電力系統のシステム制御工学 - システム数理とMATLABシミュレーション -

計測・制御セレクションシリーズ 4

電力系統のシステム制御工学 - システム数理とMATLABシミュレーション -

電力システムの構造や特性を「システム論的に理解する」ための最良の一冊!

ジャンル
発行年月日
2022/12/02
判型
A5
ページ数
284ページ
ISBN
978-4-339-03384-7
電力系統のシステム制御工学 - システム数理とMATLABシミュレーション -
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定価

4,620(本体4,200円+税)

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  • 2023年度 計測自動制御学会 著述賞を受賞いたしました
  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • レビュー
  • 著者紹介
  • 書籍紹介・書評掲載情報
  • 広告掲載情報

【書籍の特徴】
本書では,システム制御分野の学生や研究者,技術者を主な読者に想定して,システム制御工学を専門とする著者が,システム制御工学のことばで電力システムの構造や数学的な基礎を解説しています。また,著者らの研究グループが開発する数値シミュレーションプラットフォームであるGUILDA(Grid & Utility Infrastructure Linkage Dynamics Analyzer)を活用して,電力システムの解析や制御に関する数値シミュレーション環境を読者が独力で構築できるように,MATLABによるオブジェクト指向プログラミングの基礎を解説しています。

【本書の構成】
第1章:本書の位置づけやねらい,特徴,読み進め方などを説明します。

第2章:電力系統の数理モデルを解説します。特に,電力系統全体は,代数方程式で記述される送電網を介して,微分方程式で記述される同期発電機と代数方程式で記述される負荷が結合された,非線形の微分代数方程式系として表現されることを説明します。

第3章:非線形の微分代数方程式系で記述される電力系統モデルの数値シミュレーション手法を解説します。また,MATLABによるオブジェクト指向プログラミングに基づいて,構造化された数値シミュレーション環境を構築するための指針を示します。

第4章:近似線形化を用いて電力系統モデルの安定性解析を行います。発展的な話題として,動的システムの受動性の概念を用いて,電力系統モデルの定態安定性が系統的に解析できることを明らかにします。

第5章:電力系統モデルの周波数安定化制御と過渡安定化制御を解説します。具体的には,平衡点によらない受動性の概念を用いて,周波数安定化制御系に対する安定領域の解析を行います。また,過渡安定化制御に用いられる標準的な自動電圧調整器や系統安定化装置の構成や機能を解説します。

第6章:本書で説明された基礎事項を応用して,IEEE68母線系統モデルと呼ばれる標準的な大規模モデルの数値シミュレーションを行います。数値シミュレーションでは,負荷変動に対する自動発電制御の効果や母線地絡に対する過渡安定度を解析します。

【著者からのメッセージ】
システム制御分野は,制御理論,情報理論,データ科学,システム科学,最適化などを幅広く横断して理論と技術を磨いてきました。一方で,ともすると数学的な研究に注力するあまり,実応用を脇に置いて理論研究や技術開発が進められることも少なくありませんでした。本書は,システム制御の理論と技術がもつ潜在能力を発揮する場を提供することによって,電力システムの学術的な面白さを多くの方々に体験してもらうことをねらって執筆されています。本書が実学と数理学を結ぶ架け橋となり,微力ながらも電力システムの未来をつくる一助となることを願います。

【キーワード】
システム制御工学,電力系統工学,システム数理,MATLABシミュレーション,オブジェクト指向プログラミング

わが国では,2011年の東日本大震災を機に電力システム改革がはじまった。翌年の2012年には,文部科学省の戦略目標のもと国立研究開発法人科学技術振興機(JST)によるプロジェクト型の研究事業として「分散協調型エネルギー管理システム構築のための理論及び基盤技術の創出と融合展開」が発足した。著者の石崎と川口は,システム制御工学を専門として当該プロジェクトに参画した研究者であり,再生可能エネルギーの主力電源化に向けた研究開発に従事した。

本書を執筆するに至ったきっかけは,上記のプロジェクトにおいて「電力システム研究開発の高い参入障壁」を私たち自身が実感したことにある。私たちは,プロジェクトの開始当初は電力システムに関してまったくの素人であった。研究遂行のために関連分野の基礎を学び始めたが,微分方程式や最適化などシステム制御工学で慣れ親しんだはずの事柄であっても,電力系統工学の文脈ではそれらの大半を理解することができなかった。その原因は,電力系統工学が電力システムの現実を重視する実学的な学問分野である一方で,システム制御工学は数学を源流とする数理学的な学問分野であるため,学術的な価値観や流儀が大きく異なる点にあった。この根幹にある問題意識の相違は,システム制御工学の研究者と電力系統工学の研究者の実践的なコミュニケーションを阻む要因にもなっていると考えられる。日々の研究活動により,このような後景が見えてくるにしたがって,私たちは分野間を橋渡しすることの必要性を強く感じるようになっていった。

