株式会社コロナ社

計測・制御セレクションシリーズ

  • twitter
  • facebook
  • line

2022.1.22 更新

シリーズ刊行のことば

近年の科学技術は,情報化・グローバル化の中で驚くべき速さで発展している。計測・制御分野も例外ではなく,次々と新しい概念・理論・技術が発表され,その核心を理解するのに多大な努力を要する状況にある。さらに,各種の技術が単一の分野に閉じることなく,さまざまな分野が横断的に発展・連携・融合し,新たな分野へ多種多様な広がりをみせている。例えば,計測技術の発展は,知的システムを構築するための人工知能やデータサイエンスの発展にも大きく寄与し,両技術分野の融合による技術革新も期待されている。

計測自動制御学会(SICE)が扱う,計測,制御,システム・情報,システムインテグレーション,ライフエンジニアリングといった分野は,もともと分野横断的な性格を備えていることから,SICEが社会において果たすべき役割がより一層重要なものとなってきている。SICEでは,2018年に完結した「計測自動制御学会(SICE)計測・制御テクノロジーシリーズ」の次世代となるシリーズ企画の在り方について模索し,議論を重ねてきた。その結果,めまぐるしく技術動向が変化する時代に活躍する技術者・研究者・学生の助けとなる書籍を,SICEならではの視点からタイムリーに提供するというシリーズの方針を立てた。

この方針に基づき,従来のシリーズでのテーマや執筆者の選定から出版までのプロセスを見直し,これまでとは異なるプロセスでシリーズ企画を進めていくことにした。ユニークな取り組みとして,SICEがシリーズの執筆者の公募を行い,会誌出版委員会での選考を経て収録テーマを決定している点がある。また,公募と並行して,会誌出版委員会によるテーマ選定や,学会誌「計測と制御」での特集から本シリーズの方針に合うテーマを選定するなどして,収録テーマを決定している。テーマの選定に当たっては,SICEが今の時代に出版する書籍としてふさわしいものかどうかを念頭に置きながら進めている。このようなシリーズの企画・編集プロセスを鑑みて,本シリーズの名称を「計測・制御セレクションシリーズ」とした。

本シリーズは,計測,制御,システム・情報,システムインテグレーション,ライフエンジニアリングに関わる多種多様なテーマがタイムリーに収録されていくことをねらっている。本シリーズが変化の大きな時代の中で活躍する研究者・技術者・学生の役に立てば幸いである。最後に,このシリーズ企画を進めるに当たってご尽力いただいたコロナ社の各氏に感謝したい。

2021年5月 計測自動制御学会 会誌出版委員会 出版ワーキンググループ

シリーズラインナップ

計測自動制御学会 編

以下続刊

  • センサ技術の基礎と応用
  • 電力系統のシステム制御工学
  • 機械学習の可能性
  • データ駆動制御入門

計測・制御セレクションseries1

次世代医療AI- 生体信号を介した人とAIの融合 -

生体信号に関する新たな医療 AI 開発について解説し,法律や倫理,薬事も解説した

計測・制御セレクションシリーズ1 次世代医療AI
  • 計測自動制御学会 編/藤原 幸一・久保 孝富 編著
  • A5サイズ/272頁
  • 定価4,180円 (本体3,800円+税)
書籍の特徴
生体信号を活用する医療AIに焦点を当て,
  • 生体信号の生理学的メカニズム
  • 各種の測定機器,生体信号を解析する機械学習技術
  • 医療AI開発にあたり,研究者,開発者が知っておくべきAIの法律面や倫理面
  • 実用化または商用化を目指す際のハードルとなる薬事
について解説しました。

【本書の構成】

  1. 1章:医療AIの概説
  2. 2章:生体信号発生のメカニズムに関わる生体の構造や機能の概要
  3. 3章:代表的な生体計測方法の紹介
    できるだけ正しい測定を行い,質の高い生体信号を記録しておくことが,生体信号を活用する医療AI開発の最初の壁となります。
  4. 4章:生体信号処理の前処理手法の解説
    ノイズまみれの生体信号から目的とする信号を前処理によって取り出したら,ようやく機械学習によるAI の学習です。
  5. 5章:古典的な回帰・識別から深層学習まで,医療AI開発に用いられる機械学習手法について幅広く触れます。
  6. 6章:実際にAI開発に利用される生体信号とその活用例を,臨床例を含めて紹介します。本章を読むと,生体信号を用いるAIが,いかに臨床と深く結び付いているかがわかるでしょう。逆にいえば,工学系の研究者にとって,いかに臨床現場に入り込むかが医療AI開発の鍵となることが理解できるはずです。
  7. 7章:生体信号を活用する医療AIの実用化・商用化の例を紹介,今後の医療AI開発の展望を述べます。
  8. 8章:医療AIに関わる法律や倫理,薬事について,法律や倫理に詳しくない開発者,研究者に向けて,これらの平易な解説を試みました。
目次
1.序論
1.1 医療AIとは?
1.2 本書の構成

