通信システム工学

通信システム工学

無線従事者の資格試験を念頭に置き,その働きや原理について解説。また基礎となる伝送交換技術とシステムに関する内容も解説

ジャンル
発行年月日
2017/01/06
判型
A5
ページ数
204ページ
ISBN
978-4-339-00893-7
  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介
  • 広告掲載情報

本書は,いまや水や空気の存在のように感じられる通信システムについて,無線従事者の資格試験を念頭に置きながら,その働きや原理についてわかりやすく解説した。またその基礎となる伝送交換技術とシステムに関する内容も解説した。

1970年代に流行した特撮テレビ番組『ウルトラマン』シリーズに登場する警備隊員は,腕時計型電話機で仲間たちと連絡を取り合っていた。ビデオシーバーというその電話機は,当時の技術では到底実現できない夢のアイテムだった。当時は固定電話でさえ珍しく,電話のない家も多かった。ウルトラマンを映し出すテレビにはリモコンもない。テレビの前に行き,電源を入れ,チャネルを変え,音量を調整するのが当たり前だった。

あの頃から50年近く,通信技術は周辺の技術を巻き込みながら劇的に進歩し続け,今や情報通信革命ともいわれる急激な社会変化の一翼を担っている。もはやわれわれは通信システムの中で生きているといっても過言ではない。それを支え発展させる技術者や研究者は,これからも必要とされ続けることは明白である。通信機能はさまざまなものに備わり,システムは社会により深く関わっていくだろう。

本書は通信システムの働きや原理を理解するために書かれたものであり,基礎となる伝送交換技術とシステムに関する内容を含んでいる。無線従事者の資格試験を念頭に置いたため,無線系技術の比重が大きいと思われるかもしれない。システムに関する内容は全体の動作がわかるような説明を心掛けた。通信の基礎理論は,内容を正確に理解してもらうため大学2年程度の応用数学を前提にした数式を用いているが,数式が完全に理解できなくても概略がつかめるように図を多用した。

1章では,通信に対する関心を少しでも広げてもらうため,その前半で電気通信が社会で果たしてきた役割のごく一部を紹介している。この部分(1.1節)は読み物的になっており,読み飛ばしてもかまわない。2章から5章までは信号伝送の基礎理論と基本方式に関する内容である。これらは,信号の中継と交換に関する6,7章と合わせて,通信システムを構成する根幹の技術といえよう。9章では主に陸上移動通信における無線伝送路を取り上げ,主要な事項を説明している。8章では固定電話に代表される固定通信システムを,10章では携帯電話システムを取り上げ,ネットワーク技術に属する事項も含めて説明をしている。11章では衛星通信に必要とされる基本事項やいくつかのシステムを,12章では無線による測位システムやその原理を取り上げている。

本書を推敲するにあたり,日本大学工学部石川博康教授,東北学院大学工学部神永正博教授,東北工業大学工学部工藤栄亮教授に貴重なコメントを頂戴した。ここに感謝の意を表したい。

本書が,情報通信技術の若き担い手の一助になれば幸いである。

2016年11月 鈴木利則

1. 緒論
1.1 電気通信の黎明期
 1.1.1 電気通信以前
 1.1.2 有線による電気通信
 1.1.3 無線による電気通信
1.2 電気通信の進展
 1.2.1 有線と無線の住み分け
 1.2.2 情報形態と通信モデル
 1.2.3 伝送と交換
 1.2.4 通信対象の拡大
 1.2.5 通信の形態
1.3 システムの信頼性
 1.3.1 信頼度指標
 1.3.2 接続形態と全体の信頼度
章末問題

2. フーリエ変換とスペクトル
2.1 フーリエ変換とスペクトルの関係
2.2 信号の周期性
2.3 周期性信号のスペクトル─フーリエ級数展開─
2.4 非周期信号のスペクトル─フーリエ変換─
2.5 フーリエ変換の性質
 2.5.1 周波数シフト
 2.5.2 時間シフト
 2.5.3 時間微分と時間積分
 2.5.4 インパルス
 2.5.5 時間波形の畳込み
 2.5.6 デルタ関数を用いた周期性信号のフーリエ変換
 2.5.7 非周期信号の電力スペクトル密度
章末問題

3. 不規則信号と雑音
3.1 確率分布と統計量
3.2 相関関数
3.3 熱雑音の特性
 3.3.1 雑音の種類
 3.3.2 熱雑音
3.4 雑音指数
 3.4.1 縦続接続
 3.4.2 等価雑音温度
3.5 大きさの対数表現(デシベル)
 3.5.1 相対表現
 3.5.2 絶対表現
 3.5.3 レベルダイアグラム
章末問題

4. アナログ変復調
4.1 変復調の役割と種類
4.2 振幅変調
4.3 周波数変調(FM)
4.4 位相変調(PM)
4.5 AM検波
 4.5.1 包絡線検波
 4.5.2 二乗検波
 4.5.3 同期検波
4.6 FM検波
4.7 AM検波とFM検波の品質
 4.7.1 AM検波の品質
 4.7.2 FM検波の品質
 4.7.3 プリエンファシスとディエンファシス
章末問題

