ドローン工学入門 - モデリングから制御まで -

ドローン工学入門 - モデリングから制御まで -

ドローンを操るソフトウェアの自律飛行制御について,第一線の著者が蓄積した技術を詳述

ジャンル
発行年月日
2020/09/11
判型
A5
ページ数
318ページ
ISBN
978-4-339-03230-7
ドローン工学入門 - モデリングから制御まで -
在庫あり

定価

4,950(本体4,500円+税)

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本書は,和書としては最初の「ドローン工学入門」の専門書で,「モデリングと制御」に特化した学術書である。とくに,著者が大学での研究のみに留まらず,大学発ベンチャーのドローン企業を創業して,研究開発とビジネスの両方を実践してきた内容を本書にまとめているところに際立った特徴がある。つまり,ここで述べられている「考え方」がドローンビジネスと技術のベースになっている。誤解を招かないために補足するが,本書は「考え方」を述べているのであって,このままをビジネス実機に適用しているわけでは毛頭ない。だから,「入門」なのであり「ビジネス実機は格段に奥が深い」ことをご理解頂きたい。

ドローン工学の構成要素は大分類すると,(1)機体システム,(2)推進システム,(3)ガイダンス(誘導)・ナビゲーション(航法)・コントロール(制御),(4)通信システム,(5)地上局システムの5つに分けられる。(1)は固定翼か回転翼か等,機体デザイン,構造強度,機体材料,空力抵抗等機体本体である。(2)は動力としてエンジン型,バッテリ型,そのハイブリッド型,燃料電池型等である。(3)は頭脳部で,姿勢安定化や経路追従,障害物の検知と衝突回避等である。(4)は無線周波数選定,携帯電話使用のLTE通信,5G関連である。(5)はスマホやPCを用いて経路計画,飛行時の飛行状況確認等である。それぞれにハードウエアとソフトウエアがあるが,(1),(2),(4),(5)は時代と共に進化していく分野であるのに対して,(3)のAIを活用した誘導を除く,航法・制御技術については成熟期に入り,ほぼ体系化される段階にきている。本書は,最も普遍性を有する(3)の成熟期に入った「モデリングと航法・制御技術」に特化して「ドローン工学入門」としてまとめている。

1章では,姿勢推定のアルゴリズムについて考え方を述べている。とくに,クォータニオンとオイラー角の関係等を導出している。2章では,4つのモデリング法について長所と短所や,制御系設計の観点から著者の私見を交えてまとめている。とくに,冗長系へのマルチコプタの制御入力の配分について明らかにしている。3章では,H2制御,LQG制御,H∞制御のポイントを平易にまとめている。4章では,スライディングモード制御系における新しい設計法を提案している。最後の5章は,シングルロータ,クワッドロータ,ヘキサロータ,2重反転ロータ,クワッドティルトウイング(QTW)ロータなど,モデリングの難易度が低い機体から高い機体までをすべて状態空間モデルとして表現して制御理論を適用し,実際に自律飛行実験とシミュレーションを比較している。これほどまでに多種多様な機体のモデリングと制御を,1冊の書籍にまとめたものは国内外を通じて見当たらない。

本書はこの観点から,ドローンのモデリングと制御をいかに実践するかを,多くの事例を紹介することでその全貌が理解できるものと確信する。本書がドローンのモデリングと制御に関心のある大学研究者,企業技術者,大学院生,学部生の読者の座右の書になることを祈念したい。そして願わくば,日本のドローン産業の発展に一石を投じることができれば,至高の喜びである。

【本書のキーワード】
小型無人航空機,ドローン,モデリング,自律制御,クォータニオン,姿勢推定,線形制御,非線形制御,スライディングモード制御,シングルロータ,クワッドロータ,ヘキサロータ,QTW,マイクロFR,フォルトトレラント制御,非GPS環境,ライダーSLAM,ビジュアルSLAM,AI

近年,小型無人航空機(以下,ドローンまたは UAV あるいは UAS と呼ぶ)の進化と利活用が急速に進んでいる。連日,どこかのメディアに登場して最新の話題を提供している。ここでいうドローンとは明確な定義がされているわけではないが,広く普及している機体重量の観点から,一般的に全備重量約25 kg 以下の小型無人航空機を指している。また機種としてはほとんどがマルチロータヘリコプタであるが,シングルロータヘリコプタや,固定翼機,固定翼と回転翼を併用したハイブリッド機(VTOL 機)等も含む総称である。

