計測のための統計

計測・制御テクノロジーシリーズ 4

計測のための統計

計測の基本概念から確率・統計の数理的知識や測定値の不確かさ評価・改善に必要な知識,測定に関わる統計モデルと当てはめを解説。

ジャンル
発行年月日
2018/04/12
判型
A5
ページ数
288ページ
ISBN
978-4-339-03354-0
計測のための統計
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定価

4,290(本体3,900円+税)

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  • 内容紹介
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本書では,計測の基本概念から工学系全般に必要な確率・統計の数理的知識や測定値の不確かさ評価や改善に必要な知識,測定に関わる統計モデルと当てはめを解説。また,統計解析用プログラミング言語Rによるコーディング例も紹介。

本書は,計測に関わる確率・統計の基本から応用までを扱っており,理工系の学部学生・大学院生あるいは計測に関わる技術者に学んでいただきたいテーマをピックアップしている。また,計測ということになじみのない品質管理,データサイエンス,統計の専門家に対しても,計測分野の応用統計の一端を理解していただける内容ではないかと考えている。

1章は,計測に関係する基本概念を提示している。そして,2章以降はおおむね3部構成としている。工学系全般に必要な確率・統計の数理的知識を紹介した2章,3章,測定値の不確かさ評価や改善に必要な知識を紹介した4章,5章,測定に関わる統計モデルと当てはめを紹介した6章である。また,2章以降では,読者の理解を深めるための例題や章末問題を配置した。

2章では,3章以降で必要となる確率・統計に関する基礎を紹介している。多数のデータを扱うことが統計学であるが,データをただ眺めていても全体の傾向は見えてこない。そこで,統計処理を行い,その傾向や特徴を把握することが不可欠である。そこで本章では,代表的な統計処理手段と確率変数およびその分布について記述した。特に,確率密度関数および統計パラメータの導出過程を式の展開を通して示している。

3章は,標本から,母集団の性質,構造や法則性を推定するプロセスを紹介している。対象のすべてを測定することは不可能であり,測定結果は,母集団のごく一部を示しているにすぎない。すなわち,計測行為は,つねに不確実性を伴う。そこで本章では,標本から母集団のパラメータを推定する手法,およびその確からしさについて,紹介している。

4章は,測定の不確かさ評価に関して国際的に合意された方法論を紹介した。このために,測定結果とその不確かさに与える要因を表現する統計モデルと基本的な不確かさ評価技法,それらの要因の中で実験的に不確かさへの影響が評価可能なものと原理的にエキスパートが評価せざるを得ないものとの峻別,不確かさを評価するための乱数実験の技術を紹介した。

5章は,測定の不確かさを改善する実験的方法論,統計的には実験計画法と呼ばれる方法の入門的知識を紹介した。まず,素朴な測定の繰返しに基づく方法を紹介した。その後で,複数の測定対象の不確かさを同時測定によって改善する直交表実験,タグチメソッドと呼ばれることもある,測定方式のSN比評価とそれに基づく最適化技術の概略を紹介した。

6章は,線形な入出力関係をデータに基づいて同定するための方法論を紹介した。統計的には入力変数には測定誤差がないと想定した回帰分析と呼ばれる線形推測論の基礎理論を示し,回帰分析の計測分野の応用として校正の方法を紹介した。この校正の問題の中で,入力変数の測定誤差の問題を導入し,その一般化,統計的に測定モデルとその当てはめと呼ばれている話題を紹介した。

4章以降,複雑な統計計算を支援するための統計解析用プログラミング言語Rによるコーディング例をR演習として紹介した。Rは自由にダウンロードできるフリーソフトウェアなので,簡単な入手方法と利用方法,特に2章の確率計算での利用例について付録で取りまとめた。

1. 計測について考える
1.1 歴史にみる「はかる」
1.2 単位と標準
 1.2.1 基本単位
 1.2.2 組立単位と次元解析
 1.2.3 SIの接頭辞
 1.2.4 トレーサビリティ
1.3 基本的な計測法
 1.3.1 直接測定と間接測定
 1.3.2 基本測定法,定義測定法と比較測定
 1.3.3 偏位法と零位法
 1.3.4 補償法と差動法
1.4 計測器の特性
 1.4.1 感度と識別能,識別限界,分解能
 1.4.2 測定範囲と指示範囲
 1.4.3 直線性
 1.4.4 静特性と動特性

