自動車のエクセルギー解析 エネルギーの有効活用をはかる

自動車のエクセルギー解析 - エネルギーの有効活用をはかる -

自動車のエネルギー関連機器の最適設計を行うには,エクセルギーを用いて解析を行うことが必要であるとの視点でまとめられた一冊。

ジャンル
発行年月日
2018/04/27
判型
A5
ページ数
172ページ
ISBN
978-4-339-04655-7
  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介

エクセルギーは,熱力学で学ぶエントロピーが役立つ実例である。エネルギーを本当の意味で有効利用する自動車のエネルギー関連機器の最適設計を行うには,エクセルギーを用いて解析を行うことが必要であるとの視点で本書をまとめた。

エネルギーは保存される。形を変えても消えてなくなることはない。しかし,普通の感覚ではエネルギーは減っていく。化石燃料は年々減っていくから可採埋蔵量が気になるわけである。風力,太陽光,水力などの再生可能エネルギーなら再生される感じがする。とはいっても,エネルギーは消えてなくならないのだから,いくら使ってもいいのか。そういうわけにはいかず,省エネルギーや節電は重要である。

じつは消えてなくなるのはエクセルギーである。節約しなければならないのはエネルギーではなく,エクセルギーである。例えば,化石燃料の持っているエクセルギーをどういう経路を通って仕事に変換するかでエクセルギーの価値が変わってくる。その視点が重要である。

熱力学の教科書には必ずエントロピーが出てくる。熱力学第1法則はエネルギー保存則であるから,比較的わかりやすい。熱効率も理解しやすい。ところが第2法則のところで,エントロピーが出てくると途端にわからなくなる。筆者は30年以上,機械工学系学科において熱力学を教えているが,エントロピーをうまく説明できたと思ったことがない。ほとんどの学生はエントロピーという言葉は知っているけれども,どういう意味があり,どのように役立つかを知らずに卒業しているのではないか。本書のテーマであるエクセルギーは,エントロピーが実際に役立つ実例である。ぜひ,この機会にエントロピーにもう一度,挑戦していただきたい。

卒業生の多くが製造業に進み,設計開発をしている者も大勢いる。エントロピーとは関係なく,仕事をしているのかもしれない。筆者の研究室からも自動車業界に就職する学生が多い。エクセルギーを使って設計すれば,本当の意味でのエネルギーの有効利用になると,彼らをはじめとして自動車関連の技術者に知ってもらいたくて,本書をまとめた。

自動車は閉じた小さなエネルギープラントとして扱うことができる。動力がエンジンから電力へと変わっていくにしても,すでに自動車は機械システムだけでなく,電気・電子・情報システムなしでは成り立たなくなっている。自動車のエネルギー関連機器の最適な設計を行うためには,エクセルギーを用いて解析を行うことが必要である。

本書は熱力学の習得を前提とはしているが,すでに遠のいている方もいるだろうから,巻末に付録として熱力学の重要事項をまとめてある。理論は実際に使えなければ意味がない。本書では基本原理を習得するために具体的な数多くの計算例を示した。これらが自動車のエネルギー関連機器の設計に役立つことになれば幸いである。

2018年3月 雑賀 高

1. エントロピー生成とエクセルギー
1.1 エクセルギーは仕事の最大能力
 1.1.1 dead state
 1.1.2 エクセルギー
1.2 エントロピーの導入
 1.2.1 可逆仕事と不可逆性
 1.2.2 固体・液体のエントロピー変化
1.3 エントロピー生成
 1.3.1 固体のエントロピー生成
 1.3.2 気体のエントロピー生成
 1.3.3 蒸気のエントロピー生成
 1.3.4 伝熱によるエントロピー生成

2. エクセルギーによるエネルギー評価
2.1 エネルギーの有効性の評価
 2.1.1 熱力学第1法則と第2法則
 2.1.2 熱力学第2法則効率
2.2 理想気体の熱量と圧力のエクセルギー
 2.2.1 温度と熱量のエクセルギー
 2.2.2 圧力のエクセルギー
2.3 閉じた系と開いた系のエクセルギー
 2.3.1 閉じた系における内部エネルギーのエクセルギー
 2.3.2 開いた系におけるエンタルピーのエクセルギー
2.4 エクセルギー収支
 2.4.1 物質の出入りがない閉じた系のエクセルギー収支
 2.4.2 熱伝達を伴うエクセルギーの移動
2.5 化学反応のエクセルギー
 2.5.1 ギブスエネルギー
 2.5.2 標準反応ギブスエネルギー
 2.5.3 化学反応を伴うエクセルギー収支
 2.5.4 ギブスエネルギー変化による電気的仕事

