レーダの基礎 - 探査レーダから合成開口レーダまで -

レーダの基礎 - 探査レーダから合成開口レーダまで -

レーダについて初学者を対象に電磁波の解説から始め,原理と種類,応用までを,学部レベルの数学を使って解説する。

  • 口絵
ジャンル
発行年月日
2017/03/03
判型
A5
ページ数
292ページ
ISBN
978-4-339-00894-4
レーダの基礎 - 探査レーダから合成開口レーダまで -
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定価

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  • 内容紹介
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本書は,専門性の高いレーダについて,初学者を対象に電磁波の解説から始め,レーダの原理と種類,応用(探査・追尾レーダ,気象レーダ,車載レーダ,SAR等の画像レーダ,地中レーダ)までを,学部レベルの数学を使って解説する。

電波を用いたシステムの代表例を筆者が挙げるとすれば,それは無線通信とレーダである。無線通信に関しては,近年では携帯電話やスマートフォンに代表される移動通信の普及により,一般の方にも身近な存在となっている。国内にも多くの研究者/技術者がおり,日々多くの研究開発成果が発表され,学会でも活発な議論が交わされている。一方,レーダに関しては,軍事,気象観測,航空管制など用途が特殊なため,一般の方に身近な存在になっているとは言い難い。近年では,車の衝突防止を目的とした車載ミリ波レーダが普及期に入ってはいるものの,無線通信ほど一般化はしていない。必然,研究者/技術者も限られており,通信関係者からすると,何をしているのか,よくわからないのが実情ではないかと思われる。

しかし,筆者の経験では,電波の観点で見ると無線通信とレーダの間には一定の類似性があり,基礎となる理論や処理方式にかなりの共通性があるように思われる。そこで,本書では,通信研究者/技術者向けに通信とレーダとの類似性の視点を取り入れながら,レーダの基礎を解説する。具体的には,両者に共通的なテーマであるレンジ方程式,変復調方式,信号検出に特化し,理論を主体に解説を行う。それぞれ,無線通信を専門とする研究者/技術者にとって馴染みのある内容を導入部として,理論式の導出については天下り的な記述をできるだけ避けることで,無線通信とレーダの共通的な部分を理解していただけるように配慮したつもりである。しかし,筆者の力不足もあり,読者の皆さんの期待に十分に応えられていない可能性もある。この点については,読者の皆さんから忌憚のないご意見をいただきたい。なお,上記趣旨により,本書ではレーダ技術全般を解説しているわけではなく,例えば追尾などのレーダ特有の処理については記載していないことをあらかじめご了承いただきたい。レーダ技術全般を理解するのに役立つ資料として文献1)~4)を挙げるので,興味のある読者はそちらもご参照いただきたい。

以下,本書の構成はつぎのようになっている。1章では,レーダの歴史,機器構成,計測可能な物理量,およびレーダの用途を解説し,レーダの概要を理解することを目的とする。2章では,レーダの回線設計を行うためのレンジ方程式について解説する。3章では,レンジ方程式の主要パラメータであるアンテナ利得,受信雑音電力,レーダ断面積を決める物理的な要因を解説する。4章では,レーダで用いられる各種変復調方式を示し,変調方式の各パラメータと探知性能の関係を解説する。5章では,しきい値設定による信号検出法および検出性能について解説する。

上述したように,筆者の経験では,無線通信とレーダに関しては共通する理論や処理方式が多いと思われる。このため,おのおのの研究分野を理解することにより,それぞれの課題解決への糸口,あるいは新たな研究テーマの発掘につながるのではないかと考えている。例えば,本書内でも触れるが,海外では周波数ひっ迫問題の解決策の一つとして,通信信号とレーダ信号を共用化する研究が数多く報告されている。このような異分野の融合領域は,将来的に注目すべきテーマの一つではないかと筆者は考えている。読者の皆さんにとって,本書が課題解決の糸口や新たな研究テーマ発掘の契機となったとすれば望外の喜びである。

なお,本書は,電子情報通信学会コミュニケーションクオリティ研究専門委員会主催の第4回コミュニケーションクオリティ基礎講座ワークショップで作成したテキストをベースに追記/修正を行ったものである。ワークショップテキスト作成の際には,実行委員の皆さんから多くの貴重な意見をいただいた。ここに改めて感謝申し上げたい。