2.生体の構造・機能
2.1 神経系
 2.1.1 神経細胞
 2.1.2 静止膜電位と活動電位
 2.1.3 シナプス伝達
 2.1.4 脳神経回路の構造
 2.1.5 脳の機能
2.2 感覚器系
 2.2.1 視覚
 2.2.2 聴覚と平衡覚
 2.2.3 嗅覚と味覚
2.3 筋骨格系
 2.3.1 骨格
 2.3.2 骨格筋
 2.3.3 筋線維の構造
 2.3.4 筋線維の収縮原理と神経シグナルによる制御
 2.3.5 筋収縮の生理学
2.4 循環器系
 2.4.1 循環器系の構成
 2.4.2 心臓の解剖学的構造
 2.4.3 刺激伝導系と心筋の収縮
 2.4.4 循環器系の役割
 2.4.5 循環の調節

3.生体計測
3.1 脳活動
 3.1.1 電気的活動
 3.1.2 脳血流反応
3.2 心電図
3.3 筋電図
3.4 脈波
 3.4.1 光電式容積脈波記録
 3.4.2 心弾動図

4.生体信号処理
4.1 信号処理の基礎
 4.1.1 フーリエ解析
 4.1.2 ウェーブレット解析
4.2 行列分解
 4.2.1 主成分分析
 4.2.2 独立成分分析
 4.2.3 非負値行列因子分解
4.3 生体信号の特徴量

5.生体信号処理に用いられるAI・機械学習
5.1 異常検知
 5.1.1 多変量統計的プロセス管理(MSPC)
 5.1.2 自己符号化器
5.2 クラスタリング
 5.2.1 階層的クラスタリング
 5.2.2 k平均法
 5.2.3 混合ガウス分布モデル
5.3 分類
 5.3.1 最近傍法とk近傍法
 5.3.2 ベイズの識別規則と線形判別分析法
 5.3.3 ロジスティック回帰
 5.3.4 サポートベクタマシン
 5.3.5 決定木とランダムフォレスト
5.4 回帰
 5.4.1 線形回帰
 5.4.2 サポートベクタ回帰
 5.4.3 k近傍法とカーネル回帰
 5.4.4 ガウス過程回帰
5.5 因果推論
 5.5.1 グレンジャー因果性
 5.5.2 LiNGAM
5.6 深層学習
 5.6.1 フィードフォワードニューラルネットワーク
 5.6.2 普遍性定理
 5.6.3 誤差逆伝搬法
 5.6.4 畳み込みニューラルネットワーク:画像データの処理
 5.6.5 再帰型ニューラルネットワーク:時系列データの処理
 5.6.6 その他の話題

6.生体信号を用いた医療AI技術開発
6.1 脳活動
 6.1.1 脳機能画像を用いた精神疾患の診断と層別化
 6.1.2 ブレイン-マシンインタフェース(BMI)
6.2 心拍変動
 6.2.1 自律神経系
 6.2.2 心拍変動解析
 6.2.3 時間領域指標
 6.2.4 周波数領域指標
 6.2.5 脈波のHRV解析への利用
 6.2.6 自律神経系の機能検査法
 6.2.7 HRVによるてんかん発作予知
 6.2.8 臨床データへの適用結果
6.3 筋電位信号
 6.3.1 運動単位:筋線維群とα運動ニューロン
 6.3.2 筋電位信号とは
 6.3.3 表面筋電図の計測方法
 6.3.4 筋電位信号の応用事例

7.実社会への実装および今後の展望
7.1 社会実装例
 7.1.1 心電図または心音を用いるAIデバイス
 7.1.2 胸部聴診音や呼吸音を用いるAIデバイス
 7.1.3 その他のバイタルサインを用いるデバイス
 7.1.4 画像診断
7.2 今後の展望

8.医療AIの法律・倫理・薬事
8.1 医療AI開発者にとっての法律の意義
 8.1.1 法的規制の大枠
 8.1.2 事例検討
8.2 医療AIの法律と倫理
 8.2.1 AIの倫理
 8.2.2 医療・医学研究の倫理
 8.2.3 倫理にどのように対応すればよいのか
8.3 医療AIと薬事
 8.3.1 医療AIの医療機器該当性について
 8.3.2 薬事規制から見た医療AI開発
 8.3.3 AI医療機器に治験は必要か不要か?

