視聴覚メディア

メディア学大系 15

視聴覚メディア

我々の視聴覚における認知的特徴をふまえ,伝えたい情報を正確かつ効果的に「魅せる」表現手法について解説する。

  • 口絵
ジャンル
発行年月日
2017/06/01
判型
A5
ページ数
224ページ
ISBN
978-4-339-02795-2
視聴覚メディア
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定価

3,080(本体2,800円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介

【読者対象】
CG, 音,音響,画像,映像などの視聴覚メディアに関連する理論や技術について学ぼうとする学生

【書籍の特徴】
視覚心理や聴覚心理の理論をもとに,CG, 音,音響,画像,映像などのデジタル情報とその処理技術の基礎を包含しています.そしてメディアコミュニケーションをよりよくするために,人が視聴覚情報の理解,表現,処理,評価に関することを扱っています.これらにから視覚や聴覚に関する心理学や認知科学の知見とメディア表現技術や処理技術の関係を明らかにしています。これらから人の認知心理学分野の知識を生かした表現や処理技術を合わせて理解できるという特徴があります。

【各章について】
1章、2章では、視覚による理解と表現を取り上げ,視覚メディアである図形,画像,映像による情報伝達の特徴をふまえ,情報の送り手と受け手にとってよりよい情報伝達と表現手法を紹介しています。1章では視覚と理解をテーマに,2次元形状,3次元空間,陰影,色,動き両眼立体視における視覚と錯覚および人が情報をいかに理解するのかについて説明しています。2章では視覚と表現をテーマに,絵画,形態,空間,色,運動,立体視について取り上げ,視覚を考慮したさまざまな表現手法について解説しています。
3章では,聴覚系の知覚特性について述べ,機能とモデル化,観測と分析の方法について紹介しています。まず,音のさまざまな特徴とその観測方法や定量化のための尺度について解説しています。つぎに,聴覚のハードウェアにあたる聴覚系の機能,そしてソフトウェアにあたる音の知覚特性や聴覚特有の現象を紹介しています。最後に,聴覚の性質を調べるための被験者実験の方法と実験遂行のための注意事項を示しています。また,実験結果の信頼性を示すための有意差検定などの統計分析の基礎について解説しています。4章では,デジタル画像とはどのようなものかを説明した後,画像の見え方を変える処理である,トーンカーブ,空間フィルタリング,周波数フィルタリングを用いた変換方法を説明しています。
5章では,画像の中から類似している部分や移動物体などを検出するなどといった,画像の特徴を抽出する方法について紹介しています。6章では,複数の画像を合成して,アルファブレンディング,イメージモザイキング,モーフィングといった特殊な効果を得る方法について説明するとともに,画像の圧縮方法についても解説しています。

【著者からのメッセージ】
本書の内容は,メディア学部における教育と研究の成果をもとにするとともに,さまざまな先端的研究成果も取り入れて,視聴覚メディアの理解を深めることができるように内容を3部に分けて構成しました.読者のみなさんが人の視点に立ったメディアコミュニケーション技術の必要性を理解し,今後のメディア社会における生活の質の向上とメディア技術の発展を目指すことを期待しています.

本書は,視聴覚メディアに関連する理論や技術について学ぼうとする学部生を対象とした教科書である。本書で取り扱う視聴覚は情報伝達にとってきわめて重要なメディアである。そこで,メディア学の視点から本書では,視覚心理や聴覚心理の理論を元に,CG,音,音響,画像,映像などのディジタル情報とその処理技術の基礎について解説する。そしてよりよいメディアコミュニケーションを実現するために,視聴覚情報の理解,表現,処理,評価について言及する。視覚や聴覚に関する心理学および認知科学の知見とメディア表現技術や処理技術の関係を示すことによって,人の認知心理学分野の知識を生かした表現や処理技術を合わせて理解することが本書のねらいである。

