大容量キャパシタ 電気を無駄なくためて賢く使う

シリーズ 21世紀のエネルギー 14

大容量キャパシタ - 電気を無駄なくためて賢く使う -

これからのスマートエネルギー社会を支える大容量キャパシタの仕組みや特徴,現在の使用例から今後の使われ方までわかりやすく解説。

ジャンル
発行年月日
2019/01/07
判型
A5
ページ数
188ページ
ISBN
978-4-339-06834-4
大容量キャパシタ 電気を無駄なくためて賢く使う
在庫あり

定価

2,750(本体2,500円+税)

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急速な充放電が可能で,繰り返しの充放電にも強いという特徴を持つ大容量キャパシタ。これからのスマートエネルギー社会を支える,この大容量キャパシタの仕組みや特徴,現在の使用例から今後の使われ方までをわかりやすく解説した。

近年,環境汚染や地球温暖化などグローバルな環境問題解決のために,低炭素社会を目指したエネルギー革新が求められている。また,2011年の東日本大震災を契機に,これまで無批判に推進されてきた原発依存型エネルギー政策の盲点が明らかとなり,再生可能エネルギーを大幅に取り入れるなど,これまでとは異なった新体制への移行が急務となった。しかし,多くの問題が絡み合うエネルギー問題を一気に解決することは難しい。そこで,まずは利用可能な多種多様の資源を用途に最適な方法で生み出し,蓄電デバイスとの組合せによる効率的なエネルギーのやりくりをすることが重要となる。また,発電・蓄電デバイスは大容量化のみを追求するのではなく,高度に発展してきたIT 技術や新半導体(SiC,GaN)を用いたパワーエレクトロニクス技術,革新的ナノテクノロジー材料創製技術を駆使し,それら異分野の技術や知識を融合させ,新しい価値を生み出していかなければならない。その上で,人や自然に対しての安全性を高め,環境負荷を軽減し,自然エネルギーの利用を促進して,持続可能な分散型エネルギーシステムを構築していく必要がある。いわゆるスマートエネルギー(創エネ・蓄エネ・省エネ)社会の確立である。このような背景の中で太陽電池,燃料電池などを高効率化し,二次電池と組み合わせたハイブリッド電源により電池寿命を2倍以上に伸ばし,信頼性を高める蓄電デバイスとして“キャパシタ”が改めて注目されてきている。

蓄電デバイスは,その蓄電機構によりファラデー反応による電池と非ファラデー反応の電気二重層キャパシタ(EDLC)に大別される。携帯電話やデジタルカメラ,ノートPCなどの携帯機器用途から電気自動車やハイブリッド自動車などの大型用途にまで幅広く使用されているリチウムイオン電池(LIB)やニッケル水素電池,鉛蓄電池などは高エネルギー密度であるが,出力密度が小さい。一方,従来のEDLCはエネルギー密度が10W・h/L程度と小さいため,メモリーバックアップなどの小・中型用途への利用に限られていた。しかし,高出力密度であることから,ハイブリッド自動車やトラックなどのパワーアシスト用途や,フォークリフトや港湾クレーンなどの大型用途においても利用されるようになってきた。

最近では,スマートフォンにおけるEDLCの利用が広がっており,月産4000万個以上が生産されている。米アップル社が,同社のスマートフォン「iPhone」シリーズで積極採用していることも,導入が広がるきっかけとなった。携帯電話機やスマートフォンには,1台当り2~3個,多い場合には4個以上のEDLCがバックアップ電源用途で搭載されている。最近のスマートフォンでは,瞬時に大電流を必要とするアプリや機能がある。こうした急峻な負荷変動に,主電源であるLIBだけで対応しようとすると,電池の出力変動が大きいため電池容量の減少や,充放電サイクル特性の劣化につながる。キャパシタを補助電源に用いることで,LIBの出力を安定化させ,スマートフォンの利用時間を大幅に延長できるという報告がある。また,従来用いられていたコイン形電池に比べて,リフローはんだ付けに対応できることや,充放電サイクル寿命がきわめて長いなどの理由から,ここに置換需要も高まりキャパシタメーカ(パナソニック,SII,太陽誘電)は生産設備の増強に追われている。このように小型用途において,高エネルギー密度を有したEDLCへの要求が高まっている。

また,マツダは世界で初めて乗用車にEDLCを用いたエネルギー回生システム「i-ELOOP」を搭載した「アテンザ」を発売した。「i-ELOOP」はEDLCとオルタネータ,DC/DCコンバータを組み合わせており,減速時の回生エネルギーをEDLCに蓄電し,ヘッドライトやカーナビなど電装機器への供給,バッテリーの充電などを行う。それによりオルタネータの負荷が軽減され,ストロングハイブリッド車に匹敵する燃費性能を実現している。採用されたEDLCは日本ケミコンが車載用途に開発したもので,同サイズの従来製品に比較して内部抵抗を約1/3に低減したほか,耐熱性も70℃保証とすることでエンジンルーム内への搭載が可能である。さらに,耐久性・耐震性など環境性能も向上させ,2012年春から生産が開始されている。このように自動車などへの用途が現実的に促進され始め,ますます高エネルギー密度が要求されるとともに,高効率で10年以上の長寿命かつ信頼性のある大容量キャパシタの開発が望まれている。

なお,第3章の執筆にあたっては日本ケミコン株式会社の宮川尊様に大変お世話になった。また本書編集時には東京農工大学の長野有紀助手に本書全体について表現や用語の入念な確認をしていただいた。ここに謝意を表します。

2018年11月 直井勝彦・堀洋一 

1. 蓄電デバイスから見た現代社会
1.1 従来の蓄電デバイスの問題点:求められる大きな改善テーマ
1.2 大容量キャパシタとは
 1.2.1 キャパシタの技術動向
 1.2.2 消費者ニーズ/技術者と開発者との競争
 1.2.3 蓄電デバイスの革新こそが世界を変える