本書は,電力システムの研究開発に取り組もうとするおもにシステム制御分野の学生や研究者,技術者が
・システム制御工学のことばで電力システムの構造や数理学的な基礎を理解できるようになること
・電力システムの解析や制御に関する数値シミュレーション環境を独力で構築できるようになること
を目的としている。具体的には,前者の目的のために,システム制御工学における状態方程式や平衡点,安定性,フィードバックなどの基本概念を用いて,電力システムの構成や特性を解説する。ここで必要となる前提知識は,大学教養課程の線形代数や動的システム理論,交流回路理論である。また,後者の目的ために,数値シミュレーションを実行するスクリプトを例示することに加えて,複雑な電力システムの全体を機能ごとに分割されたモジュール群として記述するオブジェクト指向型の思考法やプログラミング技法の基礎を解説する。電力システムは,単一の機械システムではなく,多種多様な要素や多数の意思決定者の総合から成り立つものである。したがって,数値シミュレーション環境も相応にモジュール化されていることが望まれる。モジュール群に構造化された分散開発環境は,複数人の知識を集約する共通基盤としても大いに役立つ。なお,本書ではMATLABによる実装を前提としているが,中核をなす考え方は他のプログラミング言語にも通用するはずである。

さいごに,本書全体を通して,可能な限り正確な記述となるように著者全員で努めたことを付記する。特に,著者の河辺が電力系統工学の専門的な見地から電力システムに関わる用語と語法を検めた。また,著者らの研究室に所属する学生や共同研究者の方々にも誤記や不明瞭な記述の指摘をいただき推敲を重ねている。原稿の執筆と改善に大きく貢献してくださった伊藤将寛さん,西野択さん,田屋実希さん,木村陽太さん,木下喜仁さん,大西慶幸さん,市村太一さん,織田健太郎さん,川野裕大さんに感謝の意を表す。

本書がシステム制御工学に携わる方々の新たな学びのきっかけとなり,電力システムの未来を支える一助となることを願う。

2022年10月
石崎孝幸

1.序論
1.1 電力系統のシステム制御工学
 1.1.1 電力システム改革に向けた異分野融合の重要性
 1.1.2 本書のねらい
 1.1.3 本書の特徴
1.2 本書の読み方
 1.2.1 全体構成
 1.2.2 数値計算プログラムのダウンロード
 1.2.3 数学的記法

2. 電力系統の数理モデル
2.1 交流回路理論の基礎
 2.1.1 回路素子
 2.1.2 瞬時値と実効値
 2.1.3 フェーザ表示
 2.1.4 インピーダンスとアドミタンス
2.2 接続機器の相互作用関係を表すアドミタンス行列
 2.2.1 送電網モデルの基礎
 2.2.2 対地静電容量を考慮した送電網モデル
 2.2.3 アドミタンス行列の数学的性質
2.3 同期発電機の数理モデル
 2.3.1 詳細度に基づく発電機モデルの大別
 2.3.2 1軸モデルの数学的表現
 2.3.3 発電機母線のクロン縮約
 2.3.4 蔵本型の振動子モデルの導出
 2.3.5 1機無限大母線系統モデル
 2.3.6 発電機母線が縮約されたアドミタンス行列の数学的性質
 2.3.7 突極型の同期発電機の数理モデル
2.4 負荷の数理モデル
 2.4.1 負荷の特性による電流と電圧の関係式
 2.4.2 負荷母線のクロン縮約
 2.4.3 負荷母線が縮約されたアドミタンス行列の数学的性質
数学的補足