引用・参考文献
索引
more
著者からのメッセージ
医用画像以外のモダリティ,特に生体信号を用いたAI技術に焦点を当て,来たるべき新たな医療AI開発の時代に備えるために必要な事柄を丁寧に解説しました。画像以外のモダリティではデータの収集や解釈が難しい場合がありますが,本書がその隘路を乗り越えるためのヒントとなれば幸いです。
キーワード
医療AI,生体計測,生体信号処理,機械学習,深層学習,ニューラルネットワーク,神経科学,異常検知,ブレイン-マシンインタフェース(BMI),医療倫理,生命倫理,AI医療機器

計測・制御セレクションseries2

外乱オブザーバ

物体を動かす際に生じる外乱(摩擦や重力など)を推定する「外乱オブザーバ」を解説

計測・制御セレクションシリーズ2 外乱オブザーバ
  • 計測自動制御学会 編/島田 明 著
  • A5サイズ/284頁
  • 定価4,400円 (本体4,000円+税)
書籍の特徴
物を動かす際に,摩擦, 重力, 外力等が物の動きを妨げることがある。総称して外乱と呼ぶ。外乱の値を推定できれば,制御系の安定性や追従性を向上させることができ,情報処理やAIなどにも利用できるだろう。外乱の推定方法に「外乱オブザーバ」(disturbance observer,略してDOB)がある。外乱オブザーバ,および外乱オブザーバを併用した制御系は実用的な推定法・制御法として注目され,用いられてきたが,これまで体系的な解説書がなかった。本書は外乱オブザーバと併用制御系を体系的に解説した初の専門書である。

【読者対象】

制御工学,モーションコントロールに関する理論や技術と古典制御理論の基礎をある程度学び,現代制御理論についてもある程度知っている人

【本書の構成】

  1. 1:外乱オブザーバの基本(伝達関数表現での解説,反力推定,2自由度制御など)
  2. 2:既約分解を用いた安定化制御系と外乱オブザーバ
  3. 3:状態空間表現の連続時間系外乱オブザーバ (同一次元,最小次元,高次外乱推定など)
  4. 4:ディジタル系の外乱オブザーバ (同一次元,最小次元,高次外乱推定など)
  5. 5:振動系の外乱オブザーバ設計と制御 (2慣性系を用いた振動抑制制御)
  6. 6:通信外乱オブザーバ (スミス法と通信外乱推定)
  7. 7:マルチレート外乱オブザーバ (複数の制御周期を持つシステムの外乱推定)
  8. 8:外乱オブザーバ併用モデル予測制御 (モデル予測制御と組み合わせる方法)
  9. 9:外乱推定カルマンフィルタ (観測ノイズがあるシステムの外乱推定)
  10. 10:適応外乱オブザーバ (パラメータ,状態変数,外乱を全て推定)
  11. 11:速度の計測・推定法
目次
1.はじめに
1.1 外乱オブザーバの種類と制御系設計
 1.1.1 外乱オブザーバの種類
 1.1.2 オブザーバおよび制御系設計の考え方
1.2 例の形式とMATLABの利用
 1.2.1 例の形式
 1.2.2 MATLAB/Simulinkの利用
1.3 本書の構成と読み方
 1.3.1 本書の構成
 1.3.2 本書の読み方

2.外乱オブザーバの基本
2.1 外乱とは
2.2 外乱推定の仕組み
2.3 外乱除去制御と加速度制御系
 2.3.1 外乱除去制御と加速度制御系の考え方
 2.3.2 外乱の捉え方による外乱オブザーバの違い
 2.3.3 基本的な制御系設計
2.4 反力推定オブザーバ
2.5 内部モデル原理と2自由度制御系
 2.5.1 内部モデル原理
 2.5.2 フィードフォワード制御
 2.5.3 外乱オブザーバとフィードフォワードを併用する制御系
2.6 観測ノイズとモデル化誤差の影響
 2.6.1 観測ノイズの影響
 2.6.2 モデル化誤差の影響
2.7 実システムのモデリング
 2.7.1 DCモータのトルク制御モデル
 2.7.2 台車モデルと回転型モータの関係
2.8 ロバスト制御としての考え方

