フェーズドアレーアンテナの理論と実際

フェーズドアレーアンテナの理論と実際

  • 高橋 徹 三菱電機(株) 博士(工学)

アンテナ技術者が知っておくべきフェーズドアレーアンテナの理論と実際を解説する。

フェーズドアレーアンテナは,電波の送受信方向を電子的に変えることができる,すなわち電子的なビーム走査が可能な高機能なアンテナである。防衛用レーダとしてだけでなく,近年では衛星通信や移動体通信など適用範囲が拡大している。本書は,フェーズドアレーアンテナの放射特性に関する理論を中心に,開口設計を行う上で知っておくべき事項や,アレーファクタによる理想的な議論だけでなく,素子間相互結合,励振誤差解析,キャリブレーション技術といった,実用化するうえで押さえておくべき理論や技術について解説する。

ジャンル
発行予定日
2026/09/下旬
判型
A5
ページ数
252ページ
ISBN
978-4-339-01507-2
フェーズドアレーアンテナの理論と実際
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定価

4,620(本体4,200円+税)

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  • 内容紹介
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【内容紹介】
 フェーズドアレーアンテナは、電波の送受信方向を電子的に変えることができる、すなわち電子的なビーム走査が可能な高機能なアンテナである。元々防衛用レーダ向けに用いられてきたアンテナであるが、近年では衛星通信や移動体通信など適用範囲が拡大している。そのため、フェーズドアレー技術は、その開発に携わる人だけでなく、レーダや無線通信を専門とする人にも知っておいて頂きたい技術と筆者は考えている。
 フェーズドアレーのビーム走査は、アンテナを構成する各素子アンテナの励振位相を変えることにより行われ、原理としては非常に単純である。しかし、実際のハードウェアとして、これを実現するためには多くの技術が必要である。アンテナ技術、マイクロ波回路技術(受動回路、能動回路)、制御回路技術(アナログ、ディジタル)、電源回路技術、熱・機構設計技術、高周波測定・評価技術等が必要である。まさに、エレクトロニクス技術の集大成ともいえるのがフェーズドアレーである。これら全てを網羅的に解説するのは不可能であるが、本書ではシステム要求からフェーズドアレーの全体的な装置規模(素子数や素子配列等)や各コンポーネントへの機能・性能配分を決めるサブシステム設計に焦点を当てている。具体的には、フェーズドアレーの放射特性に関係する理論を中心に解説するが、アレーファクタによる理想的な議論だけでなく、素子間相互結合、励振誤差解析、キャリブレーション技術といったハードウェアに関する技術についても解説する。これらの理論は初級の範囲を超えるものであるが、フェーズドアレーを実際のハードウェアとして実用化するうえで不可欠な技術であり、是非とも理解をしていただきたい内容である。

【本書を特に読んでほしい読者】
電磁波工学、無線通信、電波によるリモートセンシングを専門とする大学学部生、大学院生、研究者。アンテナや各種電波システムの開発を担当する企業のエンジニア。

【本書を読む前にあると望ましい前提知識】
マクスウェルの方程式や波動方程式といった電磁波工学の基礎を学習した経験があることが望ましい。必ずしも、アンテナの専門家である必要はない。

【本書を読むことで得られる知識・できるようになること】
フェーズドアレーアンテナの放射特性に関係する理論全般だけでなく、フェーズドアレーアンテナを実用化するうえで押さえておくべき理論や技術を理解することができる。

【本書の特徴・工夫した点】
マクスウェルの方程式からはじまる基礎理論から、実用化に必要な高度な技術まで幅広く解説している。理論の解説では式の導出を付録に記載するなどして、できるだけ天下り的な記述は避けるとともに、理論が示唆する物理的な意味を理解できるような解説を心掛けた。

【関連キーワード】
アンテナ、アレーアンテナ、フェーズドアレー、放射パターン、アンテナパターン、指向性合成、ビームフォーミング、グレーティングローブ、素子間相互結合、キャリブレーション

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

フェーズドアレーアンテナは,電波の送受信方向の電子的な走査,すなわち電子的なビーム走査が可能なアンテナである。また,単なるビーム走査だけでなく,ヌル点形成や成形ビームなど,アンテナの放射指向性(放射パターン)をさまざまに変化させる機能も有している。これらのビーム形成技術は,いわゆる空間信号処理の先駆けとも言える技術であり,フェーズドアレー由来のビーム形成技術はアダプティブアレーやMIMO(multiple-input and multiple-output)技術へとつながっていると筆者は考えている。また,近年では移動体通信向けに多素子のフェーズドアレーとディジタルMIMO処理を組み合わせる方式が提案され,フェーズドアレー自体の適用範囲が大きく拡大しつつある。そのため,フェーズドアレー技術は,その開発に携わる人だけでなく,レーダや無線通信を専門とする人にも知っておいて頂きたい技術と筆者は考えている。

