設計論 - 製品設計からシステムズイノベーションへ -
【スタートラインの一冊】あらゆる製品・サービスの設計やデザインに携わるすべての方へ~
- 発行年月日
- 2023/07/07
- 判型
- A5
- ページ数
- 494ページ
- ISBN
- 978-4-339-04684-7
- 公益社団法人日本設計工学会「2023年度武藤栄次賞Valuable Publishing賞」受賞
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- レビュー
- 広告掲載情報
斬新な製品やサービスをつくり出していく上で,新たな技術はその直接的なトリガーとして不可欠であるが,そのようなトリガーだけではイノベーションは生まれない。さまざまな技術要素やシステムを全体像に統合していく設計の役割がますます重要になってきている。本書は,その先の将来を展望しつつ,関連分野の技術者や研究者,学生のみならず,設計に関心を持つさまざまな人々に向けた,システムズイノベーションの時代の羅針盤を意図して,斬新な製品やサービスのための設計の考え方や技法,それらを支えていく学術を系統立てて包括的に論じている。
元来,設計とは,「計を設ける」の意であり,その場合の「計」は「はかりごと」であって,実現が難しいことの実現に向けてその方策や方法を考案することを意味する。社会や生活がさまざまな機械によって支えられるようになっていった近代以降,機械をつくり出すための計画を描き出すことが,狭義ながらも,「機械設計」と称されるようになり,社会や生活の成熟,科学技術の進展や細分化などに呼応しながら,機械が大規模化し複雑化していく中で,設計の射程は広がっていき,機械という範疇を超える普遍的な「工学設計」へと,さらに,社会や生活における価値をも考える「製品設計」へと進展し,加えて,サービスや経験にも関わるようになってきた。また,昨今では,イノベーションの要請のもと,各種のシステムを組み合わせ折り重ねて構成する超システム(システムズ)の総合的な設計も重要になってきている。本書は,一連の背景も踏まえつつ,以下のように構成している。
第1章では,設計やそれを支える設計工学の意味や意義を歴史的な経緯も含め概説する。
第2章と第3章では,設計を普遍的に考えていくためにシステムという考え方を導入し,大規模で複雑な対象をシステムとして理解したり操作したりしていくための基本を導入する。また,第4章では,設計が情報処理として進められることを受けて,モデルと計算についての要点を整理する。
第5章から第9章では,設計の優劣を評価する視点として,価値とその広がり,信頼性と安全性,生産の工程,ライフサイクル,経営の課題について考える。
第10章から第14章では,設計問題の形式や最適性に関する性質を整理した上で,問題解決の進め方と設計における要点,設計活動の管理について論じていく。また,設計のための技法を計算機援用設計技術に重点を置きながら横断的に取り上げる。
第15章から第17章では,イノベーションを切り口に据えて,大規模で複雑なシステムを設計していく際の論点,創造的な設計のあり様や進め方についての論点を展開した後に,社会と技術の関係とそのもとでの設計の役割についての展望を論じる。
設計は古くて新しい課題である。だれもが行えてだれもが行い難い課題である。何らかの人工的なものをつくり出すためにそのイメージを想定することは古くからだれもが日常的に行ってきたことである。一方,工業的なプロセスを経てつくり出される人工物,すなわち,製品は,近年,ますます複雑になってきていたり,それに求められる内容は社会や生活の成熟を受けて多様で移ろいやすくなってきていたりする。そのため,優れた製品を迅速に世に送り出すためには,また,そのような製品をもととして必要なサービスや新たな経験を提供していくためには,多種多様な方面の知識を縦横無尽に活用して,しかるべき組織的な活動を的確に進めることが求められる。加えて,イノベーションを創出することへの要請が高まるにつれて,斬新な製品やサービスへの期待感も高まっている。それらの背後にあって,人工物がもたらす負の側面もさまざまな方面で顕在化している。一連の動向のもと,潜在的には,設計の中でも上流段階での企画や概念設計などの重要性が増しているし,下流段階での実体設計や詳細設計についても従来以上に合理的かつ統合的に進めていくことが求められるようになっている。あわせて,ビジネスのしくみや組織のマネジメントなどとの関係も無視できなくなっている。
