メディア学大系 5
人とコンピュータの関わり
コンピュータの用途は生活のあらゆる局面に及ぶ。コンピュータが与える人の意識や行動指針への影響を多様な視点から解説した。
- 発行年月日
- 2018/02/16
- 判型
- A5
- ページ数
- 238ページ
- ISBN
- 978-4-339-02783-9
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- 広告掲載情報
【読者対象】
コンピュータやデジタルデバイスのUI、UXについて興味のある学生。コンピュータが人の活動にどのように関わってきているかについて概要を知り、将来のデジタル機能の在り方について考察したい学生。
【書籍の特徴】
コンピュータがコミュニケー ションや日常のあらゆる局面で関わるようになった現状において,それらがどのように使われどのような影響を与えてきたかを理解し,今後についてビジョンを描くことができる力が、今後どの分野においても必要となるでしょう。そこで本書はコンピュータの機能や構造などの技術面についてではなく人との関係に焦点をあて,コンピュータのあり方が人に与える影響や意識に及ぼす変化について注目することにしました。具体的な事例を挙げた考察を多く記述することに努め、基本的なアイデアがどのように適用されているかを知り、理解を一般化できることを目指しました。
【各章について】
本書は各章を以下の三つのおおまかな話題に分けて構成しています。
1 .操作対象としてのコンピュータ(1,2,3 章)
2 .コンピュータと人の対話(4,5,6 章)
3 .生活環境を構成するコンピュータ(7,8,9 章)
人とコンピュータの基本的な接点であるインタフェースの話題から始めて,インタラクティブ性がもたらす用途の拡大について取り上げ,最後に,独立した装置から生活環境の一部へと変化していくコンピュータについて考察し, 将来のビジョンにまで繋がるようにいたしました。
【著者からのメッセージ】
情報科学分野は非常に早く進歩し変化するため,特定の知識はすぐに古くなってしまいます。また,知識はウェブを検索することによって簡単に入手することができます。そうしたなかで重要なのは多くの知識を暗記していることではなく,それらを結び付けて自ら考察を組み立てることができる力であり,そのために何を知ればよいのかを思いつける力であるでしょう。急激に変化する対象に対してサステナブルに通用するのは知識の量ではなく,考え方やビジョンの持ち方を身につけることだと思います。本書の内容についても、書かれたことをそのまま鵜呑みにするのではなく、どのような視点で考察をしているかに注目して自分なりの考察と理解を作って欲しいと考えています。
パーソナルコンピュータが普及するようになってから40年ほどが経ち,現在ではスマートフォンやタブレットPCなどの登場によって,毎日どころか寸暇もおかずにコンピュータと人々が接する時代となった。街中にもサイネージや自動販売機などコンピュータを利用した機器が置かれ,特定の場所で特定の業務に使用するだけではなく,とりたてて意識することがなく普段の生活のなかでコンピュータの機能を利用している。これまでも,情報管理や機器制御などにおいてコンピュータが間接的に人の暮らしのサポートに利用されてきたが,現在ではインターネットの普及と合わせて人が直接関わって利用する機会が非常に多くなっている。また,作業を便利にすることだけではなく新たな用途が次々と生み出され,人の行動様式や意識にも大きな変化をもたらしてきた。コンピュータは,最先端の特殊な機器という位置付けから,日常を構成する生活環境の一部へ変化したといえるだろう。コンピュータがコミュニケーションや日常のあらゆる局面で関わってくるようになった現状において,それらがどのように使われどのような影響を与えてきたかを理解し,そしてこれからどのような展開が期待されるのかについてビジョンを描くことができる力が今後どの分野においても必要となると考えられる。そのような力を身につけるためには,コンピュータ自体の知識だけではなく,設計の意図やそれらが与える影響を実際に使われる場を想定したつながりのなかで把握することが重要である。
