可視化と科学・文化・社会

メディアテクノロジーシリーズ 3

可視化と科学・文化・社会

計算機による可視化技術について各種学術分野への連携や融合による応用事例を網羅的に紹介

  • 口絵
ジャンル
発行年月日
2023/10/27
判型
A5
ページ数
240ページ
ISBN
978-4-339-01373-3
可視化と科学・文化・社会
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定価

4,180(本体3,800円+税)

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  • 内容紹介
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  • 広告掲載情報

【読者対象】
本書は,さまざまなデータの分析や解析に利用される可視化技術に興味をもつ,幅広い読者を対象としています。可視化に関する専門的な技術を学びたい大学生や大学院生,研究者だけでなく,高校生や社会人など,様々な読者が事例を通して可視化を知ることができる内容となっています。

【書籍の特徴】
本書では,実際にどのように可視化が利用されているのかを,「科学・文化・社会」の三つの分野に分けて,実用例を交えて紹介しています。流体の可視化に始まり,有形文化財のディジタル保存,ソーシャルメディアデータの可視化など多岐にわたる実用例を掲載していますので,単なる技術としてだけではなく,実社会でどのように可視化が役立っているのかを知ることができます。本書で取り扱う三つの分野を,それぞれが独立した章として構成していますので,興味がある分野から読んでいただけます。

【各章について】
1章では,可視化の歴史などを踏まえて,本書の構成について詳しく説明します。
2章では,空気や液体などの流体の可視化を中心に,自然科学分野における可視化事例を掲載しています。
3章では,有形文化財をディジタルデータとして永久保存する方法を通して,人文科学分野における可視化の利用例を紹介します。
4章では,実世界の物理空間に依存しないようなデータを扱う社会科学における可視化事例を紹介します。

【著者からのメッセージ】
「可視化」は,自然現象や人体の観察や分析に古くから利用されてきました。コンピュータの登場により,以前は人間が手描きで画像にしていたものが,現在ではコンピュータを用いて容易に可視化することができるようになりました。大規模かつ複雑なデータが当たり前のように生成されている現在,それらのデータの分析・解析には,「可視化」は必要不可欠な技術です。一方,どのような場面で「可視化」がどのように利用されているかは,一般的にはあまり認識されていません。本書に掲載しているさまざまな事例を通して,多くの読者の方に「可視化」に興味を持っていただければ幸いです。

【キーワード】
可視化,科学系可視化,情報可視化,コンピュータグラフィックス,ディジタルヒューマニティーズ,計算社会科学

「可視化」は,自然現象や人体の観察や分析に古くから利用されてきました。例えば,有名な画家でもあり科学者でもあるレオナルド・ダ・ヴィンチは,川の中に板を配置したときにどのように川の流れが変化するのかをスケッチ画として残してます。また,ダ・ヴィンチは人体解剖図も残しており,陰影を付けることにより骨と筋肉の構造を3次元的に描画しています。これらは500年以上経った現在でも有用な情報であり,どのように科学や医学が進歩してきたかを知る手がかりとなっています。

データの分析においても「可視化」はなくてはならないものです。皆さんの最も身近な事例はグラフででしょうか。グラフの原型は18世紀に政治経済学者のウィリアム・プレイフェアによって作られたといわれており,棒グラフ,折れ線グラフ,円グラフなど現在でも利用されているグラフを生み出しました。また,看護師としても有名なフローレンス・ナイチンゲールは統計学者としても知られており,クリミア戦争における死因を円グラフを用いて可視化しています。

このように,人手で描画することにより「可視化」を行っていた世界が,コンピュータの登場により一変します。コンピュータ性能の向上やコンピュータグラフィックス技術の発展により,コンピュータ内で可視化を行うコンピュータビジュアリゼーションが広く利用されるようになったのです。コンピュータを利用することにより,人手では困難であった大規模データの可視化や対話的な操作が可能になりました。そして,さまざまな分野において「可視化」は必要不可欠な技術となっているのです。

