MIMOアンテナ

MIMOアンテナ

MIMO技術とアンテナ技術の関係性を整理し,その理論から実践までを体系的に解説。

ジャンル
発行年月日
2026/10/15
判型
A5
ページ数
260ページ
ISBN
978-4-339-01504-1
MIMOアンテナ
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定価

4,730(本体4,300円+税)

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【内容紹介】
本書は,MIMO ( Multiple-Input Multiple-Output ) 技術をアンテナの視点から体系的に学び,設計・シミュレーション・測定・実装へとつなげるための実践的な専門書です.MIMOの性能は,アンテナのインピーダンス,反射,相互結合,複素指向性,放射効率,素子間隔,伝搬環境などに大きく左右されます.本書では,アンテナ技術とディジタル信号処理の間にある知識の隔たりを埋め,アンテナ特性が空間相関,固有値,SNR,チャネル容量にどのように結びつくかを,数式だけでなく物理的な意味や具体的な計算例を通して丁寧に説明します.
第1章ではMIMO技術の位置づけと本書の目的を示し,第2章では信号モデル,相関係数,固有値,チャネルモデル,チャネル容量,MU-MIMO・分散MIMO・大規模MIMOなどの基礎を解説します.第3章では本書の中核として,回路パラメータ,Sパラメータ,複素指向性とMIMO性能の関係を整理し,複数の相関係数や相関行列の定義,適用条件,誤用しやすい点まで詳述します.第4章では,モーメント法やFDTD法によるアンテナ解析と,散乱リングモデル,レイトレース法などを用いたMIMOチャネルのシミュレーションを扱い,終端条件,位相基準点,角度分解能など,正しい結果を得るための注意点にも力を入れました.第5章では,MIMOアンテナに関わる測定方法の実際についてまとめ,Sパラメータ,複素指向性,伝搬チャネルの測定の概念から,ネットワークアナライザやチャネルサウンダといった具体的な装置の扱いや実験方法までを詳しく紹介します.第6章では,直交偏波,減結合回路などのMIMOアンテナを構成するための技術について触れるとともに,スマートフォン,4G/5G機器,基地局,Wi-Fiアクセスポイントなどの実用アンテナを豊富な事例から学びます.第7章では,近年のMIMO技術の新たな応用例として,見通し内MIMOにおけるアナログ固有モード伝送とその延長にあるOAM,RISに先駆けた可変トランスミットアレーによる伝搬環境制御を解説します.
MIMOアンテナをこれから学ぶ学生・大学院生,アンテナ技術者,信号処理技術者,無線機器の研究開発者に特におすすめです.本書を通して,仕様や測定値を表面的に比較するだけでなく,性能を決める要因を物理・回路・信号処理の各側面から見極め,目的に適した設計法,評価指標,シミュレーション法,測定系を自ら選択できる力が身につきます.

【本書を特に読んでほしい読者】
電気電子工学・情報工学・通信工学の研究者、大学院生、大学学部生、高専生
電機系の企業技術者、設計・開発担当者

【本書を読む前にあると望ましい前提知識】
大学初年級程度の数学,特に複素数や線形代数(行列・ベクトル演算)の基礎知識があることが望まれます.また,電気回路,電磁気学,アンテナ工学,ディジタル信号処理,無線通信に関する基礎知識があれば,より理解が深まります.ただし,本書ではMIMOの信号モデル,相関係数,固有値,チャネル容量などを基礎から説明するとともに,行列・ベクトルおよび回路パラメータに関する公式を付録にまとめています.そのため,MIMOやアンテナに関する専門知識が十分でない読者でも,必要な事項を確認しながら読み進めることができます.プログラミング,電磁界解析,アンテナ測定の経験は必須ではありませんが,これらの経験があれば,シミュレーションや測定に関する実践的な内容をより深く理解できます.

【本書を読むことで得られる知識・できるようになること】
MIMOの信号モデル,空間相関,固有値,チャネル容量などの基礎を理解し,アンテナのインピーダンス,Sパラメータ,相互結合,複素指向性,放射効率などがMIMO性能に及ぼす影響を説明できるようになります.また,複数の相関係数や相関行列の定義と適用条件を理解し,評価目的に応じて適切な指標を選択できるようになります.さらに,アンテナ特性と伝搬特性を考慮したMIMOチャネルのシミュレーション法を習得し,散乱リングモデル,レイトレース法,FDTD法などを目的に応じて使い分けるための知識が身につきます.測定については,Sパラメータ,複素指向性およびMIMO伝搬チャネルの測定原理を理解し,ネットワークアナライザやチャネルサウンダを用いた測定系を検討・構築できるようになります.加えて,直交偏波や減結合回路などを用いた実際のMIMOアンテナ構成法を学ぶとともに,見通し内MIMOや伝搬環境制御などの新たな応用法を通して,MIMOアンテナに対する理解をさらに深めることができます.これらを通じて,MIMOアンテナの性能を物理・回路・信号処理の各側面から分析し,目的に適した設計法,評価法,シミュレーション法および測定法を自ら選択できるようになります.

