現代設計工学

現代設計工学

メーカーの設計・開発部門と機械系設計工学の教育現場を知る著者が,設計に関する小話も交えながら,設計の過程や各段階について詳説

ジャンル
発行年月日
2012/04/20
判型
A5
ページ数
208ページ
ISBN
978-4-339-04625-0
現代設計工学
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定価

2,970(本体2,700円+税)

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製造メーカーの設計・開発部門の声と,機械系設計工学の教育現場を知る著者が,設計に関する小話も交えながら,今まであまり重要視されてこなかった,設計のプロセスおよびその各段階について,設計の観点から詳しく解説した1冊。

1. 機械と設計
1.1 機械とは何か 
1.2 機械の構成単位 
1.3 設計とは何か 
1.3.1 設計と目的 
1.3.2 設計のアプローチ 
1.3.3 多様な要求と設計 
1.3.4 設計の自由度 
2. 設計のプロセス
2.1 設計プロセスの全体像 
2.2 製品設計企画 
2.2.1 製品企画 
2.2.2 設計企画 
2.2.3 製品企画と設計企画の事例 
2.3 概念設計(機能設計) 
2.3.1 機能展開 
2.3.2 設計解原理の探索 
2.4 初期設計(設計解原理の組合せと評価) 
2.4.1 設計解原理の組合せ 
2.4.2 組合せ結果の評価 
2.5 詳細設計 
2.5.1 詳細設計における事前的検討 
2.5.2 設計対象の性能実現と構造化 
2.5.3 多目的設計 
2.5.4 設計とCADと解析 
2.5.5 制約条件 
2.6 ライフサイクル設計(コンカレントエンジニアリング) 
3. 材料の選択
3.1 設計と材料 
3.1.1 設計性能と材料性能 
3.1.2 設計と加工 
3.1.3 設計とリサイクルなど 
3.2 材料の選択指針 
3.2.1 機械的性質 
3.2.2 金属材料の引張試験と規格 
3.3 基本的材料 
3.3.1 金属材料 
3.3.2 鉄鋼材料 
3.3.3 アルミニウム材料 
3.3.4 非金属材料 
4. 設計と機械要素
4.1 設計プロセスと機械要素 
4.2 標準化と要素 
4.3 要素の種類と選択方法 
4.3.1 ねじ要素 
4.3.2 キー,スプライン 
4.3.3 軸継手 
4.3.4 転がり軸受け 
5. 設計と3次元CADモデリング
5.1 3次元CAD開発の背景 
5.2 3次元形状モデル 
5.3 設計とモデル表現機能 
5.3.1 パラメトリック機能 
5.3.2 フィーチャーベース機能 
5.4 3次元CADシステムの特徴 
5.5 設計プロセスと3次元CAD 
5.6 3次元CADモデルの価値 
6. 設計と解析
6.1 解析の目的とシミュレーションの意味 
6.2 解析の種類 
6.3 弾性体の解析 
6.3.1 2次元弾性体の有限要素解析 
6.3.2 有限要素法解析例 
7. 設計と機械加工
7.1 設計プロセスと機械加工 
7.2 機械加工の種類,工作機械 
7.2.1 切削加工 
7.2.2 研削加工 
7.2.3 鋳造加工 
7.2.4 塑性加工 
7.2.5 鍛造加工 
7.2.6 押出し加工 
7.2.7 引抜き加工 
7.2.8 圧延加工 
7.2.9 プレス加工 
7.2.10 曲げ加工 
8. メカトロニクス設計
8.1 はじめに 
8.2 メカトロニクスの進歩 
8.3 メカトロニクスの構成要素 
8.3.1 機構 
8.3.2 アクチュエータ 
8.3.3 センサ 
8.3.4 制御系 
8.4 メカトロニクスを利用した事例について 
8.4.1 数値制御を組み込んだ工作機械 
8.4.2 産業用ロボットを利用した自動化工場 
8.4.3 半導体製造装置 
8.4.4 自動車のメカトロニクス利用 
8.4.5 郵便番号自動読取り区分装置 
8.4.6 エスカレータ,エレベータ 
8.4.7 自動販売機 
8.4.8 自動改札機 
8.4.9 電子料金収受システム(ETC) 
8.4.10 自動預け払い機(ATM) 
8.4.11 全自動洗濯機 
8.4.12 ハードディスクドラブ(HDD) 
8.5 メカトロニクスの将来 