本書は,上記のような状況のもとにある設計の取組みを合理的に進めてイノベーティブな製品・サービス・経験を世に送り出すための設計の考え方と設計工学に向けた羅針盤を意図している。伝統的な学術の体系のもと,例えば,工学にあっては,さまざまな専門分野はそれぞれの領域ごとに当該の産業分野における新たな製品を生み出すための知識や技術の体系を担っていることに対して,設計工学は,端的には,それぞれの領域固有の内容を捨て去った際に普遍的に残る問題解決や課題解決に関わる横断的な専門領域である。各分野の専門書では当該の対象における学理がその基盤となる。工学であれば,物理的あるいは数学的な内容が基盤となるが,設計工学では,その横断性がゆえに,同様の基礎だけでは足りず,むしろ,横断性の広がり方についての理解,問題解決や課題解決についての考え方などが基盤となる。また,設計の対象が製品に留まらずサービスや経験にまで広がってくれば,前提にすべきことは従来からの工学の範疇を超えてくる。製品やその設計プロセスの全貌を俯瞰できること,目の前のことを全貌のもとに位置付けて処理できること,少なくともそれらのことが必要であることを体系的に理解できること,それらがイノベーションの時代における設計の基礎といえる。そのような理解は分野を超えて設計を考えていく上での礎ともなる。なお,設計にかかる専門領域の学術上の呼称としては設計学」や「デザイン学」などが用いられる場合もあるが,本書では,具体性を伴いつつ汎用的な議論を展開したいという意図のもと,また,技術を司る工学にあって設計こそがその根底に横たわっているとの考え方から,基盤となる学術の呼称としては「設計工学」を用いる。
上記のもと,本書は,まず,設計が関わる事柄の全体像を俯瞰するための礎となるシステムの考え方から始める。そのもとで,設計において考えるべき内容が広がっていくいくつかの筋道を示す。その後に,そのような広がりにより混沌とする問題や課題の一般的なあり様やそれについての対処の考え方や方法論の要点を示す。加えて,イノベーションの時代の発展的な課題に向けた展望を示す。本書の具体的な構成は以下のようになっている。
第1章では,導入としてそもそもの設計や設計工学の意味について概説する。
第2章と第3章では,システムという考え方とその設計における意義,複雑な対象をシステムとしてとらえてその構造により理解したり操作したりしていくための基本を導入する。また,第4章では,設計が情報処理として進められることを受けて,モデルと計算についての要点を整理しておく。
第5章から第9章では,設計の対象である製品をシステムとしてとらえた上で,その優劣を評価する視点の広がりについて考える。具体的には,普遍的で横断的なシステムとしての評価軸として,価値とその広がり,信頼性と安全性,生産の工程,ライフサイクル,経営などについての評価軸を取り上げる。
第10章から第14章では,第9章までの内容などを前提としつつ,まず,対象は異なっていても共通的に現れるシステムの設計問題の形式や最適性に関する性質を整理した上で,問題解決の進め方と設計における要点を論じていく。また,設計活動の管理についても論じる。それらのもと,設計のための各種の技法を計算機援用設計技術に重点を置きながら横断的に取り上げる。
第15章から第17章では,一連の内容を踏まえつつ,イノベーションを切り口に据えて,大規模で複雑なシステムを設計していく際の論点,創造的な設計のあり様や進め方についての論点を展開した後に,社会と技術の関係とそのもとでの設計の役割についての展望を論じて本書を締めくくる。
本書は,基本的には,設計あるいは設計工学を体系づけるという意味合いにおいて学術書を意図しているが,教科書や参考書としての活用も意識した構成としている。後者の意味合いでの読者としては,まずは,工学の中でも機械工学を学ぶ学部高学年あるいは大学院の学生を想定しているが,工学の各分野のみならず,経営やインダストリアルデザインなどをはじめとして,設計に関心のある他分野の学生にもなじむはずである。また,設計実務や企画業務などに関わる実務家,設計業務を統轄している管理者,設計を通じてイノベーションの創出を目指したい経営者などが,改めて日頃の業務を振り返り,その背景に潜んでいる広い意味での設計について考えを新たにするための独学書となるようにも構成している。なお,第1章から第14章までを読めば,設計にかかる一定のことは理解できるようになるはずである。ただし,第4章,第11章,第14章は,情報処理に関する内容に踏み込むので,除外することも可能である。
