論文、実験レポートの論理的な書きかたに、発表のしかたを含めて丁寧にまとめている。
【各章について】
 本書は8章で構成されている。
1章では代表的な技術文書についてその種類と特徴について説明する。続く2章では、研究者が研究を進めたり、技術者が技術開発を進めたりする上で、持つべき研究者・技術者の倫理と、研究活動によって得られた成果や開発した技術である知的財産権について学ぶ。
技術報告書や研究・技術論文を書く前に、まとめようとしている文書がどのような位置づけにあるのか、既に発行されている他の文献との関連も含めてはっきりさせる必要がある。そのための文献調査について3章で述べる。続く4章においては、技術文書で使用する記号や文書の書式を統一して、誰が読んでも誤解しないような記述について説明し、5章では得られた実験や計算で得られた結果をわかりやすく表現するための、研究成果のまとめ方について紹介する。
具体的な論文の組立てかたについては6章にまとめ、7章においては作成した論文原稿をいよいよ学術論文誌に投稿し、学術誌に掲載されるまでのプロセスについて説明する。最後の8章では研究成果を発表するときのプレゼンのしかたについて説明している。
加えて興味深い予備知識や関連の話題をコーヒーブレイクのコーナーで取り上げている。
【著者からのメッセージ】
 たいていの理系の学生は、文章をまとめるのが苦手な場合が多い。しかし科学技術文書を書くときの文章は、いわゆる国語教科の作文や感想文の類とは違うので、そんなに心配する必要はない。なぜなら科学技術文書は、読み手の想像力をかき立てるような、繊細で微妙な文章表現は必要なく、誰が読んでも間違いなく同じ結論に達するように書かなければならない。
理工系の研究者が研究し、技術者が開発した大部分の成果は決して派手ではないが、長い時間をかけた実験や解析、開発の積み重ねに基づくものである。こうした新しい成果を研究論文としてまとめて学術論文誌に投稿したり、学会で発表したりすることは、科学技術者にとっての喜びである。
 この本で示している技術文書作成の書式等は、あくまでも標準的なものを示している。もし文章書式等があらかじめ指定されていれば、何よりもそれを優先して作成することに注意してほしい。

本書は,科学技術文書や技術論文,実験レポートの書きかたと発表のしかたについてまとめたものである.

工業高等学校や高等専門学校,理工系の大学や学部へ進んだ学生が,最初に提出を義務付けられ,まとめるのに悩むのは,実験レポートであろう.最近は入学時に小論文を課される場合もあるが,たいていの理系の学生は,文章をまとめるのが苦手な場合が多い.しかし科学技術文書を書くときの文章は,いわゆる国語教科の作文や感想文の類とは違うので,それほど心配する必要はない.なぜなら科学技術文書は数学の定理の証明のように,事実や論理の積み上げで作り上げるからで,読み手の想像力をかき立てるような,繊細で微妙な文章表現は必要なく,誰が読んでも間違いなく同じ結論に達するように書かなければならない.

最近はいわゆる文系の方でも,統計データから得られた数値情報から,論理的に結論を導いたりすることも多くなっており,こうした論理的な文章の書きかたは非常に重要となる.

理工系の研究者が研究したり,技術者が開発した成果は,新聞紙上を賑わすようなものはごく一部であり,決して派手ではないが,長い時間をかけた実験や解析,開発の積み重ねに基づく成果である.それだけに研究者の苦労の詰まったもので重みもある.自分が研究することによって新しい結果を出し,その内容を研究論文としてまとめ学術論文誌に投稿したり,学会で発表して他の研究者の方々に伝えることは,科学技術者にとっての喜びである.研究成果の内容をまとめ,それを報告書や研究論文の形にしたり,発表したりしてうまく他の人へ伝えることができると,またつぎの研究で素晴らしい成果を上げて,論文として発表してやろうという目標や抱負につながる.この本が読者自身の文書作成,発表のスタイルを作る手助けになれば幸いである.

本書で示している技術文書作成の書式等は,あくまでも標準的なものを示している.もし文章書式等があらかじめ指定されていれば,何よりもそれを優先して作成することに注意してほしい.

技術文書を含め,最近の文書作成はパーソナルコンピュータ(以下パソコンと略す)のワードプロセッサ・ソフトウェア(以下ワープロソフトと略す)を用いる.したがって本書はワープロソフトを用いて,文書を作成することを前提に説明するが,本文で述べるように頭に浮かんだ文章原稿を直接パソコンのキーボードで入力して文書を作成することを意味しているわけではない.文章を吟味するには,できるだけ紙の上に書いて何度も繰り返し読み返して推敲することを心がけ,その文章をパソコンに入力するときに,漢字変換ミスをしないように注意する.

本書の作成にあたり,いろいろな方からご意見をいただいた.さらに出版に際し著者のわがままなお願いを聞いてくださったコロナ社の皆さんに大変お世話になった.ここに記して深く謝意を表する.