筆者はこうしたドローンの自律制御の研究に,構想を入れると四半世紀以上取り組んできた。実際には 1998 年からまずエンジン駆動のシングルロータヘリコプタの自律制御に取り組み,2001 年に日本では最初に約 10 kg クラスのシングルロータヘリコプタの完全自律制御に成功した。その後,2005 年頃から約1 kg 程度のモータ駆動のマルチロータヘリコプタの自律制御や,当時,世界最小・最軽量と呼ばれて大きな話題となった約 12.3 g のピエゾ素子駆動のマイクロフライングロボットの自律制御,さらに,クワッドティルトウイング(QTW)と呼ばれる,約 20 kgのモータ駆動型ハイブリッド機(VTOL 機)の自律制御,約 2~3 kg のモータ駆動のシングルロータヘリコプタ,電動型二重反転ヘリコプタ,電動型マルチロータヘリコプタの自律制御などに取り組んできた。
筆者が行ってきたドローンの自律制御の研究とは,もう少し正確に述べれば「姿勢推定アルゴリズムの研究」と「モデリングと制御の研究」に分かれる。姿勢推定アルゴリズムの研究とは,いかに正確に 3 次元空間を飛翔する飛行体の姿勢を推定するかというアルゴリズムの研究である。モデリングと制御の研究とは,さまざまなタイプのドローンをどのように正確にモデリングするか,そして,固定翼機を除く回転翼機は本来不安定系の機体であるため,風外乱を受ける環境下でいかにロバストな安定化制御を実現するかという研究である。
ドローン工学は,① 機体システム,② 推進システム,③ ガイダンス・ナビゲーション・コントロールシステム,④ 通信システム,⑤ 地上局システムから構成されており,これらの構成要素には,ハードウエアのみの場合とハードウエアとソフトウエアの両方が含まれる場合とがある。ハードウエアについては時代の進化とともに急速に高性能化されていくのが一般的である。筆者は普遍性を有するソフトウエア,特にドローンの頭脳部であるオートパイロットに代表される自律制御技術に注目して,研究を進めてきた。本書は筆者の研究室で蓄積してきた技術を中心に「ドローン工学入門」としてまとめたものである。
1 章では,クォータニオンを適用した姿勢推定アルゴリズムについてまとめている。2 章では小型無人航空機のモデリングについて,非線形厳密モデリングの導出の観点から,オイラー・ラグランジュの運動方程式,ニュートン・オイラーの運動方程式によるモデリング,線形モデリングの観点から非連成系簡易モデリング,システム同定モデリングの合計 4 つの方法について詳細に述べ,それらを比較することで長所短所を述べている。同時に小型の無人航空機のモデリングに限定すれば,いずれも大差ないことを示している。

3 章では,5 章で用いる最適制御理論,カルマンフィルタ,H ∞制御理論などの代表的な線形制御系設計理論についてポイントを解説している。4 章でも同様に,5 章のための基礎となる非線形制御理論であるスライディングモード制御理論について,オリジナルな研究成果も含めて述べている。

5 章は本書の核心部分であり,筆者の研究室の代表的な研究成果をまとめており,自律飛行制御の実際とモデルベース制御系の検証,および,自律飛行制御の未来について言及している。まず,小型クワッドロータ機の自律飛行制御とフォーメーション制御,シングルロータヘリコプタのモデルフォロイング型スライディングモード制御,世界最小最軽量の二重反転型小型飛行ロボットのモデリングと制御,シングルロータヘリコプタのモデル予測制御によるフォーメーション飛行,小型ヘキサロータ型マルチコプタの自律制御とフォルトトレラント制御,ティルト翼機構を有するクワッドロータ QTW-UAV の自律飛行制御,非 GPS 環境下の自律飛行制御に関して,レーザーSLAM からビジュアルSLAM までを多くのページを割いて詳しく紹介している。
 最後に,大脳型ドローンである「ドローン×AI」の重要性について述べている。そして,超低空間を飛行しなければならない宿命をもつ小型無人航空機は,機体自身の飛行自律性を高度化しても,環境複雑性,ミッション複雑性に大きく依存するため,どのような空間を飛行するのか,どのようなミッションを有するのかを考慮したうえでの,固有の飛行自律性が要求されてくることを強調している。
 
本書は,和書として最初のドローンに特化した専門書であり,ドローンの制御技術の全貌を理解いただけるものと確信している。またドローンの制御に関わる企業の技術者や大学等の研究者には,必携の書と考えている。さらに,基礎的な制御工学を学んだ後,ドローンの制御技術について基礎から勉強したいという大学生,大学院生にも待望の書であると思われる。

