外乱オブザーバ

計測・制御セレクションシリーズ 2

外乱オブザーバ

物体を動かす際に生じる外乱(摩擦や重力など)を推定する「外乱オブザーバ」を解説

ジャンル
発行年月日
2021/10/13
判型
A5
ページ数
284ページ
ISBN
978-4-339-03382-3
外乱オブザーバ
在庫あり

定価

4,400(本体4,000円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • レビュー
  • 著者紹介

【読者対象】
 制御工学,モーションコントロールに関する理論や技術を学んでいる学生や社会人であって,古典制御理論の基礎をある程度学んだ人,そして現代制御理論についてもある程度知っている人を想定している。

【書籍の特徴】
 物を動かす際に,摩擦や重力,そして外力が物の動きを妨げることがある。総称して外乱と呼ぶ。外乱の値を推定できれば,制御系の安定性や追従性を向上させ,情報処理などに利用できるだろう。外乱の推定方法に「外乱オブザーバ」(disturbance observer,略してDOB)がある。外乱オブザーバ,および外乱オブザーバを併用した制御系は実用的な推定法・制御法として注目され,用いられてきたが,未だに体系的な解説書がない。これに対して本書は外乱オブザーバと併用制御系を体系的に解説した初の専門書である。

 具体的には,下記の構成となっている。
1. はじめに
2. 外乱オブザーバの基本 (伝達関数表現での解説,反力推定,2自由度制御など)
3. 既約分解を用いた安定化制御系と外乱オブザーバ
4. 状態空間表現の連続時間系外乱オブザーバ (同一次元,最小次元,高次外乱推定など)
5. ディジタル系の外乱オブザーバ (同一次元,最小次元,高次外乱推定など)
6. 振動系の外乱オブザーバ設計と制御 (2慣性系を用いた振動抑制制御)
7. 通信外乱オブザーバ (スミス法と通信外乱推定)
8. マルチレート外乱オブザーバ (複数の制御周期を持つシステムの外乱推定)
9. 外乱オブザーバ併用モデル予測制御 (モデル予測制御と組み合わせる方法)
10. 外乱推定カルマンフィルタ (観測ノイズがあるシステムの外乱推定)
11. 適応外乱オブザーバ (パラメータ,状態変数,外乱を全て推定)
12. 速度の計測・推定法

【著者からのメッセージ】
 読者が「外乱オブザーバ」を理解し,自ら活用できるようになってもらうための参考として,MATLAB/Simulinkを用いたサンプルプログラムを多く紹介しています。また,本書の執筆にあたり,原稿とプログラムを学部・大学院授業,研究室での勉強会で試用することで,不具合やわかり難さを改善する試みを重ねて来ました。本書が皆様の研究・開発等に役に立つことを心から願います。

物を動かす際に,摩擦や重力,外力が物の動きを妨げることがある。これらの外乱の値を推定できれば,制御系の安定性や追従性を向上させたり,情報処理などに利用できるだろう。外乱の推定方法の1つに「外乱オブザーバ」(disturbance observer;DOB)がある。

本来,「オブザーバ」は,会議の傍聴者を指すことばとして知られているが,制御工学の世界では「状態観測器」と訳され,状態変数を推定する機能を意味する。そのオブザーバは,1964年に当時スタンフォード大学の博士課程の学生であったD.G.Luenbergerによって提案された。

「外乱オブザーバ」は外乱を推定するオブザーバである。大石潔・大西公平らによる論文や解説が発表されて以来,広く注目されて,世界中の研究者・技術者たちにより研究や応用が続けられてきた。

一方,外乱を未知入力と解釈して推定するオブザーバが,少し前から報告されている。Meditchらによる論文では,定常未知入力を推定する0-Observerとk次多項式で表される未知入力を推定するk-Observerの設計法が,設計可能な条件とともに報告されている。これらのオブザーバは,未知入力u(t)をもともとの状態変数x(t)に加えて,\overline{x}=[x^T (t),u^T (t)]^Tと定義した上で,可観測性が成り立てば,一般的なオブザーバ理論に従ってx(t)もu(t)も推定できるとしており,今日の状態空間表現での外乱オブザーバ設計法と変わらない。そのほかに,多くの論文でさまざまな未知入力推定法が報告されている。しかし,「外乱」に深く着目して「外乱オブザーバ」という名称や伝達関数によるわかりやすい表現を考案し,外乱を打ち消すように外乱推定値をフィードバックすることでほぼ完全な外乱抑制制御ができることや,パラメータ変動を抑えられること,加速度を自由に制御できることなどを含めた総合的な「外乱オブザーバ技術」は上記論文や解説から始まったと考えられる。

