通信技術者のためのレーダの基礎

通信技術者のためのレーダの基礎

  • 高橋 徹 三菱電機(株) 博士(工学)

無線通信とレーダとの類似性の視点を取り入れながら,両者に共通するレンジ方程式,変復調方式,信号検出に特化し,理論を解説。

ジャンル
発行年月日
2019/07/05
判型
A5
ページ数
176ページ
ISBN
978-4-339-00923-1
通信技術者のためのレーダの基礎
在庫あり

定価

2,750(本体2,500円+税)

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【書籍の特徴】
 通信研究者/技術者向けに通信とレーダとの類似性の視点を取り入れながら,レーダの基礎を解説する。具体的には,両者に共通的なテーマであるレンジ方程式,変復調方式,信号検出に特化し,理論を主体に解説を行う。それぞれ,無線通信を専門とする研究者/技術者にとって馴染みのある内容を導入部として,理論式の導出については天下り的な記述をできるだけ避けることで,無線通信とレーダの共通的な部分を理解していただけるように配慮した。
【各章について】
1 章では,レーダの歴史,機器構成,計測可能な物理量,およびレーダの用途を解説し,レーダの概要を理解することを目的とする。2 章では,レーダの回線設計を行うためのレンジ方程式について解説する。3 章では,レンジ方程式の主要パラメータであるアンテナ利得,受信雑音電力,レーダ断面積を決める物理的な要因を解説する。4 章では,レーダで用いられる各種変復調方式を示し,変調方式の各パラメータと探知性能の関係を解説する。5 章では,しきい値設定による信号検出法および検出性能について解説する。
【著者からのメッセージ】
 筆者の経験では,無線通信とレーダに関しては共通する理論や処理方式が多いと思われる。このため,おのおのの研究分野を理解することにより,それぞれの課題解決への糸口,あるいは新たな研究テーマの発掘につながるのではないかと考えている。例えば,本書内でも触れるが,海外では周波数ひっ迫問題の解決策の一つとして,通信信号とレーダ信号を共用化する研究が数多く報告されている。このような異分野の融合領域は,将来的に注目すべきテーマの一つではないかと筆者は考えている。読者の皆さんにとって,本書が課題解決の糸口や新たな研究テーマ発掘の契機となったとすれば望外の喜びである。

電波を用いたシステムの代表例を筆者が挙げるとすれば,それは無線通信とレーダである。無線通信に関しては,近年では携帯電話やスマートフォンに代表される移動通信の普及により,一般の方にも身近な存在となっている。国内にも多くの研究者/技術者がおり,日々多くの研究開発成果が発表され,学会も活発な議論が交わされている。一方,レーダに関しては,軍事,気象観測,航空管制など用途が特殊なため,一般の方に身近な存在になっているとは言い難い。近年では,車の衝突防止を目的とした車載ミリ波レーダが普及期に入ってはいるものの,無線通信ほど一般化はしていない。必然,研究者/技術も限られており,通信関係者からすると,“何をしているのか,よくわからない”のが実情ではないかと思われる。

しかし,筆者の経験では,電波の観点で見ると無線通信とレーダの間には一定の類似性があり,基礎となる理論や処理方式にかなりの共通性があるように思われる。そこで,本書では,通信研究者/技術者向けに通信とレーダとの類似性の視点を取り入れながら,レーダの基礎を解説する。具体的には,両者に共通的なテーマであるレンジ方程式,変復調方式,信号検出に特化し,理論を主体に解説を行う。それぞれ,無線通信を専門とする研究者/技術者にとって馴染みのある内容を導入部として,理論式の導出については天下り的な記述をできるだけ避けることで,無線通信とレーダの共通的な部分を理解していただけるように配慮したつもりである。しかし,筆者の力不足もあり,読者の皆さんの期待に十分に応えられていない可能性もある。この点については,読者の皆さんから忌憚のないご意見をいただきたい。なお,上記趣旨により,本書ではレーダ技術全般を解説しているわけではなく,例えば追尾などのレーダ特有の処理については記載していないことをあらかじめご了承いただきたい。レーダ技術全般を理解するのに役立つ資料として文献1)~4)を挙げるので,興味のある読者はそちらもご参照いただきたい。

以下,本書の構成はつぎのようになっている。1章では,レーダの歴史,機器構成,計測可能な物理量,およびレーダの用途を解説し,レーダの概要を理解することを目的とする。2章では,レーダの回線設計を行うためのレンジ方程式について解説する。3章では,レンジ方程式の主要パラメータであるアンテナ利得,受信雑音電力,レーダ断面積を決める物理的な要因を解説する。4章では,レーダで用いられる各種変復調方式を示し,変調方式の各パラメータと探知性能の関係を解説する。5章では,しきい値設定による信号検出法および検出性能について解説する。

上述したように,筆者の経験では,無線通信とレーダに関しては共通する理論や処理方式が多いと思われる。このため,おのおのの研究分野を理解することにより,それぞれの課題解決への糸口,あるいは新たな研究テーマの発掘につながるのではないかと考えている。例えば,本書内でも触れるが,海外では周波数ひっ迫問題の解決策の一つとして,通信信号とレーダ信号を共用化する研究が数多く報告されている。このような異分野の融合領域は,将来的に注目すべきテーマの一つではないかと筆者は考えている。読者の皆さんにとって,本書が課題解決の糸口や新たな研究テーマ発掘の契機となったとすれば望外の喜びである。

