
ヒューマンインタフェース
本書では,人と情報システムの基礎やHI デザインの原則,デザインプロセスを学べる。
- 発行年月日
- 2024/07/22
- 判型
- A5
- ページ数
- 208ページ
- ISBN
- 978-4-339-02945-1
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- レビュー
- 広告掲載情報
【対象読者】
本書は,情報系の学部や学科で勉強する大学生を中心に,人と機械の接点であるヒューマンインタフェース(HI)について初めて学ぶ人を想定しています。
【書籍の特徴】
専門的な知識がなくても順に学んでいけば理解できるように,前半ではHIの歴史や人と情報システムに関する基礎を学び,後半ではHIデザインの原則やプロセス,評価などの具体的な方法や注意点などについて学ぶ構成になっています。それぞれの章では,学ぶことが明確になるよう冒頭におおまなか内容と目標をまとめ,章末に内容の理解を確認するための演習問題と「良いHIとはなんだろうか」と考えるための発展課題を配置しています。
【章の構成】
授業での使用を想定した15章構成になっています。
1~4章の内容は,HIの基本概念や歴史的な背景などを整理した後に,知覚や認知,行動などに関する人の生理特性や心理特性とそのモデルです。
5~6章は,情報の入力と出力,インタラクションスタイル,7~8章はGUIを構成する要素や設計における注意点と,HIのデザイン原則についてです。
9~12章は,より具体的にHIのデザインプロセスや要求獲得,モデル化,プロトタイピング,さらに評価の方法などを学ぶ章です。
13~15章は,多様なユーザが利用するHIのあり方や,ネットワーク化が進む近年の情報社会においてHIに求められるものを考える内容になっています。
詳細な内容は目次のページをご覧ください。
【著者からのメッセージ】
HIは人と機械をつなぐ「接点」なので,人と機械の両者の特性をよく理解した上で設計する必要があります。すなわち,人の生理特性や心理特性,各種インタラクション方式の特徴,HIのデザイン原理などを理解し,適切なデザインと評価,さらに改良を実施することが求められます。本書をきっかけに,要求や特性が異なる多様なユーザにとって使いやすいHIを考える意識やスキルを身につけてもらえることを願っています。
【キーワード】
ヒューマンインタフェース,インタラクション,ユーザビリティ,アクセシビリティ,生理特性,心理特性,GUI,デザインプロセス
ヒューマンインタフェース(以下,HI)という言葉が普及して四半世紀が過ぎた。当時は問題になった機械やソフトウェアの使いやすさが大きく改善された一方で,情報技術の発展によって新しいシステムやサービスが登場した結果,十分に検討されないままユーザに提供されたHIに接する機会も増えた。また,ユーザが実際に使用するHIと,学問分野としてのHIの乖離も大きくなってきていた。
本書は,このような問題意識を持ちつつ情報系学科の学部生を対象にHIの講義を担当してきた2名が,教科書として使用することを意識して執筆したものである。
執筆にあたっては,初学者を想定し,HIの歴史や人と情報システムに関する基礎から始め,HIデザインの原則やデザインプロセスを学んだ後に,今後のHIを概観する構成を採用した。ただ,基礎から応用までカバーしようとした結果,ややボリューム超過になった面は否めない。大学教員の方が教科書として授業に使用する場合には,予備知識や講義の時間数に応じて,適宜,内容を取捨選択していただければ幸いである。なお,各章末の演習問題はテキストの内容理解が確認できるよう,本文を読み返せば答えがわかる問題とした。発展課題は理解を深めることを目標に,広く一般的な問いや実践的な課題とした。
学生の皆さんには,本書の内容を単純に信じず,「良いHIとはなんだろうか」と自問していただきたい。おそらく,すぐに答えが一つではないことに気づくであろう。そもそも,善し悪しの基準はユーザの目的や作業内容などによって異なる。価値基準も人によってさまざまである。しかし,人やシステムに対する体系的な知識を基礎に,適切な手順で改良していけば,大多数の人にとって多少なりとも望ましいHIやシステムに近づけることは可能であろう(といいつつ,単純に最大公約数的発想で考えると,一歩間違うと誰から見てもちょっと使いにくいHIになりかねない。また,大多数に該当しない人のことを忘れないことも重要である)。本書をきっかけに,そのような意識とスキルを身につけてもらえれば著者としても本望である。
