通信の信号処理 - 線形逆問題,圧縮センシング,確率推論,ウィルティンガー微分 -

次世代信号情報処理シリーズ 6

通信の信号処理 - 線形逆問題,圧縮センシング,確率推論,ウィルティンガー微分 -

現在の通信システムで用いられている信号処理技術を効率的かつ体系的に理解できる。

ジャンル
発行年月日
2023/11/02
判型
A5
ページ数
234ページ
ISBN
978-4-339-01406-8
通信の信号処理 - 線形逆問題,圧縮センシング,確率推論,ウィルティンガー微分 -
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【書籍の特徴】
本書は通信分野の非専門家や大学生,大学院生などの初学者を対象としたもので,その特徴は,従来の教科書にあるような要素技術ごとの解説ではなく,通信の典型的な問題に対する典型的な信号処理手法について解説することで,現在の通信システムで用いられている最先端の信号処理技術を理解するために必要な最低限の知識を,効率的かつ体系的に提供することを目的としていることです。

【本書の構成】
1章:「記号と準備」では,準備として本書で使用する記号を定義し,通信の信号処理で必要となる複素数の基礎事項と,ベクトルの大きさを表すノルムについて説明します。
2章:「確率変数と確率過程」では,確率変数や確率過程について復習します。通信の信号処理では,信号を確率過程としてモデル化することが多いので,確率過程やその相関行列の性質について理解しておくことが重要です。
3章:「ウィルティンガー微分」では,通信の信号処理を理解する上で必要不可欠なウィルティンガー微分について説明します。ウィルティンガー微分を利用するとコスト関数の勾配が非常に簡単に求まるのでぜひマスターしましょう。どうしても微積分が苦手な方は,この章の最後に「これだけ覚えておけばOK」という計算ルールをまとめていますので,そこだけ目を通してつぎの章に進んでいただいても結構です。
4章:「線形逆問題のための基本的な手法」では,通信の信号処理の典型的な問題として,線形観測モデルに対する逆問題,すなわち線形逆問題について考えます。線形観測モデルと線形逆問題を解くための基本的な手法を説明し,最後に通信応用の例にも触れます。
5章:「圧縮センシング」では,観測ベクトルyの次元が未知ベクトルxの次元よりも小さい劣決定線形観測モデルにおける信号推定法について考えます。スパースベクトルの再構成アルゴリズムや再構成の条件についても説明します。
6章:「部分空間法」では,最も基本的なアレー信号処理の一つである到来方向推定でよく利用される部分空間法について説明します。
7章:「状態推定」では,状態空間モデルを導入し,状態推定の基本的な考え方について説明した後,代表的な状態推定法である粒子フィルタとカルマンフィルタについて説明します。
8章:「確率推論」では,ベイズの定理に基づく確率推論の基礎事項について説明し,それを現実的な演算量で実現するためのアルゴリズムとしてさまざまな分野,場面で利用される確率伝播法について説明します。

【著者からのメッセージ】
読者の皆さんが独学できることを重視し,式変形などをできるだけ省略しないように説明しています。本書で学ばれる際には紙とペンを用意して,自分の手を動かして計算しながら読み進めてみてください。通信分野の研究を行うために必要な基礎体力が身につくことを請け合います。

現代の無線通信システムはますます大規模化・複雑化・高度化し,通信分野の初学者がその全容を理解しようとしたときにどこから手をつけてよいかすらわからない状況にあります。一方,現代の無線通信システムは,さまざまな信号処理技術がそのほぼすべての構成要素に埋め込まれることで成り立っています。ディジタルコヒーレント方式が採用された近年の光通信システムも同様です。このため,通信システムで利用されている基本的な信号処理手法を理解することが,通信システム全体を理解するための近道となると考えられます。しかし,通信技術者はシステムをレイヤ(層)ごとに切り分けて設計することでその複雑さに対処してきたという歴史的な経緯もあり,通信に関する多くの教科書では,通信路等化や通信路応答推定,ビームフォーミング,ダイバーシティ合成,マルチユーザ検出,MIMO(multiple-input multiple-output)信号検出,無線資源割り当て,I/Q(in-phase/quadrature-phase)不完全補償,波長分散補償,偏波モード分散補償,非線形ひずみ補償,誤り訂正符号の復号など,要素技術ごとに信号処理手法が説明されており,通信システムで利用されている信号処理手法に対する統一的な理解を得ることが難しいという問題があります。

