ワイヤレスネットワーク概論

ワイヤレスネットワーク概論

  • 平栗 健史 日本工大教授 博士(情報学)・博士(農学) 著
  • 今井 哲朗 東京電機大教授 博士(工学) 著
  • 丸田 一輝 東京理科大教授 博士(工学) 著

無線通信およびネットワーク技術を体系的に初めて学ぶ人に。

スマートフォンや無線LAN、IoT、ドローンなど、社会を支えるワイヤレスネットワークを基礎から体系的に学ぶ入門書。電波伝搬、アンテナ、変復調、OFDM、MIMO、アクセス制御、TCP/IPまでを一つの通信システムとして捉え、図と演習問題を交えて解説する。さらに、RIS、ドローン通信・測位、ワイヤレス電力伝送などの発展技術にも触れ、無線通信の基礎から応用までを一冊で見渡せる。大学・高専の教科書としてはもちろん、無線通信を初めて学ぶ学生や、関連分野の技術者・研究者が知識を整理するための参考書にも適している。

ジャンル
発行年月日
2026/10/15
判型
A5
ページ数
196ページ
ISBN
978-4-339-02961-1
ワイヤレスネットワーク概論
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定価

3,080円(本体2,800円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
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  • 著者紹介
  • 広告掲載情報

【内容紹介】
スマートフォンや無線LAN、IoTに加え、近年ではドローンやロボットなど多様な機器が無線で接続され、ワイヤレスネットワークは社会を支える重要な基盤技術となっています。本書は、無線通信やネットワークを初めて学ぶ学生・技術者を対象に、ワイヤレスネットワークを「電波がどのように伝わるか」「情報をどのように信号に載せるか」「複数の端末がどのように無線媒体を共有するか」という流れで体系的に理解できるよう構成した入門書です。

第1章では、無線通信システムの概要、通信の基礎、ネットワークプロトコルとレイヤについて説明し、本書全体を理解するための土台を整理します。第2章では、マクスウェル方程式からアンテナ、反射・透過・回折、自由空間伝搬、移動通信環境におけるフェージングやマルチパスまで、無線通信に不可欠な電波伝搬の基礎を扱います。第3章では、アナログ・デジタル変調、OFDM、移動通信、多元接続、チャネル容量、MIMOなど、現在の無線通信を支える信号処理・伝送技術を解説します。第4章では、ALOHA、CSMA/CD、CSMA/CA、Backoff、TCP/IPなどを取り上げ、アクセス制御からネットワークプロトコルまでを、通信効率やスループットの計算を交えて説明します。

さらに第5章では、基礎技術が実際にどのように発展しているかを理解できるよう、近年注目されている無線技術を取り上げ、RIS(Reconfigurable Intelligent Surface)による無線環境制御、ドローン通信とGNSS・RTKなどの測位技術、ワイヤレス電力伝送(WPT)の技術について丁寧に説明しています。基礎理論だけで終わらず、次世代のワイヤレス技術や応用までを一冊で見渡せることが本書の特徴です。また、各章の演習問題を通じて、式や理論を実際に使いながら理解を確認できるようにしました。

【本書を特に読んでほしい読者】
大学の電気・電子・情報通信系の学部生、特に3、4年生程度で無線通信やワイヤレスネットワークを体系的に学びたい学生を主な対象としています。高専生や大学院生の導入・復習用のほか、無線LAN、移動通信、IoT、ドローン、ワイヤレス電力伝送などに関わる企業技術者・研究者が、無線通信の基礎から応用までを整理するための参考書としても利用できます。

【本書を読む前にあると望ましい前提知識】
大学初年級程度の数学に加え、微分積分、複素数、ベクトル・行列などの基礎知識があると理解しやすくなります。また、電気回路や情報通信の基礎的な知識があることが望ましいですが、無線通信やネットワークについては基本概念から説明しているため、この分野を初めて学ぶ読者でも順を追って読み進めることができます。

