スマートグリッドと蓄電技術
蓄電技術に着目して,スマートグリッドをエネルギーマネジメントの観点から解説する!
- 発行年月日
- 2022/02/18
- 判型
- A5
- ページ数
- 144ページ
- ISBN
- 978-4-339-00978-1
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- レビュー
- 書籍紹介・書評掲載情報
- 広告掲載情報
本書の特徴は,多くの紙面をリチウムイオン蓄電池のモデル化と最適制御および管理,活用技術の説明に割いたことである。安全かつ長寿命な蓄電システムの構築に必要な技術を初めて学ぼうとする人たちが,エネルギー活用技術の全体像を把握しながら,無理なく読み進めることができるよう,以下の構成とした。
1章,2章は導入であり,社会規模でのエネルギーシステムの全体像と課題,その中での蓄電システムの位置づけと役割について説明した。さまざまな発電方法における再生可能エネルギーの特徴は,発電と需要の調整技術が課題であることである。それらの調整のために,社会実装としてキーとなるのが蓄電システムであり,大きな価値を生むということを示し,3章以降を通読するための動機づけとした。
3章では,蓄電池の進化と役割の変化を歴史的背景から振り返り,より過去の時代から長期にわたり活用されている鉛蓄電池や将来高い安全性かつ高効率な蓄電デバイスの主流として期待されている固体電池との比較を行いながら,現在および今後主流の一翼として期待されるリチウムイオン蓄電池の動作原理や実装,特徴について詳しく解説した。
4章と5章ではBMS(battery management system)の観点から,電気化学的なデバイスをコンピュータ制御するために必要な技術を解説した。まず,4章で等価回路を用いたリチウムイオン蓄電池の電気的特性と温度特性のモデル化およびシミュレーション技術について解説し,電流に対する電圧応答から内部インピーダンスの特徴を理解し,その後,内部インピーダンスの温度特性や充放電動作に伴う温度分布の変化を解析するための手法を示した。また,単一セルの特性だけではなく,組電池にした場合のモデル化方法や特性ばらつきの扱い方に関しても解説を行った。5章では蓄電池の内部状態を推定するための技術として制御工学で用いられるカルマンフィルタや逐次最小二乗法などの最適化技術を丁寧に解説した。マイコンなどを用いてプログラミング実装する場合にも理解が容易となるように配慮した。また,蓄電池の代表的な劣化現象と等価回路モデルでの変化から劣化モードや劣化割合を認識する方法を解説した。将来的には蓄電池セルに搭載されたBMSが高機能化し,内部抵抗のリアルタイム測定や機械学習による劣化現象の把握,さらには,残寿命,残価値の推定が可能となることが予想されるので,それらの高度な状態把握に向けた技術の紹介も行った。
最後に6章では,BMS システムへの要求や機能についていくつかの使用シーンを想定して,全体のまとめを行った。
持続可能な地球環境の観点から,再生可能エネルギーの有効活用や二酸化炭素排出抑制などの要求が高まり,スマートグリッドやスマートハウス,電気自動車などを含む社会規模でのエネルギー活用の最適化ニーズが高まっている。
本書はスマートグリッドと蓄電技術の概要を述べたもので,多くの紙面をリチウムイオン蓄電池のモデル化と最適制御および管理,活用技術の説明に割くことにより,安全かつ長寿命な蓄電システムの構築に必要な技術を初めて学ぼうとする人たちが蓄電システムを中心としたエネルギー活用技術の全体像を把握できるように配慮した。
1章と2章では,社会規模でのエネルギーシステムの全体像と課題,その中での蓄電システムの位置づけと役割について説明した。1章で持続可能,脱炭素化などの社会課題に言及し,本書の課題提起の起点を示した。2章では電力ネットワークに焦点を当て,さまざまな発電方法における再生可能エネルギーの特徴として発電と需要の調整技術が課題であり,それが大きな価値を生むことを示した。調整のための社会実装としてキーとなるのが蓄電システムであることを示し,導入とした。3章では蓄電デバイスとしてのリチウムイオン蓄電池の動作原理を示し,従来から長期にわたり活用されている鉛蓄電池や将来高い安全性かつ高効率な蓄電デバイスの主流として期待されている固体電池との比較も行い,現在および今後主流の一翼として期待されるリチウムイオン蓄電池の動作原理や実装,特徴について解説した。4章と5章ではBMS(battery management system)の観点から,電気化学的なデバイスをコンピュータ制御するために必要な技術を解説した。おもな内容としては,まず,4章で等価回路を用いたリチウムイオン蓄電池の電気的特性と温度特性のモデル化およびシミュレーション技術について解説し,電流に対する電圧応答から内部インピーダンスの特徴を理解し,その後,内部インピーダンスの温度特性や充放電動作