本書は通信分野の非専門家や大学生,大学院生などの初学者を対象としたもので,その特徴は,通信の典型的な問題に対する典型的な信号処理手法について解説することで,現在の通信システムで用いられている最先端の信号処理技術を理解するために必要な最低限の知識を,効率的かつ体系的に提供することを目的としていることです。

第1章では,準備として本書で使用する記号の定義と基礎事項について説明します。多くの通信システムでは正弦波で表現される搬送波の二つの直交する成分(同相成分と直交成分と呼ばれ,それぞれ cos 成分と sin 成分に相当します)に情報を載せて送信しますが,オイラーの公式を利用して同相成分と直交成分をそれぞれ複素数の実部と虚部に対応させることにより,等価低域系(ベースバンド系)と呼ばれる複素数を利用した簡潔な入出力表現を得ることができます。通信の信号処理は,ほとんどの場合,ベースバンド系で考えるので,ここで複素数の基礎事項について復習します。また,信号処理ではさまざまな場面でベクトルの「大きさ(長さ)」を評価する必要がありますが,そのためにノルムと呼ばれる関数が利用されます。古典的には ℓ_2 ノルムやユークリッドノルムと呼ばれる,ベクトルの各成分の2乗和の平方根がよく利用されましたが,圧縮センシングなどの正則化を利用した最近の信号処理ではさまざまな種類のノルムが利用されるため,ここでノルムの基礎事項についてもおさらいします。

第2章では,確率変数や確率過程について復習します。特に通信の信号処理では,確率変数に時間インデックスを付けて並べたもの,すなわち確率過程として信号をモデル化することが多いので,確率過程やその相関行列の性質についてよく理解する必要があります。また,観測に基づいて何らかの推定を行うことは信号処理の最も基本的な問題の一つですが,そこでは,通常の確率変数の独立性だけでなく,ある確率変数に関する観測(実現値)が得られたという条件の下での独立性(条件付き独立性)が重要な役割を果たします。グラフィカルモデルは,多数の確率変数の中に存在する条件付き独立性を抽出し,それを利用した推論アルゴリズムを構成する際に強力なツールとなります。

第3章では,複素関数の微分について説明します。通信の信号処理では,複素数の信号に対して複素数の重み係数を用いてさまざまな処理を行います。複素数の重み係数を決める際には何らかの尺度でよいものを選択する必要がありますが,複素数は素朴に大小関係が決まらないため,複素数の重み係数を引数とし実数値の出力をもつ関数(コスト関数や目的関数)についての最適化問題を考えることになります。ところが,複素数の引数をもつ実数値関数は一般に正則(複素微分可能)ではなく,工学部の標準的なカリキュラムで学ぶ複素関数論の知識では最適なフィルタ係数を決定するのが難しいという問題があります。第3章で説明するウィルティンガー微分は,非正則な複素関数の勾配を効率的に計算することができる大変有用な手法です。このような数学的基礎に関する内容は既存の教科書では付録で説明されるのが普通ですが,ウィルティンガー微分は通信の信号処理を理解する上で必要不可欠であり,これについて説明した和書があまりないことから,第3章で説明することにしました。どうしても微積分が苦手な方は,この章の最後に「これだけ覚えておけばOK」という計算ルールをまとめていますので,そこだけ目を通してつぎの章に進んでいただいても結構です。

第4章では,通信の信号処理の典型的な問題設定として,線形観測モデルに対する逆問題,すなわち線形逆問題について考えます。具体的には,興味のある未知ベクトルxに対して既知の行列 A で線形観測を行ったときに,白色の加法性雑音 v を伴って観測されるベクトル y = Ax + v から未知ベクトル x を推定する問題です。これは素朴ですが,通信の多くの信号処理の問題を表現することが可能なモデルで,極論すると通信の技術者はこのモデルで表現される問題しか考えていないといってもよいほどです。実際,上述の通信路等化や通信路応答推定などのほとんどの通信の問題が線形観測モデルで記述されます。ZF(zero-forcing)推定や最小平均2乗誤差(minimum mean-square-error, MMSE)推定,減算型干渉除去,最大比合成,最大事後確率推定,最尤推定といった基本的な線形逆問題のための手法について説明し,最後に通信応用の例にも触れます。