本書は,「外乱オブザーバ」の設計プロセスや応用方法,さまざまな性質を体系的に記すことにより,制御を学び,研究する多くの人々に役立ててもらうことを目的としている。読者として想定するのは,制御工学,モーションコントロールに関する理論や技術を学んでいる学生,社会人であり,古典制御理論の基礎をある程度学んだ人,そして現代制御理論についてもある程度知っている人々である。

執筆内容は,学部や大学院の授業で試用したほか,モーションコントロール研究室(島田研究室)のメンバーたち,特に松尾健太君,徳重一樹君,高瀬勝充君,中島綾也君,木村優花さんたちに多くの指摘をしてもらい,完成させた。

また,島田研究室に属して修士課程を経た後,慶應義塾大学の博士課程に進み,村上俊之教授のもとで研鑽を重ねている大平峻君にも,記述の不備の指摘や提案をしてもらった。また,速度の計測と推定技術の執筆に関して,埼玉大学の辻俊明准教授と大西研究室出身の永富宏之氏に,特にご協力をいただいた。

さて,本書は,計測自動制御学会で公募された計測・制御セレクションシリーズの一冊としてまとめたものである。会誌・出版委員会において本書の担当を務めていただいた東京都立大学の増田士朗教授のご支援・ご助力をいただきながら完成に至ったものであり,深く感謝する。また,併せて計測自動制御学会,コロナ社の皆様に感謝申し上げたい。

2021年8月
島田 明

1.はじめに
1.1 外乱オブザーバの種類と制御系設計
 1.1.1 外乱オブザーバの種類
 1.1.2 オブザーバおよび制御系設計の考え方
1.2 例の形式とMATLABの利用
 1.2.1 例の形式
 1.2.2 MATLAB/Simulinkの利用
1.3 本書の構成と読み方
 1.3.1 本書の構成
 1.3.2 本書の読み方

2.外乱オブザーバの基本
2.1 外乱とは
2.2 外乱推定の仕組み
2.3 外乱除去制御と加速度制御系
 2.3.1 外乱除去制御と加速度制御系の考え方
 2.3.2 外乱の捉え方による外乱オブザーバの違い
 2.3.3 基本的な制御系設計
2.4 反力推定オブザーバ
2.5 内部モデル原理と2自由度制御系
 2.5.1 内部モデル原理
 2.5.2 フィードフォワード制御
 2.5.3 外乱オブザーバとフィードフォワードを併用する制御系
2.6 観測ノイズとモデル化誤差の影響
 2.6.1 観測ノイズの影響
 2.6.2 モデル化誤差の影響
2.7 実システムのモデリング
 2.7.1 DCモータのトルク制御モデル
 2.7.2 台車モデルと回転型モータの関係
2.8 ロバスト制御としての考え方

3.既約分解を用いた安定化制御系と外乱オブザーバ
3.1 既約分解と安定化制御器の導出
 3.1.1 既約分解のためのパラメータの導出
 3.1.2 安定化制御器と自由パラメータ
 3.1.3 Q(s)を含んだ二重既約分解
3.2 外乱オブザーバとの関係
3.3 既約分解と2自由度制御系の構成

4.状態空間表現での連続時間系外乱オブザーバ
4.1 連続時間系の同一次元入力端外乱オブザーバ
 4.1.1 連続時間系の同一次元入力端外乱オブザーバの設計法
 4.1.2 可制御性と状態フィードバック
 4.1.3 連続時間系の同一次元外乱オブザーバ併用サーボ系
4.2 連続時間系の同一次元反力推定オブザーバ
4.3 連続時間系の同一次元出力端外乱オブザーバ
4.4 同一次元高次外乱オブザーバの設計
4.5 最小次元外乱オブザーバと伝達関数表現への変換
4.6 周期外乱オブザーバの設計
4.7 可観測性と非入出力端外乱の扱い
 4.7.1 DCモータの数学モデル
 4.7.2 DCモータの可観測性行列とランク
 4.7.3 外乱推定の可観測性
 4.7.4 非入出力端外乱オブザーバと制御

5.ディジタル系の外乱オブザーバ
5.1 同一次元ディジタル外乱オブザーバ設計
5.2 分離定理の確認
5.3 最小次元ディジタル外乱オブザーバと伝達関数表現
5.4 同一次元高次ディジタル外乱オブザーバの設計