本書では,実際にどのように「可視化」が利用されているのかを,「科学・文化・社会」の三つの分野に分けて,実用例を交えて紹介します。

2章では,空気や液体などの流体の可視化を中心に,自然科学分野における可視化事例を掲載しています。数値シミュレーションなどによって得られた数値データをコンピュータ内でどのように可視化し,解析を行うかについて述べられています。3章では,有形文化財をディジタルデータとして永久保存する方法を通して,人文科学分野における可視化の利用例を紹介します。有形文化財をディジタル保存するための3次元点群の取得方法やその可視化手法についても述べられています。4章では,実世界の物理空間に依存しないようなデータを扱う社会科学における可視化事例を紹介します。センサデータやソーシャルメディアにおけるデータ,写真や動画などのマルチメディアデータなど,多岐にわたる可視化事例が掲載されています。

また,本書の総括として,1章では,可視化の歴史なども踏まえて本書の構成について詳しく紹介されています。

この本を手に取った皆さんが,いろいろな場面において可視化が利用されていることを知る一助になれば幸いです。また,可視化技術とさまざまな分野が結び付くことにより,学術や産業が新たなフェーズへと発展していくことを願います。

2023年8月
編者 竹島由里子

第1章 可視化とは
1.1 可視化の歴史と定義
1.2 自然科学と可視化
 1.2.1 自然科学に活用される情報科学技術
 1.2.2 自然科学が課題対象とする実空間の例
 1.2.3 scientific visualization
1.3 人文科学と可視化
 1.3.1 ディジタルヒューマニティーズ
 1.3.2 過去の復元・現在の保存
1.4 社会科学と可視化
 1.4.1 社会科学に活用される情報科学技術
 1.4.2 information visualization
 1.4.3 情報処理技術がもたらした新しい社会問題のための可視化
1.5 本書の構成

第2章 科学と可視化―流体・医療・生命情報―
2.1 概要:科学的なデータの可視化
 2.1.1 実験計測データの可視化
 2.1.2 数値シミュレーションの可視化
2.2 科学技術分野での可視化の目的と対話操作
 2.2.1 科学技術分野における可視化の目的
 2.2.2 科学技術分野における可視化に必要な対話操作
2.3 流体シミュレーションの可視化
 2.3.1 データ形式
 2.3.2 流体シミュレーションの可視化で用いる可視化手法
 2.3.3 ボリュームレンダリング
 2.3.4 点群表示
 2.3.5 数値流体シミュレーションの可視化例
2.4 その他の科学技術分野における可視化
 2.4.1 医療撮影画像を用いた可視化
 2.4.2 生命情報に関する可視化
2.5 科学技術分野におけるVR/AR/MR/XRの活用
 2.5.1 立体視装置
 2.5.2 没入型ディスプレイ
 2.5.3 オーグメンティッドリアリティ
 2.5.4 ミックスドリアリティ
 2.5.5 クロスリアリティ
 2.5.6 可聴化
2.6 科学技術分野の可視化システム
 2.6.1 科学技術分野の可視化システムの実装
 2.6.2 事例紹介:可視化フレームワークVisAssets
2.7 本章のまとめ・今後の展望

第3章 文化と可視化―文化財の3次元計測―
3.1 概要:文化財のディジタル保存と可視化
3.2 有形文化財のディジタル保存
 3.2.13 次元計測技術の発展
 3.2.2 3次元計測で取得されるデータ
3.3 3次元計測データの軽量化
 3.3.1 ランダムサンプリング
 3.3.2 ボクセル化
 3.3.3 ポアソンディスクサンプリング
 3.3.4 ポリゴンメッシュ化
3.4 3次元計測データのポイントレンダリング
 3.4.1 ポリゴンレンダリングとポイントレンダリング
 3.4.2 描画単位としての「点」に付与される属性
 3.4.3 点に3次元的な幾何学形状を与えるポイントレンダリング
 3.4.4 点の2次元的な像を利用するポイントレンダリング
 3.4.5 3次元計測点群を活用したバーチャルリアリティ
3.5 3次元計測データの半透明可視化
 3.5.1 半透明可視化における「奥行き感」の重要性
 3.5.2 3次元計測点群の半透明可視化の難しさ
 3.5.3 確率的ポイントレンダリングの概要
 3.5.4 確率的ポイントレンダリングの実行手順
 3.5.5 半透明性の確率的な実現
 3.5.6 不透明度を制御する公式
 3.5.7 輝度勾配による法線ベクトルが不要な陰影付け
 3.5.8 点密度制御
3.6 事例紹介:有形文化財3次元計測点群の可視化
 3.6.1 京都・祇園祭の山鉾
 3.6.2 宮城・瑞巌寺の洞窟遺跡群
 3.6.3 滋賀・旧中島家住宅(古民家)
 3.6.4 京都・藤森神社の拝殿
3.7 計測ノイズとその除去・消失
 3.7.13 次元計測における計測ノイズ
 3.7.2 計測ノイズの除去
 3.7.3 計測ノイズを統計的に消失させる可視化
 3.7.4 ノイズの消失実験
 3.7.5 ノイズ消失の理論的背景
3.8 3次元計測データの特徴領域強調
 3.8.1 特徴領域強調の必要性
 3.8.2 3次元構造テンソルを用いた特徴領域抽出
 3.8.3 特徴領域の強調可視化
 3.8.4 3次元エッジを細線化する可視化
 3.8.5 ソフトエッジの強調可視化
3.9 事例紹介:巨大文化遺跡のマルチデータソース可視化
 3.9.1 ボロブドゥール寺院のディジタル保存と可視化
 3.9.2 寺院表面
 3.9.3 地下基礎工事部分
 3.9.4 隠された壁面レリーフ
 3.9.5 データ統合とマルチデータソース可視化
3.10 本章のまとめ・今後の展望