一方,イノベーションや設計の将来像について改めて考えてみたいということであれば,第1章から第3章までを読んで前提となる考え方を確認した上で,第15章から第17章を読んでみることを勧める。この第15章から第17章については,リーダーを目指していく若い人にこそ読んでみてほしい。
本書では,設計が関連する各方面での最新動向のみならず,過去から現在に至るまでの歴史的な経緯や背景なども踏まえた上で,設計工学関連での学術や関連分野のエッセンスをできる限り広く盛り込みつつ,とはいえ,独特な偏りや幾多の漏れも残ることを覚悟しつつ,いろいろな糸を紡いで,それらを一本の綱に撚り上げることを試みている。本書を貫いている抽象的な意味合いでのシステムの広がりに対して統合を目指していく設計の考え方は,今後も拡大していくであろう設計の営みに対峙していくための基盤として有用であることを期待している。
2023年5月
藤田喜久雄
1.設計論の背景
1.1 設計とは,優れた設計とは
コーヒーブレイク:"ものづくり"という独特な言葉
1.2 道具の発明から産業の形成へ
1.3 市民社会の形成と設計ニーズの多様化
1.4 製品の複雑化の進展
1.5 生産性や豊かさの向上の背後で進んだこと
1.6 工学設計から製品設計へ,さらにその先へ
1.6.1 設計の普遍性
1.6.2 設計の再認識
1.6.3 設計の再定義
1.7 設計工学の学び方
コーヒーブレイク:2000年前後における日本での工学教育の動向
1.8 第1章のまとめ
2.設計の複雑化とシステムという考え方
2.1 価値の生産性と製造業におけるモード
2.2 さまざまな技術を取りまとめる設計の横断性と普遍性
2.3 システムという抽象
2.4 システム工学の由来
コーヒーブレイク:A Philosophy of Technology
2.5 システムの形式
2.6 システムの具体例
2.7 人工物のシステムとしてのさらなる複雑化
2.7.1 超システムの課題
2.7.2 超スマート社会への展望
2.7.3 エネルギーシステムの課題
2.8 システムの複雑さへの対応指針
2.8.1 複雑さについての寓話
2.8.2 準分解可能性・限定合理性・満足化
コーヒーブレイク:意思決定における合理性
2.8.3 設計における準分解可能性
2.9 システムの制御方式とその分類
2.10 システムの総合性
2.10.1 システムの目的
2.10.2 システムの設計や計画
2.10.3 設計工学の課題
2.11 第2章のまとめ
3.システムの構造と設計問題の形式
3.1 システムの構造に対する視点と相互の関係
3.2 システム構造の物理的意味と機能構造
3.2.1 物理的意味の把握
3.2.2 システムにおける機能構造
3.3 機能構造から実体構造への展開
3.3.1 機能構造と実体構造
3.3.2 展開における支配因子と法則性
3.3.3 展開における階層性
3.4 レイアウトの持つ意味
3.5 システム論の展開
3.6 概念と価値の体系
3.7 設計問題の形式
3.7.1 設計と設計プロセスの目的
3.7.2 設計問題の数理的な形式化
3.7.3 定式化の基本形
3.8 設計問題における再帰性
3.8.1 部分問題の切り出し
3.8.2 複雑さの克服と知識の役割
3.8.3 物理法則と設計知識
3.8.4 設計問題の自己産出
3.9 第3章のまとめ
4.設計における情報の表現と処理
4.1 情報処理における符号の役割
4.2 形の表現と設計における役割
4.3 計算とは何か
4.4 プログラミング言語からみた情報処理の進展
4.5 対象表現から挙動の予測へ
4.5.1 システム構造の表現と操作
4.5.2 形状の表現
4.5.3 計算機シミュレーションへの展開
4.5.4 大規模で複雑なシステムの挙動予測
4.6 モデルの役割と種類
4.6.1 モデルとは
4.6.2 設計におけるモデルの活用
4.6.3 モデルにおける理想化