ドローン産業は目下,激烈なグローバル競争の中にある。そして,ドローン自身も大脳部分がこれから著しい進化を遂げていくものと想定しているが,小脳部分の制御技術自身はある程度体系化できるレベルに到達してきていると考えている。この小脳部分の体系化という意味で本書が一石を投じることができたのであれば光栄である。本来であればもっと早く出版すべきであったが,コロナ社の熱意にようやく応えることができ関係各位に感謝する次第である。
ドローンの頭脳部であるオートパイロットに特化して,さらにヘリコプタ,マルチコプタのような不安定系をいかに安定化させるかという観点から,モデルベース制御に集中して本書はまとめている。じつは筆者の研究室ではこの20年間,ヘリコプタ,マルチコプタのモデルベース制御に集中的に取り組んできた。その結果,13 名の博士と 30 名の修士が誕生している。本書はこうした当時研究室メンバーだった方々の寝食を忘れた献身的な成果を 5 章にまとめており,ここに謝意を表したい。

2020 年 7 月 野波健蔵

1.クォータニオンと姿勢表現および一般的な飛翔体の運動方程式
1.1 クォータニオンの基礎
1.2 クォータニオンのアルゴリズムまとめ
1.3 オイラー角運動方程式と機体の運動方程式
 1.3.1 姿勢角に関するオイラー角とクォータニオンの運動方程式
 1.3.2 機体の運動方程式
1.4 姿勢推定アルゴリズム
 1.4.1 姿勢センサおよび座標系
 1.4.2 基本アルゴリズム
 1.4.3 拡張カルマンフィルタの導入
 1.4.4 加速度外乱環境下における姿勢推定アルゴリズム

2.回転翼型小型無人航空機のモデリング
2.1 オイラー・ラグランジュの運動方程式による導出
2.2 ニュートン・オイラーの運動方程式による導出
2.3 非線形連成系(MIMO)から線形非連成系(SISO)簡易モデルの導出
 2.3.1 マルチロータヘリコプタの概要
 2.3.2 飛行原理
 2.3.3 ハードウエア構成
 2.3.4 座標系と記号の定義
 2.3.5 マルチロータヘリコプタの角速度安定化制御
 2.3.6 ミキシング
 2.3.7 ジャイロフィードバック制御
 2.3.8 マルチロータヘリコプタの自律制御
2.4 システム同定モデル
2.5 簡易型モデルから導出した解析モデルの検証

3.状態空間モデルを用いた線形制御系設計法
3.1 非線形モデルの状態空間表現
3.2 線形近似モデルの伝達関数表現・状態空間表現および制御系設計
3.3 ロバスト制御系設計のための正準系
3.4 H2制御系設計
 3.4.1 終端時間制御問題と解法
 3.4.2 無限時間線形2次形式制御問題とLQR制御系設計法
 3.4.3 最適目標軌道追従制御問題と制御系設計法
 3.4.4 最適外乱除去システム制御系設計法
 3.4.5 明示的(Explicit)モデル規範型(モデルフォロイング)制御系設計法
 3.4.6 暗示的(Implicit)モデル規範型(モデルフォロイング)制御系設計法
 3.4.7 線形2次形式ガウシャン問題
3.5 H∞制御

4.スライディングモード制御による非線形制御系設計法
4.1 スライディングモード制御理論の基礎
 4.1.1 基本概念
 4.1.2 理想的なスライディングモード制御
 4.1.3 解の存在と等価制御
 4.1.4 スライディングモードにおける低次元化
 4.1.5 スライディングモードのロバスト性
 4.1.6 システムの正準系
 4.1.7 対(A,B)の可制御性と対(A11,A12)の可制御性
 4.1.8 スライディングモード制御の不変零点
 4.1.9 スライディングモード到達条件
 4.1.10 チャタリングの抑制
 4.1.11 単一入力のスライディングモード制御系
4.2 スライディングモード制御系設計の基礎
 4.2.1 不変零点を用いた切換超平面の設計法
 4.2.2 周波数整形型スライディングモード制御
 4.2.3 H2制御理論による設計
 4.2.4 ロバスト超平面を有するスライディングモード制御
 4.2.5 ゲインスケジュール型スライディングモード制御
 4.2.6 出力フィードバックスライディングモード制御
4.3 スライディングモードオブザーバ
 4.3.1 Utkinオブザーバ
 4.3.2 Walcott-Zakオブザーバ
4.4 スライディングモードサーボ制御系の設計
4.5 モデル規範型(モデルフォロイング)制御系
 4.5.1 モデル規範型スライディングモード制御系設計法
 4.5.2 モデル規範型スライディングモードサーボ制御系設計法

