無線通信物理層技術へのアプローチ

無線通信物理層技術へのアプローチ

ディジタル移動通信の物理層技術を解説。とくに伝送誤り問題についは著者こだわりの解説。

ジャンル
発行年月日
2021/08/30
判型
A5
ページ数
320ページ
ISBN
978-4-339-00949-1
無線通信物理層技術へのアプローチ
在庫あり

定価

5,500(本体5,000円+税)

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本書は著者の「改訂 ディジタル移動通信の電波伝搬基礎(コロナ社)」の姉妹書であり、同書の最終章「フェージング環境におけるディジタル伝送特性」の内容を大幅に掘り下げる部分に多くのページを割いている。タイトルに「アプローチ」をつけたのは、アンテナ・伝搬・通信方式からなる物理層技術そのものと言うよりは、その全貌を理解するための道具やヒントを与える本にしたかったためである。
本書の前半では、Maxwell, Friis, 仲上, Rice, Bello等の先駆者によって紡ぎだされた物理層技術の理論や思想、そして、それが今なお無線通信の根幹に生き続けているものを取り上げ、わかりやすく丁寧な解説をしている。本書の後半では、フェージング環境下でのディジタル伝送特性、とりわけ、ビット誤り率の導出方法やその計算式を詳しく解説している。特に、10章~12章で扱う周波数選択性フェージング下での伝送特性の解析には、著者らが編み出した等価伝送路モデルを用いており、他書にはない独自性(=マニアックさ)を出している。原理や特性を説明するために数式も多用しているが、順を追って読んでもらえば理解できるように書いている。式の展開も、理解力の鋭い人には冗長すぎると思われるくらいに丁寧にしている。無線通信の教科書で馴染みの式がどのようなところからどのようにして出てきたかを知ることができる。

著者は企業研究所・研究機関・大学での約40年間,無線通信物理層技術の研究・教育に携わってきた。そこで培った知識やノウハウを,次世代を担う大学院生・若手技術者・研究者が新たな技術を生み出すための基礎体力作りに活かしてほしいという願いを込めて本書を執筆した。本書は著者の「改訂 ディジタル移動通信の電波伝搬基礎(コロナ社)」の姉妹書であり,同書の最終章「フェージング環境におけるディジタル伝送特性」の内容を大幅に掘り下げる部分に多くのページを割いている。

スマートフォンに代表されるワイヤレス情報通信は,その移動性の便利さゆえにこれからも姿や形を変えながら発展し続けていくであろう。そして,そこではサービスにAIを活かした上位層技術が主役を果たしていくであろう。しかしそのような未来社会においても,新たなものを生み出すためには骨格となる物理層技術,すなわち,一対一の通信技術の深い理解が不可欠である。

本書の前半では,Maxwell,Friis,仲上,Rice,Belloらの先駆者によって紡ぎ出された物理層技術の理論や思想,そして,それがいまなお無線通信の根幹に生き続けているものを取り上げ,わかりやすく丁寧な解説をしている。本書の後半(8章以降)は,無線通信の,とりわけディジタル移動通信の物理層技術の中でもその中心的な問題である,マルチパスフェージングによるディジタル信号の伝送誤りについて,発生のメカニズムとビット誤り率の推定に焦点を当てている。

伝送誤り問題について一般の教科書で扱われる範囲は,狭帯域フェージング時の熱雑音による誤り特性までで,いわゆる軽減困難な誤り(irreducible error)について,定量的な推定を本格的に解説した専門書を著者は知らない。軽減困難な誤りには,高速フェージング(時間選択性フェージング)による位相変動誤りと周波数選択性フェージングによる符号間干渉誤りがあるが,これらは変復調方式と電波伝搬問題(マルチパス伝搬)が複雑に関連しているため,通信路のモデル化から説き起こしていく必要がある。

本書では,伝送誤り問題について,他の本では素通りされてしまっていること,しかもどうしても理解しておいてほしいことに焦点を当てて,著者こだわりの書き方をしている。タイトルに「アプローチ」を付けたのは,アンテナ・伝搬・通信方式からなる物理層技術そのものというよりは,その全貌を理解するための道具やヒントを与える本にしたかったためである。

本書にはつぎのような特徴がある。この特徴を読者の学びに活かしてほしい。

1)物理層技術を学ぶ過程で沸き起こる「なぜ」や「不思議」に焦点を当てている。好奇心は学びの原動力になる。

2)各章は自己完結的にまとめており,どの章からどういう順番で読んでも問題ない。興味ある特定の章だけをハンドブック的に利用することも可能である。

3)原理や特性を説明するために数式も多用しているが,順を追って読んでもらえば理解できるように書いている。式の展開も,理解力の鋭い人には冗長すぎると思われるくらいに丁寧にしている。無線通信の教科書で馴染みの式が,どのようなところからどのようにして出てきたかを知ることができる。

