システム制御のための数学(2) - 関数解析編 -

システム制御工学シリーズ 8

システム制御のための数学(2) - 関数解析編 -

システム制御を学ぶ人のために,複素関数や関数解析の基本をわかりやすく解説。

ジャンル
発行年月日
2021/01/25
判型
A5
ページ数
288ページ
ISBN
978-4-339-03308-3
システム制御のための数学(2) - 関数解析編 -
在庫あり

定価

4,290(本体3,900円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介
  • 広告掲載情報

本書は,システム制御を研究あるいは学習する人のために複素関数や関数解析の基本を記述することを目的として,システム制御から派生する例題や演習問題をなるべく多く含め,以下の構成で解説した。

まず1章では,以降の章を読むために必要な集合と関数の基礎概念を述べている。この章については初読時には概念をおおまかに理解することで差し支えない。

さて,システム制御の分野には伝達関数をはじめとして複素関数を応用した結果が数多くある。2章では,複素数と複素関数を,3章では曲線と線積分を説明する。
次に,正則関数は微分可能な実数関数とは大いに異なる性質をもっているが,コーシーの定理によって正則関数のさまざまな基本性質を説明することができる。4章では,コーシーの定理と級数展開について説明する。
5章では,ローラン級数を用いて孤立特異点を分類し,その性質を明らかにする。特に極に関しては,留数という概念を用いて複素関数の閉曲線での線積分との関係を明らかにする。
6章では,調和関数や正則関数のさまざまな性質をポアソン積分を用いて説明する。

フーリエ級数・変換とラプラス変換は,特にシステム制御の分野では伝達関数などのシステム表現やゲイン解析や安定性解析などに用いられ,信号を時間領域と周波数領域という二つの領域から考えることによって理論および計算の双方から基本的な役割を果たしている。7章では,フーリエ級数・変換とラプラス変換の数学的な性質を中心に説明する。

8章,9章では,制御システムの解析ならびに設計問題に広く利用されているヒルベルト空間,ヒルベルト空間上の線形作用素について説明する。さらに,システム制御において,ヒルベルト空間ではないバナッハ空間を用いることが自然な問題設定も多い。そこで10章,11章,12章ではバナッハ空間,バナッハ空間上の線形作用素,バナッハ環について説明する。8章から12章までは関数解析についてであり,大学院過程の講義や研究論文を理解するときに活用していただきたい。

また,付録A では位相空間と順序集合について補足的に述べている。やや抽象性が高いが,10.5 節,12.2.2 項を読むときに参考にしてほしい。本文中随所に現れる畳み込みについては付録B で説明している。

最適制御やロバスト制御の理論構成や計算方法においては,複素関数や関数解析の手法が幅広く用いられている。1960年代に多く刊行された最適制御の教科書や1980年代以降活発になったロバスト制御に関する成書を読むと,これらの手法がいかに大きく貢献してきているかがわかる。

工学系の多くの大学課程では,伝達関数や状態方程式を用いた制御工学に関する講義が設定されている。これらの講義では複素関数や関数解析の手法が際立って見えてこないかもしれないが,原理からより深い理解を得るためにはこれらの知識が必須となる。例えば,周波数応答を図上に表したナイキスト軌跡は,複素平面の閉曲線となっており,その回転数がフィードバック系の安定性と関連している。また,ラプラス変換やフーリエ変換についても複素関数や関数解析の考え方が支柱となっていることに気が付く。

本シリーズで刊行された「システム制御のための数学(1)—線形代数編—」を著してから20年近くが経過してしまった。その間にシステム制御理論ではロバスト制御の研究が進み,ネットワーク化したシステムや確率的なシステムに対する研究が広がっている。研究者として新しい方向に挑んだり新規理論成果を応用展開するためには,基礎として複素関数や関数解析を使う力が必要になってくる。そのために続編を完成させたいという思いは持ち続けていた。辛抱強く待っていただいた皆様にお礼申し上げる。