3.既約分解を用いた安定化制御系と外乱オブザーバ
3.1 既約分解と安定化制御器の導出
 3.1.1 既約分解のためのパラメータの導出
 3.1.2 安定化制御器と自由パラメータ
 3.1.3 Q(s)を含んだ二重既約分解
3.2 外乱オブザーバとの関係
3.3 既約分解と2自由度制御系の構成

4.状態空間表現での連続時間系外乱オブザーバ
4.1 連続時間系の同一次元入力端外乱オブザーバ
 4.1.1 連続時間系の同一次元入力端外乱オブザーバの設計法
 4.1.2 可制御性と状態フィードバック
 4.1.3 連続時間系の同一次元外乱オブザーバ併用サーボ系
4.2 連続時間系の同一次元反力推定オブザーバ
4.3 連続時間系の同一次元出力端外乱オブザーバ
4.4 同一次元高次外乱オブザーバの設計
4.5 最小次元外乱オブザーバと伝達関数表現への変換
4.6 周期外乱オブザーバの設計
4.7 可観測性と非入出力端外乱の扱い
 4.7.1 DCモータの数学モデル
 4.7.2 DCモータの可観測性行列とランク
 4.7.3 外乱推定の可観測性
 4.7.4 非入出力端外乱オブザーバと制御

5.ディジタル系の外乱オブザーバ
5.1 同一次元ディジタル外乱オブザーバ設計
5.2 分離定理の確認
5.3 最小次元ディジタル外乱オブザーバと伝達関数表現
5.4 同一次元高次ディジタル外乱オブザーバの設計

6.振動系の外乱オブザーバの設計と制御
6.1 2慣性系のモデリング
6.2 伝達関数表現での振動抑制制御
6.3 2慣性系の外乱オブザーバ設計と安定化制御
 6.3.1 入力軸外乱τ_d1を推定するオブザーバ
 6.3.2 出力軸外乱τ_d2を推定するオブザーバ
6.4 2慣性系の外乱オブザーバ併用サーボ系
 6.4.1 入力軸外乱τ_d1を考慮した入力軸サーボ系
 6.4.2 出力軸外乱τ_d2を考慮した出力軸サーボ系

7.通信外乱オブザーバ
7.1 スミス法の概要
7.2 通信外乱オブザーバ
7.3 外乱のもとでの通信外乱オブザーバ併用制御

8.マルチレート外乱オブザーバ
8.1 マルチレート系のモデリング
8.2 マルチレート外乱オブザーバ:方法
 8.2.1 外乱オブザーバ設計
 8.2.2 マルチレートオブザーバを用いた制御系設計
8.3 マルチレート外乱オブザーバ:方法

9.外乱オブザーバ併用モデル予測制御
9.1 モデル予測制御
 9.1.1 モデル予測制御の概要
 9.1.2 MPC設計のための定式化と目的関数の定義
9.2 制約の記述法
 9.2.1 制御入力\hat{u}(k)に関する制約の扱い
 9.2.2 制御量\hat{z}(k)に関する制約の扱い
 9.2.3 制御入力の変化量Δ\hat{u}(k)に関する制約の扱い
 9.2.4 制御入力と制御量に関する制約の扱い
9.3 モデル予測制御系設計
9.4 外乱オブザーバ併用モデル予測制御系設計

10.外乱推定カルマンフィルタ
10.1 外乱推定カルマンフィルタ設計
10.2 外乱推定定常カルマンフィルタ設計
10.3 外乱推定拡張カルマンフィルタ設計

11.適応外乱オブザーバ
11.1 適応オブザーバの構造
11.2 適応外乱オブザーバのための可観測正準系の導出
11.3 状態変数フィルタの作成
11.4 Kreisselmeier型適応オブザーバの設計

12.速度の計測・推定法
12.1 速度計測の重要性
12.2 速度計測・速度推定手法
 12.2.1 擬似微分
 12.2.2 計数法・計時法
 12.2.3 M/T方式
 12.2.4 同期計数法
 12.2.5 瞬時速度オブザーバ