2018年11月 白井宏

1. 何を誰のためにまとめるのか?
1.1 学生実験報告書
1.2 学術研究論文
1.3 技術報告書
1.4 発表資料
1.5 説明書(マニュアル)

2. 研究者・技術者の倫理と知的財産権
2.1 研究者・技術者の倫理
 2.1.1 利益相反
 2.1.2 守秘義務
 2.1.3 公益通報
2.2 執筆者としての倫理
 2.2.1 文書作成術を磨く(守破離)
 2.2.2 剽窃・盗用
 2.2.3 ねつ造
 2.2.4 改ざん
 2.2.5 二重投稿
2.3 知的財産としての研究成果
 2.3.1 著作権法
 2.3.2 特許法
 2.3.3 実用新案法

3. 文献を調査する
3.1 なぜ文献調査が必要か?
3.2 調査文献あれこれ
3.3 文献調査の記録

4. 適した書式
4.1 文章体
 4.1.1 公用文の文章体
 4.1.2 送り仮名
 4.1.3 形式名詞,補助動詞は平仮名で表記
 4.1.4 句読点
 4.1.5 数表現
 4.1.6 使用文字フォント
4.2 用語と記号
 4.2.1 学術用語
 4.2.2 単位
 4.2.3 ダッシュ記号
 4.2.4 量記号
 4.2.5 物理化学定数
4.3 数式と図表
 4.3.1 数式
 4.3.2 関数名
 4.3.3 図表
4.4 転載と参考文献の引用

5. 実験結果や計算結果のまとめかた
5.1 実験結果のまとめかた
 5.1.1 実験の詳細をノートに
 5.1.2 測定精度と有効数字
 5.1.3 雑音の影響
 5.1.4 誤差分布
 5.1.5 標準不確かさ
 5.1.6 実験データの表示
 5.1.7 測定値がある変数に対して変化する場合
5.2 計算結果のまとめかた
 5.2.1 演算精度と有効数字
 5.2.2 標本点数に気をつける
 5.2.3 グラフにメリハリをつける

6. 論文の組立て
6.1 論文の構成
6.2 論文主題とその構成
6.3 草稿を作る
 6.3.1 まずは手書きで
 6.3.2 起承転結を考える
 6.3.3 論文主題部分をまず作る
 6.3.4 結論を作る
 6.3.5 序論を作る
 6.3.6 論文標題を確定する
 6.3.7 論文概要を作る
 6.3.8 参考文献を整理する
6.4 英文の注意
 6.4.1 イギリス英語とアメリカ英語の違い
 6.4.2 書式
6.5 原稿を整える
 6.5.1 流れを大切に
 6.5.2 正しい用語
 6.5.3 断定表現を使う
 6.5.4 できるだけ定量的な評価を
 6.5.5 正確な記述
6.6 何度も読み直しを

7. 投稿から出版まで
7.1 有審査論文の投稿から出版までの流れ
7.2 具体的な作業
 7.2.1 投稿
 7.2.2 著作権譲渡とは?
 7.2.3 査読
 7.2.4 査読報告書
 7.2.5 編集委員会の採録判定
 7.2.6 判定に対する執筆者の対応
 7.2.7 ゲラ校正

8. 発表のしかた
8.1 口頭発表かポスター発表か?
8.2 口頭発表
 8.2.1 発表スライド資料
 8.2.2 十分な練習を
 8.2.3 指示棒の使いかた
 8.2.4 下準備
 8.2.5 いよいよ発表
8.3 ポスター発表
 8.3.1 発表ポスター作成
 8.3.2 下準備
 8.3.3 いよいよ発表
8.4 他人の発表を聞くのも勉強

引用・参考文献
索引

技術文書作成のエッセンスを広く学べる良書であり,理工系学生には座右の書として手元に置いておきたい一冊である.教育と研究の第一線で活躍する著者の豊富な経験に基づき,基礎から実践までが分かりやすくまとめられている.体験学習できる具体例を用いた説明など,読者の興味を切らさない工夫が随所になされた本書は,次の8章で構成される.
1章「何を誰のためにまとめるのか?」では,学生実験報告書から説明書まで,本書で扱う技術文書とその対象がまとめられている.
2章「研究者・技術者の倫理と知的財産権」では,昨今紙上をにぎわせている研究者・技術者倫理が,具体例を交え説明される.研究者・技術者として独り立ちするためにも理解しておきたい.
3章「文献を調査する」では,情報の信頼性や質の重要性が述べられている.スマートフォンを自在に操り,情報過多に陥りやすい世代には,日頃から是非意識してもらいたい.
4章「適した書式」では,文章体,数式と図表,参考文献の引用から,教員でも間違いやすいダッシュ記号やスペースの使い方まで,編集経験豊富な著者ならではの充実した内容となっている.
5章「実験結果や計算結果のまとめかた」では,理解できているようで実は難しい,有効数字や雑音,誤差の概念などが,報告書作成という目的の中で実践的に述べられている.
6章「論文の組立て」では,構成から草稿の作り方など論文執筆の王道が,原稿にふさわしい表現例などを交えて紹介される.また,語学堪能な著者による英文執筆の注意事項も大変参考になる.
7章「投稿から出版まで」では,論文投稿から出版までの一連の流れが分かりやすく紹介される.論文査読を初めて経験する若手研究者にとって,査読報告書に関する記載は有益であろう.
8章「発表のしかた」では,スライド資料やポスターの作成,発表に対する心構えやノウハウなど,実践的な内容が丁寧に紹介されている.
本書を順序立てて読むことで,理工系学生から若手技術者までが必ず経験する技術文書執筆の全体像を容易に把握することができる.また,必要に応じて関連箇所をマニュアル的に読むのも有益である.技術文書の執筆を指導する立場の方にとっても知識の再確認や整理に有用であり,是非御一読頂きたい.

紹介者:大貫進一郎 正員:シニア会員 日本大学理工学部電気工学科
電子情報通信学会誌2019年8月号833頁より抜粋
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