【本書を読むことで得られる知識・できるようになること】
・ワイヤレスネットワークを構成する通信システム、プロトコル、レイヤの基本的な関係を理解できる。
・アンテナの基本特性、電波の反射・透過・回折、自由空間伝搬、フェージング、マルチパスなどを理解し、基本的な伝搬損失を計算できる。
・AM、FM、PSK、QAM、OFDMなどの変調方式と、チャネル容量、MIMOを含む無線伝送技術の基本を理解できる。
・ALOHA、CSMA/CD、CSMA/CA、Backoffなどのアクセス制御方式を理解し、通信効率やスループットを計算・評価できる。
・TCP/IPを含むネットワークプロトコルと無線アクセス制御との関係を理解できる。
・RIS、ドローン通信、GNSS・RTK等の測位、ワイヤレス電力伝送(WPT)などの新しい応用技術の基本を理解できる。
・個々の技術を独立して覚えるのではなく、電波伝搬、信号処理、アクセス制御、ネットワーク、応用技術を通信プロトコルのレイヤーにまたがって、一つのワイヤレスシステムとして捉えられるようになる。

【本書の特徴・工夫した点】
本書では、ワイヤレスネットワークを単なる通信方式の集合としてではなく、アンテナ・電波伝搬、変復調・信号処理、アクセス制御、ネットワークプロトコルが相互に連携して動作する一つのシステムとして理解できるよう構成しています。第1~4章で基礎を段階的に学び、第5章でRIS、ドローン通信・測位、WPTなどの発展的な応用へつなげている点が特徴です。また、数式だけでなく図を多く用いて原理や動作を視覚的に理解できるようにし、第2~4章を中心に演習問題を設け、伝搬損失、変調、MIMO、スループットなどを実際に計算しながら理解を確認できるよう工夫しています。基礎理論と現在の無線通信システム、さらに次世代技術までを一冊の流れの中で学べる構成としています。

【授業・講義での使用イメージ】
大学の電気・電子・情報通信系学科における、学部2~3年生程度の「無線通信工学」「ワイヤレスネットワーク」「通信方式」「移動通信」などの半期科目での教科書・参考書としての使用を想定しています。第1章で全体像を示し、第2章のアンテナ・電波伝搬、第3章の通信方式・信号処理、第4章のアクセス制御・ネットワークを講義の中心とし、第5章を最新技術・応用事例として扱う構成が考えられます。演習問題は講義後の課題、自習、試験対策にも利用できます。卒業研究や大学院で無線通信分野に取り組む学生の導入書としても活用できます。

【実務・研究で役立つ場面】
無線LANや移動通信、IoT、ドローンなどを利用するシステムの設計・評価において、通信距離、伝搬損失、フェージング、変調方式、MIMO、アクセス制御、スループットなどを整理して検討する際に活用できます。また、通信分野を専門としていない技術者が無線通信システム全体の構成を把握するための基礎資料として利用できます。さらに、RISによる無線環境制御、ドローン通信と測位、空間伝送型WPTなどの研究開発に取り組む際、既存の基礎技術とのつながりを理解するための導入としても役立ちます。

【関連キーワード】
ワイヤレスネットワーク、無線通信、アンテナ・電波伝搬、OFDM、MIMO、CSMA/CA、無線LAN(Wi-Fi)、RIS、ドローン通信、ワイヤレス電力伝送(WPT)

近年,無線通信技術は,携帯端末や無線LANを始めとして,私たちの生活や社会インフラを支える重要な基盤技術となっている。さらに,IoT,衛星通信,ドローン,ロボットなどの普及に伴い,無線通信は地上通信のみならず,空間を含めた多様な環境で利用されるようになっている。これにより,ワイヤレスネットワークを理解するためには,アンテナ・電波伝搬,信号処理,アクセス制御,ネットワークプロトコルといった要素技術を体系的に学ぶことが重要となっている。

本書『ワイヤレスネットワーク概論』は,無線通信およびネットワーク技術を初めて学ぶ学生や技術者を対象として,ワイヤレスネットワークを構成する基礎技術を体系的に理解できるよう構成した教科書である。数式や理論だけでなく,「なぜその技術が必要となるのか」「実際の通信システムでどのように利用されているのか」を意識しながら説明することで,無線通信システム全体を俯瞰的に理解できることを目指した。

1章では,無線通信システムの概要を示し,アナログ通信とディジタル通信,通信システムの基本構成,ネットワークプロトコルの基礎について説明する。

2章では,アンテナと電波伝搬を扱い,マクスウェル方程式を基礎とした電磁波の性質や,反射・回折・フェージングなどの無線伝搬現象について解説する。また,章末には演習問題を配置し,伝搬特性やアンテナ特性の理解を深められるよう構成している。