4)1章~7章は,物理層技術を支えている古典理論をかみ砕いて解説している。無線システム構築のために身に付けておいてほしい要素項目を取り上げている。

5)8章以降は,フェージング環境下でのディジタル伝送特性,とりわけ,ビット誤り率の導出方法やその計算式を詳しく解説している。特に,10章~12章で扱う周波数選択性フェージング下での伝送特性の解析には,著者らが編み出した等価伝送路モデルを用いており,他書にはない独自性(=マニアックさ)を出している。

6)毎章,その章に関連するコラム(ティータイム欄)を入れている。広い視野で物事を捉えることの大切さや学ぶ喜びを味わってほしいとの願いを込めている。

いまは,次世代を牽引する若者たちに向けて遺言を書き終えた気持ちでさわやかである。本書の出版提案を快く受け入れ,かつ,多大なサポートをいただいたコロナ社をはじめ関係の皆様に心から感謝の意を表したい。

2021年6月
唐沢 好男

1.電波の世界
1.1 マクスウェルの方程式
 1.1.1 準備
 1.1.2 マクスウェルの方程式とは
 1.1.3 電界も磁界もないところにも起きる電磁現象
1.2 電磁波
1.3 電磁気学のからくり:相対性理論への道

2.自由空間伝送
2.1 アンテナ利得と実効面積
 2.1.1 アンテナ利得
 2.1.2 実効面積
 2.1.3 アンテナ利得と実効面積の関係
2.2 送受信電力の関係
 2.2.1 フリスの伝達公式
 2.2.2 適用条件と最強無線伝送領域
2.3 受信系の性能指標:G/T
 2.3.1 受信系雑音
 2.3.2 G/T

3.確率分布
3.1 確率変数と確率密度関数
3.2 積率と相関
3.3 確率変数の変換
 3.3.1 変数の変換
 3.3.2 変数の和・差・積・商
 3.3.3 積率母関数と特性関数
3.4 正規分布と対数正規分布
 3.4.1 正規分布
 3.4.2 対数正規分布
3.5 正規分布の仲間たち
 3.5.1 レイリー分布
 3.5.2 仲上・ライス分布
 3.5.3 仲上m分布
 3.5.4 カイ二乗分布とガンマ分布
 3.5.5 分散の異なる指数分布の和の分布
 3.5.6 非心カイ二乗分布(非心ガンマ分布)
 3.5.7 t分布
3.6 確率分布の相互の関係

4.統計的推定
4.1 信頼区間推定
 4.1.1 回帰直線と信頼区間:その概要
 4.1.2 母平均の統計的推定
 4.1.3 回帰直線と信頼区間
 4.1.4 さらに理解を深めるために
4.2 極値統計
 4.2.1 順序統計
 4.2.2 最大値の漸近確率分布(極値分布)
 4.2.3 標本数Nの最大値の推定
 4.2.4 各種確率分布における標本数Nの最大値
4.3 信頼区間推定と極値統計の電波気象統計への応用
 4.3.1 地球温暖化問題と日本の降雨の長期傾向
 4.3.2 極値統計から見る1000年に一度の豪雨とは?

5.ウィシャート行列と固有値分布
5.1 ランダムベクトル
5.2 ランダム行列
5.3 ウィシャート行列
 5.3.1 無相関ランダム行列の場合
 5.3.2 その他の行列の場合
 5.3.3 固有値分布のガンマ分布への近似
5.4 大規模ランダム行列の漸近固有値分布
 5.4.1 正方行列の漸近固有値分布
 5.4.2 マルチェンコ・パスツール則
 5.4.3 順序付き正規化固有値の期待値

6.通信信号とヒルベルト変換
6.1 信号表現
 6.1.1 ベースバンド信号
 6.1.2 帯域通過信号
 6.1.3 解析信号
6.2 信号のシフト変換
6.3 帯域制限フィルタ
 6.3.1 帯域制限の必要性
 6.3.2 ナイキストフィルタ
6.4 ヒルベルト変換とその応用
 6.4.1 ヒルベルト変換とは
 6.4.2 適用例
 6.4.3 ヒルベルト変換器の設計
付録式(6.19)の導出

7.線形時変通信路
7.1 信号の入出力関係
 7.1.1 入出力を結ぶカーネル関数
 7.1.2 2つのシステム関数系
7.2 システム関数
7.3 通信路相関関数
7.4 広義定常無相関散乱(WSSUS)通信路
 7.4.1 WSS通信路
 7.4.2 US通信路
 7.4.3 WSSUS通信路
7.5 WSSUS通信路の性質
 7.5.1 周波数選択性フェージング
 7.5.2 時間選択性フェージング
 7.5.3 補足

