超進化802.11高速無線LAN教科書 MIMOからMassive MIMOを用いた伝送技術とクロスレイヤ評価手法
無線LANを含め,実際のシステムでどのようにMIMO伝送を評価したらよいかといった観点で詳細な解説を行った。
- 発行年月日
- 2017/11/02
- 判型
- B5
- ページ数
- 156ページ
- ISBN
- 978-4-339-00903-3
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- 書籍紹介・書評掲載情報
- 広告掲載情報
本書は,IEEE802.11の無線LAN標準規格とMIMO技術を解説するとともに,無線LANを含め,実際のシステムでどのようにMIMO伝送を評価したらよいかといった観点で詳細な解説を行った。
現在,スマートフォンやWi-Fiは私たちの生活には欠かせないツールとなっている。また,これらで要求される伝送速度は,20年前からは想像できない速度が実現しており,これは次世代無線通信方式によりさらに進化するだろう。一方,無線通信システムが使用できる周波数帯は非常に限られているため,「限られた周波数帯域において,いかに伝送速度を向上させるか」は,無線通信システムにおける永遠の課題であり,これまでもさまざまな技術によってこの課題が克服されてきた。この中で,本書では,伝送速度を向上させる大きなきっかけとなり,今では無線通信のスタンダードとなっているOFDM(orthogonal frequency division multiplexing)をいち早く導入したIEEE802.11の無線LAN標準と,MIMO(multiple input multiple output)技術を解説するとともに,無線LANを用いたMIMO伝送の特性や評価方法を解説することを目的としている。
近年,MIMO技術に関しては,LTE(long term evolution)やIEEE802.11nの標準規格に採用されたことをきっかけとして,MIMOの原理や基礎特性を記載した教科書は多く出版されている。一方,無線LANの規格を網羅した教科書もいくつか出版されている。しかし,無線LANの標準規格書は,あくまでも規格で策定されている機能が記載されているだけであり,その技術が採用されている意味や目的が述べられていないので,どのようにMIMO伝送に結びつけるか,ということを初学者が検討することは非常に難しい。また,無線LANを含め,実際のシステムでどのようにMIMO伝送を評価したらよいかといった観点で詳細な記載が行われている教科書はこれまで見当たらなかった。
本書の著者である西森と平栗は,IEEE 802.11aから始まり,最近の無線LANの標準化に携わった経験と,MIMO等のアレーアンテナを用いた空間信号処理技術に関する最先端の研究開発に,それぞれ20年近くにわたり携わってきた。そこで,実際の無線LAN規格を用いたMIMO伝送を評価するため,比較的簡単な手法でツールを開発しようというモチベーションから本書を作成するきっかけとなった。著者の1人である西森は,物理層(PHY層)におけるアダプティブアレーからMIMO伝送に至るまでのアンテナを含む信号処理の先駆者であり,もう1人の著者である平栗は,MAC層以上の無線通信アクセス制御技術に関しては,国内でも数少ない専門家である。これまでの研究開発の経験(=人生)のすべてを注力し,本書の著者以外では実現できなかった,PHY層とMAC層技術の融合,すなわち,クロスレイヤ技術の解説を体系的にまとめることができたことは非常に大きな意義があると確信している。
本書をまとめるにあたり,無線通信を実現するためには個々の技術が重要なのはいうまでもなく,総合的に無線通信システムを考えることが必要であり,「無線通信の総合力」が必須であることを痛感した。以上の背景に基づき,本書では,まず2~4章で無線LANの基礎を体系的に学習することができる。5章ではMIMOの基礎から次世代無線通信のキー技術であるMassive MIMOまでをまとめている。なお,5章について本書を超える部分は,2014年に著者が出版した「マルチユーザMIMOの基礎」を参照いただければ幸いである。6章では,これまでの章の内容をもとにIEEE 802.11acを例にとり,マルチユーザMIMO伝送の評価方法とその特性を示している。また,付録では本書で使用するおもな記号リストをまとめているので,理解の助けとしていただきたい。
本書を通じて,無線通信を実現するためには総合力が必要であることを実感していただきたい。また,本書のサブタイトルとして,今後も発展が想定されるMIMO伝送を用いた無線LANの教科書のスタンダードとなるべく,「超進化802.11高速無線LAN教科書」というタイトルを与えさせていただいた。本書が無線通信のさらなる発展に寄与すれば幸いである。
2017年8月 西森健太郎,平栗健史
1. はじめに
1.1 技術背景
1.2 本書の内容
2. 無線LANの基礎知識
2.1 無線LANの標準化と機能
2.2 無線LANネットワーク構成