第5章でも線形観測モデルに基づく信号推定法について考えます。ただし,第4章とは問題設定が異なり,観測ベクトル y の次元が未知ベクトル x の次元よりも小さいことを想定します。これは劣決定線形観測モデルと呼ばれ,未知ベクトルに関する何らかの先験的な知識がない場合には,観測ベクトル y から実際に観測された xを推定することが困難です。このような問題に対しては,実際に観測された y に近いものが得られるような x のうち,ノルムが小さいものを推定値として選ぶという方法,すなわち正則化が利用されます。x のノルムにはさまざまなものが考えられるため,それに応じてさまざまな正則化法が存在します。従来はxの大きさを ℓ_2 ノルムで測る正則化法,すなわち最小ノルム解が広く利用されてきましたが,必ずしも実際に観測された x に近い推定値が得られるという保証はありません。一方,近年では,未知ベクトル x がスパースであること(成分のほとんどが0であること)があらかじめわかっているときに ℓ_1 ノルムによる正則化を用いると,ある条件の下で劣決定の線形観測 y から実際に観測された真の x が完全再構成できることが明らかにされたため,ℓ_1 ノルムも正則化によく利用されます。ℓ_1 正則化やそれを基にした手法は圧縮センシングやスパースモデリングと呼ばれ,いまでは信号処理や機械学習に必要不可欠な手法になっています。スパースベクトルの再構成アルゴリズムや再構成の条件についても第5章で説明します。

第6章では,ある空間に配置された複数のセンサやアンテナで得られた信号に対する信号処理,すなわちアレー信号処理について説明します。第4章で説明した線形観測モデルに基づく手法は,アンテナの指向性を制御するビームフォーミングなど,アレー信号処理においても有効ですが,ここでは最も基本的なアレー信号処理の一つである到来方向推定でよく利用される部分空間法について説明します。部分空間法は,センサアレーで観測された信号の相関行列の,異なる固有値に対応する固有ベクトルが直交する性質に基づく信号処理手法で,これを利用したMUSIC(multiple signal classification)法は高分解能の到来方向推定が可能なことで知られています。また,部分空間法と電波干渉計の原理に基づいたESPRIT(estimation of signal parameters via rotational invariance techniques)法も到来方向推定によく利用されます。到来方向推定は古典的な信号処理技術ですが,観測信号に擬定常性という性質を仮定すると,相関行列をベクトル化することで得られた信号がセンサアレーでの観測信号と同様の構造をもつことを利用して,実際のセンサ素子数よりも多くの到来波の到来方向を推定可能であることが明らかになるなど,最近大きな進展がありました。これらの新しいアプローチについても第6章で説明します。

第7章では,状態空間モデルに基づく推定法について説明します。状態空間モデルは制御分野でよく利用されますが,通信分野の専門家にはあまり馴染みがないかもしれません。線形ガウス型の状態空間モデルにおける観測モデルは第4章で登場する線形観測モデルそのものですが,システムモデルは通信システムの議論で見かけることはあまりないので,通信分野の専門家にとってやや受け入れ難い印象があるようです。実は,状態空間モデルは,システムの状態を表す未知の確率変数と観測可能な確率変数の同時分布の分解を考え,状態変数と観測のそれぞれについてマルコフ性を仮定することで自然に導出されるモデルです。第7章では,状態空間モデルの導出から始めて,予測分布,フィルタ分布,平滑化分布の逐次的な計算法について説明します。粒子フィルタやカルマンフィルタによる具体的な状態推定法についても説明します。

