森林バイオマスの恵み 日本の森林の現状と再生

シリーズ 21世紀のエネルギー 13

森林バイオマスの恵み - 日本の森林の現状と再生 -

日本の森林運営を経済的に持続可能とするためのポイントとして,素材,副産物,エネルギー利用,法律による補助の4項目について解説

ジャンル
発行年月日
2018/01/18
判型
A5
ページ数
174ページ
ISBN
978-4-339-06833-7
森林バイオマスの恵み 日本の森林の現状と再生
在庫あり

定価

2,420(本体2,200円+税)

カートに入れる

購入案内

  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介
  • 書籍紹介・書評掲載情報

日本の森林運営を経済的に持続可能とするためのポイントとして,素材,副産物,エネルギー利用,法律等による補助の4項目について解説。日本の森林の将来を考える方,日本の森林バイオマスの有効利用に興味がある方にお勧めの一冊。

再生可能エネルギーの導入が注目されている。太陽光,風力,地熱,バイオマスなど,二酸化炭素の排出がなく,資源枯渇を心配することなく利用できるこれらのエネルギーは,21世紀のエネルギーとして重要な位置を占める。

この中でバイオマスは,太陽光や風力のように変動せず,また,化学エネルギーの形で蓄積されたエネルギーであるので輸送性,貯蔵性に優れるという特徴を有している。水力を除く日本の再生可能電力で最も大きい量を占めているのはバイオマスであり,製紙工場での黒液の利用は日本の一次エネルギー供給の0.5%程度を占めている。しかしながら,それ以外のバイオマスについてはまだ利用が十分に進んでいない。一方で,わが国には豊富な森林資源があるが,これが十分に用いられていない問題がある。バイオマスエネルギーを考えたときに,森林がうまく生産機能を果たしていれば,林地残材として多くのバイオマス資源が得られるという議論は多くされている。一方で,日本の林業を考えると,海外の安価な材木に押されて生産性は低下し,労働力は高齢化し,森林の手入れや保全も十分に行き届いていない状況がある。

このような状況を受けて,日本エネルギー学会バイオマス部会と「エネルギー学」部会学融合分科会では日本の森林を有効利用する検討を行う合同ワーキンググループを立ち上げて検討を進めた。広く各地のメンバーや専門家が参加して議論を深めるにはさまざまな困難があったが,参加者の努力によって,日本の森林運営を経済的に持続可能とするためのポイントとして
● 素 材
● 副産物
● エネルギー利用
● 法律などによる補助
の四つの項目が挙げられ,これらを組み合わせた議論をすることが一つの可能性として示された。本書は,このことを踏まえて,森林の専門家である吉岡を加えて議論を整理,展開した結果をまとめたものである。この合同ワーキンググループの成果の一環として位置付けられる。

本書は必ずしも日本の森林の再生の手順を示すものではないが,森林の経済的な経営を実現する可能性を上記の四つの項目について議論したものであり,関連の知見を整理して提供するとともに,可能性を定量的に議論しようと試みた。日本の森林の将来を考える上で,また,日本の森林バイオマスの有効利用に興味を持っている方に情報を提供する上で,少しでも役に立てば幸いである。

上記の合同ワーキンググループに参加をいただいた堀尾正靱,美濃輪智朗,手塚哲央,野田玲治,久保山裕史,有賀一広,柳下立夫,関口将司,法貴誠,大谷繁,野間毅,佐藤哲朗,川部信之,小林信介,森田明宏の各位に感謝する。また,3名の執筆者がそれぞれの業務に携わる必要があったために原稿執筆が遅くなり,合同ワーキンググループから7年の月日が経過してしまった。この間根気よくお待ちいただいたコロナ社に謝意を表する。

なお,バイオマスのエネルギー利用については本シリーズの第7巻『太陽の恵みバイオマス』に松村が執筆している。また,日本エネルギー学会バイオマス部会,「エネルギー学」部会では議論を幅広く展開するために新メンバーも募集している。学会員でなくても,無料で参加可能なので,興味のある方は日本エネルギー学会のホームページ(http://www.jie.or.jp/)の該当部会のページから参加をいただければ幸いである。

2017年11月松村幸彦・吉岡拓如・山崎亨史 

1. 森林からの素材生産
1.1 日本の森林資源の現状
 1.1.1 面積
 1.1.2 蓄積,成長量と伐採量
 1.1.3 木材需要と自給率
 1.1.4 なぜ日本の森林資源は利用されなくなったのか
1.2 木材はどのようにして生産されるか
 1.2.1 産業としての林業
 1.2.2 日本の林業機械化のはじまり
 1.2.3 作業用語と林業機械
 1.2.4 伐出作業システム
 1.2.5 森林の基盤整備 ―林道と作業道―
1.3 人工林資源の成熟化に向けて
 1.3.1 日本の木が大きくなっている
 1.3.2 境界明確化と施業の集約化
 1.3.3 路網と作業システムの一体化
1.4 木材利用
 1.4.1 木材の構成と木化
 1.4.2 材料としての優位性
 1.4.3 樹木から木材へ ―乾燥の必要性―
 1.4.4 カスケード利用のすすめ
 1.4.5 木質バイオマス
1.5 森林資源の有効利用に向けて

2. 副産物の利用 ―森林の恵みを利用するために―
2.1 特用林産物
 2.1.1 特用林産物とは
 2.1.2 森林の荒廃とまつたけ
 2.1.3 原発事故の影響
2.2 野生動物
 2.2.1 シカが増え続けている
 2.2.2 なぜこんなに増えてしまったのか
 2.2.3 拡大造林とシカ問題とのつながり
2.3 森林の価値
 2.3.1 森林の有する多面的機能
 2.3.2 森林の価値は年間70兆円
 2.3.3 この評価をどう考えるか
2.4 林業の副産物の利用 ―林地残材の収穫―
 2.4.1 日本は木質エネルギー利用後進国か?
 2.4.2 森林バイオマスの収穫技術
 2.4.3 日本での研究事例
2.5 山村の活性化に向けて

3. エネルギー副産による経済性向上
3.1 木の持っているエネルギー
3.2 エネルギー副産の手法
 3.2.1 薪
 3.2.2 チップ
 3.2.3 ペレット
 3.2.4 ブリケット
 3.2.5 木炭
 3.2.6 直接燃焼発電
 3.2.7 混焼
 3.2.8 ガス化発電
 3.2.9 その他の技術
3.3 可能性
 3.3.1 エネルギー生産に伴う経済収支
 3.3.2 電気か熱か
 3.3.3 エネルギー利用による森林経済性向上の可能性

4. 法律に基づく政策や規制
4.1 関連する法律
 4.1.1 森林法
 4.1.2 森林・林業基本法
 4.1.3 森林の整備に関連する法律
 4.1.4 木材に関連する法律
 4.1.5 公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律
4.2 林業行政における政策と規制
 4.2.1 戦後から林業基本法制定まで(白書以前)
 4.2.2 林業生産と林業技術の向上
 4.2.3 産業としての林業と構造改善事業
 4.2.4 木材需給・自給率の変遷と政策
 4.2.5 林業従事者と山村対策(人と地域)
 4.2.6 国土の保全と森林整備
 4.2.7 国有林野政策
 4.2.8 時代の変化と政策の転換
 4.2.9 合法木材
 4.2.10 森林・林業再生プラン
 4.2.11 森林整備加速化・林業再生事業

5. 持続可能な林業の可能性

引用・参考文献

山崎 亨史(ヤマザキ ミチフミ)

「廃棄物資源循環学会誌」Vol29 No,3 2018

日刊工業新聞2018年6月22日 「話題の本」欄