4.6.4 モデルの形式
4.7 モデルの構成と較正
4.8 思考のモデルと推論
4.9 第4章のまとめ
5.ユーザーの視点から広がるシステムの価値
5.1 製品の成否に左右する視線
5.2 製品としての価値
5.2.1 人間の欲求の5段階発達説
5.2.2 欲求の充足から欲望の循環へ
5.2.3 製品価値の広がりとその展開
5.3 使用価値に関わる機能の実装
5.4 感性価値とその設計
5.4.1 インダストリアルデザインの世界
5.4.2 インターフェースに潜む意味
5.4.3 美しさの秘密
5.5 付加価値がつくり出される様の広がり
5.5.1 "もの"から"こと"への展開
5.5.2 本当に新しいこと
5.6 あらゆる人々を包摂する設計
コーヒーブレイク:ユニバーサルデザインの7原則
5.7 経済発展と適正技術
5.8 第5章のまとめ
6.信頼性の数理とシステムの安全性
6.1 システムの信頼性と安全性の課題
6.2 信頼性の基礎理論と指標
6.3 故障発生のパターンと故障データの解析
6.4 システムの信頼性とその基本形
6.4.1 システムにおける冗長性
6.4.2 直列システムの信頼性
6.4.3 並列冗長システムの信頼性
6.4.4 待機冗長システムの信頼性
コーヒーブレイク:システムの信頼性の計算例
6.5 構造的な信頼性の解析と設計
6.5.1 システムの構造的な信頼性
6.5.2 故障モード影響評価
6.5.3 故障の木解析
6.6 リスクの見積りと評価
6.7 それでも事故は起こる
6.8 信頼性や安全性に潜む根源的な限界
6.9 第6章のまとめ
7.生産の工程から考えるシステムの経済性
7.1 システムの経済性
7.2 生産コストの内訳
7.3 部品についてのコスト
7.3.1 部品についてのコストの内訳
7.3.2 部品についての材料コスト
7.3.3 部品加工の工程とコスト構造
7.3.4 加工法と部品コストにおける損益分岐
7.4 組立てについてのプロセスコスト
7.4.1 組立てコストの内訳
7.4.2 個別組立て作業の効率化
7.4.3 組立ての工程とその形式
7.4.4 組立て工程の設計
7.5 生産における習熟効果とそのモデル
7.6 間接費の取扱い
7.7 サプライチェーンとその設計
7.8 コストの設計
7.8.1 コストと価値のバランス
7.8.2 コストに関わる要因の広がりと循環
7.9 付加製造技術が設計にもたらす意味
7.10 第7章のまとめ
8.ライフサイクルから考えるシステムの価値
8.1 製品の寿命と修理や廃棄の意味
8.2 製品のライフサイクル
8.3 保全を考える設計
8.3.1 アベイラビリティという考え方
8.3.2 保全のための方策とその有効度
8.3.3 保守のための分解・組立てに向けた指針
8.3.4 予防保全の展開
8.4 リサイクルを考える設計
8.4.1 環境への負荷の低減に向けたリサイクルの課題
8.4.2 リサイクルのための設計指針と損益分布性
8.4.3 リサイクルの過程と設計の展開
8.5 循環型生産のための設計
8.6 ライフサイクルアセスメント
8.7 ライフサイクル設計の社会的背景と政策などによる誘導
8.7.1 ライフサイクル設計の社会的背景
8.7.2 社会的費用という考え方
8.7.3 ライフサイクル設計への誘導
8.8 持続可能性と建築や都市計画での展開
8.9 人工物の循環と自然界における循環の調和
8.10 第8章のまとめ
9.システムとしての経済性と経営の課題
9.1 製品の設計開発の全容と収支
9.2 経済性評価の基本
9.2.1 資金の時間換算とその公式
9.2.2 時間の影響を考える経済性の測定と評価
9.3 製品の個別化や多様化への要請とそれらへの対応
9.4 製品アーキテクチャとその様式
9.5 モジュール構造がもたらす効果や影響
9.5.1 多品種生産における柔軟性
9.5.2 製造業のあり様への効果や影響
9.6 より長期的な意味での経済性
9.6.1 評価軸の変化
9.6.2 収益構造の変化
9.7 企業間の競争と市場の支配
9.8 グローバリゼーションのもとでの設計
コーヒーブレイク:グローバリゼーションのもとでの新たな動き
9.9 経営における意思決定の課題
9.10 第9章のまとめ
10.設計問題における類型
10.1 類型とその活用
10.2 設計問題の類型