HIの設計や開発にかかわる諸兄や周辺分野の専門家の方にとっては,本書は物足りない部分も多々あると思うがご容赦いただきたい。なお,いうまでもないが間違いはすべて著者の責任に帰す。何でもご指摘をいただければ幸いである。
最後に,本書を監修いただいたヒューマンインタフェース学会および学会関係者の皆さまと,5年の長きにわたって多大なるご支援をいただいたコロナ社に心から感謝する。
2024年5月
藤田欣也,渋谷 雄
1章 ヒューマンインタフェース序論
1.1 ヒューマンインタフェースの基本概念
1.2 HIを構成する要素
1.3 HIの歴史
1.3.1 産業革命からGUIの登場まで
1.3.2 ユーザ中心設計からUXへの流れ
1.3.3 GUI以降の技術の進歩とその影響
1.4 HIの必要性と位置づけ
演習問題
発展課題
引用・参考文献
2章 人の生理特性
2.1 人の生理特性とHI
2.2 感覚
2.2.1 視覚
2.2.2 聴覚
2.2.3 触覚
2.2.4 感覚の法則性
2.3 身体形状と運動
2.3.1 身体形状
2.3.2 運動
2.4 HIのユーザ身体・精神への影響
2.5 生理指標
演習問題
発展課題
引用・参考文献
3章 人の心理特性
3.1 人の知覚特性
3.1.1 奥行き知覚
3.1.2 ゲシュタルトの法則
3.1.3 錯覚
3.1.4 仮現運動・音像定位
3.2 記憶と学習
3.2.1 記憶
3.2.2 学習
3.3 注意
演習問題
発展課題
引用・参考文献
4章 HIにおける人の行動とモデル
4.1 メンタルモデル
4.2 アフォーダンス
4.3 デノテーション・コノテーション
4.4 判断
4.5 インタラクション行動のモデル
4.5.1 モデルヒューマンプロセッサ
4.5.2 キーストロークレベルモデル
4.5.3 ノーマンによる行為の7段階モデル
4.5.4 ラスムッセンのSRKモデル
4.6 ヒューマンエラー
演習問題
発展課題
引用・参考文献
5章 情報の入力
5.1 入力装置
5.1.1 ポインティング装置
5.1.2 テキスト入力装置
5.2 テキスト入力
5.2.1 アルファベット・数字・かな文字の入力
5.2.2 かな漢字変換
5.2.3 入力予測
5.2.4 修正支能
演習問題
発展課題
引用・参考文献
6章 情報の出力とインタラクション
6.1 出力装置
6.2 インタラクションと入出力情報
6.3 インタラクションスタイル
6.3.1 インタラクションのための動作指示
6.3.2 コマンドラインインタフェース
6.3.3 グラフィカルユーザインタフェース
6.3.4 そのほかのインタラクションスタイル
演習問題
発展課題
引用・参考文献
7章 GUI
7.1 GUIとソフトウェア
7.2 GUIの構成要素とその設計
7.2.1 GUIウィジェット
7.2.2 アイコンの設計
7.2.3 メニューの設計
7.3 GUIの全体設計
7.3.1 画面の領域と配置
7.3.2 作業の分割と遷移
7.3.3 情報出力の設計
7.3.4 情報入力の設計
演習問題
発展課題
引用・参考文献
8章 ユーザビリティとデザイン原則
8.1 ユーザビリティ
8.2 ユーザエクスペリエンス
8.3 デザイン原則
8.3.1 HIデザインの原則・ガイドライン
8.3.2 ノーマンによるデザインの7原則
8.3.3 シュナイダーマンによる8つの黄金律
8.4 ユーザ中心設計・人間中心設計
演習問題
発展課題
引用・参考文献
9章 HIのデザインプロセス
9.1 デザインプロセス
9.1.1 ウォータフォールモデル
9.1.2 反復型のデザインモデル
9.2 要求獲得
9.2.1 ユーザ分析
9.2.2 タスク分析
9.2.3 要求獲得のためのデータ収集
9.2.4 収集データの分析
演習問題
発展課題
引用・参考文献
10章 モデル化とプロトタイピング
10.1 ユーザとタスクのモデル化
10.1.1 ペルソナ
10.1.2 シナリオ
10.1.3 ストーリーボード
10.1.4 カスタマージャーニーマップ
10.2 設計
10.3 プロトタイピング
10.3.1 ペーパープロトタイプ
10.3.2 モックアップ