3.電力系統モデルの数値シミュレーション
3.1 電力系統モデルの時間応答を計算するためには
 3.1.1 時間応答を計算することの難しさ
 3.1.2 計算手順
3.2 定常状態を数値的に探索する潮流計算
 3.2.1 潮流計算の概要
 3.2.2 定常的な潮流状態の数値的な探索手法
 3.2.3 アドミタンス行列と送電損失の関係
3.3 所与の潮流状態を実現する各機器のパラメータ設定
 3.3.1 所望の電力供給を実現する発電機の定常状態
 3.3.2 所望の電力消費を実現する負荷のパラメータ
 3.3.3 発電機の内部状態と入出力の数学的関係
3.4 電力系統モデルの時間応答計算
 3.4.1 初期値応答
 3.4.2 負荷モデルのパラメータ変動に関する応答
 3.4.3 地絡に対する応答
3.5 定常的な潮流状態における母線電圧の周波数同期
3.6 潮流計算の実装法
 3.6.1 代数方程式の解き方
 3.6.2 潮流計算の単純な実装法
 3.6.3 分割されたモジュール群を用いた潮流計算の実装法
3.7 電力系統モデルの時間応答計算の実装法
 3.7.1 電力系統モデルの時間応答計算の単純な実装
 3.7.2 分割したモジュール群を用いた時間応答計算の実装法
数学的補足

4. 電力系統モデルの定態安定性解析
4.1 近似線形化に基づく安定性解析
 4.1.1 電力系統モデルの近似線形化
 4.1.2 近似線形モデルの安定性判別
4.2 数値計算による近似線形モデルの安定性解析
 4.2.1 分割したモジュール群を用いた近似線形化の実装法
 4.2.2 数値的な定態安定性の解析
4.3 近似線形モデルの数学的な安定性解析
 4.3.1 近似線形モデルの定態安定性
 4.3.2 近似線形モデルの受動性
 4.3.3 受動性に基づく定態安定性の解析
 4.3.4 近似線形モデルが受動的であるための必要条件
 4.3.5 近似線形モデルが定態安定であるための必要条件
数学的補足

5.電力系統モデルの安定化制御
5.1 周波数安定化制御
 5.1.1 ブロードキャスト型PIコントローラによる自動発電制御
 5.1.2 周波数安定化制御の数値シミュレーション
5.2 周波数安定化制御系の数学的な安定性解析
 5.2.1 対象とする電力系統モデル
 5.2.2 電力系統モデルの平衡点によらない受動性
 5.2.3 周波数安定化制御系の安定性解析
5.3 過渡安定化制御
 5.3.1 励磁系による発電機の分散制御
 5.3.2 標準的な自動電圧調整器モデル
 5.3.3 自動電圧調整器の制御効果
 5.3.4 系統安定化装置
 5.3.5 系統安定化装置の制御効果
5.4 レトロフィット制御理論に基づく系統安定化装置
 5.4.1 系統安定化装置の設計に用いる電力系統モデル
 5.4.2 レトロフィット制御理論に基づく系統安定化装置の設計

6.大規模モデルの数値シミュレーション例
6.1 対象とする電力系統モデル
 6.1.1 IEEE68母線系統モデル
 6.1.2 潮流計算に用いるデータシート
 6.1.3 負荷モデル
6.2 負荷変動に対する周波数安定性解析
 6.2.1 負荷変動の設定
 6.2.2 発電機の機械入力と界磁電圧が定数である場合
 6.2.3 機械入力が定数である場合
 6.2.4 自動発電制御器により機械入力を制御する場合
6.3 母線地絡に対する過渡安定度解析
 6.3.1 母線地絡の設定
 6.3.2 レトロフィット制御理論に基づく系統安定化装置の効果

引用・参考文献
索引

読者モニターレビュー【 テル 様(ご専門:電力系統、パワーエレクトロニクス )】

電力系統のシステム制御工学という名であるが,電力系統に関する内容(パワーエレクトロニクスや電力工学)についてはあまり詳しく書かれおらず,電力系統の基礎的な内容を理解したいのなら他の本を読んだ方がよいと感じた。

一方で数理モデルや系統の制御については大学学部レベルの範囲を超える内容も扱っており,かなり詳細に議論されていると感じた。学部レベルの制御工学や線形代数の知識がないと読み進めるのは難しいと思われる。また,本書で扱われているMATLABのコードはGitHubで公開されており,実装しながら内容を理解できる点は非常に良いと感じた。

読者モニターレビュー【 しろのわ~る 様(ご専門:電力システム工学 )】

電力系統の解析・制御をシステム制御工学の視点から再定義したこれまでにありそうでなかった書籍です。
制御工学を専門にしている院生・研究者が電力系統の発電機制御をユースケースとした制御器設計に取り組む際に必読となる書籍だと思います。また,電力系統工学を専門としてきた院生・研究者にとっても,電力系統の過渡応答に関するシミュレータを構築する際,参考にできる書籍として大いに活躍することでしょう。