3章では,変復調,OFDM,MIMOなど,無線通信システムを支える信号処理技術について学ぶ。さらに,演習問題を通して,変調方式や通信方式に関する理解を確認できるようにした。

4章では,CSMA/CAを始めとするアクセス制御方式や,TCP/IPに代表されるネットワークプロトコルについて説明し,通信効率やネットワーク設計の考え方について解説する。また,演習問題では,スループット計算やアクセス制御の動作理解を確認できるよう配慮した。

5章では,無線環境制御技術,ドローン通信,測位技術など,無線通信を応用したさまざまな技術について紹介し,ワイヤレスネットワーク技術の発展的な応用例について概観する。

本書では,ワイヤレスネットワークを単なる通信方式の集合としてではなく,アンテナ,伝搬,信号処理,アクセス制御,ネットワーク制御が相互に連携して動作する統合システムとして捉えることを重視している。そのため,各章を個別の知識として学ぶだけでなく,相互の関係を意識しながら学習することで,無線通信システム全体への理解が深まるよう配慮した。また,2章から4章では,各章末に演習問題を配置し,本文で学んだ内容を確認しながら理解を深められるよう構成している。無線通信技術は,理論,数式,通信方式,ネットワークプロトコルなど,多様な技術が密接に関係しているため,実際に問題を解きながら学習することが重要である。本書が,講義用教科書としてだけでなく,自学自習や研究・開発の基礎を学ぶための一冊として活用されることを期待している。

2026年8月
著者一同

―執筆分担―
平栗 健史 1.1節,1.2.3項,1.3.3項,4章,5.2節
今井 哲朗 1.2.1項,1.3.1項,2章,5.1節
丸田 一輝 1.2.2項,1.3.2項,3章,5.3節

1.ワイヤレスネットワークの概要
1.1 無線通信とは 
1.2 通信の基礎 
 1.2.1 アナログ通信とディジタル通信 
 1.2.2 無線通信システム,デバイスの構成 
 1.2.3 ネットワークプロトコルとレイヤ 
1.3 本書の概要 
 1.3.1 アンテナと電波伝搬(2章の概要) 
 1.3.2 通信システムと信号処理(3章の概要) 
 1.3.3 アクセス制御方式とネットワークプロトコル(4章の概要) 
引用・参考文献

2.アンテナと電波伝搬
2.1 マクスウェル方程式と電波 
 2.1.1 マクスウェル方程式 
 2.1.2 波動方程式とその解 
 2.1.3 電波の放射 
2.2 電波の性質 
 2.2.1 偏波 
 2.2.2 反射と透過 
 2.2.3 回折 
2.3 アンテナの基本特性 
 2.3.1 アンテナからの放射界 
 2.3.2 アンテナ特性の評価指標 
 2.3.3 アンテナの種類 
2.4 電波の伝搬 
 2.4.1 自由空間伝搬 
 2.4.2 平面大地伝搬 
 2.4.3 移動通信環境における伝搬 
演習問題
引用・参考文献

3.通信システムと信号処理
3.1 通信モデルと要求条件 
3.2 信号の表現と性質 
 3.2.1 信号とは 
 3.2.2 連続信号と離散信号 
 3.2.3 信号の数学的表現 
3.3 変復調 
 3.3.1 変調の目的 
 3.3.2 変調とは 
3.4 振幅変調 
 3.4.1 AMのスペクトラム 
 3.4.2 搬送波抑圧方式 
 3.4.3 DSB方式 
 3.4.4 SSB方式 
 3.4.5 AM送信機の構成 
 3.4.6 AMの復調 
3.5 周波数変調 
 3.5.1 FMの変調波 
 3.5.2 PMの変調波 
 3.5.3 FM変調波のスペクトラム 
 3.5.4 エンファシス 
 3.5.5 IDC回路 
 3.5.6 FM復調 
3.6 ディジタル変調 
 3.6.1 アナログ-ディジタル変換 
 3.6.2 ディジタル変調方式 
 3.6.3 QPSKおよびQAM 
 3.6.4 ISIと帯域制限 
3.7 OFDM 
 3.7.1 OFDMの原理 
 3.7.2 OFDMにおける信号の等化(ひずみ補償) 
 3.7.3 OFDM送受信機の構成 
3.8 移動通信システム 
 3.8.1 セルラ方式 
 3.8.2 複信方式 
 3.8.3 多元接続方式 
 3.8.4 移動通信システムでの多元接続の変遷 
 3.8.5 周波数繰返し 
3.9 チャネル容量 
3.10 MIMO 
 3.10.1 MIMO技術の概要 
 3.10.2 MIMOシステムモデル 
 3.10.3 MIMO通信方式 
 3.10.4 性能評価 
演習問題
引用・参考文献