10.3.3 ビデオプロトタイプ
10.3.4 ソフトウェアプロトタイプ
演習問題
発展課題
引用・参考文献
11章 評価と改良(1)
11.1 HIの評価
11.2 ユーザビリティインスペクション
11.2.1 認知的ウォークスルー
11.2.2 ヒューリスティック評価
11.2.3 チェックリストを用いた評価
11.2.4 各手法の比較
演習問題
発展課題
引用・参考文献
12章 評価と改良(2)
12.1 実験的評価
12.1.1 実験的評価の実施
12.1.2 パフォーマンス評価
12.1.3 生理指標に基づく評価
12.1.4 主観評価
12.1.5 思考発話法
12.1.6 視線分析
12.2 実利用データに基づく評価
12.3 HIの改良
演習問題
発展課題
引用・参考文献
13章 ユーザ支援技術・アクセシビリティ
13.1 ユーザ支援技術
13.1.1 チュートリアル
13.1.2 導入マニュアル
13.1.3 ユーザマニュアル
13.1.4 ヘルプ
13.1.5 エラーメッセージ
13.2 ユーザの多様性とユニバーサルデザイン
13.2.1 ユーザの多様性
13.2.2 ユニバーサルデザイン
13.2.3 アクセシビリティ
13.3 公共機器・サービスのHI
13.3.1 多様性に対する対応
13.3.2 多数のユーザに対する対応
13.3.3 長期利用に対する対応
演習問題
発展課題
引用・参考文献
14章 ネットワークとHI
14.1 ネットワークとHIの関係
14.2 CMC
14.2.1 ヒューマンコミュニケーション
14.2.2 CMCの種類
14.2.3 CMCの特徴と課題
14.2.4 CMCシステムのHI
14.3 CSCW
14.3.1 共同作業に必要な機能
14.3.2 グループウェア
14.3.3 リモートワーク・テレワーク
演習問題
発展課題
引用・参考文献
15章 WIMPの先のHI
15.1 WIMP型HIからの展開
15.2 モバイル環境とHI
15.3 ユビキタス環境におけるHI
15.4 バーチャルリアリティと拡張現実
15.4.1 バーチャルリアリティ
15.4.2 拡張現実
15.5 非言語情報
15.5.1 非言語情報の種類と機能
15.5.2 擬人化インタフェース
15.6 情報技術と社会とHI
演習問題
発展課題
引用・参考文献
索引
読者モニターレビュー【 N/M 様(業界・専門分野:総合情報学[情報科学])】
本書は「ヒューマンインタフェース(HI: Human Interface)」について書かれた書籍である.
なお,レビュー者である私自身,過去に『書き込み式 ヒューマンコンピュータインタラクション入門』(Ref:https://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339029277/)をレビューしたこともあり,そちらに書かれていた内容のみが,本分野に関しての前提知識であることを予め注記しておく.
まず,本書の特徴としては,大きく分けて2つある.
1つ目は,先ほど記述したように私自身はある程度の前提となる知識がある状態で拝読させていただいたが,専門的な知識がなくても順を追って丁寧に読んでいければ理解できるように書かれている点である.
2つ目は,各章末に,その章の内容が理解できたかを確認するための記述式問題と,実際に思考したり,Webサイトや文献などで調べたり,プロトタイプを作成するなどの発展問題が数問用意されている点である.前者は,本書の内容をしっかり理解していればそれほど難しい問題はないように感じた.後者は,本書は15章立てということで,大学の情報系の学部や学科での講義用テキストとしての側面もあるため,レポート課題や演習(実習)で扱われる可能性が高いだろうと思われる.
本書を読むことにより,ヒューマンインタフェースの分野に関する基礎的な知識が網羅できるだろうとも感じた.
また,各章を通じて,個人的に感じたのは,『書き込み式
ヒューマンコンピュータインタラクション入門』の方で概論的に理解した部分が,本書では更に深く,前後関係が詳細に記述されていたように多くの部分で感じ取られた.そういった意味では,両著書とも是非,手に取って読まれることを個人的にはオススメする次第である.
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