研究に役立つ JASPによる多変量解析 - 因子分析から構造方程式モデリングまで -

研究に役立つ JASPによる多変量解析 - 因子分析から構造方程式モデリングまで -

Rのパッケージを利用したフリーソフトJASPを使い,統計解析の要である多変量解析を学ぶ。

ジャンル
発行年月日
2021/06/23
判型
A5
ページ数
192ページ
ISBN
978-4-339-02916-1
研究に役立つ JASPによる多変量解析 - 因子分析から構造方程式モデリングまで -
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Rのパッケージを利用した高性能なフリーソフトJASPを利用し,統計解析の要である多変量解析について学ぶ。データ解析を必要とする全ての人が活用できるように,分析方法・結果の解釈・報告例を丁寧に記述した。
(JASPについてはこちらの記事もご参考ください:「JASPとは?」)

■対象者
・教育学,心理学,社会学といった社会科学を学ぶ大学生,大学院生,大学教員
・因子分析や構造方程式モデリングといった高度な手法を用いる必要がある人
・お金をかけずに,高度な統計分析を行いたい人
・ただし,t検定や分散分析,回帰分析といった統計分析について理解していることが望ましい

■書籍の特徴
・JASPを用いて多変量解析(因子分析,クラスター分析,一般化線形モデル,構造方程式モデリング,媒介分析)を実行する方法がわかる
・JASPでの多変量解析の実行方法だけではなく,結果のまとめ方もわかる
・各章ごとに実践的な演習問題があり,体系的に多変量解析をマスターできる

コンピュータが発達した現在,t検定や分散分析,カイ2乗検定といった基本的な統計分析のみならず,2変量以上の分類や関連を柔軟に分析できる多変量解析を実行できることが求められています。本書では,近年注目を集めている無料の統計ソフトウェア環境であるJASP(Jeffery’s Amazing Statistics Program)を用いて,多変量解析の方法と結果のまとめ方をわかりやすくまとめました。

JASPはヴィジュアル的かつ直感的なグラフィカルユーザインタフェースを採用し,マウス操作で簡単に統計解析を行うことができます。JASPはベイズ的分析を行えるため脚光を集めてきましたが,様々な多変量解析を行うことができることも特長です。

本書は2021年4月現在,JASPで分析可能な因子分析,クラスター分析,一般化線形モデル,構造方程式モデリングについて詳しく解説しています。読者には是非本書を目で読み進めるだけではなく,本書のサンプルデータを用いてJASPを動かしながら取り組んでほしいと考えています。筆者たちは,本書を通して多くの人が多変量解析を実際の場面で活用し,より多くの有益な知見が得られることを願っています。

◆JASPの日本語対応化進行中!!(2021.5.27現在)
現状公式では日本語に対応していないJASPですが,本書籍著者によりJASP内のメニューの日本語化への対応がとられています。1つのファイルを決まったフォルダーにコピーするだけで日本語メニューに切り替えることができます。詳細は下記ページをご覧ください。
JASPメニューの日本語化の手順(横浜国立大 山本 光)」」

本書は,『研究に役立つJASPによるデータ分析─頻度論的統計とベイズ統計を用いて─』(ISBN:978-4-339-02903-1)の続編である。前著執筆時の2019年と比較して2020年は人類にとって大きな転換期であった。新型コロナウイルスの感染拡大により世界中の人々の生活が激変した。ソーシャルディスタンスが必要となり,仕事もオンライン化せざるを得なかった。その中でわれわれは日々あらゆる情報を受け取ることになった。専門家からの数値データが示され,さまざまな判断がなされてきた。ニュースに表れた数値について例をあげれば,実行再生産数,偽陽性率,偽陰性率,感度,特異度などさまざまな指標が示された。これらはまさにエビデンスに基づく判断に必要なデータであった。これからは,医療も経済もエビデンスに基づいて判断される時代といえよう。

しかし,ここで注意が必要である。このエビデンスとは正解ではない。われわれはデータが示されるとそれが重要であると考えるが,それと同時に問題解決の正解が示されたと勘違いしてしまう。データが得られ,データ分析した結果をもとに,どう行動するかを判断するのは人間である。これはデータ分析全般にいえることで,正しくデータを取り,条件を示しながらデータ分析を実施し,得られた結果を人間が判断するのである。そして,データ分析には限界もあり,時代や場所などの条件により,データ分析の結果が変わってくる。したがって,つねに批判的(複眼的)な態度で現象を見る必要がある。

本書は,データ分析の手法の中でも多変量解析と呼ばれるものを紹介している。多変量解析とは,文字の通り,複数の変数を対象としたデータ分析の手法である。多変量解析は大きく分けると,複数のデータを分類・要約することと複数のデータ間の因果関係を検討することである。また,最終的な目標としては,複数の項目間の関係構造を明らかにすることである。本書で紹介する各手法の関係は,1章の図1.4を参照いただきたい。