3. プロセスのエクセルギー解析
3.1 定常流れ系のエクセルギー解析
 3.1.1 エネルギー収支とエクセルギー収支
 3.1.2 廃熱回収システムのエクセルギー解析
3.2 ボイラのエクセルギー解析
3.3 蒸気タービンのエクセルギー解析
3.4 ガスタービンのエクセルギー解析
3.5 エアコンディショナのエクセルギー解析
 3.5.1 冷凍サイクルおよびヒートポンプサイクルの成績係数
 3.5.2 冷凍機およびヒートポンプの熱力学第2法則効率
 3.5.3 冷凍サイクルおよびヒートポンプサイクルのエクセルギー解析
3.6 燃料電池のエクセルギー解析

4. エンジンシステムのエクセルギー解析
4.1 空気標準エンジンサイクル
4.2 4ストローク理論サイクル
4.3 エンジンサイクルのエクセルギー解析
 4.3.1 サイクルのエントロピー変化
 4.3.2 サイクルへの発熱量の供給
 4.3.3 各プロセスのエクセルギー変化
4.4 定容サイクルのエクセルギー変化
 4.4.1 各行程におけるエクセルギー変化
 4.4.2 定容サイクル全体のエクセルギー変化
 4.4.3 熱力学第1法則効率
4.5 定圧サイクルのエクセルギー変化
4.6 火花点火エンジンサイクルのエクセルギー解析
 4.6.1 ポリトロープ変化過程
 4.6.2 燃焼過程の解析モデル
 4.6.3 圧縮・膨張過程の解析モデル
 4.6.4 火花点火エンジンのエクセルギー変化
 4.6.5 水素とイソオクタンの比較
4.7 過給システムのエクセルギー解析
 4.7.1 過給方法
 4.7.2 基本的な関係式
 4.7.3 圧縮機の熱力学第2法則効率
 4.7.4 タービンの熱力学第2法則効率
4.8 ラジエータのエクセルギー解析
 4.8.1 ラジエータの機能
 4.8.2 ラジエータの伝熱特性
 4.8.3 熱交換器の熱力学第2法則効率

5. 自動車パワートレインのエクセルギー解析
5.1 エンジンシステムのエクセルギー解析
 5.1.1 熱力学的平衡と化学平衡
 5.1.2 熱力学的エクセルギーと化学エクセルギー
 5.1.3 エンジン内エクセルギー変化の一般式
5.2 火花点火エンジンのエクセルギー解析
 5.2.1 エンジン速度と負荷がエクセルギーに及ぼす影響
 5.2.2 圧縮天然ガスエンジンのエクセルギー解析
 5.2.3 水素火花点火エンジンのエクセルギー解析
 5.2.4 エタノールエンジンのエクセルギー解析
5.3 ディーゼルエンジンのエクセルギー解析
 5.3.1 燃料噴射時期がエクセルギーに及ぼす影響
 5.3.2 バイオ燃料ディーゼルエンジンのエクセルギー解析
5.4 燃料電池自動車のエクセルギー解析
 5.4.1 エネルギー形態によるエクセルギー量
 5.4.2 燃料電池自動車のエクセルギー
5.5 アンモニア燃料自動車のエクセルギー解析
 5.5.1 自動車用燃料としてのアンモニア
 5.5.2 アンモニア燃料電池システム
 5.5.3 アンモニア燃料SIエンジンのエクセルギー解析
 5.5.4 アンモニア燃料FCシステムのエクセルギー解析

付録A. 熱力学の重要事項
付A.1 熱力学第1法則
付A.2 可逆変化過程
付A.3 カルノーサイクル(Carnot cycle)
付A.4 エントロピー
 付A.4.1 理想気体のエントロピー
 付A.4.2 さまざまな過程におけるエントロピー変化
付A.5 空気標準サイクル(air-standard cycle)
 付A.5.1 空気標準オットーサイクル
 付A.5.2 空気標準ディーゼルサイクル
付A.6 定常熱伝導・熱伝達
付A.7 化合物CαHβOγNδの標準生成エクセルギーの求め方

付録B. 各種物性値表
付表1 主要燃料の標準生成エンタルピーと標準生成ギブスエネルギー
付表2 主要燃料の標準反応エンタルピーと標準反応ギブスエネルギー
付表3 主要化合物の標準生成エクセルギー

引用・参考文献
索引

雑賀 高(サイカ タカシ)