まずはじめに,視覚による理解と表現を取り上げ,視覚メディアである図形,画像,映像による情報伝達の特徴をふまえ,情報の送り手と受け手にとってよりよい情報伝達と表現手法を明らかにする。
 1章では視覚と理解をテーマに,2次元形状,3次元空間,陰影,色,動き両眼立体視における視覚と錯覚および人が情報をいかに理解するのかについて述べる。
 2章では視覚と表現をテーマに,絵画,形態,空間,色,運動,立体視について取り上げ,視覚を考慮したさまざまな表現手法について述べる。
 3章では,聴覚系の知覚特性について述べ,機能とモデル化,観測と分析の方法について述べる。まず,音のさまざまな特徴とその観測方法や定量化のための尺度について述べる。つぎに,聴覚のハードウェアにあたる聴覚系の機能について述べ,ソフトウェアにあたる音の知覚特性や聴覚特有の現象を紹介する。最後に,聴覚の性質を調べるための被験者実験の方法と実験遂行のための注意事項について述べる。また,実験結果の信頼性を示すための有意差検定などの統計分析の基礎について述べる。
 4章では,ディジタル画像とはどのようなものかを説明した後,画像の見え方を変える処理である,トーンカーブ,空間フィルタリング,周波数フィルタリングを用いた変換方法を示す。
 5章では,画像の中から類似している部分や移動物体などを検出するなどといった,画像の特徴を抽出する方法について述べる。
 6章では,複数の画像を合成して,アルファブレンディング,イメージモザイキング,モーフィングといった特殊な効果を得る方法について説明するとともに,画像の圧縮方法も紹介する。
本書は視覚と聴覚に関する広い分野を扱うことから,視覚メディア,聴覚メディア,イメージメディアの三つの分野の組合せによって,さまざまな講義内容に対応できるように構成した。講義構成の例をつぎに四つ示す。本書を教科書として利用するときの参考にしていただきたい。
 (1) 視聴覚メディアの概要を15週で解説する場合:それぞれの学科,学部の教育カリキュラムにおける目標を元に,6章の内容を15週に振り分けてシラバスを構成する。
 (2)  視覚や聴覚と認知を主題にする場合:視覚メディア,聴覚メディアの内容を15週で解説するとともに,章末の演習課題を講義時間内に行うように構成する。
 (3)  画像処理技術を主題にする場合:視覚メディアとイメージメディアの内容を元にして,15週のシラバスを構成する。前半は視覚と認知について,後半は,イメージメディア処理技術を取り上げ,必要に応じて演習問題を取り上げる。
 (4) 三つの分野の一つを取り上げて講義を構成することができる。例えば,視覚メディア分野を扱う場合は,視覚と認知心理の知識を解説するとともに,章末の演習課題を数回の講義で扱ったり,宿題として大きなデザイン課題とするなど,15週のシラバスを構成することができる。同様に,音や音響など聴覚メディアをおもに講義する場合は,3章の聴覚メディアの内容を詳しく講義し,理解を深めるために演習課題を行うように講義を構成する,また画像や映像処理技術の講義をする場合は,イメージメディア分野を中心に扱い,講義と演習を交互に行うようにする。
視聴覚メディアの領域は多岐にわたることから,つぎの3名で分担して執筆した。
近藤邦雄:1,2章,相川清明:3章,竹島由里子:4,5,6章

なお,3~6章の演習問題の解答は,本書の書籍詳細ページに掲載している。
本書の内容は,東京工科大学メディア学部における教育と研究の成果を元にするとともに,さまざまな先端的研究成果も取り入れて,視聴覚メディアの理解を深めることができるようにした。読者が人の視点に立ったメディアコミュニケーション技術の必要性を理解し,今後のメディア社会における生活の質の向上とメディア技術の発展を目指すことを期待する。

2017年3月近藤邦雄・相川清明・竹島由里子

1. 視覚と理解
1.1 表現と理解
 1.1.1 視覚と認知
 1.1.2 表現と視覚・錯覚
1.2 2次元図形と理解
 1.2.1 形(長さ,大きさ)の錯視
 1.2.2 図と地
 1.2.3 複数の図形の認知
 1.2.4 ハイブリッドイメージ
1.3 3次元空間と理解
 1.3.1 3次元的な表現と奥行知覚
 1.3.2 立体の多義図形と不可能立体
1.4 陰影と理解
 1.4.1 クレーター錯視と凹凸反転
 1.4.2 ホロウマスク錯視と奥行反転
 1.4.3 影の効果と理解
1.5 色と理解
 1.5.1 濃淡と明るさの錯視と理解
 1.5.2 色と奥行理解
 1.5.3 混色による色の生成
1.6 動きと理解
 1.6.1 仮現運動
 1.6.2 アモーダル補完とスリットアニメーション
 1.6.3 モーションブラー
1.7 両眼立体視と理解
演習問題