10.2.1 選択設計
10.2.2 形態設計
10.2.3 パラメトリック設計
10.2.4 再設計
10.2.5 新規設計
10.3 設計解の最適性における類型
10.4 複数の評価尺度の評価と競合
10.4.1 複数の評価尺度の取扱い
10.4.2 トレードオフの関係
10.5 問題の在処についての類型
10.6 設計解のスケーラブルな類型性とその活用
10.7 システムの大型化における限界とその類型
10.8 設計解の質的な類型性とその活用
10.8.1 類概念に基づく設計過程の形式化
10.8.2 有効なパターンの形式化と活用
10.8.3 概念空間における空孔からの発想
10.9 システム構造における階層性という類型
10.10 第10章のまとめ
11.問題解決とその技法
11.1 問題を解くということ
11.1.1 問題を解くことの広がり
11.1.2 生成検査による求解
11.2 数理計画法とその活用の基本
11.2.1 数理計画問題の種別
11.2.2 線形計画問題のための手法
11.2.3 非線形計画問題のための手法
11.2.4 創発的な手法
11.3 状態空間探索とその活用の基本
11.4 計算機による知識処理とその活用の基本
11.4.1 知識情報処理とその活用
11.4.2 オントロジーに基づいた知識処理
11.4.3 知識の曖昧さと文脈依存性への対応
11.5 生成モデルと問題解決
11.6 問題解決における問題の再構成
11.7 情報処理におけるフレーム問題
11.8 自然界のしくみから眺める問題解決の深層
11.9 第11章のまとめ
12.設計という問題解決とそのプロセス
12.1 日常にみる問題解決の深層
12.2 問題解決における形式化の効用と限界
12.2.1 問題の抽象化と形式化の意義
12.2.2 閉じた問題と開いた問題
12.2.3 設計における課題設定の意義
12.3 フレーム問題から考える設計や計画の進め方
12.3.1 システムの複雑さとフレーム問題
12.3.2 フレーム問題の克服
12.4 設計プロセスの編成
12.4.1 問題解決と設計プロセス
12.4.2 デザインスパイラル
12.4.3 設計プロセスの多段階性
12.5 設計プロセスの構成
12.5.1 設計プロセスの流れ
12.5.2 部門間の連携
12.6 システムの大規模化と設計プロセス
12.7 第12章のまとめ
13.設計プロセスの管理
13.1 設計プロセスの重要性
13.2 コンカレントからバーチャルへ
13.3 上流設計の重要性と方法論
13.4 情報システムの連係による効率化
13.4.1 デジタルエンジニアリングの展開
13.4.2 図面レス化と試作レス化の自動車産業での進展
13.4.3 国際共同設計の航空機産業での先駆例
13.4.4 製品設計開発業務の複雑化への対応
13.5 モデルベース開発による統合的な設計環境
13.6 設計プロセスの設計と合理化における課題
13.6.1 分散化に向けた設計組織の編成
13.6.2 並行化に向けた設計プロジェクトの計画
13.6.3 協調化に向けたコンピューター援用技術の展望
13.7 設計におけるモデルの標準化と相互運用
13.8 第13章のまとめ
14.設計のための技法とその体系
14.1 設計の方法
14.2 閉じた問題に対する計算に基づく設計技法
14.3 最適設計のための適切なモデルの導入
14.4 複雑なシステムの最適設計
14.4.1 システムの複雑化がもたらす課題
14.4.2 代替モデルによるアプローチ
14.4.3 設計変数の支配関係に基づくハイブリッド化法
14.4.4 動作状況に依存する最適設計
14.4.5 システムの分解と統合によるアプローチ
14.4.6 生成モデルによるアプローチ
14.5 代替案の導出とその取扱い
14.6 モデルの不確実性のもとでの最適設計
14.7 開いた問題への対応とその考え方
14.7.1 設計知識の取扱いと発想支援
14.7.2 シナリオとの連係による設計の展開
14.7.3 設計プロセスと設計根拠のマネジメント
14.7.4 設計プロセスへの統合
14.8 超システムの設計に向けた対応
14.8.1 モデルの重層化とそれらの連係による対応
14.8.2 部分問題のブラックボックス化による対応
14.9 計算機援用設計技術の体系