【本書の特徴・工夫した点】
本書の大きな特徴は,アンテナ技術とディジタル信号処理の間にある知識の隔たりを埋め,両者を一つの体系として解説した点です.MIMOの信号モデル,空間相関,固有値,チャネル容量と,アンテナのインピーダンス,Sパラメータ,相互結合,複素指向性,放射効率などとの関係を,数式と物理的な意味の両面から説明しています.
特に,混同されやすい複数の相関係数や相関行列について,それぞれの定義,意味,計算法および適用条件を整理しました.また,Sパラメータから相関係数を求める方法など,簡便である一方で誤用されやすい評価法についても,成立条件や限界を具体的に示しています.
理論の説明だけでなく,モーメント法,FDTD法,散乱リングモデル,レイトレース法を用いたシミュレーション,Sパラメータ,複素指向性,伝搬チャネルの測定について,具体的な手順と注意点を詳しく解説しています.特に,複素指向性の終端条件,位相基準点,角度分解能,測定系の校正など,実際に解析や実験を行う際に結果の正確さを左右する事項を重視しました.
さらに,スマートフォン,4G/5G機器,基地局,Wi-Fiアクセスポイントなどに用いられる実用アンテナの構造を豊富に紹介しています.加えて,見通し内MIMOにおけるアナログ固有モード伝送や,現在のRISに先駆けて著者らが提案・実証した可変トランスミットアレーによる伝搬環境制御など,著者らの先駆的な研究成果も取り上げています.基礎理論からシミュレーション,測定,実装,発展的応用までを一冊で学べる点が,類書との大きな違いです.

【授業・講義での使用イメージ】
電気電子工学,情報通信工学,無線通信工学およびアンテナ・電波伝搬を専攻する大学3,4年生と大学院生をおもな対象として,半期または通年の講義に利用できます.例えば,「無線通信工学」「アンテナ工学」「電波伝搬」「移動通信」「無線システム工学」などの科目において,MIMOの基礎からアンテナの設計・評価法までを学ぶ教科書または参考書として使用できます.
半期の講義では,第1章から第3章を中心として,MIMOの信号モデル,空間相関,固有値,チャネル容量,アンテナ特性とMIMO性能の関係を扱う構成が考えられます.大学院講義や通年の講義では,第4章以降を加え,アンテナ特性を考慮したチャネルシミュレーション,複素指向性や伝搬チャネルの測定,実用アンテナ,見通し内MIMOおよび伝搬環境制御まで扱うことができます.
研究室のゼミや輪講では,各章を分担して読み進めるほか,掲載された計算例やアンテナ構成,シミュレーション法,測定系を題材として議論する使い方が想定されます.卒業研究や修士研究で初めてMIMOアンテナ,チャネルシミュレーション,伝搬測定に取り組む学生が,研究を開始するための導入書として使用することもできます.付録には行列・ベクトルおよび回路パラメータに関する公式をまとめているため,必要な数学や回路理論を確認しながら読み進めることができます.

【実務・研究で役立つ場面】
企業技術者、研究者、開発担当者などが、どのような場面で本書の内容を活用できるかをご記入ください。
アンテナ技術者は,反射,相互結合,指向性,放射効率,素子間隔などのアンテナ特性が,空間相関やチャネル容量に与える影響を把握し,MIMOアンテナの設計目標や評価指標を設定する際に本書を活用できます.特に,相互結合や交さ偏波特性をどの程度まで改善すべきかを判断し,過剰な性能要求によるアンテナの大形化や設計コストの増加を避けるための知識が得られます.
信号処理・通信方式の技術者は,理想的な点波源ではなく,実アンテナのインピーダンス,複素指向性,相互結合および放射効率を考慮したMIMOモデルを構築する際に活用できます.アンテナ技術者と信号処理技術者が,チャネル行列,空間相関,SNR,チャネル容量などの共通指標を用いて設計条件を検討する際の橋渡しにもなります.
シミュレーションを担当する技術者・研究者は,目的に応じてクロネッカモデル,散乱リングモデル,レイトレース法,FDTD法などを選択し,アンテナ特性と伝搬環境を適切に組み合わせる際に本書を利用できます.特に,複素指向性の終端条件,位相基準点,角度分解能,パス数など,解析結果の精度に影響する条件を確認するための実務的な参考資料となります.
測定を担当する技術者・研究者は,MIMOアンテナのSパラメータや複素指向性の測定,MIMOチャネルサウンダの構成,RFスイッチやネットワークアナライザを用いた伝搬測定,測定系の校正を計画する際に活用できます.市販の計測器を組み合わせて,研究目的に適した測定系を低コストで構築する場合にも有用です.また,端末,基地局,アクセスポイント,IoT機器などの製品開発において,アンテナ構成の比較,性能低下の原因分析,シミュレーションと実測結果の照合を行う際にも役立ちます.