5. ディジタル変復調
5.1 アナログとディジタルの形式上の違い
5.2 アナログ-ディジタル変換
 5.2.1 標本化定理(サンプリング定理)
 5.2.2 量子化雑音
 5.2.3 標本化された信号からの復元
5.3 ベースバンド伝送
5.4 ディジタル変調方式
 5.4.1 ASK,FSK,PSK,APSK/QAM
 5.4.2 CPFSK,MSK
 5.4.3 信号点配置
 5.4.4 多値変調
 5.4.5 ディジタル変調の等価表現
 5.4.6 帯域制限フィルタと占有帯域幅
5.5 ディジタル変調波の検波
 5.5.1 同期検波
 5.5.2 ルートナイキストフィルタ
 5.5.3 差動符号化と遅延検波
5.6 誤り率特性
5.7 スペクトル拡散
 5.7.1 周波数ホッピング(FH)
 5.7.2 直接拡散(DS)
章末問題

6. 多重伝送とアクセス方式
6.1 全二重複信方式
6.2 多重化と多元接続
6.3 多重化方式
 6.3.1 周波数分割多重(FDM)
 6.3.2 時分割多重(TDM)
 6.3.3 符号分割多重(CDM)
 6.3.4 直交周波数分割多重(OFDM)
 6.3.5 高速伝送方式としてのOFDM
6.4 多元接続方式
 6.4.1 FDMA
 6.4.2 TDMA
 6.4.3 CDMA
 6.4.4 OFDMA
 6.4.5 CSMA
章末問題

7. 交換方式とトラヒック理論の基礎
7.1 交換方式
 7.1.1 回線交換方式
 7.1.2 パケット交換方式
7.2 ネットワーク構成とルーチング
7.3 回線交換の呼量と呼損率
7.4 パケット交換の待ち時間
章末問題

8. 固定電話網
8.1 固定通信サービスの変遷
 8.1.1 電話網の完成
 8.1.2 データ通信網の登場
 8.1.3 統合ディジタル網とATM
 8.1.4 インターネットの登場
8.2 固定電話網の構成
 8.2.1 電話局
 8.2.2 冗長構成
 8.2.3 ネットワークの物理構成
 8.2.4 加入者回線の物理構成
8.3 番号計画
8.4 共通線信号網
 8.4.1 共通線信号プロトコル
 8.4.2 発着信時の動作例
章末問題

9. 電波伝搬とダイバシチ技術
9.1 自由空間伝搬
9.2 陸上移動伝送路
 9.2.1 見通し(LOS)と見通し外(NLOS)
 9.2.2 NLOS環境における受信強度の変動
 9.2.3 距離減衰
 9.2.4 シャドイング減衰
 9.2.5 マルチパス伝送路と瞬時変動
 9.2.6 ドップラー広がり
 9.2.7 遅延プロファイルと遅延スプレッド
 9.2.8 マルチパス歪み
9.3 ダイバシチ技術
 9.3.1 空間ダイバシチ
 9.3.2 瞬時受信電力の改善
 9.3.3 パスダイバシチ(Rake受信)
 9.3.4 Rake受信とソフトハンドオフ
 9.3.5 OFDMによるマルチパス歪み対策
 9.3.6 OFDMによる周波数ダイバシチ
章末問題

10. 携帯電話システム(セルラシステム)
10.1 携帯電話システムの変遷
10.2 携帯電話網の基本構成
10.3 無線チャネルの基本構成
10.4 位置登録
10.5 発着信処理
10.6 ハンドオフ
 10.6.1 集中制御型と端末アシスト型
 10.6.2 ハードハンドオフとソフトハンドオフ
10.7 加入者認証と通信秘匿
10.8 パケット網構成
 10.8.1 端末発信の動作
 10.8.2 メール着信の動作
 10.8.3 ハンドオフ時の動作
10.9 セル設計の基本
 10.9.1 セル配置
 10.9.2 セルへの周波数割当て
 10.9.3 高度な周波数割当て
 10.9.4 セクタ化
章末問題

11. 衛星通信
11.1 衛星通信の特徴
11.2 通信衛星の軌道
11.3 衛星通信に用いる周波数帯(電波の窓)
11.4 衛星回線の設計(リンクバジェット)
11.5 通信衛星の構成
11.6 姿勢制御
11.7 衛星通信システムの例
 11.7.1 インテルサット衛星通信
 11.7.2 インマルサット衛星通信
 11.7.3 イリジウム衛星通信
 11.7.4 ワイドスター
 11.7.5 IPSTAR
章末問題

12. 測位・航法支援システム
12.1 天測航法から電波航法へ
12.2 双曲線航法
12.3 VOR,DME,TACAN
12.4 ILS
12.5 衛星航法
12.6 その他の測位システム
 12.6.1 GPSハイブリッド測位
 12.6.2 Wi-Fi測位システム
章末問題

参考文献
章末問題解答
索引

掲載日:2020/02/01

「電子情報通信学会誌」2020年2月号広告

掲載日:2019/12/01

「電子情報通信学会誌」2019年12月号広告