感性情報学 オノマトペから人工知能まで

感性情報学 - オノマトペから人工知能まで -

幅広い分野での感性計測方法を紹介すると共に,オノマトペや様々な自然言語を活用した方法,更に感性への深層学習適用と応用まで解説

ジャンル
発行年月日
2018/07/25
判型
A5
ページ数
200ページ
ISBN
978-4-339-02886-7
  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • レビュー
  • 著者紹介

心理学,脳科学,工学など幅広い分野での感性計測方法を紹介するとともに,筆者ならではのオノマトペ(擬音語・擬態語の総称)やさまざまな自然言語を活用した方法,さらに感性への深層学習適用と応用まで解説する。

本書は,感性について興味があって学びたいという読者,顧客の感性を定量化する情報技術が求められる実務家の読者など,幅広い読者にお読みいただきたい本である。感性については,心理学,認知科学,脳科学,工学など幅広い分野で研究が行われ,さまざまな本が出版されているが,筆者は,感性を定量化する方法として,オノマトペ(「コンコンとドアをたたく」,「さらさらした手触り」,などの擬音語・擬態語の総称)を活用したユニークな研究を行っている。そこで,感性に関する従来の手法の紹介だけでなく,このような技術が生まれた背景,この技術の解説,活用方法まで,筆者ならではの切り口で紹介したいと思う。

さらに,オノマトペだけでなく,筆者は,SNSや普通の会話,文章から,感性を抽出する研究も行っていることから,そのような技術についての解説もする。特にTwitterなどのSNSで発信される情報は,近年マーケティングなどの分野でも注目され,企業でも盛んに分析が行われており,顧客の関心,世の中の動向を把握する上で重要な情報源として注目されている。Twitterなどの情報を解析する際には,自然言語処理技術が用いられるが,本書では,自然言語処理の技術についての解説のみならず,自然言語から感性を抽出する筆者ならではの技術についても紹介したい。

さらに,近年成長が目覚しい人工知能においても,感性は次世代人工知能開発のキーワードであることから,近年の人工知能技術と絡めた解説も行う。

感性は,文系分野でも理工系分野でも扱われる対象であるが,まさに文理融合研究を実践している筆者だからこそ幅広く解説できるトピックであるといえる。文系だが感性を定量化するための情報技術にも関心のある読者,理系だが感性も扱いたい読者まで,幅広く,学部学生のための教科書としても,一般の方の読み物としてもお読みいただけるのではないかと思う。また,筆者は,感性に関連して開発した技術を活用し,長年にわたり数々の産学連携共同研究を行ってきた経験があることから,産業界の実務家の実践にも役立てていただけるのではないかと思う。感性について,新たな可能性を感じていただき,本書が,感性と情報技術の融合研究の未来に光をさすことのできる一冊となれば幸いである。

2018年5月 坂本 真樹

1. 感性情報技術の重要性
1.1 日常生活での「感性」とは
1.2 製品開発で
1.3 マーケティングで
1.4 芸術で
1.5 医療で

2. 人の感性情報処理基礎
2.1 感性情報とは
 2.1.1 情報とは
 2.1.2 人についての情報処理とは
 2.1.3 人についての情報処理研究の系譜
 2.1.4 人の感性情報処理とは
2.2 モノの情報と人の感覚センサ
 2.2.1 人にとってのモノの情報とは
 2.2.2 視覚を通して入力されるモノの情報
 2.2.3 触覚を通して入力されるモノの情報
 2.2.4 聴覚を通して入力されるモノの情報
2.3 モノの情報と脳
 2.3.1 脳の基本構造
 2.3.2 感覚センサと脳
 2.3.3 多感覚知覚
2.4 脳における感性情報処理
 2.4.1 脳における感性
 2.4.2 感性・情動と記憶

3. 感性計測方法
3.1 心理学的方法
 3.1.1 SD法
 3.1.2 SD法によるデータの解析方法
 3.1.3 多次元尺度構成法
3.2 心理物理学的方法
 3.2.1 物理刺激と感性
 3.2.2 心理物理学的測定法に関する基礎概念
3.3 心理生理学的方法
 3.3.1 心理生理学とは
 3.3.2 脳波による計測
 3.3.3 事象関連電位による計測
 3.3.4 fMRIによる計測

