レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

外乱オブザーバ

計測・制御セレクションシリーズ 2

外乱オブザーバ

物体を動かす際に生じる外乱(摩擦や重力など)を推定できれば,制御系の安定性や追従性を向上させることができる。本書では「外乱オブザーバ」の設計プロセスや応用方法,性質を体系的に記し,研究する人に役立つことを目的とした。

発行年月日
2021/10/13
定価
4,400(本体4,000円+税)
ISBN
978-4-339-03382-3
在庫あり

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

日刊工業新聞 技術科学図書(2022年1月28日)

掲載日:2022/01/28

読者モニターレビュー【 めっくろぐ 様(業界:自動車業界、自動運転、制御工学)】

掲載日:2021/11/01

制御工学における重要な課題の一つは,「理想状態と実機の差をどう埋めるか」ということだと思う.シミュレーション上では上手く制御できるのだけど,現場に持っていくと言うことを聞いてくれない,ということはよくある.その課題を解決する強力なツールが外乱オブザーバであるが,これまでの制御工学の教科書では,応用の一例としておまけ程度に書かれている例が多かったように思う.それに対して本書の特色は,書名通り外乱オブザーバを主題として,そこから様々な制御手法との関りを述べる点だろう.

まえがきにもある通り,本書は古典・現代制御理論を一通り学んだ人に有効な教科書である.特に実務者にとっては,現場の制御問題を解決するために必要な手法を学ぶうえで大変役立つ一冊であると思う.その理由は,本書が扱う理論と応用のバランスの良さである.理論面では,制御工学に一通り触れたことがある人にとって過不足のない解説が,全体的に読みやすい.そして応用面では, MATLAB/Simulinkシミュレーション例が全編にわたって豊富に掲載されていることが嬉しい.MATLABで制御工学を解説する他書でも,最終章の応用例まできっちりシミュレーション例が掲載されているものは,中々ないと思う.MATLABを実際に動かしながら,本文の数式と見比べて,全編をじっくり読み通して理解したい.

読者モニターレビュー【 Bird Legend 様(ご専門:パワーエレクトロニクス機器の受託開発)】

掲載日:2021/10/08

本書は,外乱オブザーバに関して幅広くまとめられています。ブロック図のみならず伝達関数も丁寧に記載されているため,外乱オブザーバやフィードフォワード制御に関して明るくない方でも,古典制御と現代制御の基礎があれば理解が深まるような内容になっています。本書は手っ取り早く基礎から外乱オブザーバについて学びたい方にはおすすめです。また,Simulinkモデルも記載されているため,シミュレーションをしながら外乱オブザーバに関する理解を深めることもできます。専門書の中には著者がこれまでに発表した論文の内容に偏っているものもありますが,本書は著者の論文のみならず,マルチレートフィードフォワード制御,瞬時速度オブザーバなど幅広い内容が記載されています。私は電気学会産業応用部門の論文を読むことが多いのですが,論文とあわせて本書を読むことでより理解が深まると感じました。

読者モニターレビュー【 TS 様(ご専門:ロボット制御)】

掲載日:2021/10/08

外乱オブザーバに関して体系的にまとめられた教科書は洋書でもあまり存在していない(少なくとも自分はLi Yangらの”Disturbance Observer-Based Control”しか知らない)ため,本書は和書の貴重な一冊であると考えられる.特に,伝達関数形式の外乱オブザーバと状態空間表現での外乱オブザーバの関係がまとめられており,両手法の理解を深めることが出来た.また,状態空間表現での外乱オブザーバの場合,外乱が大きく変動しないことを前提とし,外乱の微分値を0とした拡大系にオブザーバを適用することが多いが,本書で紹介されている高次外乱オブザーバを用いることで,ランプ入力外乱等にも良好な追従を実現可能な手法と,その注意点もまとめられていた点がとても有用であった.また,摩擦や実際の外力のどこまでを外乱として推定するかは制御対象や制御目的に依存すると思われるが,それぞれのパターンの推定結果とその考察が提示されているため,実用上も有益な一冊になっていると思われる.

読者モニターレビュー【 SU 様(業界:電子部品製造業)】

掲載日:2021/10/04

外乱オブザーバは、いろんな産業機器(モータドライバーやロボットコントローラ)に採用されている機能です。ただ、外乱オブザーバについて1から言及された書籍がなく、どの専門書も数ページで終わってしまう内容で、原理を理解するのには学会論文を読み込み必要性がありました。ところが、本書は、そんな外乱オブザーバだけをまとめており、初期考え方から最新の考え方までの数式や参考プログラムがあるので、十分に理解できる内容となっております。また、過去に外乱オブザーバは、ただの積分器だという批判もありましたが、それは違うことをわかる明確な根拠も示されており、非常にためになる内容です。これから学ぶ人、エンジニア両者にとって良い参考書になる事間違いなしです。