本書では,まずデータ分析の基礎的な内容を確認する。多変量解析の全体像を理解するためには1章を読んでいただきたい。つぎに2章ではJASPにデータを読み込むための,データのハンドリングを知ることができる。ここで多変量解析の一つの柱であるデータの分類・要約の章に入る。3章では尺度を構成する探索的因子分析,4章では尺度の確認を行う確認的因子分析と続き,5章では作成した尺度の妥当性を検討する。6章では,変数を縮約(項目をまとめて数を減らすこと)を行う主成分分析を扱う。7章では,データの分類手法の一つであるクラスター分析を扱う。8章では,あるデータの影響を取り除いて複数の群について,その平均値の差の有無を求める。

つぎに多変量解析のもう一つの柱であるデータ間の因果関係を検討する。9章では,回帰分析の基礎と階層的重回帰分析を扱う。10章からは一般化線形モデルを扱う。はじめに,データが0と1のような2値のデータについてロジスティクス回帰分析を扱う。続いて11章では,複数の群を比較する際に用いられるマルチレベル分析を扱う。12章では,クロス集計表で表現された質的データに対して行う対数線形モデルを扱う。

最後は,変数間の構造を明らかにする内容である。13章では,構造方程式モデリングを扱う。14章では,変数間を媒介する変数の影響を検討することで,より正しい構造の解析が可能となる。

各章の流れは以上であるが,現代のデータ分析の世界は日々進歩しており,そのすべてを紙面に掲載することができなかった。ここに紹介した手法を一通り学んだ後は,さらなる専門書や研究論文などを読み,学びを進めていただきたい。また,専門用語の一部は十分な解説が掲載されていないため,各自調べながら読み進めていただきたい。JASPのメニューが英語であることから,各専門用語の英語表記と日本語表記を本書で学ぶことができるメリットを活かして,ぜひ英語の論文にもチャレンジしてほしい。なお,本文中の[ ]はJASPのメニューを示している。またサンプルデータはコロナ社のWebサイト(https://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339029161/)からダウンロードもできる。

最後に,続編の出版の機会を与えていただいたコロナ社の皆様に感謝する。また,執筆当時は博士課程の大学院生であった主著者の清水優菜の指導教員である慶應義塾大学教職課程センターの鹿毛雅治教授のご支援に感謝する。ここに関係各位に感謝申し上げる。

2021年4月
清水 優菜・山本 光

1.多変量解析を俯瞰する
1.1 多変量解析とは
 1.1.1 データの種類
 1.1.2 代表値
 1.1.3 散布度
 1.1.4 共変動
1.2 多変量解析のロードマップ
 1.2.1 複数のデータを分類・要約する手法
 1.2.2 複数のデータ間の因果関係を検討する手法
補足:p値と効果量について

2.JASPでデータハンドリングする
2.1 多変量データの特徴
2.2 データハンドリング
 2.2.1 データの読み込み
 2.2.2 データの種類の変更
 2.2.3 データの作成
 2.2.4 欠損値の処理
 2.2.5 反転項目の処理
 2.2.6 条件を満たすデータの抽出
章末問題

3.尺度を開発する
3.1 因子分析とは
 3.1.1 因子分析の構造
 3.1.2 探索的因子分析と確認的因子分析
 3.1.3 探索的因子分析の手順
3.2 探索的因子分析の実行
 3.2.1 探索的因子分析の実行
 3.2.2 結果の書き方
章末問題

4.既存の尺度・開発した尺度を確認する
4.1 確認的因子分析とは
 4.1.1 モデルの適合度指標
 4.1.2 因子負荷量や因子間相関の推定法
4.2 確認的因子分析の実行
 4.2.1 確認的因子分析の実行
 4.2.2 結果の書き方
章末問題

5.テストや尺度の信頼性係数を求める
5.1 妥当性と信頼性
 5.1.1 伝統的な妥当性の捉え方
 5.1.2 Messickによる妥当性の捉え方
5.2 信頼性係数とは
 5.2.1 再検査法
 5.2.2 平行検査法
 5.2.3 内的一貫性
5.3 信頼性係数の算出
 5.3.1 メニューの追加
 5.3.2 信頼性係数の算出
 5.3.3 結果の書き方
章末問題

6.変数を縮約する
6.1 主成分分析とは
 6.1.1 主成分の決定法
 6.1.2 主成分数の決定
 6.1.3 主成分分析の推定法と回転法
 6.1.4 主成分負荷量と主成分寄与,主成分得点
 6.1.5 主成分分析の解釈
6.2 主成分分析の実行
 6.2.1 主成分分析の実行
 6.2.2 結果の書き方
章末問題

7.データを分類する
7.1 クラスター分析とは
 7.1.1 階層的クラスター分析
 7.1.2 非階層的クラスター分析
 7.1.3 クラスター分析の注意点
7.2 階層的クラスター分析の実行
 7.2.1 メニューの追加
 7.2.2 階層的クラスター分析の実行
 7.2.3 得られたクラスターの特徴の検討
 7.2.4 結果の書き方
7.3 非階層的クラスター分析の実行
 7.3.1 非階層的クラスター分析の実行とクラスターの特徴の検討
 7.3.2 結果の書き方
章末問題