フェーズドアレーのビーム走査は,アンテナを構成する各素子アンテナの励振位相を変えることにより行われ,原理としては非常に単純である。しかし,実際のハードウェアとして,これを実現するためには多くの技術が必要である。アンテナ技術,マイクロ波回路技術(受動回路,能動回路),制御回路技術(アナログ,ディジタル),電源回路技術,熱・機構設計技術,高周波測定・評価技術などが必要である。まさに,エレクトロニクス技術の集大成とも言えるのがフェーズドアレーである。その開発にあっては,アンテナ技術者の果たすべき役割は非常に大きい。アンテナ技術者は,システム要求を理解し,フェーズドアレーの全体的な装置規模(素子数や素子配列など)や各コンポーネントへの機能・性能配分を決めなければならない。このようなサブシステム設計を開口設計と呼ぶ。この開口設計の良否が最終的な装置規模や製造コストを左右すると言っても過言ではなく,非常に重要な設計となる。そこで,本書では,アンテナ技術者が開口設計を行う上で知っておくべき事項を解説する。上記のようにフェーズドアレーは多くの技術で構成されるが,ここでは放射特性に関係する理論を中心に解説する。また,アレーファクタによる理想的な議論だけでなく,素子間相互結合,励振誤差解析,キャリブレーション技術についても解説する。これらの理論は初級の範囲を超えるものであるが,フェーズドアレーを実際のハードウェアとして実用化する上で不可欠な技術であり,ぜひとも理解をして頂きたい。

2026年8月
髙橋 徹

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

1.フェーズドアレーアンテナとは?
1.1 フェーズドアレーの構成と機能 
1.2 フェーズドアレーの歴史 
 1.2.1 1900年代初頭 
 1.2.2 1930年代 
 1.2.3 1940年代 
 1.2.4 1950~1960年代 
 1.2.5 1970年代以降 
 1.2.6 1990年代以降 
1.3 フェーズドアレーの開口設計 
1.4 本書の構成 

2.アレーアンテナの基礎
2.1 アレーアンテナの遠方界放射パターン 
 2.1.1 電流源による遠方界放射パターン 
 2.1.2 アレーアンテナの遠方界放射パターン(パターン乗積の原理) 
 2.1.3 極座標系(θ-φ座標系)でのアレーファクタ表現式 
 2.1.4 AZ over EL座標系でのアレーファクタ表現式 
 2.1.5 EL over AZ座標系でのアレーファクタ表現式 
2.2 リニアアレーアンテナ 
 2.2.1 等振幅等位相のリニアアレー放射パターン 
 2.2.2 ビーム走査 
 2.2.3 リニアアレーのグレーティングローブ 
 2.2.4 等振幅リニアアレーの指向性利得,サイドローブレベル,ビーム幅 
2.3 指向性合成 
 2.3.1 低サイドローブ化(1)―チェビシェフ(Chebyshev)分布 
 2.3.2 低サイドローブ化(2)―テイラー(Taylor)分布 
 2.3.3 フーリエ級数法 
 2.3.4 直交ビーム合成(Woodward-Lawsonのサンプリング法) 
 2.3.5 非線形最適化手法による電力指向性合成 

3.平面アレーアンテナ
3.1 平面アレーアンテナのアレーファクタ一般式 
3.2 4角配列平面アレーの放射パターン 
3.3 任意周期配列平面アレーの放射パターン 
3.4 グレーティングローブチャート 
3.5 平面アレーの指向性利得 
3.6 4角配列平面アレーと3角配列平面アレーの比較 
3.7 3角配列の注意点と素子配列設計方法 
3.8 密度テーパ・素子間引きによる低サイドローブ化 
 3.8.1 確率過程による素子間引き設計手法 
 3.8.2 確定的素子間引き設計手法 
 3.8.3 遺伝的アルゴリズムによる素子間引き設計手法 

4.素子間相互結合
4.1 素子間相互結合を考慮したアレーアンテナ解析モデル 
4.2 相互インピーダンスの計算例とその性質 
4.3 アクティブ反射係数 
4.4 素子間相互結合を考慮した素子アンテナ設計・解析手法 
4.5 アクティブ反射係数とアレー素子パターンの関係 
4.6 グレーティングローブによるスキャンブラインドネス 
 4.6.1 ダイポールアレーのアクティブ反射係数:E面走査とH面走査の違い 
 4.6.2 反射板付きダイポールアレーのアクティブ反射係数:反射板有無の違い 
 4.6.3 3角配列ダイポールアレーのアクティブ反射係数:偏波の違い 
4.7 誘電体表面波によるスキャンブラインドネス 
4.8 導波管開口アンテナでのスキャンブラインドネス 