2. キャパシタの仕組み
2.1 電気エネルギーとは
 2.1.1 いろいろなエネルギーとエネルギーの流れ
 2.1.2 電気エネルギーの供給の特徴
 2.1.3 電気エネルギーとは
 2.1.4 電気の流れ
 2.1.5 電気の粒“電子”とは
2.2 電気エネルギーをためる仕組み
 2.2.1 電気の素
 2.2.2 電気の素“電子”をためる蓄電 ―誘電体による蓄電―
 2.2.3 電気の素“イオン”をためる蓄電
 2.2.4 化学電池の充放電メカニズム
 2.2.5 物理電池の蓄電メカニズム
2.3 キャパシタが電気をためる仕組み
 2.3.1 電気二重層の発見
 2.3.2 電気二重層キャパシタ(EDLC)の蓄電原理
 2.3.3 EDLCの充電メカニズム
 2.3.4 EDLC蓄電部の基本構成と形状
 2.3.5 EDLCの等価回路
 2.3.6 EDLCの特性 ― XFとカテゴリー ―
 2.3.7 EDLCの電圧
2.4 電池との比較
 2.4.1 エネルギー密度と出力密度
 2.4.2 寿命
 2.4.3 電圧の比較
 2.4.4 温度特性
 2.4.5 残存容量の推定
 2.4.6 コスト
 2.4.7 総合比較
2.5 環境にやさしいキャパシタ
 2.5.1 EDLCの構成材料
 2.5.2 EDLCの安全性
 2.5.3 耐用年数が長い
 2.5.4 寿命限界まで使える

3. キャパシタの上手な使い方
3.1 キャパシタの魅力
3.2 エネルギー量の計算
3.3 充電の仕方,放電の仕方
3.4 エネルギー残量と電圧変化
3.5 キャパシタの劣化と寿命
 3.5.1 EDLCの寿命
 3.5.2 劣化の進行
 3.5.3 劣化のメカニズム
3.6 冷却による効果
3.7 直列接続と並列接続
3.8 バランス回路
 3.8.1 回路の設計
 3.8.2 バランス抵抗
 3.8.3 バランス回路
 3.8.4 統合IC
3.9 アプリケーション
 3.9.1 単純並列
 3.9.2 エネルギーバッファ
 3.9.3 上乗せ
3.10 使用上の注意
 3.10.1 過電圧
 3.10.2 過放電
 3.10.3 逆電圧
 3.10.4 過温度
 3.10.5 電圧ドロップ
 3.10.6 二次電池との並列接続
 3.10.7 保管
3.11 使うほどわかるキャパシタの魅力

4. 自動車を走らせるキャパシタ
4.1 これからの自動車はエンジン駆動から電気駆動に変わる
 4.1.1 自動車の電動化
 4.1.2 近年における自動車の電動化の経緯
4.2 マイクロ/マイルドハイブリッドなど電動補機・電装システムの電源として
4.3 ハイブリッド自動車の蓄電源として
 4.3.1 ハイブリッド自動車の仕組み
 4.3.2 ハイブリッド車の省エネ効果要因
 4.3.3 エネルギー回生を重視するHVへのキャパシタ応用
 4.3.4 HV用各種蓄電デバイスの比較
 4.3.5 HV用各種蓄電デバイスの車載エネルギー容量
 4.3.6 HV用各種蓄電デバイスの寿命比較
4.4 EV/PHVの電源として
 4.4.1 EVの電源として
 4.4.2 短区間走行ごとに充電を繰り返すEVバスとキャパシタ
 4.4.3 PHVの電源として
4.5 電動補機ならびに電子電装機器の電源として
4.6 蓄電源から見た自動車の電動化,キャパシタの可能性

5. 広がるキャパシタの用途
5.1 従来の使い方
5.2 機器の省エネ用途
5.3 電力の安定化用 ― 瞬間電圧低下補償システム ―
5.4 再生可能エネルギーの蓄電源として ― 風力発電・太陽光発電など ―
5.5 その他の用途
 5.5.1 電動式フォークリフト
 5.5.2 パワーショベル
 5.5.3 トランスファークレーン
 5.5.4 エレベータ
 5.5.5 旅客機
 5.5.6 小惑星探査用移動ロボット
 5.5.7 風力発電バックアップシステム
5.6 ユビキタスとなるキャパシタ

6. キャパシタの進化
6.1 リチウムイオンキャパシタ
 6.1.1 LiCの原理と特徴
 6.1.2 リチウムプレドープ技術
 6.1.3 LiCの特性
 6.1.4 LiCの寿命
 6.1.5 LiCの安全性
 6.1.6 LiCに期待される用途
6.2 ナノハイブリッドキャパシタ
6.3 第三世代キャパシタの展開
6.4 キャパシタの進化によるエネルギー事情の改善

7. キャパシタが支える21世紀の社会
7.1 ガソリンと電気
7.2 モータ/キャパシタ/ワイヤレス
 7.2.1 モータ ― モーション制御 ―
 7.2.2 キャパシタ ― ちょこちょこ充電 ―
 7.2.3 ワイヤレス ― だらだら給電 ―
7.3 100年ごとのパラダイムシフト
7.4 キャパシタは「エネルギーと知恵の缶詰」

引用・参考文献

青木 良康(アオキ ヨシヤス)

木下 繁則(キノシタ シゲノリ)

佐久間 一浩(サクマ カズヒロ)

佐々木 正和(ササキ マサカズ)

矢島 弘行(ヤジマ ヒロユキ)

日刊工業新聞2019年6月25日「技術科学図書」欄