【関連キーワード】
空間相関・相関行列
MIMOチャネル容量
相互結合・減結合回路
複素指向性
Sパラメータ
MIMOチャネルサウンダ・伝搬測定
大規模MIMO(Massive MIMO)
見通し内MIMO(LOS-MIMO)
軌道角運動量多重伝送(OAM)
RIS・伝搬環境制御

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

本書は,MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)技術とアンテナ技術の関係性を体系的に整理し,設計・評価・実装に至るまでの知見を網羅的にまとめたものである。MIMO技術は,1990年代後半にその理論的可能性が示されて以来,無線通信分野において飛躍的な進化を遂げてきた。特にアンテナ技術との融合により,通信容量の向上や干渉抑制など,従来の限界を超える性能が実現されつつある。本書では,MIMOの信号モデルやチャネル容量の理論的背景から出発し,空間相関や固有値解析,各種チャネルモデルの理解を深めるとともに,アンテナ特性がMIMO性能に与える影響を定量的に評価する手法を紹介する。さらに,電磁界シミュレーションやチャネルサウンダを用いた測定技術,実際の端末・基地局・アクセスポイントにおけるMIMOアンテナ構成例までを取り上げ,理論と実践の架け橋となることを目指した。執筆にあたっては,長年にわたりMIMOアンテナ技術の研究に携わってきた経験と,多くの共同研究者・技術者との議論が大きな支えとなった。特に,著者らの研究の過程で得られたMIMOアンテナのシミュレーションと実験手法や,MIMOに関わるさまざまな相関係数の定義とその評価は,本書の中核をなすものであり,これらの知見を共有できることを嬉しく思う。

本書は,電子情報通信学会アンテナ・伝播研究専門委員会主催の「アンテナ・伝搬における設計・解析手法ワークショップ(第60回)」におけるテキスト「できる!実践MIMOアンテナ」をもとに,著者らが加筆修正を加えたものである。当時のワークショップ実行委員会の皆様の貴重な激励とお力添えに深く感謝申し上げる。また,MIMO技術への誘いを与えてくれた故西森健太郎氏には,心からの敬意と感謝を捧げたい。その示唆と情熱は,著者らの研究の原点であり,本書の根幹を形づくる大きな力となった。

最後に,本書がアンテナ技術者,信号処理技術者,そしてMIMO技術に関心をもつすべての読者にとって,理論と実践をつなぐ一助となり,今後の研究・開発の発展に寄与することを願ってやまない。

2026年8月
本間尚樹・村田健太郎

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

1.はじめに
1.1 MIMOの用語と位置づけ 
1.2 MIMO技術の登場およびアンテナ技術との関わり 
1.3 本書の目的 

2.MIMO技術の概要
2.1 アンテナ数によるマルチアンテナシステムの分類 
2.2 MIMOの信号モデル 
 2.2.1 信号モデルと空間相関行列 
 2.2.2 相関係数 
 2.2.3 固有ベクトルと固有値 
2.3 チャネルモデル 
 2.3.1 レイリーフェージングと仲上–ライスフェージングモデル 
 2.3.2 クロネッカモデル 
 2.3.3 散乱リングモデル 
2.4 MIMOチャネル容量 
2.5 MIMO方式の発展 
 2.5.1 MU-MIMO 
 2.5.2 分散MIMO/協調マルチポイントMIMO 
 2.5.3 大規模MIMO 