5.自律飛行制御の実際および自律飛行技術の未来
5.1 小型クワッドコプタの自律飛行制御とフォーメーション制御
 5.1.1 モーションキャプチャと実験システム構成
 5.1.2 システム同定モデルによる自律飛行制御の実際と検証
 5.1.3 姿勢制御と位置制御・高度制御
 5.1.4 リーダー・フォロワー型フォーメーション制御
5.2 シングルロータヘリコプタのモデルフォロイング型スライディングモード制御
 5.2.1 モデリングとモデルフォロイングスライディングモード制御系設計
 5.2.2 シミュレーションと実験による検証
5.3 二重反転型小型飛行ロボットのモデリングと制御
 5.3.1 世界最小最軽量のマイクロフライングロボット
 5.3.2 CIFERを用いたマイクロフライングロボットのモデリング
 5.3.3 H∞ループ整形法による制御器設計とホバリング制御
5.4 モデル予測制御によるフォーメーション飛行
 5.4.1 制御系設計
 5.4.2 モデル予測制御による位置制御系設計
 5.4.3 モデル規範型モデル予測制御
 5.4.4 モデル規範型モデル予測制御によるフォーメーション飛行
 5.4.5 編隊飛行のシミュレーションおよび実験
5.5 ヘキサロータ型小型無人航空機の自律制御とフォルトトレラント制御
 5.5.1 アウターループ制御系の構成
 5.5.2 最適制御器の設計とウェイポイント飛行
 5.5.3 フォルトトレラント制御(耐故障制御)
5.6 ティルト翼機構を有するクワッドロータQTW-UAVの自律飛行制御
 5.6.1 ヘリコプタモードのモデリングとホバリング制御
 5.6.2 ヘリコプタモードから飛行機モードへの遷移飛行と自律飛行
5.7 非GPS環境下の自律制御―レーザーSLAMからビジュアルSLAMまで
 5.7.1 LiDARベースSLAM
 5.7.2 ビジュアルSLAMを利用した非GPS環境におけるナビゲーション
5.8 自律飛行技術の未来
 5.8.1 自律飛行技術の頭脳部としてのオートパイロット
 5.8.2 ドローンの飛行レベルと自律性(安全性)クラスの相関関係
 5.8.3 近未来のドローン自律制御のあるべき姿
 5.8.4 AI技術によって高度化された自律飛行制御の未来
 5.8.5 飛行自律性・環境複雑性・ミッション複雑性と飛行リスク

引用・参考文献
索引

野波 健蔵

野波 健蔵(ノナミ ケンゾウ)

専門は制御工学,ロボット工学,メカトロニクス。略歴は,1979年東京都立大学大学院工学研究科博士課程修了,1985年米航空宇宙局(NASA)研究員・シニア研究員,1988年千葉大学助教授,1994年千葉大学教授,2001年10㎏クラスの小型無人ヘリコプタの完全自律制御に日本で最初に成功,2008年千葉大学理事・副学長(研究担当),2008年千葉大学産学連携知的財産機構長,2011年日本学術会議連携会員,2012年ミニサーベイヤーコンソーシアム会長,2013年大学発ベンチャー「(株)自律制御システム研究所」を創業し,代表取締役社長,2014年千葉大学特別教授(千葉大学名誉教授),2017年一般社団法人日本ドローンコンソーシアム会長,2018年(株)自律制御システム研究所が東証マザーズ市場に上場,取締役会長,2019年一般財団法人先端ロボティクス財団を設立し,理事長に就任。

掲載日:2020/09/01

「電子情報通信学会誌」2020年9月号広告

掲載日:2020/08/31

日刊工業新聞広告掲載(2020年8月31日)

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読者に一層の理解を深めてもらうために,5章の「自律飛行制御の実際および自律飛行技術の未来」の内容に関連した動画を書籍ご購入者限定でご覧いただけます。詳しくはお手元の書籍をご覧ください。


動画の関連箇所

5章 自律飛行制御の実際および自律飛行技術の未来

  • 5.1節 小型クワッドコプタの自律飛行制御とフォーメーション制御
  • 5.2節 シングルロータヘリコプタのモデルフォロイング型スライディングモード制御
  • 5.3節 二重反転型小型飛行ロボットのモデリングと制御
  • 5.4節 モデル予測制御によるフォーメーション飛行
  • 5.5節 ヘキサロータ型小型無人航空機の自律制御とフォルトトレラント制御
  • 5.6節 ティルト翼機構を有するクワッドロータQTW-UAVの自律飛行制御
  • 5.7節 非GPS環境下の自律制御-レーザーSLAMからビジュアルSLAMまで
  • 5.8節 自律飛行技術の未来