8.あるデータの影響を取り除いて平均値を比較する
8.1 分散分析とは
8.2 共分散分析とは
8.3 共分散分析の実行
 8.3.1 前提条件の確認
 8.3.2 共分散分析の実行
 8.3.3 結果の書き方
補足:共分散分析をしないと…
章末問題

9.データを説明・予測する:階層的重回帰分析
9.1 回帰分析とは
 9.1.1 回帰分析の方法
 9.1.2 回帰分析の結果
 9.1.3 回帰分析の注意点
9.2 階層的重回帰分析とは
 9.2.1 交互作用の検討
 9.2.2 単純傾斜分析
9.3 階層的回帰分析の実行
 9.3.1 変数の中心化
 9.3.2 階層的回帰分析の実行
 9.3.3 単純傾斜分析の実行
 9.3.4 結果の書き方
章末問題

10.2値データを予測・説明する
10.1 一般化線形モデルとは
 10.1.1 一般化線形モデル
 10.1.2 確率分布
 10.1.3 リンク関数
10.2 ロジスティック回帰分析とは
 10.2.1 ロジスティック回帰分析における切片と回帰係数
 10.2.2 オッズ・オッズ比による回帰係数の解釈
 10.2.3 ロジスティック回帰分析の評価
 10.2.4 ロジスティック回帰分析の注意点
10.3 ロジスティック回帰分析の実行
 10.3.1 ロジスティック回帰分析の実行
 10.3.2 結果の書き方
章末問題

11.マルチレベルデータを分析する
11.1 マルチレベル分析とは
 11.1.1 ランダム切片モデルとランダム傾きモデル
 11.1.2 ICCとDEFF
 11.1.3 固定効果と変量効果
 11.1.4 二つの中心化
 11.1.5 マルチレベル分析の注意点
11.2 マルチレベル分析の実行
 11.2.1 ICCとDEFFの算出
 11.2.2 中心化
 11.2.3 マルチレベル分析の実行
 11.2.4 モデルの比較
 11.2.5 結果の書き方
章末問題

12.質的変数の連関を検討する
12.1 対数線形モデルとは
 12.1.1 二つの質的変数における対数線形モデル
 12.1.2 三つの質的変数における対数線形モデル
 12.1.3 モデルの選択
 12.1.4 対数線形モデルの注意点
12.2 対数線形モデルの実行
 12.2.1 対数線形モデルの実行
 12.2.2 結果の書き方
章末問題

13.変数間の複雑な関連を検討する
13.1 構造方程式モデリングとは
 13.1.1 パス図による表現
 13.1.2 方程式による表現
 13.1.3 変数の区別
 13.1.4 構造方程式モデリングの手順
 13.1.5 モデルの適合度指標
 13.1.6 モデルの修正
 13.1.7 構造方程式モデリングの注意点
13.2 構造方程式モデリングの実行
 13.2.1 モデルの記述
 13.2.2 構造方程式モデリングの実行
 13.2.3 結果の書き方
章末問題

14.媒介する変数の影響を検討する
14.1 媒介分析とは
 14.1.1 デルタ法
 14.1.2 ブートストラップ法
14.2 媒介分析の実行
 14.2.1 媒介分析のメニューの追加
 14.2.2 媒介分析の実行
 14.2.3 結果の書き方
章末問題

引用・参考文献
索引

amazonレビュー

清水 優菜

清水 優菜(シミズ ユウノ)

兵庫教育大学助教。札幌旭丘高等学校から横浜国立大学教育人間科学部,横浜国立大学大学院教育学研究科,慶應義塾大学大学院社会学研究科教育学専攻を経て,現在に至る。
専門は,教育心理学と教育工学,科学教育学。現在,数学的問題解決における動機づけと感情の役割を解明すべく,慶應義塾大学の鹿毛雅治教授のもとで研究を行っている。主に量的研究の視座から,頻度論的分析とベイズ的分析の両方を用いて,研究を進めている。

山本 光

山本 光(ヤマモト コウ)

横浜国立大学教育学部教授。大学院では高エネルギー物理を研究し,情報関連企業の研究員として就職した。その後,横浜国立大学教育人間科学部マルチメディア文化課程の助手として赴任し,統計学やプログラミング,および情報モラル,著作権に関する授業を担当した。同時に,環境情報学府の根上生也教授のもとで位相幾何学的グラフ理論を研究した。
現在は,横浜国立大学教育学部 学校教育課程 数学教育講座の教授として,解析学や確率統計およびプログラミングの授業を行っている。研究においては,データ分析を用いた数学教育やプログラミング教育の研究教育を行っている。その他,横浜市立大学,神奈川県立保健福祉大学にて,情報処理学の非常勤講師をしている。2017年に横浜国立大学ベストティーチャー賞受賞した。

掲載日:2022/09/05

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掲載日:2021/10/14

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