非線形最適制御入門

システム制御工学シリーズ 18

非線形最適制御入門

最適制御およびモデル予測制御に関連する学生や技術・研究者の方に,最適化の基礎から数値解法に関する新しい話題を自己完結的かつ平易に解説した。関連の基本用語や重要な概念などは一通り理解できるように省略せず解説している。

ジャンル
発行年月日
2011/02/25
判型
A5
ページ数
232ページ
ISBN
978-4-339-03318-2
非線形最適制御入門
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最適制御およびモデル予測制御に関連する学生や技術・研究者の方に,最適化の基礎から数値解法に関する新しい話題を自己完結的かつ平易に解説した。関連の基本用語や重要な概念などは一通り理解できるように省略せず解説している。

最適制御問題とは,制御対象であるダイナミカルシステムに対して,与えられた評価関数を最小にするような制御入力を求める問題である。さまざまなシステムに対して評価関数さえ与えれば望ましい制御入力が求められるという問題設定は一般的な制御系設計論として魅力的であり,1960年代以降活発に研究された。しかし,限られた問題設定を除くと実際に解を計算するのが難しく,計算機が未発達だったこともあって,線形システムの場合や一部の分野を除いて徐々に廃れていった。また,有限時間の最適化という問題設定が継続的なフィードバック制御には向かないという点も実用上の障害であった。有限時間の最適化によって継続的なフィードバック制御を実現するモデル予測制御のもととなるアイデアも最適制御と同じくらい古くまでさかのぼることができるが,過大な計算量により実現困難なアイデアに長く留まっていた。

ところが,近年,計算機と数値解法の進歩により,非線形システムに対して実時間で最適制御問題を解いてモデル予測制御などのフィードバック制御を実現することがいよいよ可能になりつつある。制御対象を限定する代わりに厳密な解析的結果を積み重ねてきた制御理論とは異なるアプローチであるが,制御対象を限定せず数値計算によって制御系を設計する手法にも価値があると考えられる。特に,非線形システムに対しては一般的な制御系設計手法が存在しないので,評価関数最小の意味で合理的な制御系を決定することが現時点で取りうるアプローチの一つであることは確かである。さらに実時間での最適化手法が発展すれば,制御系設計の枠組みが変わっていくほか,制御以外のさまざまな分野への応用も期待できる。

このような背景を踏まえて,本書は,最適制御およびモデル予測制御について興味を持った大学生・大学院生や技術者・研究者を対象として,最適化の基礎から数値解法に関する最近の話題までを自己完結的かつ平易に解説することを目的とする。予備知識として,ベクトルと行列,多変数の微積分,そして常微分方程式の基礎程度を想定している。おもに扱うのが有限時間の最適制御問題であるため,必ずしも古典制御や現代制御のフィードバック制御理論を詳しく学んでいる必要はない。ただし,例題として線形システムも取り上げるので,状態空間表現に基づく線形制御理論を学んだ読者は,線形制御理論を別の観点から眺めることができるだろう。

本書の構成とスタイルは,最適制御やモデル予測制御の論文に現れる基本用語が一通りわかるようになることを念頭に置いて設定した。重要な概念や用語は一通り網羅するように努め,かつ,あまり厳密性にこだわらないものの,概念の意味や定理とアルゴリズムの導出過程についてはなるべく省略せず述べるようにした。ただし,本筋を見失わないよう,細部の式導出と証明や容易な拡張については演習問題へ回した。本書を足がかりとして読者諸氏に最先端の研究へ踏み出していただけたら幸甚である。

最後に,本書執筆に際してお世話になった方々への謝辞を記したい。恩師である藤井裕矩先生には,本書の内容を含む制御工学の分野へ著者を導いていただいた。池田雅夫先生はじめ本シリーズ編集委員各位には,浅学非才の著者に執筆の機会を与えていただき,構成や表現について助言をいただいた。図版作成は留田直子さんに協力していただき,LATEX入力の一部は片山聡君に協力していただいた。橋本智昭先生と河野佑君からは草稿に対して貴重なコメントをいただいた。研究室の学生諸君には校正を手伝っていただいた。コロナ社には脱稿を待っていただくとともに,さまざまな面でお世話になった。ここに厚くお礼申し上げたい。そして何より,家族の励ましと支えがなければ本書は出来上がらなかっただろう。心からの感謝と共に本書を捧げたい。

2010年12月
大塚敏之

1. 序論
1.1 最適化とは
1.2 制御と最適化
1.3 数学的表記

2. 非線形計画問題
2.1 問題設定と用語
2.2 拘束条件なしの場合
2.3 拘束条件付きの場合
2.3.1 等式拘束条件の場合
2.3.2 不等式拘束条件の場合
2.3.3 カルーシュ・キューン・タッカー条件
2.3.4 拘束条件に関する諸注意
2.4 拘束条件なし最適化問題の数値解法
2.4.1 勾配法
2.4.2 ニュートン法
2.4.3 準ニュートン法
2.5 拘束条件付き最適化問題の数値解法
2.5.1 ペナルティ法
2.5.2 バリア法
2.5.3 乗数法
2.5.4 逐次2次計画法
2.6 直線探索
2.6.1 精密な直線探索
2.6.2 粗い直線探索
演習問題

3. 離散時間システムの最適制御
3.1 基本的な問題設定と停留条件
3.2 離散時間LQ制御問題
3.3 動的計画法
3.3.1 ベルマン方程式
3.3.2 ベルマン方程式からのオイラー・ラグランジュ方程式導出
3.4 数値解法
3.4.1 基本的な問題設定の場合
3.4.2 他の問題設定
演習問題

4. 変分法
4.1 汎関数の停留条件
4.2 拘束条件付き変分問題
4.3 第2変分
4.4 ガトー微分とフレシェ微分
演習問題

5. 連続時間システムの最適制御
5.1 基本的な問題設定と停留条件
5.2 局所最適性の十分条件
5.3 最適解の摂動
5.4 一般的な問題設定
演習問題

6. 動的計画法と最小原理
6.1 ハミルトン・ヤコビ・ベルマン方程式
6.2 最小原理
6.3 特異最適制御問題
演習問題

7. 最適制御問題の数値解法
7.1 数値解法の考え方
7.2 勾配法
7.3 シューティング法
7.4 入力関数のニュートン法
7.5 他の問題設定
7.6 動的計画法
演習問題

8. モデル予測制御
8.1 問題設定と停留条件
8.1.1 モデル予測制御の問題設定
8.1.2 モデル予測制御の課題
8.1.3 停留条件
8.2 数値解法
8.2.1 最適解の実時間方向への変化
8.2.2 随伴変数を追跡する数値解法
8.2.3 実時間オイラー・ラグランジュ方程式
8.2.4 制御入力系列を追跡する数値解法
8.2.5 数値解法の実際
8.3 閉ループシステムの安定性
8.3.1 想定する問題
8.3.2 終端拘束条件による安定性
8.3.3 終端コストによる安定性
演習問題
引用・参考文献
演習問題の解答
索引

amazonレビュー

日刊工業新聞2011年2月24日 掲載日:2011/04/18


掲載日:2020/12/14

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