6.振動系の外乱オブザーバの設計と制御
6.12 慣性系のモデリング
6.2 伝達関数表現での振動抑制制御
6.3 2慣性系の外乱オブザーバ設計と安定化制御
 6.3.1 入力軸外乱τ_d1を推定するオブザーバ
 6.3.2 出力軸外乱τ_d2を推定するオブザーバ
6.4 2慣性系の外乱オブザーバ併用サーボ系
 6.4.1 入力軸外乱τ_d1を考慮した入力軸サーボ系
 6.4.2 出力軸外乱τ_d2を考慮した出力軸サーボ系

7.通信外乱オブザーバ
7.1 スミス法の概要
7.2 通信外乱オブザーバ
7.3 外乱のもとでの通信外乱オブザーバ併用制御

8.マルチレート外乱オブザーバ
8.1 マルチレート系のモデリング
8.2 マルチレート外乱オブザーバ:方法
 8.2.1 外乱オブザーバ設計
 8.2.2 マルチレートオブザーバを用いた制御系設計
8.3 マルチレート外乱オブザーバ:方法

9.外乱オブザーバ併用モデル予測制御
9.1 モデル予測制御
 9.1.1 モデル予測制御の概要
 9.1.2 MPC設計のための定式化と目的関数の定義
9.2 制約の記述法
 9.2.1 制御入力u(k)に関する制約の扱い
 9.2.2 制御量z(k)に関する制約の扱い
 9.2.3 制御入力の変化量Δu(k)に関する制約の扱い
 9.2.4 制御入力と制御量に関する制約の扱い
9.3 モデル予測制御系設計
9.4 外乱オブザーバ併用モデル予測制御系設計

10.外乱推定カルマンフィルタ
10.1 外乱推定カルマンフィルタ設計
10.2 外乱推定定常カルマンフィルタ設計
10.3 外乱推定拡張カルマンフィルタ設計

11.適応外乱オブザーバ
11.1 適応オブザーバの構造
11.2 適応外乱オブザーバのための可観測正準系の導出
11.3 状態変数フィルタの作成
11.4 Kreisselmeier型適応オブザーバの設計

12.速度の計測・推定法
12.1 速度計測の重要性
12.2 速度計測・速度推定手法
 12.2.1 擬似微分
 12.2.2 計数法・計時法
 12.2.3 M/T方式
 12.2.4 同期計数法
 12.2.5 瞬時速度オブザーバ

付録
A.1 数学的基礎
A.2 古典制御理論に基づく基本的な制御系
A.3 連続系の現代制御理論の基礎とオブザーバ
A.4 ドイルの記法と二重既約分解表現の確認
A.5 ディジタル系の現代制御理論の基礎とオブザーバ
A.6 最適計画法の表現と意味
A.7 描画プログラムの例
引用・参考文献
索引

読者モニターレビュー【 Bird Legend 様(ご専門:パワーエレクトロニクス機器の受託開発)】

本書は,外乱オブザーバに関して幅広くまとめられています。ブロック図のみならず伝達関数も丁寧に記載されているため,外乱オブザーバやフィードフォワード制御に関して明るくない方でも,古典制御と現代制御の基礎があれば理解が深まるような内容になっています。本書は手っ取り早く基礎から外乱オブザーバについて学びたい方にはおすすめです。また,Simulinkモデルも記載されているため,シミュレーションをしながら外乱オブザーバに関する理解を深めることもできます。専門書の中には著者がこれまでに発表した論文の内容に偏っているものもありますが,本書は著者の論文のみならず,マルチレートフィードフォワード制御,瞬時速度オブザーバなど幅広い内容が記載されています。私は電気学会産業応用部門の論文を読むことが多いのですが,論文とあわせて本書を読むことでより理解が深まると感じました。

読者モニターレビュー【 TS 様(ご専門:ロボット制御)】

外乱オブザーバに関して体系的にまとめられた教科書は洋書でもあまり存在していない(少なくとも自分はLi Yangらの”Disturbance Observer-Based Control”しか知らない)ため,本書は和書の貴重な一冊であると考えられる.特に,伝達関数形式の外乱オブザーバと状態空間表現での外乱オブザーバの関係がまとめられており,両手法の理解を深めることが出来た.また,状態空間表現での外乱オブザーバの場合,外乱が大きく変動しないことを前提とし,外乱の微分値を0とした拡大系にオブザーバを適用することが多いが,本書で紹介されている高次外乱オブザーバを用いることで,ランプ入力外乱等にも良好な追従を実現可能な手法と,その注意点もまとめられていた点がとても有用であった.また,摩擦や実際の外力のどこまでを外乱として推定するかは制御対象や制御目的に依存すると思われるが,それぞれのパターンの推定結果とその考察が提示されているため,実用上も有益な一冊になっていると思われる.