第4章 社会と可視化―メディアやビジネスから見える社会現象―
4.1 概要:社会現象を映し出す可視化
 4.1.1 社会現象のための可視化手法
 4.1.2 機械学習と可視化
 4.1.3 可視化とインタラクションデザイン
 4.1.4 社会現象の可視化に関する新たな展開と課題
4.2 センサデータと可視化
 4.2.1 環境,災害に関するセンサデータの可視化
 4.2.2 移動体追跡結果の可視化
4.3 インターネットと可視化
 4.3.1 ウェブの歴史と可視化
 4.3.2 ソーシャルメディアの定義と可視化
4.4 マルチメディアと可視化
 4.4.1 写真集合の可視化
 4.4.2 音楽の可視化
4.5 基幹システムと可視化
 4.5.1 ビジネス・金融情報の可視化
 4.5.2 セキュリティ情報・不正情報の可視化
4.6 人工知能と可視化
 4.6.1 人工知能がもたらす社会問題と可視化
 4.6.2 機械学習の説明責任のための可視化
4.7 本章のまとめ・今後の展望

引用・参考文献
索引

読者モニターレビュー【 N/M 様(業界・専門分野:総合情報学[情報科学])】

本書は「メディアテクノロジーシリーズ」の3巻目に位置する書籍である.本巻では「可視化と科学・文化・社会」ということで,可視化の技術についての記述がなされている.

特徴としては,よく理系の専門書にみられる多数の数式の羅列よる難解さは,本書では見られない(全く数式がないという意味では決してない)ので,読み物的に,目次を閲覧して気になった可視化例を好きな順序で読んでいくことができる点が挙げられる.

1章では,本書が扱う可視化とはどのような歴史を辿ってきたか,そもそも可視化とは何なのかという定義から解説されている.その際に,可視化に関する応用事例を,大学などの高等機関において分類される,「自然科学(所謂「理系」)」,「人文科学」,「社会科学」という3つの学問分野に分けて言及されている.

2章〜4章では,それぞれの学問領域において,各種可視化の事例が多く紹介されている.その中でも情報科学分野に関連するものとして「2.5
科学技術分野におけるVR/AR/MR/XRの活用」や「4.3 インターネットと可視化」,「4.4 マルチメディアと可視化」,「4.6
人工知能と可視化」は大変興味深いものがあった.特に,「4.3
インターネットと可視化」では,Webサイトへのアクセス履歴からどのページがいつ頃,どの程度閲覧されているかなどのビッグデータからデータマイニング(Webマイニング)することで傾向を可視化でき,また,SNSへの情報拡散行動を可視化することで,今何かと問題になっている,自身によって都合のいい情報が多くレコメンドされる「エコチェンバー現象」などの解決策にも繋がるだろうと個人的には思われた.

本書には数多くの図表が使用されていて,一部に関しては本書の最初のページ(口絵)に多くがカラー図表で記載されている.また,口絵に記載されていないものも含めて本書のWebサイトの関連資料にも公開されている.ただ,WordファイルをHTML形式のファイルに変換の上,JPEG形式の画像での公開になっているので,所々見にくい箇所もあり,できれば細かい部分を詳細に確認する意味でも,画像劣化の少ないPNG形式などにしていただけると嬉しく思う.