4. 感性オノマトペ
4.1 オノマトペによる感性計測手法
 4.1.1 オノマトペとは
 4.1.2 オノマトペの音に感覚が結び付く
 4.1.3 オノマトペによる感性計測手法の強み
4.2 オノマトペの音に感性が結び付く
 4.2.1 オノマトペの音に味・食感が結び付く
 4.2.2 オノマトペの音に手触りの印象が結び付く
4.3 オノマトペによる感性の定量化
 4.3.1 オノマトペ感性評価システム
 4.3.2 オノマトペ感性評価システムの構築手順
 4.3.3 オノマトペ感性評価システムの精度評価
4.4 数量化理論I類
 4.4.1 数量化理論とは
 4.4.2 数量化理論I類
4.5 感性の個人差を把握する方法
 4.5.1 モノから感じる感性の個人差を把握する方法
 4.5.2 システム実装例
 4.5.3 システムの評価実験
4.6 遺伝的アルゴリズムのオノマトペへの適用
 4.6.1 遺伝的アルゴリズム
 4.6.2 オノマトペ生成システム構築手順
 4.6.3 オノマトペ生成システムの実装
 4.6.4 オノマトペ生成システムの有効性

5. 自然言語の感性情報処理
5.1 自然言語処理
 5.1.1 自然言語処理とは
 5.1.2 自然言語処理基礎
5.2 自然言語の意味解析
 5.2.1 知識の集合体の記述
 5.2.2 コーパス
 5.2.3 潜在的意味解析
 5.2.4 潜在的意味解析の実用例
 5.2.5 潜在的意味解析を用いたテキストからの感性情報抽出
5.3 ネット上のビッグデータからの感性情報抽出
 5.3.1 マイクロブログ
 5.3.2 Twitter
 5.3.3 Twitterからのパーソナリティ推定

6. 感性への深層学習適用の可能性
6.1 ニューラルネットワークとは
 6.1.1 ニューラルネットワークの由来
 6.1.2 階層型ニューラルネットワーク
 6.1.3 深層学習(ディープラーニング)
6.2 感性への深層学習適用の可能性
 6.2.1 畳み込みニューラルネットワーク
 6.2.2 再帰型ニューラルネットワーク

7. 感性計測技術の応用
7.1 製品開発現場で
 7.1.1 模造金属を実金属に近づけるデザイン開発支援
 7.1.2 実験
 7.1.3 結果
7.2 マーケティングで
 7.2.1 ブランド名による顧客との感性コミュニケーション
 7.2.2 ブランド名評価システム
7.3 医療現場で
 7.3.1 問診での感性コミュニケーションの重要性
 7.3.2 問診支援システムの開発
 7.3.3 TF-IDF法
7.4 楽曲検索システム
 7.4.1 楽曲からイメージされる色彩
 7.4.2 単語と色彩の相関に着目した楽曲検索システム

おわりに
引用・参考文献
索引

はる 様

特に印象的だったのは感性計測方法の章です。「感性」はどのように測ったらよいのかわかりにくい対象なので、このように本で体系的にまとめられているのは価値があると思いました。オノマトペに関しては少し専門性が高く論文的で、本書の他の章とは異なり、理解が難しいと感じました。他の章は入門ではあるものの、感性情報学の概要をつかむのにとても役立った1冊です。

読者モニターレビュー 【ふじわらともこ様(色彩、デザインディレクション、芸術教育(こども))】

 言葉から感性を抽出する技術は,人口知能やロボットとの共存が進むこれからの時代にとって重要性が増すばかり。
 「感性」を重視した製品がヒットし,医療現場でも「感性」は着目されつつあり,その主体である生活者の「感性」は捉えところがなく,数値化することは一般的には難しいとされているが,本書ではその「感性」を計測するオノマトペ(擬音語・擬態語の総称)による計測手法を中心に解説している期待の書である。
 オノマトペのような曖昧で直感的な言葉から「感性」を理解し,解析されることが「技術」の進化に寄与することにつながることは喜ばしいことではないだろうか。
[読後感想]
 感性は理性に較べ,下位概念におかれることが多いのですが,技術に応用できるという側面もあります。
 人工知能,ロボットと共存する時代に生きる私達にとって人間らしい「感性」を持つことが,人間に求められる時代もすぐそこに到来することを予告しているかのように私には感じられました。

読者モニターレビュー 【研究所の花子さん様(研究アシ/音響,音,心理計測実験)】

本書の前半は,「人間の感性情報技術」について,その重要性,感覚器から脳に至る過程での処理,心理・生理学的な計測方法について基本的なことを中心に分かりやすく述べられています。
 中盤以降は,「オノマトペ」を用いたとてもユニークな感性計測手法について述べられています。数量化理論や遺伝的アルゴリズムを用いたオノマトペ生成システム,音の響きが基になっている「オノマトペ」が素材の質感やブランド名の評価に活用される事例など,とても興味深い内容でした。
 「オノマトペ」を分析,数値化することで,どのような「オノマトペ」を用いると感覚の本質を相手に的確に伝えられるのか? 感覚を言語化し,相互理解を進めるために「オノマトペ」が果たす役割は大きく,食味,食感の表現,医療現場における問診支援など利用が期待されています。スポーツのコーチングなどにも応用できるかと思います。今後の研究に期待したいと思います。