第8章では,ベイズの定理に基づく確率推論問題について考えます。ベイズの定理自体は単なる条件付き分布の変換の式ですが,式中の確率変数に対して「興味のある未知確率変数」と「観測可能な確率変数」という役割を与えると,観測結果に基づいて未知変数を推論するための手順を与えてくれるきわめて有用な式となります。その際,観測可能な確率変数の実現値が与えられた下での,興味のある未知確率変数のそれぞれの条件付き確率分布(周辺事後分布)を求めることが主要な課題となります。実際,通信の信号検出の問題ではビット誤り率を最小にすることが求められますが,そのような信号検出は,周辺事後分布の最大値に対応する確率変数の値を推定値とする最大周辺事後確率推定によって実現されます。周辺事後分布の計算は素朴に行うと指数オーダーの計算量になるため,多変量の確率変数を扱う際には計算量的には破綻してしまいます。そこで,観測変数と未知変数の同時分布の因数分解を利用して効率的に周辺事後分布を計算するためのアルゴリズムが,第8章で説明する確率伝播法(belief propagation, BP)です。確率伝播法は第2章で説明するグラフィカルモデル上でメッセージを伝播する形で実行されるアルゴリズムで,シャノン限界に迫る符号として知られているターボ符号や低密度パリティ検査(low density parity check, LDPC)符号の復号,大規模MIMO信号検出や圧縮センシングにおけるスパース再構成アルゴリズムなどに応用されています。第7章の状態推定で登場する平滑化分布は,実は周辺事後分布そのもので,カルマンフィルタによる平滑化分布の計算は確率伝播法の特別な場合と考えられます。また,隠れマルコフモデルに対する前向き後ろ向き(Bahl-Cocke-Jelinek-Raviv, BCJR)アルゴリズムや,さらには高速フーリエ変換までもが確率伝播法の原理によって導出されます。第8章では,ファクターグラフ上のsum-productアルゴリズムとベイジアンネットワーク上でのPearlのBPアルゴリズムについて説明し,確率伝播法の基本的な考え方とその原理を解説します。

本書は読者の皆さんが独学できることを重視し,式変形などをできるだけ省略しないように説明しています。このため,同分野の他書に比べて容易に読み進められると思いますが,式変形がフォローできることと,その手法を理解していることには大きな隔たりがあります。筆者の恩師の原晋介先生にいただいた言葉の一つに「簡単に「わかった」と思ってはいけない」があります。本当は十分に理解できていないのに「わかった」と思い込んでしまうと,それ以降そのことについて学ぶ機会を失ってしまう危険性を指摘された言葉だと理解しています。本書で学ばれる際には白紙とペンを用意して,節ごとに学ばれた手法を何も見ないでそこに説明できるか確認してみてください。もし手が止まってしまったら,それはその節に書かれていることが十分に理解できていないということです。このような姿勢で本書を通読いただけたら,通信分野の研究を行うために必要な基礎体力が身につくことを請け合います。

本書の執筆の機会を与えていただき,初稿について多くの有益なコメントをいただきました「次世代信号情報処理シリーズ」監修の東京農工大学 田中聡久 先生に厚く御礼申し上げます。また,名古屋工業大学 和田山 正 先生,大阪公立大学 大野修一 先生,電気通信大学 石橋功至 先生,大阪大学 早川 諒 先生をはじめ,多くの方から有益なコメントをいただきました。どうもありがとうございました。そして,本書の完成まで粘り強くお付き合いくださいましたコロナ社に心より感謝いたします。

2023年9月
林和則

1.記号と準備
1.1 記号の定義
1.2 複素数
1.3 ノルム
1.4 むすび

2.確率変数と確率過程
2.1 確率の基本法則
2.2 期待値
2.3 確率過程
2.4 相関行列の性質
2.5 条件付き独立
2.6 グラフィカルモデル
 2.6.1 ベイジアンネットワーク
 2.6.2 ファクターグラフ
2.7 むすび

3.ウィルティンガー微分
3.1 実関数の微分
 3.1.1 実1変数関数の微分
 3.1.2 実関数の偏微分
 3.1.3 実関数の全微分
 3.1.4 全微分による勾配の計算
3.2 複素関数の微分
 3.2.1 正則関数
 3.2.2 正則でない複素関数の例
 3.2.3 ウィルティンガー微分(スカラー引数)
 3.2.4 ウィルティンガー微分(ベクトル引数)
 3.2.5 複素勾配
 3.2.6 ウィルティンガー微分の具体例
3.3 むすび

4.線形逆問題のための基本的な手法
4.1 線形観測モデル
4.2 ZF推定と最小2乗推定
 4.2.1 ZF推定
 4.2.2 最小2乗推定
 4.2.3 雑音強調
4.3 MMSE推定
 4.3.1 一般のMMSE推定
 4.3.2 線形MMSE推定
 4.3.3 線形MMSE推定のSINR
4.4 減算型干渉除去
 4.4.1 逐次干渉除去
 4.4.2 並列干渉除去
4.5 信号合成
 4.5.1 選択合成
 4.5.2 等利得合成
 4.5.3 最大比合成
4.6 最大事後確率推定と最尤推定
4.7 通信応用の例
 4.7.1 通信路等化
 4.7.2 通信路推定
 4.7.3 MIMO信号検出
4.8 むすび