読者モニターレビュー【 高見 玲 様 LINEヤフー株式会社(業界・専門分野:Web)】

本書は「情報を描く」手法の応用事例を「自然科学・人文科学・社会科学」の学問体系の観点から紹介しています。実空間にマッピングできるデータを扱う科学的可視化(SciVis)と、そうでないデータを扱う情報可視化(InfoVis)は別々の学問として探求されてきましたが、近年では両者の境界は曖昧になりつつあり、一方の技術が他方に援用される機会も多いです。各体系の研究者がそれらの歴史的背景や事例を解説した上で、最新トピックとして「AIを活用した可視化」や「AIを理解するための可視化」の事例も示されています。学術領域を横断した広範な知識と応用能力が求められる現代において、ビジネス事業者のデータ活用業務のアイデアを拡張できる点で、学術的のみならず実用観点でも価値がある書籍であると言えます。

竹島 由里子

竹島 由里子(タケシマ ユリコ)

学部ではデータベース、大学院以降はコンピュータグラフィックス、特に、コンピュータビジュアリゼーション(可視化)に関する研究を行ってきました。「百聞は一見に如かず」といわれるように、実際に自分の目で見て情報を解釈するということは、大変重要な意味をもちます。本書が可視化研究に興味をもつきっかけの一助になることを願っています。

伊藤 貴之

伊藤 貴之(イトウ タカユキ)

情報可視化の研究に幅広く従事しています。近年では特に、機械学習やデータサイエンスを支援するための可視化、音楽や絵画の解析のための可視化、人間関係ネットワークの可視化などに取り組んでいます。マルチメディア(音楽情報処理やウェブ関連技術などを含む)、コンピュータビジョン、コンピュータグラフィックスなどの授業も担当し、またインタラクション系の学会の主査も担当するなど、メディアテクノロジー全般に広くかかわっています。

宮地 英生

宮地 英生(ミヤチ ヒデオ)

数値計算結果の可視化のシステム開発を企業で長年やってきました。現在は、大学でコンピュータグラフィックスを教えながら、eスポーツのスキル評価、VRトレーニングの効果測定、機械学習を使った姿勢判定などの研究に従事しています。コミュニケーションにおけるアバターの効果についても興味をもっています。

田中 覚

田中 覚(タナカ サトシ)

複雑な形状・現象の理解を助ける可視化の研究を幅広く行っています。非線形方程式で定義される曲面、人体の内部構造、津波の渦、高エネルギー放射線、プラズマ、大規模文化遺跡などの可視化を行ってきました。とくに、超精密可視化と重要箇所のハイライト可視化にこだわっています。また、研究成果のVR応用にも取り組んでいます。現在の専門は情報科学ですが、元々は理論物理学者ですので、数学で表現された理論によって複雑な形状・現象に隠された真理を明らかにするところに、研究の意義を見出しています。

掲載日:2024/03/13

「計測と制御」2024年3月号

掲載日:2024/03/12

2024年 電子情報通信学会 総合大会プログラム

掲載日:2024/03/12

2024年 電子情報通信学会 総合大会案内

掲載日:2024/02/13

日本機械学会誌2024年2月号

掲載日:2024/01/31

情報・人工知能・経営工学書目録 2024年度版

掲載日:2024/01/17

情報処理学会誌2024年2月号

掲載日:2023/12/04

電子情報通信学会誌2023年12月号

掲載日:2023/11/02

電子情報通信学会誌2023年11月号

掲載日:2023/10/16

情報処理学会誌2023年11月号

掲載日:2023/10/07

読売新聞広告掲載(2023年10月7日)

掲載日:2023/10/03

電子情報通信学会誌2023年10月号

掲載日:2023/09/29

日刊工業新聞広告掲載(2023年9月29日)

掲載日:2023/09/25

可視化情報学会誌2023年10月号

掲載日:2023/09/15

日本音響学会2023年秋季研究発表会講演論文集広告

掲載日:2023/09/06

電子情報通信学会2023年ソサイエティ大会プログラム

掲載日:2023/09/05

人工知能学会誌「人工知能」2023年9月号

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