なお,本書は,電子情報通信学会コミュニケーションクオリティ研究専門委員会主催の第4回コミュニケーションクオリティ基礎講座ワークショップで作成したテキストをベースに追記/修正を行ったものである。ワークショップテキスト作成の際には,実行委員の皆さんから多くの貴重な意見をいただいた。ここに改めて感謝申し上げたい。

2019年4月 髙橋 徹

1.レーダの概要
1.1 レーダの歴史
1.2 レーダの基本構成
1.3 レーダで推定可能なおもな物理量
 1.3.1 目標位置の推定
 1.3.2 相対移動速度の推定
1.4 レーダの種類

2.レンジ方程式
2.1 無線通信のレンジ方程式:フリスの伝達公式
2.2 レーダのレンジ方程式(1):孤立点目標のレーダ方程式
2.3 レーダのレンジ方程式(2):体積分布型目標のレーダ方程式
2.4 レーダのレンジ方程式(3):面積分布型目標のレーダ方程式
2.5 レーダのレンジ方程式(4):平均電力表現によるレーダ方程式
2.6 損失要因

3.アンテナ/受信雑音/レーダ断面積
3.1 アンテナ
 3.1.1 開口面アンテナの概要
 3.1.2 開口面アンテナの利得
 3.1.3 開口面アンテナの放射指向性(1):方形開口一様分布
 3.1.4 開口面アンテナの放射指向性(2):円形開口一様分布
 3.1.5 開口面アンテナの放射指向性(3):円形開口ガウス分布
 3.1.6 アレーアンテナの概要
 3.1.7 アレーアンテナの放射指向性解析
 3.1.8 リニアアレーの放射指向性
 3.1.9 リニアアレーのグレーティングローブ
 3.1.10 等振幅リニアアレーのアンテナ利得,サイドローブレベル,ビーム幅
 3.1.11 平面アレーの放射指向性
 3.1.12 4角配列平面アレーの放射指向性
 3.1.13 任意周期配列平面アレーの放射指向性とグレーティングローブチャート
 3.1.14 平面アレーのアンテナ利得
 3.1.15 4角配列平面アレーと3角配列平面アレーの比較
3.2 受信雑音
 3.2.1 受信系雑音源の概要
 3.2.2 外来雑音電力(アンテナ受信雑音電力)
 3.2.3 低雑音増幅器で発生する雑音電力
 3.2.4 損失のある給電回路で発生する雑音電力
 3.2.5 システム雑音温度
3.3 レーダ断面積(RCS)

4.変復調方式
4.1 変調波の表現式とアナログ変調
 4.1.1 変調波の表現式
 4.1.2 振幅変調
 4.1.3 位相変調・周波数変調
4.2 無線通信におけるディジタル変調
4.3 レーダの変調方式概要
4.4 レーダの変調方式(1):パルス変調方式
 4.4.1 送信波形と受信データ列
 4.4.2 マッチドフィルタ(fasttime信号処理)
 4.4.3 パルス変調信号のマッチドフィルタ
 4.4.4 パルス変調信号の送信スペクトルと雑音帯域幅
 4.4.5 ドップラー周波数が既知の理想的なマッチドフィルタ出力
 4.4.6 ドップラーシフトが未知のマッチドフィルタ出力
 4.4.7 パルス変調信号のアンビギュイティ関数
 4.4.8 パルス変調信号に対するマッチドフィルタ処理後の信号対雑音電力比
 4.4.9 ドップラー信号処理(slowtime信号処理)
 4.4.10 離散フーリエ変換による損失(straddle損失)
 4.4.11 ドップラー周波数による目標分離
 4.4.12 PRFの選定方法
4.5 レーダの変調方式(2):線形周波数変調パルス方式
 4.5.1 LFMパルス信号の送信波形
 4.5.2 LFMパルス信号の周波数スペクトル
 4.5.3 LFMパルス信号のアンビギュイティ関数
 4.5.4 LFMパルス信号による距離応答特性
 4.5.5 LFMパルス信号のドップラー応答とレンジドップラーカップリング
 4.5.6 LFMパルスのマッチドフィルタ処理後の信号対雑音電力比とパルス圧縮利得
4.6 レーダの変調方式(3):符号位相変調パルス方式
 4.6.1 2値位相変調:バーカー符号による位相変調
 4.6.2 バーカー符号位相変調信号の周波数スペクトル
 4.6.3 バーカー符号位相変調信号のアンビギュイティ関数
 4.6.4 多値位相変調方式

5.信号検出
5.1 ディジタル無線通信における信号検出
 5.1.1 熱雑音によるシンボル誤り率
 5.1.2 フェージング環境下でのシンボル誤り率
5.2 レーダにおける信号検出の概要
5.3 複素ガウス分布不要信号に対する誤警報確率と変動のない目標の検出確率
 5.3.1 誤警報確率としきい値の関係
 5.3.2 検出確率としきい値の関係
 5.3.3 ノンコヒーレント積分による検出確率向上
5.4 変動のある目標に対する検出確率
5.5 一定誤警報確率(CFAR)処理
5.6 CA-CFARの検出性能解析

付録
付録A 式(3.33)の導出
付録B 式(3.61)の導出
付録C 式(5.11)の導出
付録D 式(5.20)の導出
付録E 式(5.25)の導出
付録F 式(5.39)の導出
付録G 式(5.40)の導出
付録H 式(5.45)の導出
付録I 式(5.50)の導出
付録J 式(5.65)の導出
付録K 式(5.67)の導出

引用・参考文献
索引

高橋 徹(タカハシ トオル)

「電子情報通信学会誌」2019年12月号

掲載日:2019/12/01

電子情報通信学会誌 2019年12月号広告