2.2.1 無線LANネットワークのコンポーネント種別と定義
2.2.2 接続手順のための概要と運用規定
2.2.3 ネットワーク構成の基本モード
2.3 無線LANの標準化技術と動向
2.3.1 IEEE802標準化委員会と無線LAN標準規格
2.3.2 IEEE802.11nの標準規格
2.3.3 IEEE802.11aaの標準規格
2.3.4 IEEE802.11acの標準規格
2.3.5 次世代無線LAN規格IEEE802.11ax
3. 無線LANのPHY層の概要
3.1 無線LANにおける変調方式
3.2 OFDM方式
3.2.1 マルチパス伝搬
3.2.2 OFDM方式の原理とMIMO-OFDM
3.3 IEEE802.11a標準規格におけるOFDM方式
3.3.1 畳み込み符号化とインターリーブ
3.3.2 OFDMシンボルの生成
3.3.3 サブキャリア数と伝送速度の関係
3.3.4 PHY層の信号フォーマット
4. 無線LANのMAC層の概要
4.1 アクセス制御と拡張機能
4.2 CSMA/CAアクセス方式とキャリアセンスのアルゴリズム
4.2.1 IFSによる優先制御
4.2.2 EIFSによるフレーム送信の同期機能
4.2.3 バックオフ制御
4.2.4 キャリアセンスによる受信レベル
4.2.5 キャリアセンスと送受信のアルゴリズム
4.3 IEEE802.11eの優先制御によるQoS機能
4.4 MIMO伝送とSU/MU-MIMO伝送によるアクセス制御
4.4.1 MIMOを用いたアクセス制御(IEEE802.11n)
4.4.2 固有モード伝送,MU-MIMOを用いたアクセス制御(IEEE802.11ac)
4.5 IEEE802.11acのQoS機能サポート
4.6 理論計算によるスループットの計算方法
4.7 IEEE802.11および802.11nフレームフォーマット
5. シングルユーザ,マルチユーザおよびMassiveMIMOの基礎
5.1 MIMO伝送のコンセプトと実現手法
5.2 MIMO伝送のチャネル容量
5.3 MIMOにおける受信信号分離技術と送信指向性制御技術
5.3.1 受信信号分離技術
5.3.2 送信指向性制御技術
5.4 マルチユーザMIMO(MU-MIMO)の原理
5.5 MU-MIMOにおける下り回線指向性制御技術
5.5.1 線形演算による指向性制御技術
5.5.2 非線形制御技術とユーザ選択法
5.6 PHY層でのSU/MU-MIMO伝送の特性
5.7 MassiveMIMOのコンセプトとチャネル容量
5.7.1 基本コンセプト
5.7.2 チャネル容量
5.8 MAC制御を考えた場合の課題とその改善手法
5.8.1 CSIフィードバックの問題点
5.8.2 伝送効率改善手法
6. 無線LANにおけるMIMOの性能評価
6.1 無線LANにおけるMIMO伝送方法(SU/MU-MIMO)
6.1.1 伝送速度におけるMACプロトコルの研究
6.1.2 フレームアグリゲーションに関する研究
6.1.3 CSIフィードバックを含む伝送効率の研究
6.1.4 伝送距離に関する研究
6.2 PHY/MAC総合評価ツールの概要
6.2.1 平均受信電力の決定
6.2.2 平均SNRの決定
6.2.3 SU/MU-MIMO伝送によるPHY層の伝送速度の決定
6.2.4 CSIフィードバックによるオーバヘッドの計算
6.2.5 シミュレーション条件
6.3 SU/MU-MIMOの性能評価
6.3.1 MCSインデックスごとの性能評価
6.3.2 アグリゲーションを含む性能評価
6.3.3 CSIフィードバックを考慮した性能評価
6.3.4 基地局と端末間の距離特性を考慮した性能評価
6.3.5 各方式の適用領域
6.4 CSIフィードバックを排除するMU-MIMO伝送の性能評価
付録
引用・参考文献
索引
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掲載日:2024/12/01
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掲載日:2023/09/01
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掲載日:2022/08/01
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掲載日:2021/12/01
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掲載日:2021/09/30
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掲載日:2021/05/06
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掲載日:2020/06/03
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掲載日:2020/02/01