付録
A.1 数学的基礎
A.2 古典制御理論に基づく基本的な制御系
A.3 連続系の現代制御理論の基礎とオブザーバ
A.4 ドイルの記法と二重既約分解表現の確認
A.5 ディジタル系の現代制御理論の基礎とオブザーバ
A.6 最適計画法の表現と意味
A.7 描画プログラムの例
引用・参考文献
索引
more
著者からのメッセージ
読者が「外乱オブザーバ」を理解し,自ら活用できるようになってもらうための参考として,MATLAB/Simulinkを用いたサンプルプログラムを多く紹介しています。また,本書の執筆にあたり,原稿とプログラムを学部・大学院授業,研究室での勉強会で試用することで,不具合やわかり難さを改善する試みを重ねて来ました。本書が皆様の研究・開発等に役に立つことを心から願います。
キーワード
モーションコントロール,制御系設計,ロバスト制御,伝達関数、同一次元外乱オブザーバ,高次外乱オブザーバ,最小次元外乱オブザーバ,周期外乱オブザーバ,むだ時間外乱,マルチレート制御系,モデル予測制御,カルマンフィルタ,適応外乱オブザーバ, MATLAB/Simulink

計測・制御セレクションseries3

量の理論とアナロジー

物理構造の量を通じた解明のために、あらゆる方向からの言説をまとめて蓄積した

NEW
計測・制御セレクションシリーズ3 量の理論とアナロジー
  • 計測自動制御学会 編/久保 和良 著
  • A5サイズ/284頁
  • 定価4,400円 (本体4,000円+税)
書籍の特徴
分野は異なるが同じような現象の対応付けがなされることをアナロジーと呼ぶ。アナロジーは横断型の思考方法で全体を見通せるので,問題解決に高い能力が発揮できる。本書ではアナロジーを科学的に述べている。
アナロジーを考える上で,物事の構造に注目する必要が出て,その背景には量の理論が見えてくる。この一連の科学をまとめるにあたって,筆者は,そこに系統だった理論がないことに気づいた。そこで本書では数学教育,物理,計測,機械工学,電気工学,システム工学など,可能な限りの量の理論とアナロジーを紹介して全体を読者に提供する方針をとった。
量の理論を集約すると「1.量の放逐,2.量の線型代数,3.外延量と内包量,4.示量変数と示強変数,5.フローとエフォート,6.位差量と流通量」の6系統の形が見えた。本書では量そのものの科学にも広く言及した。
目次
1.表記方針と準備

2.量とは
2.1 量と量の理論
2.2 度量衡と時間量
2.3 量の表現
2.4 量の種類
2.5 量と数との違い
2.6 アナロジーとデュアリティ

3.数学および教育に関する量の理論
3.1 藤澤利喜太郎の理論(初等算術教育の量)
3.2 遠山啓の理論(外延量と内包量)
 3.2.1 分離量
 3.2.2 外延量と内包量
 3.2.3 遠山啓の理論について
 3.2.4 内包量の用法と微積分への拡張
 3.2.5 銀林浩の拡張
3.3 小島順の理論(量の線型代数)
 3.3.1 実数体
 3.3.2 線型空間
 3.3.3 線型写像
 3.3.4 双線型写像
 3.3.5 双対空間
 3.3.6 テンソル積
 3.3.7 1次元線型空間と量の扱い
 3.3.8 組立量の理論
3.4 数学教育で量の理論を考える意味

4.物理に関する量の理論
4.1 ニュートンの量の理論とマッハの批判
 4.1.1 ニュートンの量の理論
 4.1.2 マッハの批判
 4.1.3 ニュートン力学の注意点
4.2 押田勇雄の物理学の量の理論
 4.2.1 物理量
 4.2.2 線型現象と線型微分法則
 4.2.3 アナロジー
 4.2.4 エネルギー変換
4.3 三輪修三による示強変数と示量変数の起源
4.4 久保亮五の熱力学的な量とポテンシャル
4.5 高橋秀俊の『物理学汎論』での量の理論
 4.5.1 構造とエネルギー
 4.5.2 力について
 4.5.3 示量変数と示強変数
 4.5.4 ルジャンドル変換
 4.5.5 いろいろな自由度の間の交渉
 4.5.6 慣性のある系
 4.5.7 ハミルトニアンとラウシアン
 4.5.8 電気回路と機械系との対応
 4.5.9 不可逆過程