コーヒーブレイク:学術講演会などにみる設計工学の動向
14.10 第14章のまとめ
15.システムの規模と構造の転換
15.1 システムの大型化における限界の克服
15.2 機能構造の転換と技術革新
15.2.1 ボイラーの発達法則にみる機能の分化
15.2.2 蒸気機関の効率の向上にみる構造の分化
15.3 機能構造についての法則性
15.3.1 機能分化における法則性と好適方式
15.3.2 コストからみる機能分化の法則性
15.3.3 機能分化を規定する規模の意味
15.3.4 好適方式を介在するハイブリッド方式
15.4 イノベーションの時代へ
15.5 持続的イノベーションと破壊的イノベーション
15.6 製品の複雑化とその進み方
15.6.1 製品の複雑化に潜む重層性
15.6.2 垂直統合から垂直非統合へ
15.6.3 垂直非統合におけるコスト構造
コーヒーブレイク:フランチャイズとそのしくみ
15.6.4 統合の進展とモジュール化の相互連鎖
15.7 技術ロードマップと先導設計
15.8 プラットフォームという悪魔
15.9 第15章のまとめ
16.創造的な設計とその進め方
16.1 社会課題から眺める設計の全容
16.2 問題設定に重きを置く設計への展開
16.2.1 設計と技術の関係
16.2.2 つくり込みから組合せへ
16.2.3 組合せを描き出す設計
16.3 プロジェクト化する設計
16.4 リフレーミングを行う設計
16.5 創造的活動としての設計
16.5.1 創造性を引き出すための基本
16.5.2 暗黙的な知識と明示的な知識
16.5.3 知識の忘却と学習
16.5.4 リーダーシップの役割
16.6 創造的な設計の進め方
16.6.1 デザイン思考
16.6.2 潜在的なニーズの掘り起こし
16.6.3 ストーリーとその想定
16.6.4 プロトタイピングとその活用
16.6.5 発散と収束の繰り返し
16.7 再設計としての設計
16.8 設計プロジェクトの総合性
16.9 第16章のまとめ
17.社会と技術を統合する設計
17.1 改めて,イノベーションとは
17.2 イノベーションの時代の社会と科学技術
17.2.1 社会と知の関係性の変遷
17.2.2 モード論と知識基盤社会
17.2.3 学際研究の展開と社会との関係
17.2.4 イノベーションのあり様の変遷
17.3 関係性の広がりと人工物の設計
17.3.1 設計における現状と関係性の広がり
17.3.2 関係性から考える設計の再認識
17.4 断絶の時代と新たな統合へ
17.5 設計の全容と設計工学の課題
17.6 改めて,設計とは何か
17.7 新時代の人材像と設計の視点
コーヒーブレイク:大学システムの世代論
17.8 システムズイノベーションは設計できるか
17.9 第17章のまとめ
コーヒーブレイク:設計のあり様と国民性
あとがき
引用・参考文献
索引
読者モニターレビュー【 開原 将貴 様 (ご専門:システムエンジニア )】
本書では、誰にとっても身近な設計という営みについて、様々な学術領域を横断して論じられています。私自身はソフトウェア設計に関して示唆を得られないかと期待し、拝読いたしました。設計に現れる難しさやそれらへの取り組み方を体系的に学び、様々な応用が可能な知識として蓄えることができたと感じています。各章単体でも読みやすい構成になっているので、設計に関する問題に直面した際には読み直したいと思います。設計やデザインに関わるどなたにでもお勧めできる一冊です。
【書評】京都大学大学院 工学研究科 機械理工学専攻 西脇 眞二 教授
本書「設計論」は、学術的な観点からの設計工学の体系に加え、様々な産業における設計の考え方・体系を包括的かつ俯瞰的に述べており、これから設計工学の歴史的背景、現代の動向および課題を体系的に学ぼうとする学部学生や、企業において設計・開発等の実務を開始する際に現状の動向・体系を把握したい技術者には是非ともご一読いただきたい設計の教科書である。また本書は、従来までの設計に関する数々の書籍とは異なり、設計論の学術体系を述べるに留まらず、設計に関する支援技術、周辺知識についても丁寧に説明されており、生産システム、社会システム、経営、経済性などの様々な観点から設計を一貫して学ぶことができる。さらに、設計行為の長期的なスパンを考え、ライフサイクルの視点のもとにとらえている設計システムの技法は、将来の持続可能な社会を構築するための思考に大いに役立つものと考える。