に伴う温度分布の変化を解析するための手法を示した。また,単一セルの特性だけではなく,組電池にした場合のモデル化方法や特性ばらつきの扱い方に関しても解説を行った。5章では蓄電池の内部状態を推定するための技術として制御工学で用いられるカルマンフィルタや逐次最小二乗法などの最適化技術を,数式などを用いて丁寧に解説した。マイコンなどを用いてプログラミング実装する場合にも理解が容易となるように配慮した。蓄電池の劣化現象は放電曲線および内部インピーダンスの変化として観測されるが,代表的な劣化現象と等価回路モデルでの変化から劣化モードや劣化割合を認識する方法を解説した。将来的には蓄電池セルに搭載されたBMSが高機能化し,内部抵抗のリアルタイム測定や機械学習による劣化現象の把握,さらには,残寿命,残価値の推定が可能となることが予想されるので,それらの高度な状態把握に向けた技術の紹介も行った。
最後に6章では,BMSシステムへの要求や機能についていくつかの使用シーンを想定して,全体のまとめを行った。
本書では,説明した内容の理解を深めるために各章末に演習問題を配した。通読するだけでなく,深い理解を確認するために丁寧に解答の努力をしてもらいたい。
2021年12月
著者
1.序論
1.1 スマートグリッド
1.2 地球環境とエネルギー事情
章末問題
2.エネルギー環境の変化
2.1 発電・送電・蓄電の役割
2.2 再生可能エネルギー活用による変化とマネジメント
2.3 VPP,アグリゲーション
2.4 蓄電池の役割
章末問題
3.リチウムイオン蓄電池
3.1 蓄電池の進化と役割の変化
3.2 各種蓄電池の特徴と使い分け
3.3 鉛蓄電池の動作原理
3.4 リチウムイオン蓄電池の動作原理
3.5 リチウムイオン蓄電池の構造的特徴
3.6 リチウムイオン蓄電池の材料と組み立て
3.7 固体電池の動作原理
章末問題
4.蓄電池のモデル化とシミュレーション
4.1 等価回路モデルと抽出方法
4.2 温度特性とその表現,抽出方法
4.3 温度管理(発熱,伝熱の理論)
4.4 開回路電圧,充電率,満充電容量
4.5 組電池のモデル化とばらつきの考慮
章末問題
5.蓄電池の状態推定
5.1 充電状態の推定方法(カルマンフィルタの基礎と電池への応用)
5.1.1 充電状態のSOC推定方法
5.1.2 電流積算法
5.1.3 カルマンフィルタの導入
5.1.4 電池モデルの生成
5.1.5 カルマンフィルタの適用
5.1.6 システムノイズと観測ノイズの推定
5.2 内部インピーダンスの推定方法(逐次最小二乗法)
5.2.1 逐次最小二乗法の導入
5.2.2 逐次最小二乗法で用いる電池モデルの生成
5.2.3 逐次最小二乗法の適用
5.3 劣化現象と劣化診断方法
5.3.1 交流内部抵抗法
5.3.2 交流インピーダンス法
5.3.3 矩形波インピーダンス法
5.3.4 過渡応答変換法
5.3.5 放電曲線微分法
5.3.6 充電曲線解析法
5.3.7 適応フィルタ
5.3.8 差電圧法
5.3.9 機械学習
5.4 劣化診断システムの例
5.5 寿命推定
5.6 動的状態推定
章末問題
6.蓄電池管理システム(BMS)
6.1 BMSの機能
6.2 大規模蓄電池システムのBMS
6.3 安全性を高める工夫
6.3.1 BMS装置
6.3.2 使用シーンとBMS
章末問題
引用・参考文献
章末問題解答
索引
読者モニターレビュー【もろ 様(ご専門:情報・電気電子系)】
本書は持続可能な地球環境の観点からニーズが高まっているスマートグリッドと蓄電技術の概要を述べている。微分方程式や線形代数、回路の知識を要するので大学生以上の人向けである。エネルギーに関して聞きかじった程度でも、1章を読むことでエネルギー事情について知ることができる。読んでみて良かった点は蓄電池に関する知識を全体的に網羅していることである。蓄電池とは何かから始まり、等価回路、状態推定、劣化診断に至るまで詳しく述べられている。それに加えて、蓄電池の管理システムについても述べられている。また、各章には章末問題があり各章の要点が理解できたか確認することができる問題となっている。わからない場合は巻末に詳しく解答が書かれているので読んでいただきたい。特に良くないと思った点はなかったので実際に本書を手に取り読んでいただきたい。
新電力ネット様のHPにて本書をご紹介いただきました。
「読売新聞」夕刊READ&LEAD(2022年5月17日) 掲載日:2022/05/17
日刊工業新聞 技術科学図書(2022年4月27日) 掲載日:2022/04/27
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掲載日:2022/04/12
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掲載日:2022/03/31
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掲載日:2022/03/01
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掲載日:2022/02/07
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掲載日:2022/02/01
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掲載日:2022/01/31