2. 測定値の不確かさを表現するための基礎統計
2.1 測定値の分布の視覚的表現と数理的表現
 2.1.1 度数分布表による表現
 2.1.2 ヒストグラムによる表現
 2.1.3 累積比率グラフによる表現
 2.1.4 代表値による表現
 2.1.5 ちらばりの表現
2.2 二次元の測定値の分布の表現
 2.2.1 散布図
 2.2.2 共分散
 2.2.3 相関係数
2.3 連続型確率変数と確率密度関数
 2.3.1 確率変数
 2.3.2 離散型確率分布
 2.3.3 確率密度関数
 2.3.4 平均と分散
 2.3.5 積率
 2.3.6 積率母関数
 2.3.7 特性関数
 2.3.8 代表的な連続型確率分布
2.4 多次元の確率密度関数
 2.4.1 同時確率密度関数
 2.4.2 周辺確率密度関数
 2.4.3 条件付き確率密度関数
 2.4.4 ベイズの定理
 2.4.5 共分散と相関係数
 2.4.6 独立と無相関
 2.4.7 確率変数の和
 2.4.8 確率変数の積
 2.4.9 確率変数の商
 2.4.10 多変量正規分布
問題

3. 母集団と標本
3.1 統計的調査
 3.1.1 全数調査と標本調査
 3.1.2 標本抽出
3.2 標本分布
 3.2.1 標本統計量
 3.2.2 大数の法則,中心極限定理
 3.2.3 正規分布から導かれる標本分布
3.3 点推定
3.4 区間推定
 3.4.1 母平均の区間推定
 3.4.2 母分散の区間推定
 3.4.3 二つの母集団の母平均の差の区間推定
 3.4.4 二つの母集団の母分散の比の区間推定
3.5 最尤推定
 3.5.1 尤度関数
 3.5.2 最尤推定量
3.6 ベイズ推定
 3.6.1 事前確率分布と事後確率分布
 3.6.2 事後確率分布の更新
 3.6.3 統計量のベイズ推定
問題

4. 測定値の不確かさ
4.1 測定結果導出のモデルとその不確かさの原因
 4.1.1 分散の計算:並行条件と再現条件
 4.1.2 測定の不確かさのモデルと不確かさの近似表現
4.2 実験的に推定できる不確かさとそうでない不確かさ
 4.2.1 タイプA評価
 4.2.2 タイプB評価
4.3 合成不確かさのモンテカルロシミュレーションによる表現
 4.3.1 疑似一様乱数の発生
 4.3.2 不確かさ評価へのモンテカルロシミュレーションの利用
問題

5. 測定の不確かさの改善
5.1 繰返し測定による不確かさの改善
5.2 直交表実験による測定の不確かさの改善
 5.2.1 統計的実験計画法:秤量実験と直交計画
 5.2.2 直交表実験を用いた測定不確かさの統計的評価
 5.2.3 不確かさを特性とした実験計画
5.3 SN比とその改善
 5.3.1 SN比と不確かさ
 5.3.2 SN比の評価
 5.3.3 ロバストパラメータ設計
問題

6. 関係性の分析
6.1 回帰分析
 6.1.1 回帰関数
 6.1.2 線形回帰モデルと最小二乗法
 6.1.3 直交射影の導出と線形モデルの最小二乗推定
 6.1.4 最小二乗推定量の不偏性と推定の不確かさ評価
 6.1.5 線形モデルの不確かさの評価
 6.1.6 未知パラメータの推定の不確かさ評価
 6.1.7 推定精度を加味した出力予測の不確かさ評価
 6.1.8 回帰分析などのための統計ソフトウェア利用
6.2 校正:簡易測定の基準測定による評価
 6.2.1 基準測定の測定誤差が無視できる場合
 6.2.2 基準測定の計測誤差が無視できない場合
6.3 一般測定モデルとしての変数誤差モデル
6.4 最尤法による数値計算
問題

付録 統計分析ツールとしてのR
A.1 Rの沿革
A.2 Rのインストール
A.3 Rによるデータの読込み
A.4 Rによる確率計算
 A.4.1 二項分布
 A.4.2 ポアソン分布
 A.4.3 一様分布
 A.4.4 指数分布
 A.4.5 ガンマ分布
 A.4.6 ワイブル分布
 A.4.7 ベータ分布
 A.4.8 コーシー分布
 A.4.9 正規分布
 A.4.10 対数正規分布
 A.4.11 多次元正規分布
 A.4.12 自由度nのχ2分布
 A.4.13 自由度nのt分布
 A.4.14 自由度(n1,n2)のF分布
A.5 Rの参考文献

引用・参考文献
問題解答
索引

寺本 顕武(テラモト ケンブ)

椿 広計(ツバキ ヒロエ)

掲載日:2022/09/05

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