以上のように、本書「設計論」は、設計をゼロから包括的に学びたい初学者から、あらためて設計の体系を学び直してみたい熟練の技術者まで多くの読者にとって極めて価値の高い良書である。
読者モニターレビュー【 水野 哲義 様 国内楽器メーカー在籍工業デザイナー】
本書を一言で言うならば製造業に身を置く者向けの『現代社会の教科書』である。設計、開発業務プロセスや製造業と社会の関わりの網羅性と開発プロセスを正しく認識するための概念の紹介やその定義、その概念が使われる背景についても説明しており教科書らしい安心感を感じた。
起業家ならびに社の組織編成や製造プロセスに関わる者には現代の製造業の立ち位置を再認識するため、若手には自らが所属する会社の取り組みや社会を理解するため、それぞれおすすめしたい。製造業の歴史、それに呼応して発展していった設計の歴史などから始まり、環境問題、社会問題との関わりについてもしっかりと書かれており、最近話題のSDGsにも歴史的な背景があることが説明されている。それだけでなく、企画、開発、デザイン手法についても設計のプロセスとして組み込まれこの本に書かれている。この本にロジスティクス関連の書籍を合わせればより製造業の仕事の全体を理解できるであろう。
私は開発者の若手としてこの本を読み、所属する会社の開発プロセスに照らし合わせることで社に対しても製造業全体に対しても理解が深まったと感じている。色々抱えていたモヤモヤが解消したり、逆に疑問が深まったりと解像度が高まった故の効果を感じる。その結果、社の方向性を舵とる立場の人に今一度、本書に触れ社全体の立ち位置を社員の私たちに定義つけてほしいとも思うようになった。製造業に関わる方には是非手に取ってもらいたい。
もう少し詳しく感想を述べたい。私はデザイナーという立場で本書を読んだ。自分の仕事というのがどれだけ社会環境や開発プロセス、製造プロセス、それぞれのシステムに依存しているかがこの本を読むとわかる。何か新しいことをするには、そしてそもそも新しいことをする必要があるのか否かは全体を一度俯瞰せねばやれるわけがないのだ。
また、俯瞰して問題を認識するためにも本書にあるような知識が私達自身に必要であることもよく良く感じられた。自動車業界、航空機業界などで使われている開発プロセスにまつわる語句を私は知らなかったが、これがデザイン開発の状態を正確に理解するのにも役立つだろう。関与する人数が少ない業界では言語化して共有するよりも暗黙知化するまでの方が早いのもあり、言語化が進まない。だが、こういった形の最適化が深刻な勘違いを生むのは想像に難くない。この本が広く読まれ知識が共有されることを望む。
【書評】東京都立大学 システムデザイン学部 機械システム工学科 下村 芳樹 教授
本書「設計論」では、その副題として「製品設計からシステムズイノベーション」と付されているように、従来から広く知られる設計研究に関する古典的内容から、ごく最近になって設計の文脈で語られるようになったシステムのデザイン、さらにそれらの狭い意味を与える工学的側面だけでなく、経済性や経営の側面までを話題に含めるという広い視野で設計に係る論説を一つと書籍として総括するという極めて野心的な試みが行われている。冒頭の前書きにおいて著者が触れているように、本書の構成のそもそもの動機は、人と社会にとって一般的な内容でありながらこれまで工学という狭い領域でしか主に語られることの無かった設計という概念が、社会の急速な変化に伴ってより広い場で議論されるべきであるという期待の高まりに応えるべく、その現時点での全体像を俯瞰することにあった。結果的にその内容は多岐に渡り、一読によりこの全容を正しく理解することは万人にとって恐らく容易ではないが、広く設計を実践し、知ろうとする人材が常にその傍らに置き、参照することに相応しい優れた参考図書となっている。設計の初学者から古参の設計者までその探求に広く資する良書である。
amazonレビュー
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掲載日:2024/09/03
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