そこで本書では,コンピュータ自体の機能や構造などの技術面についての説明ではなく人との関係に焦点をあて,インタフェースのデザインや用途の変遷と拡がりという項目を扱いながら,コンピュータのあり方が人に与える影響や習慣や意識に及ぼす変化について取り上げることとした。情報科学分野は非常に早く進歩し変化するため,特定の知識はすぐに古くなってしまう。また,インターネットの普及によって知識はウェブを検索することによって簡単に入手することができる。そうしたなかで重要なのは多くの知識を暗記していることではなく,それらを結び付けて自ら考察を組み立てることができる力であり,そのために何を知ればよいのかを思いつける力である。急激に変化する対象に対してサステナブルに通用するのは知識の量ではなく,考え方やビジョンの持ち方を身につけることであるだろう。
そうした背景を受けて,重要なのは多くの用語を知識として並べることではなく,取り上げた事項がどのような考え方で設計され,どのような使われ方をしてどのような影響をもたらすかということを,背景を含めた連携のなかで理解することであると考えた。本書では,人とコンピュータの関係性を考察するための側面に絞り,技術用語や一般化された概念だけでなくできるだけ具体的な事例を挙げた考察を多く記述することに努めた。基本的なアイデアがどのように適用されているかを知ることで,一般化された概念の理解を助けることを目指したつもりである。また,学んだ内容について該当する具体例を見つけ出し,その文脈のなかで説明できる力を養うような演習課題を用意した。
内容は,以下に示すように,三つのおおまかな話題に分けて構成した。
1 .操作対象としてのコンピュータ(1,2,3章)
2 .コンピュータと人の対話(4,5,6章)
3 .生活環境を構成するコンピュータ(7,8,9章)
人とコンピュータの基本的な関わりであるインタフェースの話題から始めて,インタラクティブ性がもたらす用途の拡大について取り上げ,最後に,独立した装置というよりも生活環境の一部となっていくコンピュータについて,将来のビジョンまでつなげるように扱った。本書は,大学の低学年に対する教養科目としてアイデアを伝えることに重点を置いたため,より詳しく個々の内容を勉強したいと思った方は,参考文献として挙げた本にあたってみて欲しい。
2017年10月 太田高志
1. 人とコンピュータ
1.1 人とコンピュータの多様な関わり
1.2 コンピュータの代表的な機種
1.2.1 ENIAC
1.2.2 メインフレーム
1.2.3 ミニコンピュータ
1.2.4 パーソナルコンピュータ
1.2.5 スマートフォン,タブレットPC
1.2.6 スーパーコンピュータ
1.3 コンピュータの進化
1.3.1 サイズの違い
1.3.2 性能の向上
1.3.3 使用形態の比較
1.4 用途の拡大と生活への影響
1.4.1 用途の拡大
1.4.2 用途の多様性
1.4.3 技術進化による生活の変化
演習問題
2. コンピュータを操作する
2.1 ユーザインタフェースとは
2.2 ユーザインタフェースの種類
2.2.1 ハードウェア
2.2.2 ゲーム機の入力装置
2.2.3 その他のコンピュータの入力装置
2.2.4 出力の装置
2.2.5 ソフトウェア
2.2.6 オペレーティング・システム(OS)
2.2.7 アプリケーション・ソフトウェア
2.3 人とコンピュータをつなぐしくみ
2.3.1 人の意図を翻訳する
2.3.2 組合せによる多様性
2.4 ユーザインタフェースの多様性
2.4.1 形状のデザインの違い
2.4.2 機構の違い
2.4.3 手段の違い
2.5 ユーザインタフェースの評価と設計思想
2.5.1 評価の指標
2.5.2 設計思想の違い
演習問題
3. 使いやすさのためのデザイン
3.1 ユーザインタフェースのデザイン
3.2 わかりやすさを与えるデザインの工夫
3.2.1 メタファ
3.2.2 アフォーダンス(シグニファイア)
3.2.3 直感的な行動指針の反映
3.2.4 アニメーションの利用
3.2.5 デザインの統一性
3.3 デザインコンセプトの違い
3.3.1 初期のデザイン
3.3.2 リッチデザイン
3.3.3 スキュアモーフィズム
3.3.4 フラットデザイン
3.4 デザインとユーザビリティ
演習問題
4. コンピュータとの対話
4.1 インタラクティブとは何か
4.2 インタラクティブなもの,インタラクティブでないもの
4.3 インタラクションの実現
4.4 インタラクティブ性の活用
4.4.1 インタラクションの頻度の変化