2019年4月 髙橋徹

1. 序論:レーダの概要
1.1 電磁波スペクトル
1.2 レーダの原理と定義
 1.2.1 パルスレーダ
 1.2.2 最大探知レンジ
 1.2.3 分解能
 1.2.4 チャープ信号とパルス圧縮技術
1.3 レーダ小史
 1.3.1 黎明期(19世紀後半~1920年代)
 1.3.2 発展期(1930年代~1940年代半ば)
 1.3.3 最盛期(1940年代半ば~)
 1.3.4 捜索レーダ
 1.3.5 追尾レーダ
 1.3.6 アクティブフェーズドアレイレーダ
 1.3.7 気象レーダ
 1.3.8 車載レーダ
 1.3.9 合成開口レーダと逆合成開口レーダ
 1.3.10 地中レーダ
1.4 おもなレーダの種類と応用
 1.4.1 捜索レーダ
 1.4.2 追尾レーダ
 1.4.3 気象レーダ
 1.4.4 車載レーダ
 1.4.5 サイドルッキング機上レーダ
 1.4.6 合成開口レーダ
 1.4.7 地中レーダ
 1.4.8 その他のレーダ

2. レーダ方程式とマイクロ波の散乱
2.1 電磁波の基礎知識
 2.1.1 横波と平面波
 2.1.2 偏波特性
 2.1.3 マイクロ波の減衰と反射係数
2.2 レーダ方程式
 2.2.1 レーダ方程式とレーダレンジ方程式
 2.2.2 最大探知距離とパルス反復周波数
 2.2.3 規格化レーダ断面積
 2.2.4 マイクロ波の散乱とレーダ断面積
2.3 アンテナと電波反射鏡
 2.3.1 アンテナ
 2.3.2 電波反射鏡
2.4 ステルス技術と電波吸収技術
 2.4.1 形状制御技術
 2.4.2 電波吸収技術

3. レーダクラッタ
3.1 レーダクラッタと統計的性質
 3.1.1 レーダクラッタとターゲット
 3.1.2 統計的記述の基礎知識
3.2 クラッタと確率密度関数
 3.2.1 正規分布
 3.2.2 レイリー分布
 3.2.3 対数正規分布
 3.2.4 ワイブル分布
 3.2.5 ガンマ分布
 3.2.6 K-分布
 3.2.7 確率密度関数と対象物
3.3 確率密度関数の選定:AIC
 3.3.1 最尤推定値
 3.3.2 K-L情報量
 3.3.3 赤池情報量基準:AIC
 3.3.4 AICの例
3.4 ターゲット検出と一定誤警報率
 3.4.1 誤警報確率と検出確率
 3.4.2 一定誤警報率:CFAR
 3.4.3 Log-CFAR
 3.4.4 Linear-CFAR
 3.4.5 対数正規-CFAR
 3.4.6 CFAR損出
 3.4.7 その他のCA-CFAR
 3.4.8 ノンパラメトリックCFAR
 3.4.9 画像レーダデータのCFAR処理

4. レーダ信号処理
4.1 信号の変復調
 4.1.1 複素表現
 4.1.2 AM変復調
 4.1.3 FM変復調
4.2 フーリエ解析
 4.2.1 フーリエ変換
 4.2.2 パワースペクトル解析
 4.2.3 解析信号
 4.2.4 超関数のフーリエ変換
4.3 フィルタ処理
 4.3.1 白色性雑音
 4.3.2 整合フィルタ
 4.3.3 逆フィルタ
 4.3.4 Wienerフィルタ
4.4 ディジタル信号処理
 4.4.1 信号の離散化
 4.4.2 信号の復元
 4.4.3 離散フーリエ変換(DFT)
 4.4.4 高速フーリエ変換(FFT)

5. 捜索・追尾レーダ
5.1 捜索レーダ
 5.1.1 捜索レーダの概要
 5.1.2 捜索レーダの構成
 5.1.3 レーダ覆域
 5.1.4 目標検出処理
5.2 追尾処理
 5.2.1 追尾処理の概要
 5.2.2 追尾レーダ
 5.2.3 単一目標追尾と多目標追尾
 5.2.4 座標系
 5.2.5 干渉形フィルタと非干渉形フィルタ
 5.2.6 代表的な非干渉形フィルタ
 5.2.7 代表的な干渉形フィルタ
 5.2.8 ベイズ推定手法による多目標追尾法