この書籍の内容を理解するためには,学部程度の制御工学(古典制御・現代制御)に関する知識は必須です。基本的な電気回路に関する知識は第1章に触れられているもので十分だと思います。
また本書では電力系統の制御を扱っていますが,動的モデルで表現する安定性(定態・過渡・周波数)を対象としており,経済負荷配分や発電機起動停止問題のような最適化に基づくスキームは取り扱われていない点に一応の注意が必要です。

本書で取り扱われている解析・制御手法にはサンプルコードがついており,それに加えて筆者らの開発したMATLABベースのコードをダウンロードして試すこともできます。MATLABで書かれたプログラムではありますが,toolboxの使用は最低限に抑えられており,プログラムのフローを読めばPythonなどの他言語でも実装可能です。

読者モニターレビュー【 中村 勇太 様 名古屋工業大学大学院工学研究科 助教(ご専門:電力システム、数理最適化 )】

本書における式展開や解析例は,システム制御工学を専攻としている技術者を対象としていることもあり,電力システム分野専攻の技術者が執筆したものとは表現や視点が異なると思われる部分も多くあった。そのため,システム制御工学専攻者だけでなく,電力システム分野を専攻している技術者にもぜひ読んでもらいたい。

また,IEEE68母線モデルをはじめMATLABによるシミュレーション例も公開・掲載されており,さらに著者らのホームページにてMATLABのプログラムに関するマニュアルや解析についても詳述されている。MATLABを用いた電力システムのシミュレーション例やサンプルはいくつかあるが,日本語かつ詳細に掲載されているものは少なく,電力システムとプログラミングを両方学べるという意味では大変貴重な一冊になるのではないか。

システム制御工学分野と電力システム分野の両者について,基礎的な知識が無いと内容を進めていくのが難しい部分が多いと感じたが,専門知識もプログラミングも十分学べるという理由で,特に関連する研究室に配属された学部高学年生や大学院生にもお薦めできる一冊である。

石崎 孝幸

石崎 孝幸(イシザキ タカユキ)

2012年に東京工業大学情報理工学研究科にて博士(工学)の学位を1年短縮して取得後,スウェーデン王立工科大学研究員を経て,東京工業大学システム制御系助教に着任。2020年より同大学准教授。

数理学の立場からスマートグリッド開発に関する多方面の研究に従事。エネルギーインフラのスマート化と強靭化への貢献により令和3年度文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞。その他,システム制御工学分野の主要な国際論文賞であるIEEE Control Systems Magazine Outstanding Paper Award,当該分野を代表する若手研究者を顕彰する計測自動制御学会制御部門パイオニア賞など受賞多数。

川口 貴弘

川口 貴弘(カワグチ タカヒロ)

システム同定,状態推定,カルマンフィルタなど,データに基づく推定の制御理論と,電力システム,リチウムイオン二次電池,自動車,原子時計などへの応用に関する研究に取り組んでいる。また,機械学習や深層学習の応用にも興味をもつ.研究に用いるプログラムを綺麗にするのが趣味。

河辺 賢一(カワベ ケンイチ)

専門は電力系統工学。再生可能エネルギー電源の導入拡大と電力の安定供給の両立を目指して,将来の電力系統を構成する多様な要素技術の利用を視野にいれた電力系統の解析・運用・制御手法に関する研究に取り組んでいる。巨大な電力系統を対象とするため,研究は主に計算機シミュレーションによって進めている。

MathWorks「MATLAB/Simulink 関連書籍」電力系統のシステム制御工学:システム数理とMATLABシミュレーション 掲載日:2022/11/11

MathWorks 様にプロモーション用ページを制作いただきました。

掲載日:2023/11/13

「計測と制御」2023年11月号

掲載日:2023/03/20

令和5年 電気学会全国大会プログラム広告

掲載日:2023/03/15

電子情報通信学会2023年総合大会プログラム広告

掲載日:2022/12/01

電子情報通信学会誌2022年12月号

掲載日:2022/11/28

日刊工業新聞広告掲載(2022年11月28日)

掲載日:2022/11/14

「計測と制御」2022年11月号広告

掲載日:2022/10/21

「電気学会誌」2022年11月号広告

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サポートページ:https://lim.ishizaki-lab.jp/guilda



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