本書は,システム制御を研究あるいは学習する人のために複素関数や関数解析の基本を記述することを目的としている。システム制御から派生する例題や演習問題をなるべく多く含めているので,システム制御と複素関数や関数解析との関連性を意識し,抽象的な話のみで終わらないように読んでいただければ幸いである。定理の証明,例題や演習問題の解答についてはなるべく省略せずに記述しているが,ページ数の制約から本書で完結していない部分もある。例えば,ルベーグ積分は確率を理解するには避けて通れないが,これに関する教科書も多いので参照していただきたい。また,関数解析のいくつかの定理については,記述が長くなりすぎることを避けるために結果のみを記述している。詳細は参考文献を見ていただきたい。

本書は,まず1章において以降の章を読むために必要な集合と関数の基礎概念を述べている。この章については初読時には概念をおおまかに理解することで差し支えない。2章から6章までは複素関数と調和関数について記述している。7章ではフーリエ級数,フーリエ変換,ラプラス変換について,システム制御に関する大学課程の講義よりもやや数学寄りの観点から述べている。8章から12章までは関数解析についてであり,大学院課程の講義や研究論文を理解するときに活用していただきたい。また,付録Aでは位相空間と順序集合について補足的に述べている。やや抽象性が高いが,10.5節,12.2.2項を読むときに参考にしてほしい。本文中随所に現れる畳み込みについては付録Bで説明している。

本書を著すにあたって多くの先生方の助けをいただいた。特に,児玉慎三先生,故前田肇先生にはシステム制御研究への道に誘っていただいた。制御関連学会でお会いした諸先生方には研究の議論をさせていただいた。また,家族は研究生活を長きにわたって支えてくれた。このようにして著者がシステム制御の分野で仕事を継続できたことに感謝したい。

2020年11月
太田快人

1.集合と関数の基礎概念
1.1 距離空間
 1.1.1 集合
 1.1.2 距離空間の定義
 1.1.3 距離空間の開集合と閉集合
1.2 距離空間での連続関数
1.3 完備距離空間・コンパクト集合
 1.3.1 完備距離空間
 1.3.2 コンパクト集合
演習問題

2.複素数と複素関数
2.1 複素数と複素平面
 2.1.1 複素数
 2.1.2 複素平面
2.2 複素関数
 2.2.1 複素関数の微分
 2.2.2 整級数
 2.2.3 指数関数
演習問題

3.曲線と線積分
3.1 線積分
 3.1.1 曲線の定義
 3.1.2 線積分の定義
3.2 閉曲線の回転数とホモトピー
 3.2.1 回転数
 3.2.2 ホモトピー
演習問題

4.コーシーの定理と級数展開
4.1 コーシーの定理
4.2 コーシーの積分公式
4.3 テイラー級数
4.4 コーシーの定理のその他の帰結
 4.4.1 リウヴィルの定理
 4.4.2 モレラの定理
演習問題

5.ローラン級数と孤立特異点
5.1 ローラン級数
5.2 孤立特異点
 5.2.1 除去可能特異点・極・真性特異点
 5.2.2 有理形関数と有理関数
5.3 留数の定理と偏角の原理
 5.3.1 留数の定理
 5.3.2 偏角の原理
演習問題

6.調和関数の基本性質
6.1 コーシー・リーマンの条件
6.2 調和関数とポアソン積分
 6.2.1 調和関数の定義
 6.2.2 ポアソン核
 6.2.3 ポアソン積分公式
 6.2.4 右半面での調和関数
6.3 ポアソン積分公式からの帰結
 6.3.1 最大値の原理
 6.3.2 空間H1でのインナーアウター分解
 6.3.3 ヒルベルト変換とボーデのゲイン位相関係
 6.3.4 正則関数の零点とイェンセンの公式
演習問題

7.フーリエ級数・変換とラプラス変換
7.1 フーリエ級数
 7.1.1 定義
 7.1.2 フーリエ係数の性質
 7.1.3 フーリエ級数の収束性
7.2 フーリエ変換
 7.2.1 フーリエ変換の定義と基本性質
 7.2.2 フーリエ逆変換
 7.2.3 自乗可積分な空間のフーリエ変換
7.3 ラプラス変換
 7.3.1 ラプラス変換の定義と正則性
 7.3.2 基本性質
 7.3.3 ペーリー・ウィーナーの定理
演習問題