4.アクセス制御方式とネットワークプロトコル
4.1 無線で用いるさまざまなMAC層の技術 
4.2 アクセス制御の種類と通信効率 
4.3 ランダムアクセス制御方式 
 4.3.1 ALOHA方式 
 4.3.2 CSMA方式 
4.4 CSMAによるパケット衝突検出と回避方式 
 4.4.1 CSMA/CD方式 
 4.4.2 CSMA/CA方式 
 4.4.3 CSMAとACKを含むIPスループット計算方法 
4.5 通信効率の考え方 
 4.5.1 CSMA/CAとCSMA/CDの通信効率の違い 
 4.5.2 全二重通信と半二重通信 
 4.5.3 TCPによる有線と無線のプロトコルによる比較 
4.6 キャリアセンスレベル 
4.7 理論計算による伝送速度の計算方法 
 4.7.1 基本的な伝送速度の算出例 
 4.7.2 MIMOを用いた伝送速度の算出例 
4.8 適応変調と伝送速度 
 4.8.1 伝送速度選択の方法 
 4.8.2 リンクアダプテーションによる遅延の課題 
演習問題
引用・参考文献

5.無線通信を用いた応用技術
5.1 無線環境制御技術 
 5.1.1 技術的背景 
 5.1.2 再構成型インテリジェントサーフェス:RIS 
 5.1.3 RISの設置効果 
5.2 ドローン通信システムの概要 
 5.2.1 ドローンを用いた空中通信技術の背景 
 5.2.2 ドローン通信の特徴 
 5.2.3 ドローン通信で用いる通信方式 
 5.2.4 ドローン飛行測位 
5.3 無線電力伝送 
 5.3.1 無線電力伝送の概要 
 5.3.2 空間伝送型無線電力伝送 
 5.3.3 アレーアンテナの基礎 
 5.3.4 効率的な給電手法 
引用・参考文献
演習問題解答
索引

読者モニターレビュー【 MSat 様 (業界・専門分野:情報通信、自動車)】

本書は、ワイヤレスネットワーク分野の第一線で活躍される3名の著者によって執筆された教科書です。アンテナ、電波伝搬、変復調、MAC、ネットワーク、アプリケーション技術といった、本来であれば個別に学ぶことの多いテーマが1冊に体系的にまとめられています。ひと言で表すならば、ワイヤレスネットワークに関する幅広い知識を網羅的に学べる教科書といえるでしょう。
まえがきでは、無線通信およびネットワーク技術を初めて学ぶ学生や技術者を対象としていると述べられています。しかし、基礎知識を十分に持たない読者が独力で読み進めるには、やや難易度が高いと感じました。一方で、過去に無線通信を学んだ経験のある方にとっては、基礎事項の復習をしながら最新の技術動向にも触れることができる有用な一冊です。また、各章末に演習問題が用意されているだけでなく、その解答が巻末に掲載されている点も、本書の大きな特長といえます。
特に、第5章で扱われる応用技術は、他の教科書にはあまり見られない本書ならではの魅力です。電波の反射特性を制御することで無線環境そのものの最適化を目指すRIS(Reconfigurable Intelligent Surface)、無線通信の活用領域を空へと拡張するドローン技術、さらに情報伝送だけでなく電力の無線化を目指す無線電力伝送技術について、それぞれの専門分野の視点から解説されています。
評者自身もこの分野を専門としていますが、本書を通じて新たな気づきや発見を得ることができました。大学教育において何が重視され、何が扱われにくいのかという観点から読み進めるのも興味深く、初学者のみならず、専門家にとっても十分に読み応えのある一冊であると感じます。

