レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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イノベーティブな製品・サービス・経験を生み出すための「設計工学」指南書。設計対象をシステムととらえ,いわゆる「設計学」や「デザイン学」の分野を横断し,汎用可能な知として議論の展開を行った。設計・デザインに携わる方必携!
- 発行年月日
- 2023/07/07
- 定価
- 8,360円(本体7,600円+税)
- ISBN
- 978-4-339-04684-7
レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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読者モニターレビュー【 開原 将貴 様 (ご専門:システムエンジニア )】
掲載日:2023/08/28
本書では、誰にとっても身近な設計という営みについて、様々な学術領域を横断して論じられています。私自身はソフトウェア設計に関して示唆を得られないかと期待し、拝読いたしました。設計に現れる難しさやそれらへの取り組み方を体系的に学び、様々な応用が可能な知識として蓄えることができたと感じています。各章単体でも読みやすい構成になっているので、設計に関する問題に直面した際には読み直したいと思います。設計やデザインに関わるどなたにでもお勧めできる一冊です。
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【書評】京都大学大学院 工学研究科 機械理工学専攻 西脇 眞二 教授
掲載日:2023/08/25
本書「設計論」は、学術的な観点からの設計工学の体系に加え、様々な産業における設計の考え方・体系を包括的かつ俯瞰的に述べており、これから設計工学の歴史的背景、現代の動向および課題を体系的に学ぼうとする学部学生や、企業において設計・開発等の実務を開始する際に現状の動向・体系を把握したい技術者には是非ともご一読いただきたい設計の教科書である。また本書は、従来までの設計に関する数々の書籍とは異なり、設計論の学術体系を述べるに留まらず、設計に関する支援技術、周辺知識についても丁寧に説明されており、生産システム、社会システム、経営、経済性などの様々な観点から設計を一貫して学ぶことができる。さらに、設計行為の長期的なスパンを考え、ライフサイクルの視点のもとにとらえている設計システムの技法は、将来の持続可能な社会を構築するための思考に大いに役立つものと考える。
以上のように、本書「設計論」は、設計をゼロから包括的に学びたい初学者から、あらためて設計の体系を学び直してみたい熟練の技術者まで多くの読者にとって極めて価値の高い良書である。
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読者モニターレビュー【 水野 哲義 様 国内楽器メーカー在籍工業デザイナー】
掲載日:2023/07/24
本書を一言で言うならば製造業に身を置く者向けの『現代社会の教科書』である。設計、開発業務プロセスや製造業と社会の関わりの網羅性と開発プロセスを正しく認識するための概念の紹介やその定義、その概念が使われる背景についても説明しており教科書らしい安心感を感じた。
起業家ならびに社の組織編成や製造プロセスに関わる者には現代の製造業の立ち位置を再認識するため、若手には自らが所属する会社の取り組みや社会を理解するため、それぞれおすすめしたい。製造業の歴史、それに呼応して発展していった設計の歴史などから始まり、環境問題、社会問題との関わりについてもしっかりと書かれており、最近話題のSDGsにも歴史的な背景があることが説明されている。それだけでなく、企画、開発、デザイン手法についても設計のプロセスとして組み込まれこの本に書かれている。この本にロジスティクス関連の書籍を合わせればより製造業の仕事の全体を理解できるであろう。
私は開発者の若手としてこの本を読み、所属する会社の開発プロセスに照らし合わせることで社に対しても製造業全体に対しても理解が深まったと感じている。色々抱えていたモヤモヤが解消したり、逆に疑問が深まったりと解像度が高まった故の効果を感じる。その結果、社の方向性を舵とる立場の人に今一度、本書に触れ社全体の立ち位置を社員の私たちに定義つけてほしいとも思うようになった。製造業に関わる方には是非手に取ってもらいたい。
もう少し詳しく感想を述べたい。私はデザイナーという立場で本書を読んだ。自分の仕事というのがどれだけ社会環境や開発プロセス、製造プロセス、それぞれのシステムに依存しているかがこの本を読むとわかる。何か新しいことをするには、そしてそもそも新しいことをする必要があるのか否かは全体を一度俯瞰せねばやれるわけがないのだ。
また、俯瞰して問題を認識するためにも本書にあるような知識が私達自身に必要であることもよく良く感じられた。自動車業界、航空機業界などで使われている開発プロセスにまつわる語句を私は知らなかったが、これがデザイン開発の状態を正確に理解するのにも役立つだろう。関与する人数が少ない業界では言語化して共有するよりも暗黙知化するまでの方が早いのもあり、言語化が進まない。だが、こういった形の最適化が深刻な勘違いを生むのは想像に難くない。この本が広く読まれ知識が共有されることを望む。
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amazonレビュー978-4-339-04684-7 設計論 - 製品設計からシステムズイノベーションへ -
掲載日:2023/07/04
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【書評】東京都立大学 システムデザイン学部 機械システム工学科 下村 芳樹 教授
掲載日:2023/06/27
本書「設計論」では、その副題として「製品設計からシステムズイノベーション」と付されているように、従来から広く知られる設計研究に関する古典的内容から、ごく最近になって設計の文脈で語られるようになったシステムのデザイン、さらにそれらの狭い意味を与える工学的側面だけでなく、経済性や経営の側面までを話題に含めるという広い視野で設計に係る論説を一つと書籍として総括するという極めて野心的な試みが行われている。冒頭の前書きにおいて著者が触れているように、本書の構成のそもそもの動機は、人と社会にとって一般的な内容でありながらこれまで工学という狭い領域でしか主に語られることの無かった設計という概念が、社会の急速な変化に伴ってより広い場で議論されるべきであるという期待の高まりに応えるべく、その現時点での全体像を俯瞰することにあった。結果的にその内容は多岐に渡り、一読によりこの全容を正しく理解することは万人にとって恐らく容易ではないが、広く設計を実践し、知ろうとする人材が常にその傍らに置き、参照することに相応しい優れた参考図書となっている。設計の初学者から古参の設計者までその探求に広く資する良書である。