3.アンテナ特性とMIMOの関係
3.1 従来のアレーアンテナとMIMOアンテナの違い 
3.2 求められるアンテナ特性 
3.3 アンテナ特性がMIMOチャネルに与える影響 
3.4 回路パラメータとMIMOチャネル 
 3.4.1 単素子アンテナ 
 3.4.2 M素子アンテナ 
 3.4.3 MR × MT アンテナシステム
3.5 複素指向性と相関係数 
 3.5.1 複素指向性を用いた相関係数計算法 
 3.5.2 結合による相関係数への影響 
3.6 Sパラメータと相関係数 
3.7 各種計算法により得られた相関特性の比較 
3.8 MIMOチャネル容量 
 3.8.1 アンテナの反射・相互結合とチャネル容量 
 3.8.2 相関行列を用いたチャネル容量計算法 

4.アンテナ特性を考慮したMIMOのシミュレーション
4.1 シミュレーションの流れと分類 
4.2 アンテナ特性の数値解析 
 4.2.1 モーメント法,FDTD法 
 4.2.2 複素指向性 
4.3 アンテナを考慮したMIMOチャネルの計算 
 4.3.1 散乱リングモデル 
 4.3.2 レイトレース法 
 4.3.3 FDTD法 

5.実アンテナを用いたMIMOの測定
5.1 測定の流れ 
5.2 アンテナの測定 
 5.2.1 Sパラメータの測定 
 5.2.2 複素指向性の測定 
5.3 伝搬測定 
 5.3.1 MIMOチャネルサウンダの種類 
 5.3.2 MIMOチャネルの測定系の例 

6.MIMOシステム実践例
6.1 MIMOアンテナの研究動向 
 6.1.1 直交偏波の利用 
 6.1.2 減結合 
6.2 MIMOアンテナの実際 
 6.2.1 セルラ端末用MIMOアンテナ(1) 
 6.2.2 セルラ端末用MIMOアンテナ(2) 
 6.2.3 セルラ端末用ミリ波用MIMOアンテナ 
 6.2.4 4G/5G機器用MIMOアンテナ 
 6.2.5 基地局用MIMOアンテナ 
 6.2.6 Wi-Fiアクセスポイント用MIMOアンテナ 

7.特異な伝搬環境におけるMIMO応用技術
7.1 見通し内MIMO 
 7.1.1 アナログ固有モード伝送の原理 
 7.1.2 アナログ固有モード伝送の4×4MIMOへの拡張 
 7.1.3 2×2MIMOにおける実験 
 7.1.4 4×4MIMOにおける実験 
 7.1.5 アナログ固有モード伝送の多素子への拡張 
7.2 無給電アンテナアレーによる伝搬環境操作 
 7.2.1 提案法の概念と原理 
 7.2.2 実験結果 

付録A.行列・ベクトルに関する公式
A.1 転置 
A.2 エルミート行列 
A.3 フロベニウスノルム 
A.4 行列式 
A.5 逆行列・一般化逆行列(疑似逆行列) 
A.6 ユニタリ行列 
A.7 トレース 
A.8 エルミート行列の固有値と固有ベクトル 
A.9 特異値分解 

付録B.回路パラメータに関する公式
B.1 Sパラメータとその他の回路パラメータとの変換 
B.2 Sパラメータの縦続接続 

おわりに
引用・参考文献
索引

本間 尚樹

本間 尚樹(ホンマ ナオキ)

アンテナ・電波伝搬を専門とし,MIMOアンテナ,無線通信,無線センシングなどの研究に取り組んでいます.MIMO研究を始めた当初は,アンテナ工学と信号処理では,用語や数式,性能評価の考え方が大きく異なり,その概念を理解することに苦労しました.そこで,MIMOの信号処理を学ぶと同時に,アンテナのインピーダンス,Sパラメータ,相互結合,複素指向性などが,空間相関やチャネル容量に与える影響を研究してきました.本書には,アンテナと信号処理の両方を学びながら得てきた知見をまとめています.MIMOを学び始めた読者が,二つの分野のつながりを理解するための一助となれば幸いです.

村田 健太郎

村田 健太郎(ムラタ ケンタロウ)

学生時代から,MIMOをはじめとするマルチアンテナ技術の研究に取り組んできました.研究を始めた当初は,数式で表される信号処理と,実際のアンテナやマイクロ波回路の動作とをどのように結び付けて考えればよいのか,戸惑うことも少なくありませんでした.そこで,理論解析やプログラミングだけでなく,回路やアンテナの設計・試作,測定,実証実験にも取り組み,ソフトウェアとハードウェアの両面から理解を深めてきました.現在は,マルチアンテナと信号処理を基盤として,無線通信,無線電力伝送,無線センシングなどの研究を進めています.本書が,MIMOアンテナの数式や理論と,実際のアンテナ,回路,測定とのつながりを理解する一助となれば幸いです.

関連資料(一般)

  • 3.5節補足資料

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