5.フェーズドアレーのハードウェア
5.1 全体構成 
5.2 素子アンテナ 
 5.2.1 ダイポールアンテナ 
 5.2.2 マイクロストリップアンテナ(パッチアンテナ) 
 5.2.3 ホーンアンテナ(導波管開口アンテナ) 
 5.2.4 導波管スロットアレーアンテナ 
 5.2.5 テーパスロットアンテナ 
5.3 電力分配/合成回路 
 5.3.1 並列給電回路 
 5.3.2 直列給電回路 
 5.3.3 空間給電方式 
 5.3.4 マトリクス給電回路 
5.4 移相器 
 5.4.1 スイッチドライン型移相器 
 5.4.2 反射型移相器 
 5.4.3 ローデッドライン型移相器 
5.5 送受信モジュール 
5.6 フェーズドアレー開発事例 

6.フェーズドアレーのH/W誤差要因とキャリブレーション技術
6.1 ハードウェア誤差要因 
6.2 ディジタル移相器による量子化誤差低減技術 
 6.2.1 励振位相の量子化によるビーム指向誤差 
 6.2.2 励振位相の量子化によるグレーティングローブ(量子化ローブ) 
 6.2.3 量子化誤差低減方法 
6.3 周波数変化によるビーム指向誤差とその低減技術 
 6.3.1 周波数変化によるビーム指向誤差 
 6.3.2 サブアレー単位での実時間遅延回路によるビーム形成 
6.4 確率的放射特性解析技術 
 6.4.1 励振誤差のモデル化 
 6.4.2 ランダムな励振誤差による平均利得低下 
 6.4.3 ランダムな励振誤差によるビーム指向誤差 
 6.4.4 ランダムな励振誤差によるサイドローブレベル 
6.5 キャリブレーション技術 
 6.5.1 キャリブレーション技術の概要 
 6.5.2 キャリブレーション技術の分類 
 6.5.3 位相変調による素子電界測定法 
 6.5.4 素子電界ベクトル回転法(REV法) 
 6.5.5 Multi-Element Phase-Toggle Method(MEP法) 
 6.5.6 複数素子の測定を多重化したREV法(MEREV法) 
 6.5.7 キャリブレーション誤差 
 6.5.8 測定事例

付録A 自由空間中の電流源がつくる電界

付録B AZ over EL座標系とEL over AZ座標系の違い
 B.1 AZ over EL座標系 
 B.2 EL over AZ座標系 
 B.3 AZ over EL座標系,EL over AZ座標系での放射パターン測定 

付録C 等振幅リニアアレーの指向性利得:式(2.43)の導出

付録D 等振幅連続波源の放射パターン:式(2.71)の導出

付録E 連続波源のチェビシェフ指向性:式(2.75)の導出

付録F 等振幅平面アレーの指向性利得:式(3.22)の導出

付録G 相互インピーダンス近似式
 G.1 相互インピーダンスの波数積分表現式 
 G.2 鞍部点法による近似式の導出 

付録H 無損失なマトリクス給電回路によるビームの条件

付録I 広帯域信号によるビーム指向誤差解析理論
 I.1 周波数変化によるビーム指向誤差近似式の導出 
 I.2 アンテナ開口寸法と実時間遅延回路最大遅延量の関係 
 I.3 サブアレー単位で実時間遅延回路を設けたときのビーム指向誤差 

付録J 確率的放射特性解析理論
 J.1 ランダムな励振誤差による平均利得低下理論式の導出 
 J.2 ランダムな励振誤差によるビーム指向誤差理論式の導出 
  J.2.1 和パターンビーム指向誤差 
  J.2.2 差パターンビーム指向誤差 
 J.3 ディジタル移相器の量子化誤差によるビーム指向誤差理論式の導出 
  J.3.1 和パターンビーム指向誤差 
  J.3.2 差パターンビーム指向誤差 
 J.4 ランダムな励振誤差によるサイドローブレベルの確率密度関数導出 

引用・参考文献
あとがき
索引

高橋 徹

高橋 徹(タカハシ トオル)

三菱電機株式会社情報技術総合研究Chief Expert。博士(工学)。IEEE Fellow。
専門は、レーダや無線通信向けのアンテナ、特にフェーズドアレーアンテナ、レーダ/データリンク/衛星測位等の電波システム。電子情報通信学会通信ソサイエティ会長等の学会役員を歴任。主な著書は『通信技術者のためのレーダの基礎』(コロナ社、2019)など。