8.フラットフェージング下での伝送特性
8.1 ディジタル変復調方式
 8.1.1 ディジタル変調の概要
 8.1.2 検波方式
8.2 信号電力一定下での熱雑音によるビット誤り率
 8.2.1 信号と雑音の電力比
 8.2.2 PSK
 8.2.3 QAM
8.3 フラットフェージング環境下でのビット誤り率特性
 8.3.1 ビット誤り率の基本推定式と各種フェージング環境でのCNRの
確率分布
 8.3.2 閉形式で表されるビット誤り率算定式
 付録1.QPSK,レイリーフェージングの平均BER:式(8.3 8)の導出
 2.DQPSK,仲上・ライスフェージングの平均BER:式(8.4 0a)
の導出

9.高速フェージング下での伝送特性
9.1 軽減困難な誤り
9.2 レイリーフェージングの時間変動に関する統計的性質
9.3 高速フェージングによる誤り発生のメカニズム
 9.3.1 誤り発生の条件と推定の基本的考え方
 9.3.2 位相差Dzの確率分布
9.4 簡易なビット誤り率計算式
 9.4.1 遅延検波BPSK(DBPSK)
 9.4.2 遅延検波QPSK(DQPSK)
 9.4.3 ビット誤り率計算式のまとめ
9.5 スペースダイバーシチへの展開
9.6 減衰持続時間と減衰発生間隔

10.周波数選択性フェージング下での伝送特性
10.1 符号間干渉による誤り
10.2 マルチパス環境表現とキーパラメータ
10.3 等価伝送路モデル
 10.3.1 基本思想
 10.3.2 等価2波モデル(等価伝送路モデル)
 10.3.3 2波モデルパラメータの確率分布
 10.3.4 符号間干渉誤り推定の基本式
10.4 BERマップの数式化
 10.4.1 遅延差に対する形状相似性
 10.4.2 数式化
10.5 符号間干渉誤りの計算式
10.6 符号間干渉によるビット誤り率特性

11.OFDMの伝送特性
11.1 OFDMの仕組み
11.2 電波伝搬問題
11.3 不十分なガードインターバルでのOFDM伝送特性
11.4 BERマップ
11.5 等価伝送路モデルによる符号間干渉誤り推定
11.6 他の劣化要因と併せた総合ビット誤り率特性

12.二重選択性フェージング下での伝送特性
12.1 二重選択性フェージングの統計的表現
12.2 二重選択性フェージング下での伝送誤り
12.3 再生クロックのサイクルスリップ
 12.3.1 サイクルスリップとは
 12.3.2 2波モデルで見るサイクルスリップ現象
 12.3.3 等価伝送路モデルによる発生頻度解析
12.4 アンダースプレッドでの通信路容量
 12.4.1 シャノンの通信路容量
 12.4.2 情報理論的アプローチ
 12.4.3 統計的アプローチ
12.5 無線情報伝送の物理限界

引用・参考文献
索引

読者モニターレビュー【小又 志郎 様(放送大学非常勤講師/ご専門:物理学)】

電磁気学の基礎から説き起こし、携帯電話などの基礎を支える無線通信技術の諸側面が要領良く記述されている。単に結果だけを述べるのではなく、背景の説明や数学的導出も丁寧である。確率論や統計学、ランダム行列、ヒルベルト変換などの数学についても、無線伝送路の特性を解析するために必要な範囲で基本から解説されている。「超幾何関数と友達になろう」などの興味深いコラム「ティータイム」が所々に挿入されているのも良い。

唐沢 好男

唐沢 好男(カラサワ ヨシオ)

1950年(長野県)生まれ。学部の卒研テーマは結晶成長、就職した会社の部署は半導体課。量子力学を本格的に学びたく大学院受験。合格するも希望の研究室は満杯。このとき、シュレーディンガーを神様とする世界からマックスウェルを神様とする世界に宗旨替え(24歳)。偶然が導いてくれた電波の道であったが、40年以上を歩き続けてみると面白いことがいっぱい。研究者(KDD(現KDDI))、研究マネージャー(ATR)、研究教育者(大学)を経てフリーに。今は、次世代を担う若者に向け、培った電波技術の継承を願って技術レポートをせっせと書いている。唐沢研究室HPより公開中(下記リンク:唐沢研究室,技術レポートの公開)。
好きな言葉は「セレンディピティ」。周りの人(主に学生)にやたらそれを説くので「セレンディピティ馬鹿」と呼ばれていた。偶然の出会いを重ねながら今日ここまで歩み来た人生そのものに、それを強く感じている(下記リンク:セレンディピティ)。

掲載日:2021/09/30

「電子情報通信学会誌」2021年10月号広告

掲載日:2021/09/01

「電子情報通信学会誌」2021年9月号広告

掲載日:2021/08/31

日刊工業新聞広告掲載(2021年8月31日)

掲載日:2021/08/02

「電子情報通信学会誌」2021年8月号広告