読者モニターレビュー【 松岡 大輔 様(業界・専門分野:プログラマー)】

まえがきで述べられているように、無線通信技術は多様な要素技術が組み合わさった複雑なものであり、かつ、実用のニーズに合わせて日々「進化」している。そのような無線通信技術の教科書として、本書はまず全体を要素技術や基礎技術にブレイクダウンし、そして、それを体系的に記述することを意図している。

200ページに満たない分量にかなりの情報量が詰め込まれており、無線通信技術の概要をつかむうえでの一定の網羅性を示しているのではないか。ひとつひとつの用語の説明は必ずしも厚くないが、そのぶんたたみかけるように名詞が列挙される書き方にはなかなか迫力がある。限られた分量のなかで包括性を目指している。

また、基礎理論から説き起こして現実への応用まで一貫したパースペクティブでとらえるという姿勢に体系性への志向が感じられる。ただし、結果的に、抽象度のさまざまな話題が密接に接続されていくので、議論はそれなりに複雑である。そこを解きほぐして、簡潔に記述する工夫はいろいろ見られる。そのひとつが数式の使用である。たとえばMIMO方式をチャネル行列を用いて数式で表現し、システム構成図と照らし合わせることで、multiple-input multiple-outputという複雑な状況を直感的に示す。さらに、演習問題では、モデルに数値を当てはめて確認させている。丁寧だと思う。

4章では、OSI参照モデルにMACを位置づけ、通信効率をパケット通信におけるIPスループットで表し、さらに段階的にUDP/TCPレベルのスループットへと進み、それを算出する数式に言及している。物理層の標準的な情報理論の記述を、上位層の性能指標まで接続している点が特徴的である。

本書では、複雑な無線通信技術をわかりやすく伝える試みがなされている一方、抽象度のレイヤーが多少込み入っている印象も受けた。技術体系の複雑さは保ち、提示が込み入っているところは、数式の使用や視覚的表現、演習問題など、さまざまな工夫で和らげている。学生は、数式を理解の補助としながら全体像をつかめば、コンパクトに体系的な知識が得られるし、数式の内容にまで踏み込んでより深い理解を目指すこともできる。また、応用への志向が明確にあるので、実務家が実際の技術の背後にある基礎理論を学ぶのにも使えるだろう。現実の応用への想像力をかき立てるおもしろい教科書だと思った。

読者モニターレビュー【ちくわ 様(業界・専門分野:電気電子専攻)】

本書では、グラフや表だけでなく、具体的な対象を用いた概念図が示されており、技術の仕組みや利用場面をイメージしやすかった。また、通信方式の違いを人間同士の言語やマナーの違いに例えるなど、初学者にも理解しやすい工夫がされていると感じた。
さらに、ページ下部の注記には、本文の補足に加えて、誤解しやすい概念や計算上の注意点が記載されており、より正確な理解につながった。特に、変調では情報信号によって搬送波のパラメータを変化させるという説明が印象的であり、概念の本質を理解するうえで有益だった。
私は現在、磁界共振結合方式の無線電力伝送について研究しているが、本書ではアレーアンテナを用いたビームフォーミングによる空間伝送型無線電力伝送が紹介されていた。特に、複数端末への給電の可能性が示されており、自身の研究とは異なる方式や応用の可能性を学ぶことができた。自身の専門分野と比較しながら読むことで、新たな視点を得られた点も良かった。

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報一覧

平栗 健史

平栗 健史(ヒラグリ タケフミ)

日本工業大学 基幹工学部 電気情報工学科 教授、スマート農業センター長。博士(情報学)、博士(農学)。無線通信工学、ワイヤレスネットワークを専門とし、Wi-Fiをはじめとする無線アクセス技術、無線通信品質、移動通信ネットワークなどの研究に長年従事している。近年は、ロボットやドローンの自律移動を支える無線ネットワーク、空間伝送型ワイヤレス電力伝送(WPT)、RIS(Reconfigurable Intelligent Surface)など、次世代ワイヤレス技術の研究開発にも取り組んでいる。また、通信技術とAI、IoT、ロボティクスを融合し、スマート農業をはじめとする新たな応用分野への展開も進めている。2026年、電子情報通信学会フェロー。

掲載日:2026/10/01

電子情報通信学会誌2026年10月号

掲載日:2026/09/01

電子情報通信学会誌2026年9月号