5.圧縮センシング
5.1 最小ノルム解
5.2 スパース信号
5.3 圧縮センシングの考え方
5.4 再構成のアルゴリズム
5.5 再構成の条件
5.6 むすび

6.部分空間法
6.1 アレー信号処理の基礎
6.2 信号部分空間と雑音部分空間
6.3 主成分分析とマイナー成分分析
6.4 MUSIC法
6.5 空間平滑化
6.6 ESPRIT法
6.7 KR積拡張アレー処理による到来方向推定
 6.7.1 KR積とクロネッカー積,ベクトル化
 6.7.2 KR積拡張アレー処理
 6.7.3 KR-MUSIC法
6.8 むすび

7.状態推定
7.1 状態空間モデル
7.2 予測分布,フィルタ分布,平滑化分布
 7.2.1 予測分布
 7.2.2 フィルタ分布
 7.2.3 平滑化分布
7.3 粒子フィルタ
 7.3.1 予測分布の計算
 7.3.2 フィルタ分布の計算
 7.3.3 SIR(sampling/importance resampling)
7.4 カルマンフィルタ
7.5 むすび

8.確率推論
8.1 確率推論問題
8.2 確率伝播法
 8.2.1 確率伝播法の原理
 8.2.2 sum-productアルゴリズム
 8.2.3 PearlのBPアルゴリズム
8.3 確率伝播法の応用
 8.3.1 低密度パリティ検査(LDPC)符号
 8.3.2 ターボ符号
 8.3.3 高速フーリエ変換(FFT)
8.4 むすび

付録:よく使う行列に関する命題と性質
A.1 逆行列補題
A.2 クロネッカー積
A.3 ゲルシュゴリンの定理
引用・参考文献
索引

読者モニターレビュー【 つじもん 様 (業界・専門分野:無線信号処理)】

本書「通信の信号処理」は、現在の通信システムで用いられている最先端の信号処理技術を体系的に学べる書籍である。私の専門分野である無線通信システムの研究開発分野では、近年、圧縮センシングや確率伝搬法が当然のことのように使われている。最先端の信号処理技術は、大学院時代に輪講等で学んだ基礎知識だけでは太刀打ちできず、論文等から断片的な知識しか得られないことも多い。そのため、個人的には本書のように通信の信号処理分野において幅広く俯瞰して体系的に学べる書籍を待望していた。

本書では、1章から3章で通信の信号処理の理解に必要な確率の基本と複素関数の微分について説明されている。その後、4章の線形逆問題の基本的な手法では、ZF推定やMMSE推定、干渉除去等の無線信号処理方法が丁寧に式展開されて説明される。そして、5章の圧縮センシング、6章の部分空間法、7章の状態推定、8章の確率推論と発展的な内容まで言及されている。

本書では、通信の信号処理に関する普遍的な知識を学べるように構成されている。抽象的な説明が多いため、初学者が自学自習するには向かないかもしれない。その場合、他の書籍をあたった上で再度本書に戻ってくることがおすすめされるであろう。他の書籍では異なる文脈で説明された手法が本書ではすっきりと説明されているため、頭の中で一つにつながるような印象を受けるに違いない。私はまだ本書にひととおり目を通しただけの段階であり、自分の業務に応用できるほど深くは理解できていない。本書のまえがきにあるとおり「白紙とペンを用意して」自分の手で式を一つ一つ展開しながら、身に着けることで業務に活かしていきたいと考える。

田中 聡久(タナカ トシヒサ)

林 和則(ハヤシ カズノリ)

掲載日:2024/03/12

2024年 電子情報通信学会 総合大会プログラム

掲載日:2024/02/05

電子情報通信学会誌2024年2月号

掲載日:2023/12/29

電子情報通信学会誌2024年1月号

掲載日:2023/11/02

電子情報通信学会誌2023年11月号

掲載日:2023/10/16

情報処理学会誌2023年11月号

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