4.4.2 インタラクションの質の変化
4.4.3 インタラクションの相手の変化
演習問題
5. 対話性の拡張
5.1 人中心の対話方法
5.1.1 コンピュータに合わせた操作方法
5.1.2 人に合わせた操作
5.1.3 人の目的に対応する
5.1.4 現実と同じ操作方法の提供
5.1.5 コンテキストの理解
5.2 インタフェース化する世界
5.2.1 現実をきっかけとするインタラクション
5.2.2 モノを介したインタラクション
5.2.3 透明化するインタフェース
5.3 インタラクションのデザイン
5.3.1 コンピュータの用途の拡大
5.3.2 人の反応をデザインする
演習問題
6. 対話から体験へ
6.1 ユーザエクスペリエンス(UX)
6.1.1 ユーザインタフェースとユーザエクスペリエンス
6.1.2 UXを構成する要素
6.2 体験を創る
6.2.1 創り出す体験
6.2.2 体験のデザイン
6.2.3 体験により訴えかける
6.3 コンピュータとアート
6.3.1 コンピュータのアートへの利用
6.3.2 インタラクションの利用
6.3.3 コンピュータによるアートの構造
6.4 体験の共有
6.5 インタラクションを利用する広告
6.6 UXを考慮したUIのデザイン
演習問題
7. つながるコンピュータ
7.1 インターネットの登場
7.1.1 ネットワークの拡大
7.1.2 コミュニケーション手段としてのコンピュータ
7.1.3 情報共有手段としてのコンピュータ
7.2 ワールドワイドウェブによる情報の発信と取得
7.2.1 情報発信の敷居の低さ
7.2.2 大量な情報の生産
7.2.3 HTMLによる情報の連携
7.2.4 情報の検索
7.3 インターネットがもたらす変化
7.3.1 情報取得の容易さ
7.3.2 情報伝達の速さ
7.3.3 情報の再構築
7.3.4 マスメディアからインターネットへ
7.3.5 実世界へとつなぐツール
7.3.6 インターネットによる社会関係の形成
7.3.7 インターネットによる問題
7.4 常時接続性が与える効果
7.4.1 インターネットへの常時接続の実現
7.4.2 ワールドワイドウェブの機能の拡大
7.4.3 インタラクティブ性の獲得
7.5 インターネット時代に求められる人材像
7.5.1 求められる人材像の変化
7.5.2 情報の質を判断する力
7.5.3 情報を入手する力
7.5.4 情報を利用する力
演習問題
8. 持ち運ぶコンピュータ
8.1 モバイルデバイス
8.1.1 スマートフォンの登場
8.1.2 携帯性の高いコンピュータとしてのモバイルデバイス
8.1.3 多機能が複合したデバイス
8.1.4 タッチディスプレイによる操作
8.1.5 その他のインタフェースの拡張
8.2 モバイルデバイスがもたらす変化
8.2.1 変わるコンピュータの役割
8.2.2 インターネットへの常時接続
8.2.3 情報へのアクセス
8.2.4 多様な内蔵センサの利用
8.3 ウェアラブルコンピュータ
8.3.1 さらなる携帯性の追求
8.3.2 生活を監視するモニタ
8.3.3 フロントエンドのインタフェース
8.4 モバイルデバイスが生活に与える影響
8.4.1 使用の頻度
8.4.2 利用の簡便化
8.4.3 新たな用途の実現
8.4.4 ライフスタイルへの影響
演習問題
9. 生活を変えるコンピュータ
9.1 コンピュータの発展の流れ
9.1.1 装置としてのコンピュータの進化
9.1.2 ネットワークによる変化
9.1.3 コンピュータの利用形態の変化
9.1.4 コンピュータの役割の変化
9.2 複数のコンピュータの利用
9.2.1 使い分けるコンピュータ
9.2.2 クラウドコンピューティング
9.2.3 IoT(モノのインターネット)
9.2.4 ビッグデータ
9.3 環境と一体化するコンピュータ
9.3.1 ユビキタスコンピューティング
9.3.2 ユビキタスとモバイル
9.3.3 環境となるコンピュータのデザイン
9.4 人とコンピュータの未来
9.4.1 コンピュータの未来への考察
9.4.2 SFが提示する未来
9.4.3 ビジョンの提示
9.4.4 将来への課題
演習問題
引用・参考文献
索引
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掲載日:2021/04/01