実験でわかる 電気をとおすプラスチックのひみつ

実験でわかる 電気をとおすプラスチックのひみつ

2000年ノーベル化学賞に輝いた導電性プラスチックについて、学校や公民館などの講義やイベントで活用できる実験を紹介する。

  • 口絵
ジャンル
発行年月日
2017/12/28
判型
A5
ページ数
178ページ
ISBN
978-4-339-06644-9
  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介
  • 書籍紹介・書評掲載情報

プラスチックは電気を通さないという通説をくつがえし,2000年ノーベル化学賞に輝いた導電性プラスチック。一見難しそうだが,じつは簡単に合成できる。本書では,学校や公民館などの講義やイベントで活用できる実験を紹介する。

まえがき ─ 導電性プラスチックと私たち─
レジ袋やペットボトル,電気コードなど私たちの身の回りにはたくさんの種類のプラスチックが使われている。加熱すると柔らかくなる性質があるので,ペットボトルのように複雑な形の瓶を簡単につくれるという利点がある。一般的にプラスチックは柔らかく熱に弱い素材だが,研究・開発が進んで金属のように熱に強いプラスチックや鉄鋼にも負けない強さのプラスチックもできるようになった。変化に富んだ性質をもつプラスチックはすべて電気をとおさない絶縁体である点は共通している。1977年に金属のように電気をとおすプラスチック,つまり導電性プラスチックが生まれるまでは,プラスチックが電気の絶縁体であることは常識だった。どのようにして常識外れのプラスチックが生まれたかについては導電性プラスチックとセレンディピティーの章で詳しく述べる。

金属は電気をよくとおすといっても,電気のとおしやすさ(電気伝導性)は温度が一定ならば金属の種類によって決まっていて調節はできない。これに反して,導電性プラスチックはドーピング(doping)という処理(または化学反応)によって,絶縁体から半導体,金属の広い範囲にわたって電気のとおりやすさを調節することが可能である。このことについても2章で詳しく述べるが,ドーピングの方法や程度によってp型,n型の半導体や金属のように電気をとおしやすくできる。しかも,ドーピング反応は導電性プラスチックの分子内に正の電荷や負の電荷を貯めこむばかりでなく,逆に貯めこんだ電荷を外に出す逆反応(脱ドーピング)も可能なので,二次電池の電気を貯めこむ充電過程,そして貯めこんだ電気を使う放電過程そのものでもある。ポリピロールを使った二次電池への応用実験は5章で述べる。

今日,導電性プラスチックはテレビや携帯電話,パソコンなど,私たちの身の回りのあらゆる電子機器に使われている。どのような使われ方をしているかを知ろうとしてこれらの電気製品や電子機器を分解しても,特殊な容器に入っていたり,あまりにも小さかったりして簡単には理解に至らないだろう。本を読んだり,先生や専門家から教わったりすれば,ある程度のことは理解できるだろうが,一番良い方法は実験で試してみることである。先生が教壇に立って生徒に実験の様子を見せる演示実験ではなく,自らの手を使って行う実験が最善である。

導電性プラスチックは特殊なプラスチックだから,つくるのは難しいと思われるかもしれないが,意外と簡単な方法でつくれる導電性プラスチックもあり,3章のブレイク:導電チェッカーのつくり方で述べる「トオル君」で簡単に電気がとおることを調べることもできる。 「百聞は一見にしかず」ということわざがある。人から同じことを何度も聞くより,1回でも自分の目で見るほうが確かであり,よく理解できるということである。各地で開いている実験教室ではこのことわざをいい換えて,「百見は一実験にしかず」といっている。実験は理解を深めるだけでなく,自ら手を使って実験をする楽しさを味わうこともできる。
なお,本書に掲載している写真(カラー写真)の一部や実験操作をわかりやすく説明した動画は,ホームページからダウンロードできるので,必要に応じてご活用いただきたい。

2017年9月 白川 英樹

Ⅰ. 導入編
1. 導電性プラスチックについて知ろう
1.1 プラスチック?高分子?ポリマー?
1.2 「プラスチックは絶縁体」は常識か?
1.3 常識では考えつかなかった電気をとおすプラスチックの誕生

2. ドーピング
2.1 ドーピングとは
2.2 化学ドーピング
2.3 電気化学ドーピング
2.4 ドーピングによる荷電担体の生成

導電性プラスチックとセレンディピティー


Ⅱ. 実践編
実験をする前に

3. もっとも簡単な実験─触媒酸化重合によるポリピロールの合成─
3.1 ポリピロール
3.2 ピロールの重合反応と触媒のはたらき
3.3 実験

4. 電気でつくる電気をとおすプラスチック─電気化学重合によるポリアニリンとポリチオフェンの合成─
4.1 ポリアニリン
4.2 ポリチオフェン
4.3 電気化学重合
4.4 エレクトロクロミズムとドーピング
4.5 実験

5. 電気を貯めるプラスチック─ポリピロールの二次電池への応用─
5.1 一次電池と二次電池
5.2 固体電解コンデンサー
5.3 ピロールの電気化学重合
5.4 実験

6. これがスピーカー?─PEDOTの透明フィルムスピーカーへの応用─
6.1 ポリエチレンジオキシチオフェン
6.2 フィルムスピーカー
6.3 実験①:EDOTをフィルム上で触媒酸化重合する方法
6.4 実験②:市販のPEDOT/PSSを塗布成膜する方法

7. 手づくりの有機EL素子─PEDOTとMEH-PPVを使った高分子有機EL素子─
7.1 有機EL素子
7.2 ポリフェニレンビニレン(PPV)
7.3 実験

8. 手づくりの太陽電池─PEDOTを使ったペロブスカイト型太陽電池─
8.1 太陽電池
8.2 ペロブスカイト型太陽電池
8.3 実験

9. ポリアセチレン─電気をとおすプラスチックの原点─
9.1 ポリアセチレンとは
9.2 ポリアセチレンフィルムの合成

化学実験教室の企画・開発・実施のコツ

引用・参考文献
あとがき
索引

白川 英樹(シラカワ ヒデキ)

廣木 一亮(ヒロキ カズアキ)

日刊工業新聞2018年2月26日 「技術科学図書」欄

「3章ピロールの触媒酸化重合」の動画


「4章電気化学重合によるポリアニリンの合成」の動画


「5章ポリピロールの二次電池への応用」の動画