5.計測に関する量の理論
5.1 本多敏の理論
 5.1.1 計測工学での量の分類
 5.1.2 量の不確定性関係が計測に及ぼす影響
 5.1.3 センシングにおける信号変換とエネルギー
5.2 安藤繁の理論
 5.2.1 センサと計測システム
 5.2.2 センサの4端子モデル
 5.2.3 示容変量と示強変量
 5.2.4 信号エネルギーとインピーダンス
 5.2.5 インピーダンスの捨象
5.3 科学的基礎としての計測における量の理論
 5.3.1 ヘルムホルツの数量認識
 5.3.2 マッハの数量の認識論
 5.3.3 Campbellの測定論
 5.3.4 その他の理論
5.4 高田誠二の分類
5.5 小林彬の官能量の位置付け
5.6 北森俊行のアナロジーと計測理論
 5.6.1 計測システムの一般的構造
 5.6.2 計測システムの必要性
5.7 森村正直の計測論理構造
5.8 山崎弘郎の相似と無次元量
5.9 森村正直のトランスデューサに関する理論

6.分野横断的工学での量の理論とアナロジー
6.1 工学的な量の理論
 6.1.1 力学系の量の構造
 6.1.2 電気系の量の構造
 6.1.3 量の構造における双対性
 6.1.4 量の構造から見えるアナロジー
 6.1.5 横断型構造への発展
 6.1.6 吉川弘之のディシプリンの理論
6.2 高橋利衛の量の理論
 6.2.1 位差量と流通量の分け方と構造
 6.2.2 ゲシュタルトとしての内在性と外在性
 6.2.3 工学的視点
 6.2.4 双対と類推
 6.2.5 量の理論とアナロジー
 6.2.6 高橋利衛の理論の特徴

7.工学に現れる量とアナロジー
7.1 電気回路系の量の理論と構造
 7.1.1 川上正光の量の理論と双対構造
 7.1.2 齋藤正男の電気回路
 7.1.3 木村英紀の電気回路
 7.1.4 高橋秀俊の回路論
 7.1.5 安藤繁の双対回路論
7.2 機械工学系の量の理論と構造
 7.2.1 保坂寛の機械振動解析論
 7.2.2 中田孝のモビリティ法
 7.2.3 長松昌男の電気機械相似理論
 7.2.4 川瀬武彦の理論
7.3 システム工学系の量の理論と構造
 7.3.1 小林邦博らの過渡現象論
 7.3.2 正田英介の線型システム理論
 7.3.3 高橋秀俊の数理と現象
 7.3.4 高橋秀俊の双対と類推
 7.3.5 近野正のダイナミカル・アナロジー

8.量に関するいくつかの話題
8.1 情報理論と信号理論での量とアナロジー
 8.1.1 情報理論と熱力学
 8.1.2 信号理論と量子力学
 8.1.3 信号理論での取扱い
 8.1.4 信号の特徴量と無次元量
 8.1.5 信号処理でのウィナー・ヒンチンの関係
8.2 単位と国際単位系(SI)
 8.2.1 メートル条約
 8.2.2 最新の国際文書とSI
 8.2.3 自然単位系の量の理論
8.3 次元解析と新たな量概念
 8.3.1 次元解析
 8.3.2 生物学の相似則
8.4 文学と工学のアナロジー
8.5 発想法としてのアナロジー
8.6 感覚量について

9.量の理論の総括
9.1 量の理論
9.2 Xチャートによる一般化
9.3 時間とエネルギーおよび第4の素子
9.4 アナロジーの根幹

引用・参考文献
索引
more
著者からのメッセージ
本書では量そのものの科学にも広く言及した。多くの学問分野は別のように見えても,対応構造に着目すれば,分野横断型のアナロジーが役に立つ。社会学の人口増加も,医学のウィルス感染者数の減少も,回路学や力学との類推で扱える。その際,社会学や医学の細かな事情は必ずしも必要ではなくなり,社会学のマクロな視点も,医学のミクロな視点も,アナロジーのメタレベルの視点で解決できる。
諸姉諸兄には量の理論とアナロジーを発想に役立てていただき,筆者が積んだ石の上に,玉を積んでいただくことを願っている。
キーワード
アナロジー,類推,双対,量の理論,国際単位系
株式会社 コロナ社