引用・参考文献 
索引 

石川 晴雄(イシカワ ハルオ)

中山 良一(ナカヤマ リョウイチ)

井上 全人(イノウエ マサト)

掲載日:2023/07/05

日本設計工学会誌「設計工学」2023年7月号

[まえがきより]
 本書を書き始めた頃の2011 年3 月11 日,想像を絶する甚大な被害を引き起こした東日本大震災が発生した。この震災被害の深刻さのひとつは,福島にある東京電力原子力発電所の崩壊ともいうべき破壊である。水素爆発,圧力容器のメルトダウンなどによる放射能の拡散汚染が起きたのである。最先端科学技術の粋を集めた原子力発電所の崩壊について,これまで光り輝いていた科学技術の影を目の当たりにして,多くの人が科学技術への懐疑心をもち始めるとともに,科学技術に従事する専門家のなかには,従来の科学技術が要素還元主義であったことに深刻な反省を示す人たちもいる。異分野や環境も含めた総合的・融合的検討・研究,そしてその結果としてのものづくりの新たなあり方の重要性の指摘である。
 設計工学では,製品設計は解析と総合の往復であるといわれている。解析は部品,ユニット,製品を対象にして,基本的には関係する物理現象のモデルと境界条件を単純化して行われる。総合は解析の結果を集合し,製品としての性能が満足できるかどうか判断する。判断できなければ,必要な解析のモデルとその初期条件,場合によっては境界条件の修正を行うことになる。大事なことは,解析結果の集合の際に,解析モデルの適用範囲と解析結果間の関係性の把握および解析で与えた境界条件の妥当性の評価である。実際の製品はさまざまな意味で複雑化してきている。その適用性・関係性の把握と境界条件の妥当性評価は,総合にとって重要である。こうした解析と総合は,実際の設計のプロセスのなかでレベルを深化させながら繰り返し実行される。
 筆者は,これまで研究活動の関係で製造メーカーの設計技術,製品開発に従事されている方々と交流をさせていただいた経験が多い。そのなかで,製品設計においては,機械要素設計の重要性とともに,総合の観点から設計プロセスの構成とその意味を知ることの重要性を学んできた。一方,従来の機械系の設計工学の学生向けの著作物には,設計のプロセスの重要性に着目し,これを中心に書かれたものは比較的少ない。
 筆者自身は過去数年,大学で設計工学の科目を授業担当してきているが,設計プロセスの観点から独自の講義ノートをつくり,講義に臨んできた。本書はこの講義ノートをもとに新たに原稿を書き下ろした著作である。しかし,書籍としてまとめるにあたっては,既存の多くの書籍からも内容的な引用をさせていただいた。特に『機械工学便覧』(日本機械学会),『JIS ハンドブック』(日本規格協会),および機械設計全般について簡便にまとめた『ハンディブック機械』(オーム社)については,参考にさせていただいた内容も少なくない。ここに記して感謝の意を表したい。
 本書は全8 章から構成されている。第1 章が機械と設計,第2 章が設計のプロセス,第3 章が材料の選択,第4 章が設計と機械要素,第5 章が設計と3 次元CAD モデリング,第6 章が設計と解析,第7 章が設計と機械加工,第8章がメカトロニクス設計である。このうち第2 章では,本書の主題である設計プロセスそのものについてまとめた。ページ数的にも全体の約1/3 を占める。第3 ~7 章は,設計プロセスの各段階に関係する個別的内容について設計の観点からまとめている。第8 章は,近年の一般的製品形態がメカトロニクスに基づくこともあり,メカトロニクスの観点から各種製品の基本構成を目的性能に関連してまとめたものである。
 また,設計に関する話題などを「コーヒーブレイク」として七つ紹介した。設計工学を学ぶ楽しさの一端を感じていただきたい。