8.ヒルベルト空間
8.1 ヒルベルト空間の定義
 8.1.1 内積
 8.1.2 ヒルベルト空間の例
 8.1.3 部分空間
8.2 直交性
 8.2.1 閉部分空間内の最近点
 8.2.2 直交補空間
 8.2.3 正規直交基底
8.3 ヒルベルト空間の線形汎関数
 8.3.1 連続な線形汎関数
 8.3.2 リースの定理
演習問題

9.ヒルベルト空間上の線形作用素
9.1 有界な線形作用素
 9.1.1 作用素のノルム
 9.1.2 線形作用素の例
9.2 共役作用素
 9.2.1 共役作用素の定義
 9.2.2 共役作用素の例
 9.2.3 共役作用素の基本的性質
9.3 射影作用素
9.4 コンパクト作用素とスペクトル理論
 9.4.1 コンパクト作用素の定義と基本性質
 9.4.2 コンパクト作用素のスペクトル
演習問題

10.バナッハ空間
10.1 バナッハ空間の定義
 10.1.1 ノルム
 10.1.2 バナッハ空間の例
10.2 商空間
10.3 双対空間(有界線形汎関数)
 10.3.1 線形汎関数と双対空間
 10.3.2 双対空間の例
10.4 ハーン・バナッハの定理とその帰結
 10.4.1 ハーン・バナッハの定理
 10.4.2 第二双対空間
 10.4.3 分離超平面
10.5 弱位相
 10.5.1 弱位相の定義
 10.5.2 弱位相の基本的性質
 10.5.3 零化空間
 10.5.4 アラオグルの定理
演習問題

11.バナッハ空間上の線形作用素
11.1 線形作用素
 11.1.1 作用素のノルム
 11.1.2 線形作用素の例
11.2 開写像定理と一様有界性原理
 11.2.1 開写像定理
 11.2.2 閉グラフ定理
 11.2.3 一様有界性原理
11.3 双対作用素
 11.3.1 双対作用素の定義
 11.3.2 双対作用素の例
 11.3.3 双対作用素の基本性質
演習問題

12.バナッハ環
12.1 バナッハ環と具体例
 12.1.1 定義
 12.1.2 可逆性とイデアル
 12.1.3 商環
 12.1.4 スペクトルとレゾルベント集合
12.2 可換なバナッハ環
 12.2.1 乗法的線形汎関数
 12.2.2 ゲルファント変換
演習問題

付録A.位相空間・順序集合
A.1 位相空間
 A.1.1 位相空間の定義
 A.1.2 位相の強弱
 A.1.3 近傍と閉包
 A.1.4 開集合系の基
A.2 位相空間での連続関数
A.3 位相空間でのコンパクト集合
A.4 順序集合
演習問題

付録B.関数空間Lpと畳み込み
B.1 ルベーグ積分とLp空間
B.2 畳み込み
 B.2.1 畳み込みの定義
 B.2.2 近似単位
演習問題

引用・参考文献
演習問題の解答
索引

太田 快人(オオタ ヨシト)

掲載日:2021/04/08

「数学セミナー」2021年5月号広告

掲載日:2021/01/19

「数理科学」2021年2月号広告

掲載日:2020/12/14

「計測と制御」2020年12月号広告

【営業担当者より】

1998年12月に刊行をスタートしたシステム制御工学シリーズですが,今回の『システム制御のための数学(2)―関数解析編―』の発行をもってシリーズ完結となります。お待ちいただきました読者の皆様には心からお礼申し上げます。

『システム制御のための数学(2)―関数解析編―』は,研究者として新しい方向に挑んだり新規理論成果を応用展開するためには,基礎として複素関数や関数解析を使う力が必要になってくるという思いから,著者の太田快人先生が妥協することなく,着実に一歩一歩ご執筆を進めていただきました結果,無事出版の運びとなりました。109問の演習問題と55ページにわたる詳しい解答は圧巻です。