2. 視覚と表現
2.1 絵画と表現
2.2 3次元空間と表現
 2.2.1 線の描画:明確な区別
 2.2.2 誘目性の活用:「魅せる」部分の限定
 2.2.3 3次元形状の誇張
 2.2.4 インタラクティブスケッチモデリング
2.3 陰影と表現
2.4 色と表現
 2.4.1 CGによる質感表現
 2.4.2 調和配色とデザイン
 2.4.3 画像処理技術を用いた画像生成
2.5 動きと表現
 2.5.1 動きの誇張表現
 2.5.2 過去のアニメ作品の動き利用
 2.5.3 カトゥーンブラー
2.6 立体視と表現
演習問題

3. 聴覚とメディア
3.1 音の特徴
 3.1.1 音の物理
 3.1.2 物理量と心理量
 3.1.3 音の特徴の計測
3.2 聴覚心理
 3.2.1 聴覚信号伝達系
 3.2.2 音の知覚特性
 3.2.3 視聴覚相互作用
3.3 心理学的測定法
 3.3.1 心理物理的方法
 3.3.2 調整法,極限法,恒常法
 3.3.3 MOSと二件法
 3.3.4 統計分析と有意差検定
3.4 聴覚実験技術
 3.4.1 データの種類
 3.4.2 刺激音作成における注意
 3.4.3 被験者実験結果に影響を及ぼす要因
 3.4.4 被験者実験の注意
演習問題

4. 画像の「見え方」を変える
4.1 ディジタル画像の性質
 4.1.1 画像のディジタル化
 4.1.2 カラー画像の表現
 4.1.3 ディジタル画像の表示
4.2 トーンカーブによる画像変換
 4.2.1 グレースケール画像の変換
 4.2.2 カラー画像の変換
4.3 空間フィルタリングによる画像変換
 4.3.1 平滑化
 4.3.2 エッジ抽出
 4.3.3 鮮鋭化
4.4 周波数フィルタリング
 4.4.1 フーリエ変換
 4.4.2 周波数領域におけるフィルタリング処理
演習問題

5. 画像から「特徴」を見つける
5.1 画像の特徴量
 5.1.1 画素値の統計的特徴量
 5.1.2 テクスチャの統計的特徴量
 5.1.3 2次元フーリエ変換のパワースペクトル
5.2 画像の特徴
 5.2.1 コーナーの抽出
 5.2.2 輪郭線の抽出
 5.2.3 図形の抽出
5.3 パターン検出
5.4 移動物体検出
 5.4.1 差分法
 5.4.2 オプティカルフロー
演習問題

6. 画像を合成,変換する
6.1 幾何学的な変換
 6.1.1 アフィン変換
 6.1.2 画像の再標本化
6.2 画像の合成
 6.2.1 マスク処理
 6.2.2 アルファブレンディング
 6.2.3 イメージモザイキング
 6.2.4 モーフィング
6.3 画像と符号化
 6.3.1 エントロピー符号化
 6.3.2 予測符号化
 6.3.3 変換符号化
 6.3.4 画像の性質を考慮した符号化
演習問題

引用・参考文献
索引

近藤 邦雄

近藤 邦雄(コンドウ クニオ)

1973年からコンピュータグラフィックス(CG)の研究をはじめ、1982年に「モダングラフィックス(コロナ社)」を執筆しました。半世紀近くCGの研究とCGを利用する映像コンテンツ制作に関係する研究を行ってきました。モダングラフィックスの内容は図的表現と理解を主題にしたことから従来の図学の教科書の内容とは全く異なった書籍となりました。CGそのものの研究と映像コンテンツ制作の研究成果をもとに、それらを体系的にまとめ教育を行い、その結果をもとにメディア学入門、コンテンツクリエーション、視聴覚メディアを共著で執筆しました。

相川 清明

相川 清明(アイカワ キヨアキ)

卒業研究ではレーザー光線を使った立体写真であるホログラフィの研究を行いました。大学院では生体信号処理の研究を行い、企業に就職してからは音声認識の研究を行ってきました。これらの研究は一見脈絡は無いように思われますが、信号の取り扱いという観点では共通なところが多いのです。音声認識では特に、聴覚の優れた機能を取り入れた信号処理の方法について研究を行ってきました。大学に移ってからは、音声だけでなく音や音楽、さらには視聴覚にも分野を拡大して研究を進めてきました。

竹島 由里子

竹島 由里子(タケシマ ユリコ)

学部ではデータベース、大学院以降はコンピュータグラフィックス、特に、コンピュータビジュアリゼーション(可視化)に関する研究を行ってきました。「百聞は一見に如かず」といわれるように、実際に自分の目で見て情報を解釈するということは、大変重要な意味をもちます。本書が可視化研究に興味をもつきっかけの一助になることを願っています。

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