読者モニターレビュー【 SU 様(業界:電子部品製造業)】

外乱オブザーバは、いろんな産業機器(モータドライバーやロボットコントローラ)に採用されている機能です。ただ、外乱オブザーバについて1から言及された書籍がなく、どの専門書も数ページで終わってしまう内容で、原理を理解するのには学会論文を読み込み必要性がありました。ところが、本書は、そんな外乱オブザーバだけをまとめており、初期考え方から最新の考え方までの数式や参考プログラムがあるので、十分に理解できる内容となっております。また、過去に外乱オブザーバは、ただの積分器だという批判もありましたが、それは違うことをわかる明確な根拠も示されており、非常にためになる内容です。これから学ぶ人、エンジニア両者にとって良い参考書になる事間違いなしです。

島田 明(シマダ アキラ)

1983年に電気通信大学卒業後、セイコーインスツル(株)で18年間、産業ロボットコントローラの開発等に携わりながら、千葉大学工学部の非常勤講師、客員教授を兼務。その後、2001年より職業能力開発総合大学校電気工学科准教授を経て、2009年から芝浦工業大学デザイン工学部デザイン工学科教授として教育と研究に従事。博士(工学) 慶應義塾大学(1996)。趣味はフリークライミング。江戸名所図会や兎園小説(滝沢馬琴他)に登場する奇石「立石様」(都指定史跡、葛飾区)を掘り起こそうとした名主 島田新右衛門の直系子孫。専門はモーションコントロール、制御工学、ロボティクス。

『計測・制御セレクションシリーズ』ラインナップ
  1. 次世代医療AI- 生体信号を介した人とAIの融合 -
  2. 藤原幸一・久保孝富 編著 
  3. 外乱オブザーバ
  4. 島田 明 著 
  5. 量の理論とアナロジー
  6. 久保和良 著 

以下続刊

  • センサ技術の基礎

  • システム制御理論による電力系統の解析と制御

  • 機械学習の可能性
刊行のことば

近年の科学技術は,情報化・グローバル化の中で驚くべき速さで発展している。計測・制御分野も例外ではなく,次々と新しい概念・理論・技術が発表され,その核心を理解するのに多大な努力を要する状況にある。さらに,各種の技術が単一の分野に閉じることなく,さまざまな分野が横断的に発展・連携・融合し,新たな分野へ多種多様な広がりをみせている。例えば,計測技術の発展は,知的システムを構築するための人工知能やデータサイエンスの発展にも大きく寄与し,両技術分野の融合による技術革新も期待されている。

計測自動制御学会(SICE)が扱う,計測,制御,システム・情報,システムインテグレーション,ライフエンジニアリングといった分野は,もともと分野横断的な性格を備えていることから,SICEが社会において果たすべき役割がより一層重要なものとなってきている。SICEでは,2018年に完結した「計測自動制御学会(SICE)計測・制御テクノロジーシリーズ」の次世代となるシリーズ企画の在り方について模索し,議論を重ねてきた。その結果,めまぐるしく技術動向が変化する時代に活躍する技術者・研究者・学生の助けとなる書籍を,SICEならではの視点からタイムリーに提供するというシリーズの方針を立てた。

この方針に基づき,従来のシリーズでのテーマや執筆者の選定から出版までのプロセスを見直し,これまでとは異なるプロセスでシリーズ企画を進めていくことにした。ユニークな取り組みとして,SICEがシリーズの執筆者の公募を行い,会誌出版委員会での選考を経て収録テーマを決定している点がある。また,公募と並行して,会誌出版委員会によるテーマ選定や,学会誌「計測と制御」での特集から本シリーズの方針に合うテーマを選定するなどして,収録テーマを決定している。テーマの選定に当たっては,SICEが今の時代に出版する書籍としてふさわしいものかどうかを念頭に置きながら進めている。このようなシリーズの企画・編集プロセスを鑑みて,本シリーズの名称を「計測・制御セレクションシリーズ」とした。

本シリーズは,計測,制御,システム・情報,システムインテグレーション,ライフエンジニアリングに関わる多種多様なテーマがタイムリーに収録されていくことをねらっている。本シリーズが変化の大きな時代の中で活躍する研究者・技術者・学生の役に立てば幸いである。最後に,このシリーズ企画を進めるに当たってご尽力いただいたコロナ社の各氏に感謝したい。


2021年4月

計測自動制御学会会誌出版委員会出版ワーキンググループ