6. 気象レーダ
6.1 気象レーダの概要と特徴
 6.1.1 日本の気象レーダの歴史
 6.1.2 気象レーダの種類
 6.1.3 気象レーダで観えるもの
 6.1.4 観測手法(PPI,RHI,CAPPI)
 6.1.5 観測誤差要因
6.2 レーダによる降雨の観測
 6.2.1 降水量の推定
 6.2.2 降水のモデル
 6.2.3 レーダ・アメダス合成雨量
 6.2.4 特徴的なエコーパターン
 6.2.5 二重偏波レーダ
 6.2.6 わが国における二重偏波レーダを用いた観測
6.3 ドップラーレーダによる大気の観測
 6.3.1 ドップラーレーダの原理
 6.3.2 ドップラーレーダによる風観測
 6.3.3 ドップラー速度場のパターン
 6.3.4 具体的な観測例(竜巻やダウンバースト)
6.4 さまざまなレーダによる観測
 6.4.1 ウィンドプロファイラ
 6.4.2 ドップラーライダ
 6.4.3 ドップラーソーダ
 6.4.4 RASSレーダ
6.5 最新のレーダ観測技術
 6.5.1 X-NET(Xバンドレーダネットワーク)
 6.5.2 雲レーダ
 6.5.3 フェーズドアレイレーダ
 6.5.4 レーダを用いた短時間予測(ナウキャスト)

7. 車載レーダ
7.1 車載レーダの概要と特徴
7.2 変調方式
 7.2.1 FM-CW方式
 7.2.2 2周波CW方式
 7.2.3 相対速度ゼロおよび相対速度同一の複数ターゲット検知対策
7.3 クラッタの統計的性質
 7.3.1 レンジプロファイル
 7.3.2 クラッタの統計的性質
 7.3.3 赤池情報量規準(AIC)による分布検定
7.4 クラッタ抑圧
 7.4.1 レンジプロファイル
 7.4.2 パルス積分による信号電力対クラッタ電力比(SCR)
 7.4.3 パラメトリックCFARとパルス積分によるクラッタ抑圧
 7.4.4 荷重パルス積分法
7.5 目標物検知・識別
 7.5.1 ハフ変換による複数移動目標物検知
7.6 今後の課題
 7.6.1 レーダの近距離性能の向上
 7.6.2 多様な環境での検知能力向上
 7.6.3 他センタとの協調センシング
7.7 将来の車載レーダ

8. 合成開口レーダ
8.1 パルス圧縮技術
 8.1.1 レンジ方向の分解能:パルス圧縮技術
 8.1.2 点拡張関数と分解能の基準
8.2 合成開口レーダ
 8.2.1 合成開口技術
 8.2.2 移動体の画像
 8.2.3 画像変調
 8.2.4 観測モード
8.3 干渉合成開口レーダ
 8.3.1 干渉SARの原理と複素インタフェログラム
 8.3.2 地表標高の計測
 8.3.3 地表高度変化の計測
 8.3.4 InSARデータ処理の流れ
8.4 偏波合成開口レーダ
 8.4.1 偏波情報と散乱行列
 8.4.2 散乱成分の電力分解と固有値解析
8.5 将来の合成開口レーダ

9. 地中レーダ
9.1 GPRの原理
 9.1.1 地中の電磁波伝搬
 9.1.2 電磁波の反射
9.2 岩石・地層の比誘電率
9.3 GPR計測
 9.3.1 レーダシステムの性能評価
 9.3.2 GPRシステム
 9.3.3 レーダ送信波形
 9.3.4 受信波形
 9.3.5 波形表示
9.4 計測手法
 9.4.1 アンテナ配置
 9.4.2 誘電率分布測定
9.5 データ処理技術
 9.5.1 地下構造とレーダ波形
 9.5.2 信号処理
9.6 モデリング
 9.6.1 波線追跡法
 9.6.2 FDTD
9.7 応用
9.8 電磁波を用いた地下計測
9.9 将来の地中レーダ

引用・参考文献
索引

平木 直哉(ヒラキ ナオヤ)

松田 庄司(マツダ ショウジ)

小菅 義夫(コスゲ ヨシオ)

小林 文明(コバヤシ フミアキ)

松波 勲(マツナミ イサム)

佐藤 源之

佐藤 源之(サトウ モトユキ)

レーダを用いた環境計測技術の開発と応用を進めてきました。地中レーダ(GPR)は地下水など地下環境、埋設管検知、コンクリート内部や遺跡の調査に加え、地雷検知への利用も進んでいます。また地表設置型合成開口レーダ(GB-SAR)は地滑りや社会インフラ計測に利用できます。電波の反射・散乱現象を利用するレーダ技術を電波工学に基づき理解することにより、民生用のレーダ利用は今後急速に発展すると予想しています。

掲載日:2022/06/01

「電子情報通信学会誌」2022年6月号広告

掲載日:2020/09/01

「電子情報通信学会誌」2020年9月号広告

掲載日:2020/08/03

「電子情報通信学会誌」2020年8月号広告

掲載日:2020/03/23

「日本航空宇宙学会誌」2020年3月号広告

掲載日:2019/12/01

「電子情報通信学会誌」2019年12月号広告

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